後、誤字報告してくれた方この場を借りて感謝いたします。
宛もなく空を駆ける。
飛び出したものの、特に何かしたいとか考えてはいなかった。
命令違反したのに誰も僕を咎めなくて、居場所がないと存在を否定されたと思えてしまった。誰かに心配してもらいたい、構ってもらいたい感情は少なからずあった。
だけど、そんなことで安全地帯であるあの島から出ていくのは愚策だ。
……一番の理由はただ怖かったから。臆病になって島から逃げ出した。
島にいる彼が……真壁信がエスペラント、エレメントの終着点を僕らに提示したことによって。
僕自身も今まで究極の力を手に入れてやると息巻いていたが、いざ現実で本物を目の当たりにすると本物は僕の想像を遥かに凌駕していた。
それを理解した瞬間、僕の抱いていた究極の力がちっぽけに思えた。言葉ではとてもじゃないが言い表せない。僕の考えが陳腐で情けなく悔しい。だが。
抱いていた感情を消し去る程、彼が見せた究極の力は圧倒的だった。
見せつけられたと同時に僕は信が魅せたその力に恐怖を覚えた。
……ヒトがあそこまで到達する必要があるのか?
ヒトは何処まで進化しなければならないのか?
今回の一件で信は少々特殊な存在だけどエスペラント、エレメントたちでもそこに至れる可能性があると証明した。
つまりエレメントである僕にもその権利があることになる。
生憎、僕はそこまでの力を求めてはいない。
マリスのような脅威から身近な存在を守れるくらいの力があればそれでいい。その程度の軽い気持ちしかない。
だから、至れない方の可能性が高いと思えるけど、信が近くにいることによってどんな影響を僕が受けるのか想像がつかない。
そして、いつか僕もそこに足を踏み入れてしまうような考えを抱いてしまうと想像したら居ても立っても居られず逃げ出してしまった。
***
皆城総士が居なくなって半日が経過した。
息子のおかげでクルー総出で戦闘の後処理に追われていたことと彼自身が存在を隠しながら行動したために気づくのが遅れてしまった。
唯一、ルヴィ・カーマは気づいていたものの。
『彼の成長に必要なことです』
そう言って彼の行動を黙認していた。
家出した総士くんに対し戦闘部隊の者たちが怒りを覚えていたのは悩みの種だ。彼らの気持ちも解らない訳ではない。年月を掛けてようやくベノンから救出したのにまたいなくなった。
これまでの苦労や犠牲が無駄になってしまったと思えなくもない。
だが、感情を抱いたところで総士くんが帰ってくる訳ではない。
彼だけが竜宮島へ帰るための唯一の道標であり、眠るアルタイルを起こしマレスペロに対抗するための鍵だ。
理由はどうあれ連れ戻さなければ我々に未来はない。
幸いにもマレスペロを本体じゃないとはいえ倒せたお陰で一時的に活動可能な領域が増えた。
それにより新国連や人類軍に捜索願いを頼めることが出来たのは僥倖だ。
後はマレスペロが復活するまでの間に探し出せればいいのだが。
「史彦さん。そろそろ寝た方が」
「……ああ、そうだな。そうするよ千鶴さん」
時刻は日を跨いで1時を過ぎていた。
今日も朝から色々やらなければない。そろそろ寝るとしよう。
「総士くんは無事なんでしょうか」
「そこは"彼"だから上手くやっているでしょう。問題は……」
「いなくなった理由、ですか?」
「……はい。間違いなく信が関わっているかと」
事前にある程度の情報を聴いていたから受け入れられた。知らなければ甚大な被害が発生したのは容易に想像出来た。
「もしかしたら総士くんの行動が正しいのかも知れません。我々は息子たちに……子供たちに多くのことを求め過ぎました」
「史彦さん……」
最初は島をフェストゥムから守るために創り戦地へ送り出し、今ではヒトではない何かになりながら全人類とフェストゥムとの戦いを終結へ導こうと奮闘している。
家族として支えることも守ることも出来ず、無力。親と名ばかりで自分がとても情けない。
「だからこそ、彼らが出した"答え"を我々は受け入れなければ」
私にはもう彼らの行く末を見守ることしか出来ない。
それが親として出来る最後のことだから。