天姫は胃がムカムカしてしょうがなかった。
なぜなら、人の部屋で寛ぎ菓子を要求する、理不尽な男が来たからだ。
突然アイツがやってきていった一言。
「腹減った。とりあえずオムレツ30人前頼む」
場違いなセリフを吐く、ラビットに天姫は全力で突っ込んだ。
「ここはファミレスじゃねぇぇえええええ!」
「なんだ、わざわざ会いにきてやったのに」
「誰もお前に会いに来てくれなんて頼んだ覚えは一切ない!このブラックホール男が!」
天姫は全力で否定した。
それはお前が月で餅つきが可能になろうが、もしかしたらどっかで会社立てて恐ろしいほどの利益を出す若社長になろうとも、それだけはありえないと思った。
もはや殺意しか沸かせない対象となったラビット。
コイツは考え込むように唸り、ぽつりと一言言う。
「……電波で感じとったはずなんだが…」
「お前も電波系かっ!?」
まさか、アンタもその系統だったとは…。
骸と凪だけであきたらず、ラビットにまで私の夢の世界にまで突入させられた時点は私は一生眠ることができないだろう。
ラビットは天姫がそんな悪夢を感じていることにも気がつかず、本題に入った。
「お前、プレゼントもらったの一切つけたことないだろ。それ今日今すぐつけろ」
「はぁ?」
「いいからつけろ」
そういって、机の引き出しにしまっていた皆からのプレゼントをマジックのように宙に浮かび上がらせてる。
こいつ、いきなり何を言いだすんだ?
しかもこの中にはただ単に装着するだけではすまない代物もある。
ザンザスから送られた片方だけのピアス。
「私、ピアスなんか開けたことないよ。しかも片方しかないし」
「だったら俺が開けてやる」
「えっ!?痛いから嫌だ」
ってか、近づくんじゃねぇぇええええ!
天姫は滅茶苦茶に抵抗した。
ラビットの馬鹿力に押さえつけられ、抵抗は無駄に終わった。
「いいから、やらせろ」
ラビットの手が私の柔らかな耳たぶを掴む。
その時電撃が私の体を駆け巡る。
耳、弱いんだって。私!!
「やだって、……つぅ、あっ!……だ、め…」
自分でも変な声出てるってわかってるけど、ゾクゾクしすぎて自分でもおかしくなりそうな天姫。
「おとなしくしろ、すぐすむから…」
ガチャ!!
「…何やってんですか!」
すごごごおぉおおおおおおおとどす黒い炎でも出しそうな勢いの強面なツナが乱入してきた。
「……あ、れ?ツナ。なんか黒い…」
「よう、ツナ缶」
「天姫に何してんですかっ!」
「何ってピアスの穴あけ」
ピアッサーを片手に持ちながらあっさりとラビットはツナに言った。
「うぅ、ジンジンする……」
っていうか、ツナよ。アンタ部屋に突入してくるの早いな。
もしかして聞いてたの。
「………」(紛らわしいんだよっ)
「ぷぷっ。お前、むっつりな想像してたな」
「うっさいです!!」
「………クソッ……穴開けられた」
うう、人生で初めてピアス。しかも自分で好んで開けたんじゃなくて強制的に。
どうしよう、狗楽が怒る。
ねーちゃん、一応親からもらった体に穴開けるなんて何考えてんだよ!と。
「ラビットぉぉぉおおおおおおおお!」
「仕方ないもん。だって上司の指示だし」
「はぁぁぁあああ!?」
「長くなりそうだし旅支度させろだとよ」
「またどっかに飛ばされるの?私」
「天姫、どっかに行くんですかっ!?」
「あと、数十分だな。皆にお別れしてこいよ」
「ふざけんなっ!!」
「ふざけてないし、超真面目だ」
「…そんなの、俺、許しませんよ……」
「お、来るか。ツナ缶。暇してたし相手してやるよ」
ラビットはいつになく好戦的に。
ツナもヤバいくらい雰囲気がドス黒くなっていく。
「待て、二人とも」
天姫が待ったをかける。
「あ?なんだよ」
「天姫、邪魔しないで」
誰が邪魔しますか。
「やるんなら、私の部屋から出て行ってからにして」
「「あ」」
言われてやっと今の状況に気がつくとは。
やっぱり声かけてよかったと思った天姫だった。
※
二人を部屋から追い出したまでは良かった。
しかし、窓からいつもの問題児による一方的な喧嘩が始まった。
ランボとリボーン。
リボーンもいちいち気にしないで無視しておけばすむものを…
「おまえら、やめろよ!?」
「ツナ、ランボお願い!」
「わかった!」
それをとめるためにランボはツナが、リボーンは私が抱えたのだがリボーンは容赦なくランボに制裁を加える。
ランボは大きなたんこぶこさえながら、お決まりの10年バズーカをとりだし引き金を引く。
しかし、その弾がひゅるるるるるぅぅぅぅう―――――!
なんとこちらに向かってくるではないか。
避けれるかなって思ったら、あらら?身体が動かない。しかも腕に抱えたリボーンも
「やべぇな…」
という始末。
「リボーンもなの?」
ボシューン!
吹き飛ばされるような衝撃を受けまぶたをぎゅっと閉じた。私は胸に抱くリボーンをしっかりと離さなかった。
「ここは……」
なにやらジャングル系の場所。そうだ、リボーンは…?はたっと気がついて彼に気を配れば辛そうにしている。いつもの余裕さが感じられない。
「リボーン?大丈夫じゃなさそう…」
「…ここは、俺にはキツイぜ」
彼にはしゃべるのも苦痛みたいだ。レオンも心配そうにしている。
私はリボーンを自分の胸に抱きこみレオンを頭に乗せてあたりを見回した。
どこをみても、ジャングルジャングルばかり。森に囲まれたところで近代的な建物なんか一切見当たらない。
どこか、休む場所でもあれば……息苦しそうなリボーン。なんとかしなければ。
そう思った時、ズゥン!ズゥン!
巨大な足音が響きだした。私はすぐに木の陰に隠れ、様子を窺う。そして、まさかの光景に驚いた。私のペットのゴーラちゃんよりも倍近くはある巨体がいたのだ。すべて表面が白地で覆われ異様な気配を漂わせていた。何より、可愛くない。
「……ここってホントに、10年後なわけ?」
そいつは、のしっのしっとゆっくり進み、こちらには気がつかずに行った。
「はぁ~。……どうしようかな…」
闇雲に動いても場所を確かめようがない。
「リボーン……具合は…?」
「……マシなほうだ。お前にくっついてるとな」
「さっきから息苦しくないかなってちょっと心配だったんだけど、なんともない?」
だって、私の胸にぎゅうって当ててるからさ。
「いや、見た目どおりの感触しかねぇな」
なんですか、その感想は。もしかして、それって私の胸の感触の感想を述べているのかしら。だとしたらついリボーンを投げたくなった。
「………なんか、いい手はないものか…」
そうだ、ゴーラちゃん呼んだら来てくれるかな?
試しに小声で言ってみた。
「ゴーラちゃ~ん、助けて~~~」
シーンとする、森の中。来るわけねぇじゃんみたいな?
「………来るわけねぇだろ…」
リボーンが突っ込んできた。冷たい視線もくれた。
そうですよ。来るわけないじゃん……私ってなんか変な女だよね。
ギュォォォオオオオオオ――――!
ジャングルに木々吹っ飛ばして近づいてくる謎の物体。
ロケットみたいに凄まじい火力で私たち目掛けて襲ってくる。
「やばっ!?見つかった……」
あの、さっきの奴ならば動けないリボーンを抱えた私には不利だ。
なんとか、彼の盾になればと、わが身を挺して守る。
ついにその物体の気配を背中に感じ攻撃に備えた。
だが、一向に後ろの存在の気配がない。不審に思い、そろりと背後を振り返った。
すると、
グォングォングォン……
目を疑った。
だって、よく見たらその形。いつも側でみている形だ。慣れ親しんだ存在。
グォングォングォン……
「ゴー、ラちゃん?」
問いかけのつもりで言ってみたが。
グォングォングォン
「マジにきやがった…」
私の存在を喜んでいるらしく、彼の手によって高い高いされた。
ここまで、感情をだしている彼は初めてだ。
まさかまさかのゴーラちゃん登場。でも、あまりに高すぎて酔った。吐く寸前でやっととめてくれた。
「ゴーラちゃん、リボーンを休ませてあげられる場所知らない?」
グォングォングォン
「えっ?そのつもりで迎えに来たって?しかもアジトに連れてく?アジトってなに?」
ゴーラちゃんに抱えあげられた私たちは、彼の足でジャングルを進む。
さっきの凄い速さで来たのは私に反応してだって。
さっき、助けて!っていったもんね。
今はゆっくりと歩きながら敵に見つからずにいくようだ。
少しばかり歩いた所でゴーラちゃんは止まる。
「ここって、行き止まり?」
そんな休まるような建物とかないっスよ。
同じジャングルだし。
グォングォングォン
「指輪を前に出して?」
言われたとおりに指輪を何も変わらない場所へ突き出す。
すると、ジャングルだった場所で霧が発生し、たちまち景色が変わる。
おお!現れたのは霧に中心にあやふやに存在する地下への階段。
ゴーラちゃんはそのまま先へ進んだ。
そして共にエレベーターの中へ乗り込む。
中は薄暗くでも乗っただけでは作動しない仕掛けのようだ。
また、ゴーラちゃんが壁の一部に手を当てろといった。無論言うとおりにするとエレベーターが反応し、動き出す。どうやら、許可された人間以外は出入りできないセキュリティになっているらしい。でもなんで私に反応するのだ。
まぁ、いいやと私は無理やり納得することに。とにかく具合が悪い彼を早く休ませなくてはならないのだ。
「リボーン、もう少しでつくよ?レオンも大丈夫だからね」
「ああ」
コクンとレオンも頷いた。エレベーターが止まり扉が開く。
私はその内部に唖然としてしまった。そう、一言で現すなら
「秘密基地?」
先ほどのジャングルから一転してまるでどこかのマフィアが所有する隠れ家的、というか秘密基地みたいなところに来てしまったのだ。
そして本当にこの世界は10年後と戸惑いたくもなる。必死だったからわからないけど5分は経ったはず。だからもし、この世界が10年後なら私達の状況はヤバイことになる。戻りようがないのだ。過去の世界に。だがいくら考えた所で元の世界に戻れる手筈もない。ここはゴーラちゃんに付いて行くしかないと秘密基地とやらに進むことにした。するとほどなくして基地内にてある人物と再会することになった。なんと、10年後の武だった。私の姿を見るなり、まるで化け物でも見るような目つきで呆然と呟いた。
「…嘘……だろ。天姫、だよな?」
「私じゃなかったら誰になるの?」
まさか私の亡霊でもいるわけじゃないよねとリボーンに相談しようとしたら不意打ちを襲われた。
「天姫っ!」
一瞬にして抱き寄せられた。成人男性の腕力に締め上げられたらいくら私でも不意打ち狙わない限り逃げられない。
「ぐえっ!?」
あまりに強烈な歓迎に蛙のように呻いてしまった。武はあらん限りの力で私を絞め殺そうとしているのでリボーンが具合悪い中助けてくれた。
「俺の前で天姫に触れるな」
ドゲシッ!
「おわっ!」「のはっ?」
武の背中に体当たりをしてそのはずみで私は彼の腕から逃げられた。
リボーンは空中で見事な一回転をし華麗に着地をする。ふむ、100満点ですね!
「ひでぇな。小僧」
「俺に殺されなかっただけありがたいと思いやがれ」
「……リボーン、なんか機嫌悪いの」
「天姫は気にすんな。それより説明してもらおうか。この世界のことを」
リボーンからの問いかけに、武は「相変わらずだ」と苦笑しながら説明した。
「………そうだな、ここは10年後の世界だ。並盛の地下に俺たちの秘密のアジトがある」
「……外にデカいゴーラちゃんの模造品がいたんだけどあれって別の機体だよね?どういうこと。いつの間に大量生産されちゃってるの」
「……あれはミルフィオーレFの代物だ。それに天姫。お前はこの世界じゃ……」
そう言いにくそうに言葉を詰まらせる武は私に気を遣ってか語尾を濁す。
けど私は気にするなという意味を込めて軽く首を振った。
「かまわないよ。自分の状況がどうなっているのかは検討は粗方ついてる。まったくこの世界からいなくなったか、もしくは死ぬ…ことはないか。んじゃなんかの理由で眠ってるとか?」
「…やっぱり天姫だな。俺が言わなくても理解してたなんて」
「天姫、お前未来を先読みしてたのか」
「違うよ、リボーン。私はそんな大層な力なんて持ち合わせていない。けど、10年後のランボに逢った時、彼は私を知らなかった。ならその未来に私の存在はいないということだった」
「でも、一つ違うぜそれは。天姫、お前はこの世界にちゃんと存在している」
「………へぇ、どんな風に?」
武は一瞬躊躇いを見せた。まるで言っていいものかどうか悩んでいるかのように。
天姫は顎で先を促す。武はため息をつき、重い口を開いた。
「…………氷に、守られて眠ってるのさ…」
切なげな瞳の奥に隠されていた何か、私はそれがなんなのかわかることができなかった。
未来の自分がこの世界でどういう状況になってしまったのかを。
それによって起こった悲劇を。まだ私は知らなかったのだった。