前話からだいぶ空いてしまいましたごめんなさい!今後はもう少しペース上げたいです!
- のらくら3話 -
「時計の針が重なった、だからあなたに会いに来た」
そう言って微笑む男性の目元は紙のような面で見えないがとても穏やかなものだった。
謎の言葉を発した男性をロゥもコットンも不思議そうに見つめていた。
「お久しぶりね、翡翠さん」
どうやら御伽とは面識があるようで、その男性、翡翠という男の名をやさしく呼ぶ。
「はい、ご無沙汰しております旦那」
翡翠もまた穏やかに返し席に座る。
「社、コットンとロゥを連れて外で待っててくれる?」
「あいさー」
社は状況を理解しているようでコットンとロゥを連れて外に出ていった。
「ねぇ、さっきの男の人のあの言葉何?」
コットンが社に声をかける。
「ああ、あれね、あれは合言葉」
「合言葉?」
「そ、御伽は表向きはカフェバーのオーナーだけど、実際は情報屋として生計を立ててるの、あんまり大っぴらにやりたくないからって、知る人ぞ知る合言葉」
ほら、出たでた、と社はロゥとコットンの背中を押し店の外にでる。
「そしたら翡翠さん、奥にどうぞ」
スタッフオンリーと書かれた札の下がった扉を開け御伽が翡翠を中に招き入れる。
少し廊下を歩いた先の一室に翡翠と共に入っていく。その一室はたくさんの書物で壁一面埋め尽くされていた。書物に囲われたその真ん中に小さなテーブルとイスが2つ。どうぞ、と椅子を指し翡翠を座らせる。御伽は一旦部屋から出たかと思うと少しして湯呑みを2つ持ってきて片方を翡翠に渡し、腰掛けた。
「さて、お話を聞きましょう」
湯のみから口を離し、御伽が翡翠に問いかける。
その動作を見届け翡翠が口を開く。
「『銀狼』の情報を売って頂きたい」
銀狼と告げた翡翠に御伽は顔を強ばらせた。
「.......随分と古い人物を出してきたわね」
「貴方はかつての戦争で銀狼と一緒に戦地にいましたよね、その当時、出来れば近況も含め教えて頂きたい」
以前も話した通り、こちらの世界は人間の世界と隣り合わせ。人間界で大きな世界大戦があった時、こちらの世界でも大きな戦争が起きた。御伽はその時、白連や黒影と共に戦争に駆り出され生きて返った。その時戦地にいた人々の中にいたのが銀狼と呼ばれる男だった。戦地では名を知らぬ者がいないくらいにその活躍は凄まじかった。しかし、銀狼は戦いになると敵味方関係なく人々を殺していった。美しく輝く銀色の毛並み、荒々しい戦闘スタイル、故に彼は【銀狼】と、部外者が聞けばただの容姿に関する呼ばれ方でその名は一気に戦地を駆け抜けた。御伽達は運良く生きて帰ったがこの戦争では当たり前の様に多くの人が犠牲になった。
「彼の話を聞いてどうするの?」
「.......長くなりますが、いいですか」
「大丈夫よ、バーの時間まではまだあるし」
では、と言って小さな紙包みの中から銀色の毛束を取り出した。
「つい先日の出来事です。私の一族のことは知っていますね、旦那」
「ええ、あなた達はある年齢を越えると、瞳が宝石に変化する稀な種族の末裔よね」
「はい、その通りです。私の瞳はジェード、つまり翡翠です」
そう言って翡翠は面を持ち上げ御伽にその瞳を見せる。
「いつ見ても美しい瞳ね」
「ありがとうございます。話は戻りますが、私たちの瞳は年齢を重ねることで徐々に宝石に変わっていきます。宝石になりかけている瞳は闇商人たちの間で高く売買されており、用途は様々、妙薬として効果があるだとか、魔術の材料にするなど、ここ最近では取締りが厳しくなり危機は減りましたが、まだまだ我々は狙われることが多々あります。そして先日、私の許嫁の翠が両目をくり抜かれ見るも無惨に殺されました。翠は今まさに、瞳が宝石に変わる途中でした、そして翠が殺された部屋に落ちていたのがこの毛束です」
そう言って翡翠は毛束を持ち上げた。
「あたしの情報を殺しに使うつもり?」
ワントーン下がった御伽の声に翡翠の手が微かに戦慄く。御伽は微かな殺気を込め翡翠を見つめていたが、その目を閉じ息を吐く。
ピリ、と張り詰めていた空気が緩む。
「あなたが何をしたいか分かるわ、ただアタシの情報は人を殺すために提供するわけじゃないの、金を積まれれば明け渡すほど安くもない、復讐をする気ならあたしから情報は売れないわよ他をあたってちょうだい」
御伽は煙管に火をつけ、1口吸っては吐き出した。その様子を見ていた翡翠が腰を上げる。
「ご無礼をお許しください、しかし私もこのまま引き下がるわけには行かないのです、最愛の翠を殺され、私には何も無いのです、旦那どうか、どうか」
翡翠は頭が机につきそうなくらいに下げ御伽に懇願する。
「........、だめよ、あたしは力になれないわ。帰ってちょうだい」
御伽は静かに立ち上がると扉を開けた。翡翠の表情は読めないが、強く手を握りしめそのまま部屋をあとにした。
「(ごめんなさい)」
御伽は翡翠の悲しげな背中を見届け、翡翠の置いていった銀狼の毛を煙管に入れ燃やし、煙を吐く。吐き出された煙は命を宿したように動きシルエットを浮かび上がらせる。そのシルエットはゆっくり動きだし次の瞬間に激しく動き出す。恐らく翠を殺したその瞬間だ。そんな動きを見せる煙に御伽は顔を顰めた。
「(........何か変だわ)」
御伽は煙を眺めながら考え込む。
「(銀狼、シルバが瞳のために殺しをするなんて事あるかしら)」
「銀のあんさんはこんな事しないっすよ、ねぇさん」
「っ!?やだ!驚かせないでロゼ!」
不意に響く声に御伽は思わず声を上げて驚いた。
さーせんっ!とギザギザの歯を覗かせ笑っているこの突如現れた青年はロゼッタ。軍服を纏う幽霊、御伽でさえ気配を読み取れない。
「それに、ここは入っちゃダメって言ってるわよね」
「そんなことよりねぇさん、銀のあんさんは瞳なんぞに興味はないっすよ」
「あんたほんと1回ぶん殴るわよ?」
御伽の話には耳を傾けず、ふよふよ宙を浮かび、ロゼは御伽の周りを漂う。
「てか、なんであんたがそんなこと知ってるのよ」
「ねぇさん忘れたんすか?オイラはあの戦争時代からずっっっと幽霊やってきたんすよ?当然死なないんすから戦争も間近で見てたっすよ」
銀のあんさんについては気になってたんで見張ってました。と言ってロゼはにっこりと笑う。
「それで?」
「知りたいっすか?」
ニヤニヤと楽しそうにイタズラな笑みを浮かべるロゼに御伽はしびれを切らせて外に出ようとするとその御伽の肩を掴んだ。
「もー冗談っすよ!銀のあんさんは戦いにしか興味が無いんすよ、強い相手と戦うことだけにしか!宝石の目になんててんで興味はなしっす」
「だからなんなのよ」
「分からないっすか?つまり」
ヘラヘラしていたロゼは急に笑みを消し御伽の顔の前に指を突きつける。
「興味の無いことにわざわざ手を出すって事は」
「........」
「誰かが裏で手を引いてるってことっすよ」
「........嫌な予感がするわ」
御伽は煙管の火を消し、部屋の外に出ようとする。するとその背中にロゼが声をかけた。
「ねぇさん、気をつけた方がいいっすよ、銀のあんさんはお強いから」
「そんなの知ってるわよ、一緒に戦ってたんだから」
そう言って御伽は足早に部屋を出た。
「そうっすよね、なんたってあんたもあの戦いで恐れられたひとりだ、ねぇ?【化猫御伽】?」
「随分楽しそうだなシルバ」
「何かいい事あったのー?」
優しい風が肌を撫で、その自慢の銀の毛並みを揺らす。
「何やら面白いことが起こる気がするのぉ」
翡翠との話を終え部屋から出てきた御伽は社とロゥを連れてあるところに来た。
「久しぶりじゃない?ここに来るの」
「そうね、あんたはダメだったけどロゥには効くかもしれないから」
「??」
御伽と社はそれぞれこの場所がどういう場所なのか分かっているようだが来たばかりのロゥには分からず首を傾げる。その様子を見た御伽は優しくロゥの頭を撫でた。
「せめて、自分の身は守れるようにならなきゃね」
そう言うと御伽は目の前の大きな邸の扉を少し乱暴に叩く。少ししてゆっくりと扉が空いた。その先には灰色の大蛇がとぐろを巻いて待っていた。
「これはこれは、御伽さんお久しぶりです」
「ええ、久しぶりね粼(せせらぎ)さん、悪いんだけどミオを呼んでくれるかしら」
「もちろんです、少しお待ちを」
粼と言った大きな蛇はそのまま屋敷の中に戻って行った。ちょいちょい、とロゥが御伽の服を引き、何か聞きたそうに御伽の顔を見る。
「大丈夫、怖くないわよ」
「やぁぁん!!御伽!久しぶりぃぃ!!」
御伽がロゥの頭を撫でようと手を伸ばした時、御伽の後ろに思いっきり飛びかかってきた明るい女性。御伽は思わず倒れそうになるのをグッ、と堪え体勢を立て直し衝撃の原因と呼べるその女性の方に向き直した。
「ミオ!あんた危ないでしょ!」
「だって御伽が会いに来てくれたの嬉しいんだもーん!」
御伽に抱きつくミオがロゥに気づく。
「およ?もしかして今回はこの子かな?」
「ええ、お願いできるかしら」
「まっかせなさーい!じゃ、移動しよっか!」
そう言ってミオは御伽達を連れて広い庭に移った。そしてロゥに近づき体を触る。
突然のことに驚くロゥはあわあわと慌て始め御伽に助けて、と視線を送るが御伽は笑顔でそれを見つめていた。
「ふむふむ、体つきは悪くないね、ただ筋肉がもう少し欲しいとこかな。しなやかないい筋肉だけど、いまいち頼りないね」
ロゥの体を分析するミオ。その様子を見ていた社が口を開く。
「あれ、僕の時もやられたけど彼女何者なの?」
「あら?説明しなかったかしら」
「ぼくは説明の前に戦力外あつかいされたからね」
どことなく不貞腐れたように社が口を尖らせる。
「あの子はあたしと一緒で戦争を経験してる子よあたしと違うのは雇われでは無いことかしらね」
「よしよし、じゃあ早速始めようか」
「??」
少し離れ構えるミオにロゥは困惑している。
「あの子はね最年少で軍の中尉になった実力の持ち主なのよ」
「さぁさぁ!!どっからでもかかっておいで!」
To be continued
相変わらずグダグダで申し訳ないです。ここまで読んで下さりありがとうございます!
新キャラ登場が一気に来ましたね!
粼にミオ、シルバとロゼッタ!正体不明も何名が居ますがこれからのお話もぜひ読んでください!