新しい個性の使い方に慣れ始めていた電気であったが、流石にそれを警戒した爆豪が距離を離してからの爆破連打であえなく敗れた事で準決勝のカードが出揃った。進志VS百、そして爆豪VS常闇という組み合わせである。A組の皆がどうなるのかと注目したのが進志と百の対決であった。爆豪と常闇のカードに興味がないという訳ではなく、この二人は幼馴染であり1年の中ででも屈指の実力者である事は間違いない、そんな激突を制するのはどちらなのかという興味が上回っている。
「何時かこんな日が来るとは思ってたが、まっこの舞台だと思ってたよ」
「ええっ私もですわ」
『さあいよいよ始まるぜトーナメント準決勝!!その第一回戦を飾るのはこの二人だぁぁ!!』
ステージの上に既に立ちながら軽いストレッチを行っている進志と微笑みを浮かべ続けている百。そこにあるのは今から戦う関係の二人ではなく、日常的な会話をする普段通りの二人の姿がある。それを見て真っ先にそう連想した一佳、だが彼らの瞳には別のものがある事を理解している。
「いやいやいや全く、本当に不快だよね!!あんなA組がトーナメントを独占してるんだから、気に食わないっ!!?」
「物間、黙らないと潰す」
真横でグダグダ言っている物間を大きくした手で顔を掴む、普段から彼の暴走を止めている彼女だがこの時だけは声にも動きも普段は違った。放った言葉は警告で無視すれば本気で顔を潰す事も厭わないという事を感じさせる言葉だった。それを察した物間も流石に顔を青くしながら何度も頷いて顔を離して貰う。
「ど、どうしたんだよ拳藤……あいつの口が悪いなんて何時もの事じゃねぇか」
「でも許せない、今度言ったら……本気で潰す」
一佳にとって二人はどんな存在なのかと皆が気になる中、変わらずストレッチを続けていく彼らに目が向く。マイクのパフォーマンスにも熱が入り気合の入った紹介が行われていく。そんな中でマイクの応援にテンションがMAXになってスーパーハイテンションになる進志に百が思わず笑う。そして開始の合図が鳴るが、二人は動かない。
「なぁ百、俺のオリジンはお前だ。お前が俺にヒーローとしての道を歩ませてくれた」
「はいですが私にとってはあれは忌むべき過去ですわ、それを出来れば断ち切りたいとさえ思っております」
「そうだな……お前にとってはそうだろうな」
左目。進志と百のオリジンの象徴。二人にとっては感じ方が違う、進志にとっては歩むべき道を示し守るものを認識させた出来事。百にとっては大切な人の目を奪い、自らの愚かさを悔いる出来事。
「だけどあれは俺の弱さを明確にした、あれがなかったら今の俺はいない」
「それでも私は進志さんが深く傷ついてしまった事に対する後悔は消えません、罪は罪です。永遠に消えません」
「はぁっ……頭いいのに分からず屋な奴だな」
進志は眼帯を投げ捨てた、露出した傷ついた左目。傷が目を潰し開かなくなっている目をみて百はかつての事件を思い出し身体を固くするが、同時に槍を構える。
「私は誓ったのです!もう貴方を傷つけさせない、貴方の目になり進志さんを守ると!!だから私の強さを認めて頂きます、私の―――貴方の隣にいる強さを」
「嬉しい事を言ってくれるがそれだとお前が俺の分も傷つく、それは見過ごせない。来いよ百、お前の覚悟……見せてみな!!」
「行きますっ!!」
駆けだす百、軽くジャンプするとローラーブレードを創造してそれを靴に装着して走り出していく。十分な加速を得ながら槍を振るうがそれは進志に届く寸前で止まる。ゆっくりと姿を現したスティッキィ・フィンガーズが槍を止める。それから槍を離すのは無理だと判断して素早く槍を手放しながら、上段蹴りを進志の首目掛けて繰り出すがそれを冷静に進志は受け止める。
「……良い蹴りだな」
「お褒めに預かり光栄ですわ」
『アリィッ!!』
「ハッ!!」
攻撃を受け止められた百へとスタンドの一撃が奔る。が止められた足に力を込めて進志の手を利用して逆に後ろへと飛び退いた、が即座に腕に設置されたジッパーによって腕が伸びていき百の首へと命中しジッパーが設置されるが即座に鉄のようなものを生み出してそれをブロックして身体にジッパーを付けられるのを回避する。地面に切断されたそれを見ながらも新たな槍を握りながら警戒する。進志も百が捨てた槍を手に持ちながら構えを取る。
「俺も一応八百万流槍術は叩き込まれてる、同門同士やりあってみるのも悪くないな」
「そうですわね、では御手を拝借いたします」
「構いませんぜレディ」
手首で槍を数回回したのちに、地面を強く蹴って駆けだす進志。そして槍としては上質な百製の槍を振るう。ぶつかり合う槍の戟の音、寄せては返すを繰り返す波のように攻撃と防御が入れ替わる。八百万流槍術は防御を主とした近い槍術流派、しかしその中にも個性は出る。
「やっはぁっやぁぁ!!」
百のように創造を活用し、槍を捨てる事も厭わない数と意識外からの槍の攻撃を組み込むトリッキーな物。槍の防御に加えて攻撃をスティッキィ・フィンガーズに任せつつもカウンターを狙う進志。そんな戦い方に皆魅入られる、コスチュームやアイテムの持ち込みが基本的に禁止されるヒーロー科同士の戦いにおいて武器同士の戦いは新鮮に映る。そんな中、進志は驚きの表情でバックステップを踏みながら槍で飛来したものを弾く。それは銃弾だ、手ごたえからしてゴム弾であろうがそれでも驚く。
「お前な……俺からしたら普通にありだと思うけどいきなり顔狙うって鬼か」
「フフフッ……だってこうでもしないと勝てませんから♪」
そう言いながらもその手には拳銃が握られている、創造出来る彼女だからこそ出来る長所だ。まあこちらもスタンドがあるからある意味いい分かもしれない。
「さあ進志さん行きますわ、お覚悟を!!」
「幼馴染がどんどん怖くなってる気がする、百と一佳両方とも」