闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的109色々とドッキリ

息が切れそうなのをこらえながら、京子は一生懸命に走った。

自分を捜している黒い服の男の人がたびたび見かけるたびに見つかったらどうしようという怖さが襲い掛かってくる。

あきらかにこの並盛はおかしい。

京子は身を潜めて別の場所を目指した。

どうしてアジトを抜け出してきたか、それは自分の兄を探しにきたこともある。

だがその他に知りたいことがあったからだ。

 

天姫が何かを隠し通そうとすること。

無理やり問い詰めることもできた。だがそれをすれば天姫が悲しむことになる。

だから、京子は知りたい心を抑えて抑えて、我慢していた。

 

でもその我慢のたかがふとした拍子に外れた。

外れた途端、京子は行動にうつした。

大胆にもアジトを飛び出すという京子らしからぬ行動に。

 

天姫ちゃんは何も言わなかったけど、言わない訳じゃない。

言えないから、天姫ちゃんは苦しんでる。

天姫ちゃんが行方不明だって、聞かされたとき、どうしようもない不安が走った。

このまま会えなくなるんじゃないかって。

体が震えて仕方がなかった。でも、燐華さんに会った時に言われたの。

天姫ちゃんは絶対生きてる。あの人が死ぬはずはないって。

 

京子に燐華さんは切なそうに頼んできたのだ。

 

『わたくしは御傍にいけることがかないません。あの世界には『干渉が許されていない』のです。ですから、どうか京子様。わたくしの代わりに姫様をお頼みいたします。わたくしが御傍にてお支えできない分、貴女様とハル様に託したいのです。身勝手な願い、お怒りになられるかと思いますが、どうか……どうか!…』

 

必死に頭を下げて燐華は天姫を支えて欲しいと京子に懇願した。

京子は迷わず、ハイ!って叫んだ。

 

いつもの私なら、あんな大声出さなかったと思うの。

自分でも不思議でしょうがなかった。でも応えたいって感じた。

天姫ちゃんを支えたいって。心から思った。

ハルちゃんにもそのことを伝えたら、すごく張り切って一緒に頑張ろうって。

どんな怖いことがあっても、二人で天姫ちゃんを助けよう、一緒にいようって。

 

この世界に来て、ここが未来の並盛だって言われた時はやっとこれたって実感した。

怖い目にもあったけど、ツナ君が身を挺して守ってくれたし、何より

元気そうな天姫ちゃんに会えたこと。これが一番嬉しかった。

 

無事で良かったって。

 

ふんわり笑ってくれて、抱きしめてくれて。

あの時、本当は泣くつもりなんてなかった。

でも堪えきれない想いがこみ上げてきて

結局泣いちゃった。

ああ、やっぱり、天姫ちゃんの傍がほっとする。

 

安心するって。

 

ツナ君たちが怪我をしてまで、過去の世界に皆で帰れるようにしてる。

そんな中で、人数をそろえなきゃいけないってことを盗み聞きした。

お兄ちゃんのことだってすぐにわかった。

だって、お兄ちゃんはかならずツナ君たちといつも一緒にいたもの。

その中にぜったい必要なのはお兄ちゃん。

そう思ったら、私にもできることあるんじゃないかって思った。

だからみんなに黙って、外に出た。皆で帰れるようにって。

また天姫ちゃんと一緒にいたいから。

 

また女子会、みんなでしたいから。

 

少しくらいの怖い思いも我慢できると京子は腹を括って飛び出したのだ。

 

だがそんな京子の想いとは裏腹に、危険は迫っていた。

未来の京子の自宅にまで黒服たちが嗅ぎまわっていたからだ。

 

「…ハァ……ハァ、どうしよう」

 

京子の駆けまわった体が、スタミナ切れだと叫ぶ。

そんな時、忍び寄る影が近くにあることに京子は気がつかなかった。

 

「っ!?」

 

その者に口元を抑えられ、声を出すことを許されず裏路地に引き込まれた。

 

「…!!」

 

恐怖で体が竦む京子にその影の持ち主は囁くように声をひそめて言い聞かせた。

 

「静かに。あんた追いかけられてんでしょうが」

「…?」

 

聞き覚えのある声に京子は目を丸くした。

その人物を視界にとらえたからだ。

 

「何びっくりした顔してんのよ、京子」

「は、…花……!」

 

そう、京子を助けたのは、大人の女性となった10年後の黒川花であった。

 

「話はあと!今はうちに来なさい。この辺は危ないわ」

「う、うん!」

 

花に手を握られ、京子は共に花の家へと走った。

その後、無事に花の部屋にて匿われた京子は、ほうっと一息ついた。

花は自分が助けた京子が10年前の京子だと知ると、一瞬頭を抱えたが、無理やり現実に戻らせ事態の把握に努めることにした。

 

「しかし、10年前にあんたってこんなに若かったのね。お肌ぷにぷにじゃない」

「もう!花。今それどころじゃ」

 

指先でほっぺをつんつんされ、京子は眉をしかめた。

花は笑いながら、ゴメンとごまかしながらなぜ京子の事を知っていたかのを教えた。

 

「あんたの兄貴に頼まれたのよ。もしも京子がうろうろしてるようだったら保護してやってくれって。昔のあいつじゃ考えられないような気配りよね。それに色々問題も発生してるみたいだし、それなりの連絡先も渡されてたわ」

「…うん、花。信じてくれるの?私の事とか10年前から来たってこと」

「そりゃ信じるわよ。長年あんたと一緒に過ごしてきたんだし、それに天姫の事もそれなりに知ってるわ」

「天姫ちゃんを!?」

 

花の発言に京子は食いついた。

 

「ねぇ天姫ちゃんって、今何してるの?どこにいるの!?」

「ちょっと、落ち着きなさいよ!?なんで京子が興奮するのよ」

 

京子の剣幕に花はたじたじになりつつ、理由を尋ねた。

 

「私、天姫ちゃんの事何にも知らない。何も聞かないって天姫ちゃんには言ったけど、……ホントは教えてほしい。天姫ちゃんの事もっと知りたい!だって友達だもの。好きな友達の事を知りたいって思うの悪いことじゃないでしょ!?」

「……ま、確かにね。京子のいう事も一理あるわ。……ったく、あの馬鹿。秘密主義者にも程があるわよ。昔からそうなんだから、手に負えないわ…」

 

花が馬鹿といった相手。それは天姫に対してのものだろう。

どうやら、現代よりも未来での天姫と花の関係はもっと親密になっているようだ。

京子はなんとなく、仲間外れにされた気持ちになり、尚更、花に詰め寄った。

 

「花、天姫ちゃんの事教えて!」

「わかったってば、ちょっとは静かにして。外の連中にかぎつかれるわよ!」

 

京子のしつこさに根負けし、花はちょっとしか話せないけどと前置きをしつつ、チェストの上に飾られていたある写真立てを手にした。

 

「先に言っておくけど、驚いて大声あげたりとか、悲鳴あげたりとかしないでよ?」

「うん」

「………この世界の天姫は、今は行方不明よ。1年ぐらい前から連絡がとれなくなったわ」

「……うそ…?」

 

ショックを隠し切れずに呆然とする京子。

花は軽く首を振り、嘘じゃないわと辛そうに言葉を重ねた。

 

「あのお馬鹿、結構ヤバい連中に普段狙われてたから。会える機会なんてほとんどなかったわ。最後に会ったのは結婚式ぐらいかしら」

 

そういって、花はその写真を京子に見せた。

 

「結婚式?」

 

訝しみながらそれに目を通した途端、その写真に釘づけになった。

なるしかなかった。

 

「身内だけでの結婚式だったんだけど、あの子の身内って人数多すぎよ。質素にやるとか言って全然金かけてたわ。あ!あんたの兄貴、そういえばオカマに会いに行ったわ。

…違った。オカマのいる上司?ま、そのオカマも実は私の顔見知りなんだけど……って、京子、固まってない?」

「この真ん中にいるのって、もしかして…」

 

この純白のいかにもオーダーメイドで高そうな、それでいて花嫁の魅力を最大限に引き出している素敵なウエディングドレスに身を包んで綺麗に微笑む花嫁。そのとなりに整った顔立ちを仏頂面して立つ黒の燕尾服に身を包むスマートな男性。きっと花婿だろう。

その周りを囲む、大勢の人。

その中に10年後の京子自身の姿もあった。

だが問題はそれじゃない。いやそれだけじゃない。

この花嫁が、京子の知っている友達にそっくりだからだ。

まるで、10年後の……。

 

「もしかしても何もあの子に決まってるじゃない。わからなかった?あ、そうだ!あの子の旦那にも連絡したんだった」

「旦那?」

 

もう何がなんだか、頭がパンクしそうだと京子は思った。

 

「もし何か変化があった時、あんたの兄貴や沢田に連絡が繋がらなかったらってあの子の旦那に連絡するようにって。彼、海外飛び回ってるって。たぶんあの子の居所探してるのかもしれないわね」

 

結婚、花嫁、その旦那…衝撃的な展開が次々と……。

色々とびっくりな展開に京子は頭がオーバーヒートし、ぷしゅううと目を回して倒れてしまった。

 

「ちょ、京子!?」

 

花が慌てて京子を抱き起すのであった。

 

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