にわかファンがファフナーの世界に転生したら   作:桜大河

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だいぶ遅れてすみません。


21話

みんなの言う通りにすれば、美羽が犠牲になれば、そうすればパパやママ、エメリーに会えるとずっと思っていた。

本当はそんな考えは間違っていて、わかってはいたのに認めたくなかった。

けれど、総士が総士らしく、自分をさらけ出す姿をみて思い出した。美羽は日野美羽だって。

美羽がどうしたいのか?そういうのが大切なことでパパやママたちが願っていたことだと思うことを。

それに一つになったら美羽が美羽じゃなくなるし、相手も相手じゃなくなる。そんなことはお互いに本来望んでいないこと。少なくとも美羽はいやだ。美羽は美羽でいたい。

一つになることより、手を繋ぎお互いをわかりあえば同じ道を歩くことも出来るはずだ。そっちの方がよっぽど簡単だ。

 

だから、美羽とおはなししよ?

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

美羽ちゃんと総士の尽力により、アルタイルを人類側に引き込むことが出来た。

 

「後は僕たちで何とかする。そこで休んでいろ、信」

 

「行ってくるね、お兄ちゃん」

 

重くのし掛かった肩の荷から漸く解放されたような気がした。これで俺の役割は済んだ、後は彼らが何とかしてくれるだろう。そう思いたかった。

 

「……追わなくていいのか?マレスペロ」

 

「後からでいいさ、そんなこと」

 

総士たちを見送って束の間、殺気を感じたので辺りを見渡すと何処からともなくマレスペロが操るデスティニーが姿を現した。その姿はかつての面影はなく、自身のコアを内包することによって、憤怒の象徴かと思える深紅の機体色も相まって禍々しさが際立っていた。

ここまで、何もしてこなかったから諦めたと考えていた。

彼も時代の被害者だから、圧倒的な差を見せ付けることによって心を折り、世界の行く末を傍観させるつもりでいた。

心を折る程度で済ませたのが甘かった。まさか彼処から立ち直るとは。

 

「アルタイルはザインに宿っているぞ」

 

「君を同化してから奪いとるさ。その方が効率がいいだろう?」

 

確かにマレスペロの言う通り、今のマレスペロではザインとニヒトのツインドックには勝てない。各個撃破。勝利するには多少は劣る俺を同化することは必至だ。それに今の状況はマレスペロにとって逆転出来る環境が整い過ぎている。

まず、ザインとニヒトが近くにいない。そして、俺はアルタイルと接触するためにエネルギーを使い果たし満身創痍の状態。幾らエネルギー生成量が他の機体に比べて一線を喫していても回復するための時間が何よりも足りていない。

 

「……どうして、俺ばかりを狙うんだ?」

 

「え?それを君が言っちゃう訳?僕を何度も滅ぼそうと動いていたのに」

 

「そんなこともあったけどさ、もう過ぎたことだろ。それにお前が欲しかったものがもうじき手に入るぞ」

 

「何をだい?」

 

「アルタイル」

 

別に奪おうとしなくても美羽ちゃんたちはアルタイルを地球上にばら蒔く。そうすることによって人類とフェストゥムは進化し共存する未来を歩み始めることになるのだ。

マレスペロもアルタイルを手に入れられて幸せ。俺も役割を終えれて幸せ、みんな幸せ。いいことじゃないか。

だけど、反応からしてマレスペロはそうでないらしい。

 

「それで?」

 

「え?」

 

「確かにアルタイルを貰えるのは嬉しいよ。けどね、僕の一番は別にあるんだ」

 

マレスペロは何もしなくてもいい。その筈なのに俺の前にいる。

嫌な予感はするが聞くしかない。

 

「一番は何だ?」

 

「……君を滅ぼすことさ」

 

「ウッソだろ……」

 

デスティニーから触手のような物が飛んでくるので慌てて空へと飛ぶ。しかし、機体性能が落ちているから徐々に距離が縮まってる。

だが、機体に接触する直前で触手は消し飛んだ。

 

「信!」

「……一騎か助かった」

 

「アレは一体何なんだ?」

 

「マレスペロさ。アイツを倒せばこの戦いは終わる」

 

「そう、みたいだな」

 

「勝てそうか?」

 

「お前が無理なら俺は不可能さ」

 

「だよな」

 

アレスはレゾンと同格でマレスペロのコアを取り込み進化し続けるデスティニーはその上を行く。超えられない壁は存在する。幾ら戦闘技術が優れていても差が有ればどうしようもない。

 

「……なら、時間を稼ぐしかないな。力を貸してくれるか?」

 

「当たり前だ。二人で帰るぞ俺たちの島へ」

 

「……そうだな」

 

少しでも機体を軽くする為にジェニオンを海へ棄てる。これで準備は整った。

 

「牽制する。一騎、吶喊してくれ」

 

「了解」

 

倒せなくてもいい。

 

「君たちじゃ僕には勝てないよ」

 

「確かに勝てないかもな、でも」

 

『抗うことはできる』

 

アレスに向かう触手を遠くからガンドレイクで打ち落とす。やっぱりすげえよ一騎は。傷つきながらも注意を牽きつつマレスペロの元へにたどり着こうとしている。後ろから観ていてそれがよく分かる。俺に託そうしてくれている。だから、俺はその期待に応えなければならない。

 

「……弱い」

 

「うぐ。うわぁぁぁぁ!?」

 

触手に捕まりその部分からアレスを同化しようとしている。流石に不味い。俺もデスティニーの元へ向かう。

 

「戻れ一騎!」

 

距離はそう遠くない、存在は感じられる。SDPで行ける筈だ。

 

「……そんなことをしていいのかい?」

 

「何!?」

 

結果的にはアレスをこちらに引き寄せられたが、その代償として俺の左腕がマレスペロによって同化され消失した。滅茶苦茶痛い。けど、向かうのは辞めない。

 

「諦めたらどうだい?」

 

悟られるな。もう少し。

 

「見逃す気は更々ないけど」

 

気づかれるな。あとすこし。

 

「拍子抜けだよ。君って案外弱かったんだね」

 

あと。

 

「そろそろ終わりにーー」

 

……射程圏内に入った。

 

「来おぉぉぉぉぉぉい!」

 

海水や大気を同化して万全の状態のとなったジェニオンが俺の声に呼応して光の速さでやってくる。一瞬、視界がボヤけた瞬間、俺はーー光になった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

力の差は歴然としていた。

勝った筈だ。勝てた筈だ。

なのにどうして自分は空へ打ち上げられているだろうか?

重力によって身体中が軋んで痛い。宇宙にたどり着くまでこの身は持つだろうか。

存在の格が上がったせいで同化すら出来ない。

何もしなければこのまま、またーー負ける。

それだけは避けねばならない。目の前の存在を滅ぼすことがマレスペロになって初めて抱いた願いだから。負けたくない。せめて一矢報いたい。

ボロボロの身体を動かし手を鋭利な形状へ変え、コックピット目掛けて一刺し。抵抗されることなく相手を貫いた。

勝った!

これで相手は死に機体の動きは止まるだろう。

そう考えていたが、機体は止まらず飛翔し続ける。

 

『……満足したか?』

 

「何で君がここにいるんだ?」

 

彼の言葉を理解したくはなかったが聴く以外になかった。

 

『彼処には俺はもういないからな』

 

その言葉を聴いてようやく理解する。彼はもうここには居ない。器を簡単に捨てる程の覚悟とは。始めから勝てる相手ではなかったのか。

 

『憎しみは未来には不要だ』

 

「……そうだね」

 

『お前はやり直せる』

 

「新しく生まれ変わってね」

 

『今度はみんなと仲良くしろよ』

 

「君たち次第さ」

 

身体中が同化され、僕の意識は無に還るのもそう時間は掛からないだろう。誰もが通る道だ。

 

「君は、今幸せかい……?」

 

『そんな風に見えるか?……ワダツミコト』

 

『そっか……』

 

もう、彼の表情を視ることはできないが、声で分かることもある。

そうなのか、僕よりも君の方が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

願わくは彼の未来に幸あらんことを。

 

 




変な感じですが次で一旦最終回となります。
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