武が門外顧問の使者を連れてくるなんて言ったきり帰ってこず、天姫はうずうずしてしょうがなかった。たまらずに、隣でお茶を飲む赤ん坊に聞いた。
「リボーン、外行っていいッスか?」
「駄目だ」
一蹴されました。次は可愛い可愛いお人形さんに聞きました。
「ゴーラちゃん、外行ってきていい?」
グォングォングォン……
ゴーラちゃんはのしのしと歩きだし、無言で扉の前を陣取りました。
さすが巨漢の持ち主。扉を見事に封印なさいました。天姫はおいおいと顔を両手で覆って泣きました。
何してんだよ、私。
お外禁止命令が私に下ったのは、数時間前のこと。難しい顔した武が、最初に言った本人で
「天姫はミルフィオーレに狙われてる身だ」
との理由でアジトでおとなしくしていろと通達された。
なんで!?と反論しかけたが、武の真剣な様子にその言葉も引っ込んでしまった。
未来での私の価値化と言うのは、現代よりも格段に上がっているのだと、実感させられたからだ。
だが、一か所でじっとしていられるほど、私はおとなしくない。
だから、二人を何とか説き伏せようと、さっきから聞きまくっているのだ。
なんとか許可くださいって感じで。だが、なかなかに一筋縄ではいかない連中よ。
フッ、この私を手こずらせるなんていい度胸してるじゃない!?
そうだっ!!私の能力使えばいいじゃない!
だって、時空操れるし、重力もおっけーだし、
外に出ようと思えば、簡単にできる私だ。
なんで思いつかなかったかなぁ~。
天姫はウキウキとさせながら、席を立つ。
だが、カチャと背中に何かが押し当てられ、天姫は瞬間的に固まった。
殺られる!?
「天姫、何考えてるかわかってるからな」
「…なにが?」
「白々しいんだよ、演技が」
いかん、ばれてしまった。
だが、私は諦めん!
「トイレ行こうかなって席たっただけですけどッてなわけでゴーラちゃん、そこ退きなさい」
「ゴーラ、天姫についてけ」
グォングォングォン……
ゴーラちゃんはリボーンの命令を素直に受け入れました。
「ゴーラちゃん、あのねトイレは一人で行ける歳だし女子トイレだし一応ゴーラちゃんは男の子だし遠慮してほしーななんて」
「付いてくだけじゃねぇか、何をそんなに汗出しまくってんだ」
「え!?あ、汗ですか?汗なんて、出てないよぉ?」
「額に出てるぞ」
「ちょっとここ熱いんじゃないかな、あー、そうだそうだ!熱い熱いちょっと体冷やしてくる「俺も行くぞ」来なくていいからマジで来なくていいです!」
「ますます怪しいぞ」
「ぐっ」
「自分で墓穴掘ってやがる」
リボーンにびしっと突っ込まれた。
なんて下らん会話してる最中に、複数の足音。
こちらに近づいてくる。だが、敵意はない。
もしかしたら、武が帰ってきたのかも。
「来たな」
そういってリボーンはいそいそと自分と同じ等身大のリボーン人形をどこからもなくとりだした。
「何してんスか、アンタ」
「歓迎してやるんだよ。俺なりのな」
「…またくだらんことを…」
「天姫は隠れてろ。ゴーラは……」
珍しく彼の言葉が途切れた。デカいから扱いに困ったか。クフフ、面白い。
グォングォングォン……
ゴーラちゃんは、自主的に扉の横に立った。
本人なりに気を遣ったのだろう。すっごい目立つけど、あえて言わない。
「ま、隠れよっと」
やっぱり、私も参加しました。
誰が来るのかは来てからのお楽しみ!長椅子の背の後ろに隠れて、様子をうかがいました。
「ここだぜ」
あ、武の声だ。
「ちゃおッス」
「…リボーン…」
あれ、ツナの声に聞こえんだけど。聞き間違いだろうか。
ってか、この体勢も疲れてきた。
今の私、はいつくばっていますよ。床にはいつくばってるんだよ?ここ重要だから2回言った。
「俺はこっちだ」
バシッ、どしーん!
びっくりどっきりリボーン様が華麗なツッコミ披露しました。
その犠牲者がツナだった。
「いてっ」
私が痛いよ。痛いって私も叫びたいよ。ってか、もういいよね。
結局隠れてる意味ないしね。うん、出よう。もう関係ないわ。
ってな訳で天姫はその場に立ち上がった。
「天姫!?」
やっぱりツナ君でした。しかも隼人によってソファに寝かされてる若い女性。見たところ天姫の知り合いではない。とにかくその人以外はみんな、天姫をガン視している。
いたたまれずに天姫は
「……見ちゃいやん…」
とわざとらしく照れてみせた。すると
「天姫だ」
「そうッスね、天姫です、アレは」
「天姫、何遊んでんだよ。ってかゴーラはどこ行ったんだ?」
ツナ、隼人、武が納得したように頷いた。
うーん、武は大きくなっても武だね。
ちなみにゴーラちゃんはずっとあんたらの後ろに立ってますよ、健気に。
見た目かっこよくなってドキドキしたけど、正直安心したよ。
でも、聞き捨てならん。
隼人がアレって言ったのが。
「お前が喋りだすと時間くうから黙っとけ」
リボーンがばふっと天姫の口に肉まんをくわえさせ、黙らせらた。
天姫はふてくされながら、もぐもぐと口をひたすら動かす。ちなみに5個目だ。
ゴーラが天姫にお茶を差し出した。
天姫はありがとと礼を述べ、程よい温かさのお茶を受け取りぐびっと飲む。
「……あ、茶柱」
グォングォングォンとゴーラちゃんが『ですね~』と同意する。
癒しだねぇ、この時間が。
天姫とゴーラちゃんがほっと一息ついていたのその間に、実は10年バズーカを撃たれてから9年と10か月しかたっていないことや、ショッキングなことに10年後のツナは棺桶に入っていた状態だった事、隼人がぶち切れて武を殴った事、守護者6人をとりあえず集めることにした模様。話の内容からすれば、緊迫したものである。
だが妙にぬけてるというか。その影響を与えているのが天姫である。
もぐもぐと美味しそうに3個目の肉まんをリボーンからもらい嬉しそうに頬張っている。
ツナは脱力感を感じながら、
「なんか緊張感に欠けるね」
と苦笑いする。獄寺もまさにそうだと同意した。
「そんなに美味しい?俺も欲しいな」
「……?何、私の顔眺めて」
「やっと、気がついた……。別にうまそうに食べるなーって」
「そう?」
「はぁ……」
ツナは大げさに溜息を吐いた。
ため息つくと幸せ逃げちゃうよと教えてあげようとしたが、ツナのゆるみにゆるみまくった顔を見たら、それも消えた。
「でも、無事でよかったよ」
まるでその顔は。
「……」
心底安心した緩みきった顔。天姫は惚けてしまった。
なんというか、ツナの笑顔って茶柱見た時と似てるっていうか、ほっとできるっていうか。
何言ってんだ私…。
今までに感じなかった感情が生まれてきていてそれに天姫は戸惑いを感じられずにはいられなかった。
「天姫?どうしたの、固まって」
「……なんでもない、今日は疲れたでしょ?ゴーラちゃんに寝る所案内してもらって。私は先に休ませてもらうから。んじゃ」
「え、!」
天姫はツナから逃げるように返事早々に返し、さっさと部屋から駆け出していった。
何だ、これ…、何なんだろ、わからない……。
自分のことなのに、この感情は何なのか、理解できない。
ほわっとするような、でももっと違う何か
普段よりも鼓動が強く高鳴るのを止められなかった。
【催花雨(さいかう)のようでいて、それは】