という事で今回第5話目にまたまた新キャラが登場致します!
Twitter見てくれてる方は分かってると思いますが今私が描きまくってるあの青い方です(笑)
ゆっくりですがこれからも続きを書いていきたいと思います!
どんどんお話は盛り上がって行きますのでよろしくお願いします!
コツコツ
広く、長い静かな廊下に響く足音。足音の主はシルバたちといる際には一切見せない険しい表情をした溯だった。
廊下の奥の大きな扉を壊れそうなほど勢いをつけて開け放つ。
「うわ、びっくりした!溯ぅ、食事中だぞ?ノックぐらいしたらどうなんだい?」
大きなテーブルの上には見るも無惨に切り刻まれた妖や人間たちの死体がころがっている。その死体の上に胡座をかき座っている瑛翔に溯は無言である袋を投げつける。瑛翔はそれを軽々と受け取ると中身を確認する。
「おっ、混血の宝眼族の瞳だね?これで残る素材はあと2つ」
「早く言え、俺はさっさとこの仕事を終わらせたい」
溯の不機嫌そうな態度に瑛翔は小さく溜息をこぼした。
「せっかちさんだなー溯は!んま、いい事だけどね♪まず1つ、この近くの大きな街を守る土地神九尾狐の御髪、2つ、これまた大きな霊山を仕切る烏天狗が守りし鳳凰の尾羽、だよ今回の素材は難易度がかなり高い、なんてったってこの標的にはそれぞれ護衛がいる、中でも鳳凰の方は烏天狗たち総出で狩人を殺しにくるだろう」
「構わない、何がなんでも手に入れてやる、俺にはやらなければならないことがある」
「嗚呼、そうだよね笑、【あの子】のため、だもんね?」
嫌味たらしくにこやかに笑う瑛翔を睨みつけ溯は部屋を出ようと瑛翔に背を向けた。
「期待してるよ、溯♡」
「言っておくが、俺とお前は仲間ではない俺の目的の先にお前の目的があるから仕方なく手を組んでいるだけだ、お前が裏切るような事があれば俺はお前も斬り捨てるぞ」
そう言って溯が部屋を出たあと、瑛翔は心底楽しそうに高笑いをあげる。
「あはっ!ほんっと楽しみだぁ、御伽、そろそろ君の元に桜が舞い降りるよ、君たちはどうするんだろうね?あと、」
ちらりと視線をずらした先にいた幼い女の子を見て瑛翔は再び笑みを深めた。
「君に会ったら御伽はどんな反応をするだろうね?楽しみだなぁっ」
瑛翔と話したせいで更に機嫌の悪くなった溯は足早に地下へと続く階段を降りていた。
「溯さま、ご苦労さまです」
地下のフロアへ降りたと同時に研究員のような白衣を着た若い男が溯に声をかけた。
「ああ、様子はどうだ」
「お変わりなく、お目覚めの兆しは見られません」
「…そうか、外してくれ」
「はい」
溯の一声でその場にいた数人も地下のフロアから出ていた。厳重に鍵のかけられた大きな鉄の扉を開ける。中は暗くぼんやりと青い光がその部屋を照らし出す。溯は中に入ると扉をゆっくりと閉めた。ぼんやりと青い光に照らされた部屋の中には青い光を放つ無数の大きな水槽がある。奥へと進み、溯はあるひとつの水槽の前で足を止め、悲しげな表情で水槽に触れ、額をつける。
その水槽の中には腹に大きな穴の空いた、溯によく似た少女がたくさんの管に繋がれ眠っていた。
「あと少し、あと少しでお前を治してやれる待っていてくれ、朔良(さら)」
「御伽!ちょっと!どこ行くのさ!」
「社、あんたしばらくロゥ家に泊めてやってくれない?あたしは調べなきゃならないことが出来たの、しばらくお店も休むからコットンにも伝えて頂戴」
足早に歩きながら伝えてくる御伽に社は顔を顰め、歩みを止める。
「社?」
「いいよ、ただし条件がある」
「…何よ」
社は大きく息を吸い込み何かを決心したようにきっ、と御伽を見つめる。
「何処に行くか、何をするか、どのくらい空けるのか、それは聞かないだけど1つ!絶対生きて帰れよ!何もわかんないけど、お前の顔を見れば危ないことに足突っ込もうとしてる事はわかる!だから!絶対帰ってこい!いいな!」
どんな条件を出されるのかと思って身構えていた御伽は思っていた条件とかけ離れたその願いに思わず笑った。
「な!笑うな!こっちは真面目なんだぞ!」
「ふふ、分かったわ、大丈夫よそんな簡単にくたばりはしないわ、あとロゥ貴方はあたしが帰るまで毎日ミオのところで稽古付けてもらいなさい、話はつけてあるから」
御伽の話にロゥは大きく頷いた。
「それじゃあ、行ってくるわね」
その日の夜、御伽はしばらく家を空ける為、ある程度の資金と食料を持って家を出た。
「行きは良い良い帰りは怖い」
小さな声で歌うと、御伽の影が大きく広がりまるで水面のように波紋が出来る。
御伽が大きく息を吸い込み止めると
どぷん
水の中へ堕ちるように影が御伽を飲み込んだ。少しして息を吐くと影がゆっくりと元の御伽の影の形へと戻り、薄暗い森の中で御伽は立っていた。
御伽はその森のさらに奥へと進み始める。30分程歩き続けると遠くにほんのりとあかりが灯っているのが目に入り御伽は無意識に息をついた。
こじんまりとした小さな小屋の扉をノックすると、立て付けの悪そうなキィィィィ、という音と共に扉が勝手に開く。その扉の前には二羽の梟が居た。一羽は灰色の羽に美しい青い瞳を宿し、もう一羽は金色の羽にエメラルドのような濃い緑の瞳を宿していた。
その二羽はじっ、と御伽を見つめている。
「こんばんは、セシルにジゼル、ビジョンに合わせてもらえるかしら」
セシルと呼ばれた金色の梟と、ジゼルと呼ばれた梟は静かに動き出し奥の部屋の扉の前に移動した。そしてセシルがコンコンと扉を啄くとしばらくして奥から青く長い髪を携えた、美しい顔立ちの人物が現れた。
「久しぶりね、ビジョン」
久しぶりと、声をかける御伽にビジョンは冷たい目線を向ける。
「来る頃だと思っていたよ、御伽」
ビジョンの肩にジゼルが止まり、セシルは足元で座って御伽を見つめる。
「どうせ面倒事なんだろ?早く要件を済ませてくれるかい、俺はあまり時間を無駄にしたくはないんでね」
そばにあった椅子に腰をかけビジョンは長い髪をはらう。
「せっかちさんね、…貴方の専売特許よ、【デュスノミアーデン】についての情報を頂戴」
「随分懐かしい名前を出すね、あの軍の機密機関を出してくるなんて、何があったんだい?」
柔らかな口調とは裏腹にビジョンの目付きは鋭さを増していた。御伽は静かに息を吐き、ビジョンの向かいの椅子に腰を下ろした。
「数ヶ月前、ある狼の獣人があたしの街に傷だらけになって倒れていたわ、その子の項にこの刺青が入っていたわ」
御伽はあの太陽を模した刺青が描かれた紙をビジョンに手渡した。
ビジョンはその紙を受け取ると大きなため息をついた。
「確かに、デュスノミアーデンの紋様だね、しかしあの機関は俺が抜けるとほぼ同時に軍によって壊滅させられたはずだ」
「軍の機密機関なのに?」
「そうだ、あの機関は違法に人体実験を繰り返し行っていたからね、《神隠し》は分かるだろう?」
「ええ、表の世界から迷い込んだ人間たちのことよね」
「そう、その神隠しで紛れ込んできた人間たちはこの裏の世界の環境に耐えられず死んでいくことが多い、しかし稀に生き残り、この世界に順応してみせた人間たちも居る。デュスノミアーデンはその人間たちを連れ込み人体実験を行っていた、その狼の子、きっと元は人間だ」
その話を聞き御伽は眉を顰める。
「貴方も一緒にその実験を?」
「バカを言わないで欲しいね、俺はどちらかと言うと被検体だ」
「…被検体?」
イマイチ話の飲み込めない様子の御伽にビジョンは微笑んで見せる。
「俺は純血の宝眼族だからな」
「…そうね、そうだったわ」
「俺の体は研究者にとって、調べたくて仕方の無い体、しかも軍に所属してる宝眼族は稀だったしね、好き勝手人の体を弄り散らして行ったさ」
御伽は淡々と続けるビジョンの話に頭を抱えた。
「別に大したことはないよ軍の人間にそんな大それたことは出来ないしね、おかげで今もこうして生きていられる」
ごめんなさい、と弱々しく謝る御伽にビジョンは苦笑した。
「“化け猫”が聞いて呆れるな、セシル、ジゼル彼にお茶を出してくれるかい」
ビジョンの声に反応し二羽の梟が隣の部屋へと消えていった。
「…話を戻そう、その狼の子はきっと奴らの実験で生まれた獣人だ、俺が思うにその子が今も普通に生きているのであれば彼らの実験自体が完成しつつあるんだろうね」
「どういう事」
顔を上げた御伽の顔には怒りが滲んでいた。
その時隣の部屋に向かった二羽の梟がカゴに入ったティーセットを持ってきて器用にカップにお茶を注ぐ。
「ありがとう」
ビジョンが二羽にお礼を言うとそっ、と御伽の前にカップを滑らせる。
「ハーブティーだよ、少し気分が落ち着くと思う」
「…ありがとう」
出されたお茶に口をつけ、小さく息を吐く。
「さっきの話、そいつらの実験が完成するってのはどういう事なの?」
ビジョンは口をつけていたカップを戻しその宝石の瞳が真っ直ぐに御伽を見据える。
「彼らの目的は“神”を人工的に創り出す事なんだよ」
「神?」
「そう、神、神様だよ、彼らは神隠しにあった人々に様々な遺伝子を足し、簡単に言えばキメラを作っている、そのために必要な素材や人体を求め、実験しては捨て、実験、捨てを続けてきたほとんど成功なんてしてこなかったのさ、それが、君のところの狼の子、彼もその実験体で今も安定して生きていられるという事は」
「準備が整ってきている?」
御伽の言葉にビジョンは笑みを深める。
「ご名答」
「戻らなくちゃ」
椅子から立ち上がって、小屋を出ようとした御伽の背にビジョンが声をかける。
「神を作るには神の体の一部、つまり“遺伝子”がいる、お前の街の土地神さま、警戒しておいた方がいい」
「貴方が、明確な助言をするなんてどういう風の吹き回しなの?」
「俺は《バイキングの行先を導く石アイオライト》なんでね、たまには道に迷った子羊を助けて上げて職務を全うするさ」
「ありがとうね」
今度こそ小屋を出ようとした御伽にもう一度ビジョンが声をかけた。
「御伽!」
「?」
「もうすぐお前の前に桜が舞い降りる、その桜は良くも悪くもお前に大きな影響を与えるぞ」
「どういう事よ、ま、受け取っておくわ」
小屋から出た御伽の背を見送るとビジョンはため息をついた。
「ビジョン」
「大丈夫?」
御伽が部屋を出てから二羽の梟がみるみる姿を変え、幼い瓜二つの男の子と女の子に変わった。
「いよいよ動くのか…、俺達も準備しておいた方がいいかもしれないね」
「大丈夫」
「ビジョンは私たちが守るから」
そう言ってビジョンの両手を握る幼い子達にビジョンが笑顔を向ける。
「ありがとう、セシル、ジゼル」
「全く【行きは良い良い帰りは怖い】なんて、よく言ったもんよ!ここ何処なのよ!!」
ビジョンの小屋はこの童歌を口ずさめばどこに居ようと傍の森まではすぐに行ける。今までその類まれなる体を狙われてきたからこそビジョンは己の身を守るため自分の済む小屋と周りの森に呪いをかけ、この童歌を口ずさまない限り立ち入れないようにした。しかし、童歌同様行きは容易いが問題は帰り、場所を悟られぬようビジョンは返す時は適当な場所へ尋ね人を飛ばす。もちろん御伽も例外ではなく現在自分がどこにいるかすらわかっていない。
「ほんっと!少しは加減して欲しいわね!」
イライラを募らせながら御伽は煙管を取りだした。煙管を一吹かしすると吐き出した煙が形を変えてゆく。次第にかたちが定まりある現在いる地域の形を成す。
「は!?頭おかしいんじゃないのあいつ!!ここから街まで何百キロ離れてると思ってるのよ!!」
ぶつくさと文句を言いながら御伽は帰路に着くことになった。
「次会ったら1発ぶん殴ってやるわ!!」
「俺が導くその先に、光があらんことを」
To Be Continued
今回で溯の目的が何となくわかったと思います!
あとはビジョンたちがこの後どう物語に絡んでいくのかも楽しみにしていただけると嬉しいです!
次のお話も読んでくれることを楽しみにゆっくりですが書いていきたいと思います!
よろしくお願いします!