聖杯戦争に薪の王が参戦しました   作:神秘の攻撃力を高める+9.8%

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チャンピオン倒した記念投稿


波紋

「で、あれはなんなんだ?」

 

詰るような口調で始まったその質問は、当然先程の戦いにおいて使われた『太陽の光の槍』についてである。これまで雁夜が教わってきた『ソウルの魔術』とは似ても似つかぬような()()に疑問を抱くのはある種当然とも言える。

 

「ああ、あれは『太陽の光の槍』。竜狩りの奇跡の一つ、神の術だ」

 

さも当然であるかのように口にした神の術という言葉、それは魔術師ならば反応せざるを得ないだろう。無から有を生み、また有を無に帰す、あり得ないを実現させる魔術とは違う技、魔法。

 

まさかあれは魔法であるのか、と興奮して問いかける雁夜に対してリンカーはとても静かである。というよりも雁夜が激しすぎて返って落ち着いているのだろうが。

 

「さてな、奇跡が魔法であるかは詳しくはわからない。確かに不死という概念をもつ古竜を殺すに足らしめる、そこだけ見れば魔法とも言えるかもしれない。だがあれは殆ど借り物の術だ」

 

「借り物?」

 

「そうだ。奇跡とは、かつての神の物語を紡ぎ、そこから力を抜き出す技だ。今でこそ『火』に継承された王たちのソウルにより借り物というよりも私の術と言えるほどにはなっているが、それでも私自身は神ではないからな、まがい物と言うのが正しいかもしれない」

 

「なるほど、そういうものなのか…」

 

ひとまず自分のサーヴァントがとんでもないことをしでかしていないようで安心する雁夜。もしこれでリンカーが強力すぎる技を使って他マスターに知られてしまえば、一体どうなることかもわからない。それがもし魔法ともなれば監視役やら魔術協会やらが飛びついてくる可能性だってない訳ではないだろう。

 

「それで、なんだが…。その奇跡という術、俺にも使えたりしないか?」

 

「無理だな」

 

恐ろしいほど早い返答に、少し落胆してしまう雁夜。これも己の魔術師としての技術が低いせいなのだろうかとさらに落ち込んでしまう。それに気づいたリンカーが焦りながら訳を話す。

 

「ああ、別に魔術の才能は関係無い。ただ、この術を使うのに必要なのは神を敬い、その物語に敬意を払えるもの、つまり強い『信仰』がなければいけないんだ。かつての神の功績も、ましてやその物語すら詳しく知らない雁夜には使える可能性は低いだろうなと思っただけで…」

 

わりと早口に庇ってくれるリンカーに苦笑しながら、わかったからと言葉を止めさせる。

 

「別にいいさ。少しは期待していたが、どうしても使いたいわけでもないし、俺らにはソウルの魔術があるからな。こっちを極めればいい話だろう?」

 

「…そうだな。確かに最も強力な魔術、『奔流』は奇跡に勝るとも劣らないほどには難しく、強い」

 

「なら、当面の目標は『奔流』を使えるようになる、ということにしようか」

 

それは頼もしい、と笑うリンカー。その微笑みには、先程の苛烈な戦闘の気配は微塵も残っていない。それも、あれだけの大技である奇跡を使っておいて、へばる様子すらないのだ。

 

そこまで考えて、一つ気づく。

 

「なあ、リンカー。お前のその魔力、どこから来てるんだ?」

 

現在雁夜はリンカーへ魔力を供給したことは一度もない。それどころか、リンカーに直接使った魔力といえば召喚したときくらいのもので、現界し続けるための最低限の魔力すらリンカーは必要としない。

 

思えばこれまで疑問に思わなかったのが不思議なくらいだ。サーヴァントはエーテル体の身体をもつ、いわば魔力の塊とも言えるもの。アーチャーのスキル「単独行動」でさえ、あれだけの大技を放ったならば消耗しきっていてもおかしくない。

 

「…ああ、話していなかったか。私の魔力は、私のソウルを燃やして生成している。故に、雁夜からの供給を必要としていない」

 

つまり、どういうことであろうか。マスターが払うべき最低限の魔力でさえも、サーヴァントたるリンカーが自分のソウルを削って生み出している、ということであり、それは勿論サーヴァント自身負担が大きいだろう。それなのに供給を受けない理由は。

 

「やはり、俺が三流もいいところの魔術師だからか?もしそうなら、遠慮せずに魔力を貰ってほしい。最近はお前のお陰で魔術もある程度は使えるようになるなってきたし…」

 

「いいや、そうではない。…私は不死だ。不死とは、殺した者のソウルを奪い取り、己の糧にするモノ達。…つまり、不死とは、私とは、ある意味魂喰らいとも言えるような存在だ。故にこそ、尋常な魔術師から魔力の供給でもすれば、私が吸いすぎてしまい、返ってマスターが危険になる」

 

それに、と続けて話していく。その顔は明るく、いま喋ってしまった言葉をかき消さんと言わんばかりに。

 

「私の蓄えているソウルは幸いなことにとても多い。『王』たちのソウルだけでも現界するだけならあと一年は余裕で持つだろう。だから、雁夜。あまり心配しないでいいぞ、なにせ私は強いのだからな」

 

冗談めかしたその言葉に、やけに悲しさを覚えたのは何故だろうか。

 

 

 

 

○○○○

 

 

 

 

「いやはや全く、気持ちの良い男であったわ!…やはり余の軍勢に加わってくれないだろうか」

 

呵々と笑うライダーに対して、ウェイバーは思案顔で塞ぎ込んでいる。場所はウェイバーの拠点としている老夫婦の家だ。

 

「なにを俯いておるか、小僧!ほら、もっとしゃきっとしろしゃきっと!」

 

「ああもううるさいなあ!今考えてんだよ!」

 

ウェイバーが悩んでいるもの、それはやはり先程の闘いにおいて衝撃すぎる登場をしたサーヴァント・バーサーカー、『薪の王』についてだ。あのときは焦っていたが、今思えばあのサーヴァントには不自然なことしかない。

 

「なぜ、あれほどの力を持つのに誰も知らない…?知名度が無いのにあれほどの力を振るえるのもおかしい…」

 

薪の王、という異名はあるにはある。だがその神話と『薪の王』の情報はあまりにも合わなさすぎる。

 

「世界を救った、終わらせた、この世を作った。…断片的に得られたものでもこれだけの情報があるのに、やはりそんな英雄の記録なんてどこにも無いじゃ無いか!…それだけのことをしておいてどうすれば記録がなくなるんだ…?」

 

「簡単じゃないか、知ってる人がいないのだろう」

 

「だから、なんでいないのかってことに悩んでんだよ、馬鹿!」

 

「まあ落ち着け、アーチャーの話を鵜呑みにするのなら、あの『薪の王』はこの世界を作ったらしいじゃないか」

 

「…それがどうしたっていうんだ」

 

「なら、あやつはこの世界にはもともといなかったのではないか?それに他にも言っていただろう、終わらせた、と。それこそ証拠と言えるのではないか?」

 

確かに、と思ってしまうウェイバー。まず前提が違うのだ。知る人がいないのではなく、存在できないのだと考えるのが一番自然で、説明がつく。

 

「というより、鵜呑みにするのはとてもではないが難しいだろう」

 

「…なんでだよ、せっかく納得しかけてたのに」

 

「なに、簡単だ。アーチャーは言っていた、世界を救った、そして終わらせ作ったのだと。…これはまるで、神にも至る所業ではないか」

 

「そうか!聖杯は神を現界させることはできない…!」

 

「…ならば、あやつはなんなんだろうな。いやはや、面白くなってきたぞ!」

 

 

 

 

○○○○

 

 

 

 

「して、時臣。なにか、弁解の言葉はあるか?」

 

マスターの令呪により強制帰還となったアーチャーは、今にも己のマスターを殺しかねないほどの静かな気迫をもって時臣に言葉を投げかける。その威圧感に圧され、床に跪く時臣の額には汗が滲んでいる。

 

「決して王を侮辱したわけではありません。王の宝具は、強力無比なもの。ですが、あまり他のマスターに晒してしまうと対策をされてしまう可能性もあり…」

 

自分からでも苦しい言い訳だとは思う。だが、あそこで宝具を晒しきって、もし万が一にも負けてしまうなどということがあればこれから先は無意味になってしまう。

 

本当に殺されてもおかしくないほどにその気配が高まり、だがその次の瞬間には収まっていた。

 

「まあ、よい。ここで貴様を殺せば、『薪の王』と再び見えることすら叶わなくなる。故に、此度は見逃してやろう。だが、次はないと思えよ、人間」

 

 

時臣は臣下の礼を弁えており、そして『薪の王』のいるこの場所へ召喚したという功績がある。だからこその温情、だが本当に次は無いのだろう。あのサーヴァントとの付き合い方を改めて考えるべきか、と時臣は深くソファに腰を埋めた。

 

 

 

 

 




本編も間の話ですし、なんか短いのであとがきで保管します。この後はただの私の雑談なので興味ない方はブラウザバックお願いします。

さて、前回10日以内に更新したいとかほざきましたが、まあ無理そうです。ぽちぽち思いついたときとか、興ののったときに書いていくスタイルにします。まあこの前みたいに二ヶ月あけるとかは絶対しないようにします。多分。

前回を評価してくれた方、感想をくれた方、本当にありがとうございます!一瞬日刊ランキング3位になっていたりととても驚きました。今後ともどうか宜しくお願いします。そして感想欄に考察とか送ってくれる兄貴たちいっぱいちゅき♡そもそも「面白い」といったシンプルな感想でも貰えただけでニヤけが止まらないのに、考察なんて送ってくれた日にはマジで一日中笑顔でした。私自身考えている裏設定とかはありますが、それとおんなじだったり、ちがう解釈をしてくれたりととても楽しいです。その調子でいっぱい下さい(乞食)

マジで雑談です。ポケモン買いましたか?私は盾を買いました。チャンピオンを倒したはいいものの、まだ最推したるマッスグマ(ノーマル)に出会えていません。ので、私のポケモンはまだ始まっていないと言っても過言ではないでしょう。早く厳選したいなあ。ちなみに私はケモノ系ポケモンが大好きです。

そういえば、資料集め&ロールプレイ目的に「Linker」というキャラでダクソ3を改めて始めました。みかけたら多分私ですのでどうぞ宜しくお願いします。というかやっぱり楽しいですね、ダクソ!高壁だけにしようとおもっていたのに古老まで行っちゃうほどに熱中してました。

最近すげー寒いです。お体に気をつけつつ私に感想を下さい。

(追記)SDKを鬼滅にぶち込むという二次創作を思いつきました。誰か書いて(他力本願)

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