陽動を行い、自身の存在を隠し万全の状態で臨んだ島への奇襲は成功するはずだった。
「総士……」
だが、目の前の存在によって失敗に終わる。
恐らく内部を荒らすことは出来ても、目標であった真壁史彦、ルヴィを消すまでには至らなかっただろう。
……たった、数日。何があった?
再会した時にエレメントとしての兆候は感じられたが、ここまで成長するとは思ってもいなかった。
僕が想像した遥か先に総士は到達している。
はっきり言って搦め手を使わない限り、機体性能の差から勝てる気がしない。
『セレノア援護してくれ』
『?どうした急に』
『想像以上に総士が強くなった。心と身体を切り離さないほどに』
『!?……いいのか?それで』
『そうでもしないと総士は救えない』
『……わかった。やってみよう』
多少強引にでも心と身体を引き離せば、総士を連れていくことは出来る。連れて帰れば後はどうにでもなる。
『く、くそぉ……』
ニヒトの動きが鈍くなった。今なら。
「眠れ、お前の居場所はここじゃない」
力の扱いなら僕の方が上だ。
もう少し、後少しで総士を取り戻せる。
「うわっ!?」
総士に集中していたら、不意に腕を切断される。誰だ一体。僕を切った相手から有線通信が飛んでくる。、
「マリスか。相変わらず何かに夢中になると周りが見えなくなるんだな」
久し振り聴いたなこの声。
識別コード、マークエルフre……スサノオか。
「あれ、零央さん?まだファフナーに乗っているんですか?死にますよ?」
「お前らが居なくなったせいだろうが。これだけのことをして覚悟は出来てるんだろうな」
「勿論ですよ。島を出る前にね……」
戦いだけしか取り柄がないヤツがでしゃばって来やがって。
今さら格下で死にかけの相手に負ける気なんてしない。
ルガーランスで蹴散らしてやろうとしたとき。
「ぐっ、しまった」
後ろから来たトルーパーに攻撃される。いつの間に。
「隙が多いんだよ。あばよマリス。馬鹿弟子が世話になったな」
そう言ってスサノオはSDPでニヒトを連れこの場からいなくなる。
トルーパーが鬱陶しい。
「邪魔なんだよ」
何もかもが上手くいかない。
ふと、一人の人物の顔が僕の頭を過った。
「もしかして、信のせいなのか……」
大したことない存在だと思っていたのに。
島にいる時に消しておけばよかったと後悔した。
***
「力を見せろ真壁一騎。俺が力を写し出しお前自身を破壊してやる!」
「……………」
総士は上手くやれているだろうか?不安だ。
今の総士にとって今回が初陣となる。変な緊張をして御門や水鏡たちに迷惑は掛けていないだろうか?
本当は一緒に付いて見守りたかった。だけど、俺はロードックでスペクターを足止めしなければならならない役割がある。スペクターの搭乗者であるレガートは総士を過程は別として今まで育ててくれた恩がある。俺個人としてはあまり戦いたくない。
『アキレス、ポイント更新。機体の力を解放してください』
「……了解」
鏑木から許可が降りた。スペクターをあしらって戦線の中心地へと移動を開始する。
『どこへ行く、逃げるのか!』
逃げるつもりなんてないさ。艦隊からの砲撃を避け、上空へと飛ぶ。
「……翔子、暉お前たちの器使うぞ」
ついでに器の下準備をしてくれた、ここには居ない兄弟に感謝しつつ二つのコアとの共鳴を始める。
「ぐぅ!」
痛い、苦しい、辛い。失くし欠けている感情が思い起こされる。
ザルヴァートル化は二度目だが、ザインの比ではない。ザインは自己の存在の確立、相手を受け入れることによって誕生した。
しかし、今回は問答無用で『全て』を呑み混むことによって誕生させる。
どんな相手だろうと戦えるための器を得るため、その行為は必要だった。
現に近くにいた敵、海水、周辺の大気は全て贄としてアキレスの中に同化されていっている。
これまで沢山の存在を無に還した。
自分の役割を終え、来る日には甘んじてそこに行くことは受け入れてるつもりだ。
……だから、総士。
「うわぁぁぁぁーー!!」
それまでの間、お前を守るための力を俺に与えてくれ。
マークアレス。
マークツェーン改め、アキレスのザルヴァートル化によって誕生した一騎の新たな機体。
機体色はザインの銀色擬きは違い、初期のマークエルフに近い色になっている。確かファフナーの色は本人の性格を表しているものなので、祝福でかなり毒されている可能性がある。
本編とは違い、マークゼクスのコアも内蔵されている。ゼクスのSDPは『譲渡』命を対価に『増加』以上の強化が可能。