なんでも許せる方のみお読みください!
第1話「始まりの出会い」
しんしんと、雪が降る。
その日は彼の大切な少女は大好きな真っ白な雪を血に染めて、この世を去った。
「(ああ、だめ、だめだ、まだその子を」
連れていかないで。
「御伽!!朝だよォ!起きてー!!」
騒がしい声で彼の意識を覚醒させたのは、金色の髪が目に眩しい、狐の社。
「うるさいわね、今日お店休みなのよ……」
「そんなこと知ってるさ、だから早く遊びに行こうよ」
顔を顰めながら御伽は起きあがり、腹癒せにベッドの上に乗る社を落とした。
「うぎゃ!」
下で変な声を上げる社を後目に御伽はベッドから下り身だしなみを整える。御伽は普段寝る時は下だけ履き、上は上裸の状態で寝てる。起きて早々顔を洗い化粧をし、仕上げに目元に左右2本ずつ朱を指す。
御伽はメイクを終え、己の着物を持ってきた社から服を取るとそれを纏う。社と違い鍛えられた締まった身体、そう御伽は列記とした男なのだ。
最後に鈴の着いたチョーカーを付け着替えは完了。
「(……久々にあの夢を見たわ)」
御伽は昔自分が猫又ではなくちゃんとした猫として生きていた時の夢を見た。その夢は御伽を妖怪にした決定的な事件であることはまた後ほど話すとしよう。
「よし!じゃあ、行こう!」
「どこに行くのよ」
「まだ決めてない!」
おちゃらけている社の脇腹を1発ド突いて御伽は部屋を出た。その後に続く社。
結局どこに行くかも決まらずただウロウロと街を練り歩く。この街には江戸時代を彷彿とさせる平屋の家や店が多く、輻輳も和服を身に着けてるものが多い。しかし中には社のように洋服と和服を合わせたアレンジを効かせているものも居るし、なんなら普通に洋服の者もいる。そもそも服装なんて関係ないのだ。何故ならこの街に住むものは皆が普通ではない。社や御伽のように妖狐や猫又と言った妖怪の他にもそこら辺に妖怪や獣人達がウロウロしているのだ。この街、いやこの世界は人間の暮らす世界と隣合わせの世界。その為に人間の世界に遊びに行く者も多く、逆に人間が迷い込んでくることもある。しかし、迷い込んできた人間はこちらの環境が合わないのか皆数日で命を落とし、中にはそのまま妖怪や鬼になりこちらに住み続ける者もいる。なので、現世ではそれを“神隠し”と読んでいる。
「御伽!ご飯食べに行こ!朝ごはん!」
「何食べに行きたいのよ」
「パンケーキ!!」
社はよく現世に赴く。妖狐だからか変化が上手く人に馴染む。さらに社はこの街を治める神社の神格である、九尾の妖狐、眞白様の息子ということもあり、妖力が高いため変化が向こうで解けることはまずない。なので最近のブームは現世で食べたパンケーキらしい。
「現世に行くの?」
「いや!御伽に作ってもらう!」
「嫌よ、めんどくさい」
「えー!材料費だすから!」
「それならいいわ」
「現金!!」
そうと決まれば話は早い。
御伽と社は材料を買うため商店に向かう。
「トッピングは何がいい?僕はアイスとチョコが、いい、な?」
社の言葉が不自然に途切れる。
「ちょっとどうしたの「しーーーーっ」」
口に指をあて、社は耳を動かす。御伽も耳を済ませてみるが特に変わった音は聞き取れない。
「ちょっと、何よ」
声をかけると社の耳がピンとはる。
そのまま走り出した。
「ちょっと!!やしろ!」
「はやく!わかんないけど、誰か叫んでるんだ!」
叫び声なんて一切聞こえなかった。しかし、御伽にも聞こえないような音でさえも社は拾う。昔から社はこういう危機察知はピカイチだった。走る社の後を御伽がついていく。しばらく走りやっと着いた先に広がる一面の赤。
その周りに倒れる、数人の人。もう息はない。鮮血に染まる道の真ん中、既に息絶えた女性の喉元に噛み付いている、1匹の鬼。
鬼はその女性を投げ捨てるとゆっくりこちらを向いた。
「あれ、見つかっちゃったか」
ケロッと、何事も無かったかのように話す鬼。その鬼が指を鳴らすとあたりの鮮血も、人も一瞬でも消える。
「いつもは見つかる前に片付けてたんだけど、しょうがない」
口元の血をぐいっ、と拭い御伽と社を交互に見る。
「僕の名前は瑛翔、今日はお腹いっぱいだからまた今度相手してねおにーさん♡」
瑛翔と名乗った青年はしゅっ、と姿を消し。その場はいつもと同じ平穏な風景に戻った。
「……今の何」
何が起きたか未だに飲み込めない御伽と社。
ひとつ分かるのは
今までの平穏な日々が、一気に不穏な陰に包まれたということだけだった。
その日は結局楽しい雰囲気になんて到底なれず、御伽は社と共に眞白様の元に足を伸ばし、今日あった出来事を思い出せる限り鮮明に話した。
「……分かりました。私もいつにも増して警戒をします、あなた達も十分気をつけるのですよ」
「はい。……眞白様これからどうなるのでしょうか。」
御伽が尋ねると眞白様は悲しそうにうなだれる。
「私にもわかりません。ですが御伽、貴方のように闘える子はこれから大変なことに巻き込まれるやもしれません。その時は力を貸してくれますか?」
「はい、この命、眞白様とこの街のために」
「命は粗末にしてはなりませぬ、でも、ありがとう御伽」
眞白様は儚く笑う。見ているこちらが泣いてしまいそうな程に。
その後、御伽は眞白様の神社を後にし、外で待っていた社と合流する。
「おまたせ」
「……御伽、僕何も出来なかった。」
「……」
「この街を守る神の息子なのに、何も出来なかった、それが、、悔しい!」
社は階段に腰掛け己の膝を抱えてないていた。そんな社の背中を御伽は撫でた。
「大丈夫、これから強くなればいいのよ」
そして、それから数ヶ月が経とうとするがあれ以来音沙汰は無い。
瑛翔が言っていたように見つかる前に片付けていたという事なのか、しかしそれなら行方不明者が出てもおかしくはない。紛れもなくそこでは何も起きていないのだ。
そんなある日の夜御伽は煙管をふかしながら瓦屋根の上をカランコロンと飛び移っていた。
「(この街に、一体何が起きているの?)」
いつもと変わらない街並み、景色、空、しかしその日はひとつ違っていた。匂いが違っていた。
「(何、この匂い)」
その異様な匂いに御伽は顔を顰め、あたりを見渡す。
カラン、隣の瓦屋根の上から見えた路地の奥、違和感のある黒い影。御伽は屋根の上から飛び降りる。
するとそこには、傷だらけでもう事切れそうな浅く息をする狼の子がいた。
「あんた、まだ死にたくない?」
突然かけられた声にその狼の子はゆっくりと顔を上げ、じっ、と御伽を見る。
「(夜の帳を宿した瞳)」
その狼の子は強い力を込めた目で御伽を見つめる。
「あたしは御伽、あんた死にたくないならあたしの手を取りなさい、死にたいなら無視していいわ」
すっ、と差し出した手に、狼の子はゆっくり力が入らず震えながら手を伸ばし御伽の手を取った。
「……そう、じゃあ、帰りましょうか」
御伽は狼の子を抱き上げると自分の家へと連れて帰った。
後にこの狼の子との出会いで物語が大きく動き出すことを御伽はまだ知らない。
To Be Continued
お読みいただきありがとうございます!
更新速度は遅めだと思いますがゆっくりのんびり読んでいただければ幸いです!
ありがとうございました!