闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的112後悔しながら埋まりそして自滅する。

天姫side

 

恭弥の腕枕で私は目を覚ました。

 

感情に流されるまま、私は恭弥と肌を重ねてしまった。

自分からやった行為だと言うのにどうしてこんなに苦しいのか。

全て終わってしまったというのに。

 

私の胸の内でどうしようもない後悔の念が渦巻いた。

 

劉牙を愛してる、彼一筋って威張っておいて、

なんて酷い女だ、私は…。

 

しっかりと私の体には恭弥の手ががっちりと回され、身動きができない。

動くに動けない状況、なんとなしに彼をみた。

ぼんやりと、隣に眠る、彼を。

子供のようにあどけない顔をして昨日の彼とはまるっきり違う。

そう、なんというか昨日の恭弥は……攻めだった。

自覚してみれば彼は大人だった。

 

「………」

 

これが雲雀恭弥の一面か。

今まで、私は彼のどこをみていたのだろうか。

自分より年下ということもあったし、しかし今目の前にいるのは大人な雲雀恭弥だ。

20歳以上、成長することがない私と未来にて立派に成長している彼。

これが『人』と『化け物』との違いの差、か。

 

「…………」

 

どうとなしに私は眠る彼の唇をそっと触ってみた。

すると、彼が身じろぎをし、ゆっくりと瞼を開く。

 

「……起きたの…おはよ」

 

そういって、不意打ちのキスしてきた。

 

「…可愛い、な。天姫……」

 

ごろんと恭弥の下にされた。私はされるがまま、恭弥の視線を受け止める。

 

「………」

「まだ気にしてるのかい」

 

彼が言うのは私が彼に残してしまった証拠物。

首の痣が私の心を締め付ける。危うく私は……彼を。

そうっと彼の痣に指先で触れた。

申し訳なくて、どんなに謝っても謝りたいないことを私は犯したんだ。

 

「ごめんね」

「君は昨日からそればかりだったね」

「……うん、ごめ」

 

ん、と続くはずだった言葉は無理やり封印された。彼が噛みつくようなキスをしてきたことで。

 

「…ハァ、ん…きょ、やぁ……」

「……『それ』以外の言葉が聞きたいよ、僕は」

 

謝罪以外の言葉?恭弥が私の首筋に舌を這わせてきた。

ビクンと私は反射的に反応し甘い声を出す。

 

また始まるのか。体に残る昨夜からのダルさと甘さと、またあの痺れるような感覚に身を任せようと思った矢先。

 

「恭さん、よろしいですか」

 

声をかけ襖が開かれた。タイミング良く、草壁さんが来てくれた。

でも、よくよく考えれば、マズイ展開だったわけで。

草壁さんが石みたいに石化した。敷かれた一人用の布団に収まる裸の二人男女。

脱ぎ散らかされた服や、下着が辺りに広がっている。

 

「あ」

「……」

「……ぬあっ!?」

 

しかも、これからおっぱじめようとしている最中であり、私は恭弥の下。

彼は私の上にいる。

時がしばし、止まったような感覚であった。

 

ひじょうにマズイ展開である。

トマトのように真っ赤になった草壁さんは「す、すいませんでしたぁぁああ!!」と高速で頭を下げ、ダッシュで扉を閉め逃げて行った。

恭弥が

 

「殺す」

 

と殺意満々に動こうとした。

あらあら、朝から元気ですね、恭弥さんは。

 

「天姫、ちょっとお預けだよ」

「……適度にね」

「わかってるよ」

 

フッと小さく微笑む恭弥は軽く私の瞼上にキスをして私の上から起き上がった。

ああ、腰いてぇ。

私ものそりと体を起こして、投げ捨てられた服や下着をぼんやりと見つめた。

あーあ、最悪な場面見られたな。

 

ズボンを履いて裸の上からワイシャツを着る恭弥。

着替えるのも早いな。

 

「天姫」

「恭弥、ネクタイやってあげようか」

「ん、お願い」

 

恭弥は私の横に膝をついたので、私は布団で胸元を隠しつつ、手を伸ばして恭弥のネクタイを結ぼうとする。すると、恭弥は暇を弄ばすかのようにちろりと私の首元あたりに目をやっては

 

「痕、残ったね」

 

と指先で赤い痕をなぞるようにくすぐってくる。

 

「…くすぐったいからなぞらないで」

 

私は煩わしいそれを手で払いのけ、ネクタイを完璧に結びあげる。

恭弥は私の首元に顔を埋めてすぅと匂いを嗅いでくる。

 

「……追いかけるのやめようかな」

 

猫のように甘えてくるこの黒猫さん。

 

「行ってきなさい」

「はいはい」

 

また後でと恭弥は静かに部屋を出ていった。

私は一人残された部屋ではぁと溜息一つついて、痛む腰抑えながらシャワーを浴びるため、軽く服を羽織ることにした。

 

沢田綱吉side

 

俺は天姫に謝らなくちゃって思って、昨日の夜からアジトの中を走りまくっていた。

ちゃんと謝って話したい。

いき違ってばっかりだった俺たちだったけど、まだ間に合うだろ?

 

天姫の姿はアジトの中を探せど見えず、ベッドで寝ている山本に付き添ってから何処かへ行ったらしく、京子ちゃんやハルに行方を尋ねてもどこにいるかはわからないと言われた。でもリボーン曰く、アジトの外には出ていないのできっと向こうのほうへ顔を出してるんじゃないかということらしい。

向こうというのは、きっとヒバリさんの住まいだ。

俺たちと境界線を作ってまで群れるのを嫌う人だけど、天姫に関しては違う。

彼女に対する執着は、俺よりも強い……かもしれない。

今の中で10年後の天姫を知っている数少ないボンゴレの人だ。

きっと、未来の天姫のことを本人に教えているんだと思った。

 

そう考えていた俺の考えは、予想もせずに砕け散った。

どうしても一秒でも早く謝りたくて、本当は入っちゃいけない区域のヒバリさんが所有している区域まで足を運んだんだ。

そしたら、ようやっと彼女を見つけられた。

天姫の髪の毛は少し湿っていてわしゃわしゃと軽くかきながら歩いてきた。

 

「天姫!」

「……ツナ…、どうしたの?こっちは一応出入り禁止されてると思ったけど」

「…あー、確かにそうなんだけど…天姫に言いたいことあって…?」

 

普段の彼女と、どこか違うことに違和感を覚えた。

なんだ?服装が違うとか?いや、昨日廊下で会った時のままだし、ということは夜こっちには戻らなかったということか。ん、なんか天姫の首元に赤い痕が……。

 

「ごめん、今具合悪いから後にしてもらえるかな?」

 

気だるげそうにして俺の脇を通り抜けようとする。

けど、俺は無意識に天姫の腕をがしっと捕まえた。

 

「な、なに?」

 

突然の俺の行動に驚きを隠せずない天姫は。俺は質問に答えずに彼女の首元をじっと見つめた。そして、それを認識したとたん、俺の体全体がサァーと氷水を浴びたかのように冷たくなった。でもすぐ大きい怒りへと変化していった。

 

「それ、なんだよ。赤い痕」

 

俺の指摘に天姫はハッと手で首元を隠す素振りをする。

まるで、知られたくないことを知られたみたいに、気まずい表情になった。

 

「!?……なんでもないよ」

 

天姫はつっけんどんに返し、掴んでいる手を振り払おうとする。

けど俺は意地でも離すもんかとさらに力を籠める。

 

「なんでもないわけあるかよっ!どうみたって」

 

それ以上声に出せなかった。

認めたくない、鈍感で、経験ない俺でもすぐにわかる。いやでも直感が働いてしまう。

 

天姫は他の男に……、これ以上考えたくない。

言葉に出すだけでも腸煮えくり返る。

 

「なんでもないって!離してよっ」

 

天姫は頑なに何事もなかったって言い張る。

俺に嘘つくんだ……。嘘きらいな癖に。

 

「…天姫、誰といたの」

「誰ともいないよ」

「じゃあ、これは何だよ」

 

ぐいっと服を引っ張った。少々乱暴だったけど、そんなの構ってられない。天姫は羞恥心から顔を真っ赤にさせた。隠そうとするけど俺がそれを阻止している。

首から下に胸元のあたりまで、露わになったのは無数につけられた赤い痕。いくら馬鹿な俺でもすぐにわかるさ。

 

天姫は抱かれた。

昨日、必死に探しまくってた俺のことなど知らずに。

 

「誰といたんだよ」

 

俺は再度同じ問いを言った。それでも天姫の態度は変わらなかった。

冷めた表情で俺をみるんだ。ふざけんなよ、なんだよその目は。

 

「………関係ないでしょ、ツナには。女の服をなんだと思ってんのよ」

「…指輪もしてないじゃないか」

「外れたのよ。後でつけとくわ」

 

『契約』状態にあった、指輪が外れるなんてそんなのあるわけない。

天姫が、彼女しかはずせないんじゃないのか。本当はこの契約のことだって曖昧にしか教えられていない。ただ漠然と安心してたんだ。俺が天姫につけた指輪は絶対外れることはないって。

天姫は知ってた。都合が悪くなったから指輪を外したんだ。

俺をうまく騙そうって魂胆だろ。そうだ、君は卑怯だもんな!

逃げるのがお得意でいつも人の心かき乱してばかり…。

 

「……嘘だ、外したの間違いじゃないか?君はいつもそうだもんな。卑怯者だから」

「なっ!?……離して、離してよっ!」

 

俺は逃げようとする彼女の体を壁に叩きつける。

 

ダンッ!

「痛っ!」

 

天姫の綺麗な顔が歪み、ギっとまるで敵でも見るような目つきで俺を睨む。

彼女の両腕をクロスさせて拘束する。もちろん、逃げられないようにして、だ。

ぎりり、と俺の加減できない力が彼女を痛めつける。

 

ああ、そうさ!

悔しくて、悔しくて手加減なんて言葉、消え去ってたよ。

 

ただ、なんで自分じゃないんだって!

俺はこんなにも天姫が、好きなのに…!

 

天姫が顔を歪めて、俺は叫んでも力を緩めなかった。

 

「離して、痛い!」

「君は俺のものだ、証だったのに、それだけが君との証だったのに!」

「ツナっ!?やめろ!」

 

俺と天姫が言い争う声を聴きつけて山本が慌てて飛び込んできた。

俺と天姫の間に割りいるようにしてくるが、俺は邪魔な山本を押しのけて天姫に詰め寄ろうとした。

 

「答えろよ、天姫!君は俺のものだって言えよっ!」

「ツナ、やめろって!?」

 

山本が邪魔で邪魔で仕方ない。俺を押さえつけようとするが、俺はなおも天姫に怒鳴った。

 

「私はアンタの所有物なんかじゃない!」

「違う!天姫は俺のだ!!」

 

あの『契約』はそのためのものだったじゃないか!

パァァん―――!

 

天姫が俺の頬を思いっきり叩いた。瞳に涙をたっぷりと溜めこみながら、天姫はぎゅっと頼りなさげに服を握っては怒鳴りつけた。

 

「ふざけないでよっ!なんでそんな事言われなきゃいけないのよ。私はいつも監視されなきゃいけないの?何処で何してたっていちいち報告しなきゃいけないの?婚約者って肩書きだけで、縛りつけられなきゃいけないの!?望んで得た関係じゃないのにそれを当たり前だって受け入れなきゃいけないわけ!?私は愛玩人形じゃない……ツナのおもちゃじゃないんだからっ!」

 

天姫は言いたいだけ言って走って逃げて行った。

 

「天姫!」

 

俺は彼女の後を追うつもりだった。

けど山本が俺を睨みつけ、体を壁に叩き付けた。

 

ダンッ!!

 

「落ち着け、ツナ!」

「離せよ!山本!!」

 

俺は暴れることしかできなかった。

だが、山本は軽く受け流す。俺はそれに苛立ちが募るばかりだった。

それに見かねた山本がついにキレた。

 

「ツナっ!!」

 

の叫び声と共にバキッ!と殴られた。

反動で壁に叩き付けられる俺を山本は冷たい視線で見つめた。

 

「うぐっ!」

「頭を冷やせ、ツナ」

「……山本…」

「俺は天姫が好きだ。アイツが幸せなら俺は何も言うつもりなんかなかった。『虚像の花嫁』っていうしがらみを天姫が受け入れるなら俺もアイツを守ろうって、天姫を守ることで俺の存在意義が成り立つ。そう考えらえれたんだ。なのに、お前は…!!」

「…………」

「でも、もう容赦しない。天姫は俺がもらう。彼女を傷つけるなら、ツナ。お前でも許さないぜ」

 

そう吐き捨てて、山本は天姫の駆けて行った方に走っていった。

ずるずる、と壁を頼りに俺は座り込んだ。

 

天姫からの涙目交じりの平手打ちに、山本からの痛い拳。

 

俺が冷静になるには十分すぎるくらいだった。

 

俺は、一体何しでかしたんだ…。好きな女の子に対して酷い仕打ち、あんなことするつもりなかった。

 

自分の愚かさに空しさに両手で顔を覆って、俺は無意識に声を押し殺して涙を流していた。

 

俺、何しちゃったんだよ、嫉妬にかられて大切な人傷つけて

仲間の信頼失って、宣戦布告されて、

 

「なんで、こう、なるんだよっ!!」

 

俺は、ただ

ただ

天姫と仲直りしたかっただけなのに!

 

(仲直りが、決別への瞬間へと変わる?)

 

逃げなきゃ、逃げなきゃ。また、閉じ込められる。

暗くてじめじめしていて、日の光が一切届かないところに連れ込まれる。また闇に囚われる。

 

天姫は無我夢中で走りまくっていた。

自分がどんな状況で今、どんな形相で走っているのかもわからないでただ逃げなくては、その一言で本能を突き動かしていたのだ。

 

ツナのあの独占力があらわになった瞳が怖かった。

 

幼い頃の記憶がまた天姫を襲うのだ。

迫りくる大きな手が小さな天姫の腕を掴み、

恐怖に歪む天姫を後ろの方で冷たく見つめる二人の大人。

 

父様、母様……助けて、助けて…。

幼い子供の手が助けを求めて、必死に親に縋った。

 

天姫は必死だったのだ。

 

必死に必死に頼めばきっと助けてくれる。

あの優しかった両親が自分を見捨てるはずない、と。

 

そう、信じていたのに、両親は無言で天姫を見捨て、その場から去った。

天姫は両親から見捨てられ、地下牢に閉じ込められた。

 

その記憶が、傷が今も天姫の心に焼き付き、決して消えることはない。

通路にはまだ未完成ながらところどころ壁際に荷物が置かれている。

だが、体力が回復していない天姫はまともに走れるはずもなくおぼつかない足取りで

それらにぶつかり、廊下は悲惨な状況となった。

 

ガラガラ、ドンッ!

 

足を引っかけ、体ごと天姫は盛大に廊下に倒れこんだ。

それでも天姫は痛みを堪えて這ってでも逃げようとした。武が後ろから天姫を追ってきているのにも気がつかずに。

 

「天姫、待てって!」

「っ!嫌、離してっ!?私は物じゃない、道具じゃないっ!」

 

蒼白させ、恐怖な眼差しで武をみる。

その瞳は尋常ではなかった。

心の底からの恐怖を味わい、絶望し心に深い傷を作った証拠。

えぐられるほど、癒されることがなかったもの。

天姫は首を振り、武を見て許しを乞うた。

 

「ちゃんと役にたつ言いつけも守るからだから閉じ込めないであそこはいやだ怖い怖い!父様母様捨てないで私いい子にするからちゃんという事聞くから、だから、だからっ!」

 

錯乱状態となった天姫は、武の言葉を一切聞かずに、ただ逃げようと必死だった。

武を誰かと重ね、脳裏によみがえる恐怖が再び襲ってくると、彼女は恐怖し、涙する。

 

「天姫、俺だ!目を覚ませ!?」

「嫌嫌嫌嫌嫌!離してぇぇぇ!」

 

ここではない映像が映って、天姫は悲鳴に近い叫び声をあげる。

 

もがいて、もがいて

もがいて、もがいて

そして、天姫はつながれたのだ。

 

小さな腕に鉄製の手錠を付けられ、足枷を付けられ、闇の中に放り込まれた。

その映像が今まさに、彼女の中で再現されていた。

手の付けられないほどの天姫の錯乱状態に思わず舌打ちする武。

 

「ッチ!」

 

それが、また映像の中の自分を捕まえようとする男の舌打ちと重なる。

殺される…殺されるぅ…!

 

「あ、あああアアア―――!嫌だ助けて助けてぇ……劉牙、助けてぇ……劉牙ぁぁぁぁああああああああ―――!」

 

狂ったように天姫は武の手から逃れようともがいた。

泣き叫び、逃げまとい、かつての愛しい男の名を天姫は呼び続けた。

助けて、劉牙、助けて劉牙と、子供のように泣き叫び、求め続けた。

武はたまらなかった。こんな天姫を見ていられなかった。

たまらずに自分の体に抱き込み、暴れる天姫を押さえつけた。

押さえつけられたことで天姫はことさら暴れた。

天姫の指先が武の頬を掠め、傷をつけ、武の髪を無理やり引っ張っても、武は絶対に離さなかった。

 

離してなるものか!とさえ強く思った。

 

「天姫っ!」

 

正気に戻ってくれ、その想いを込めて武は天姫の名を呼んだ。

 

「ッ!」

 

ビクンと、天姫の体が痙攣した。

ぎゅっと天姫の後頭部に手を回した。

 

「…なんで、いっつも、お前だけなんだよな…」

 

武は己の不甲斐なさに呆れを通り越して吐き気さえ起こしていた。

好きな女がここまで追い詰められていたというのに、自分は何一つ彼女を助けることができないなんて、と。

 

切なかった、なんでお前がこんなに苦しまなきゃいけない。

なんで俺は何もしてやれなかったんだ…。

お前に頼りにされたくて、

頼ってほしくて、適度な距離でいようと思った。

それでお前と一緒に居られるならそれもアリだなって考えてたのによ。

ツナ、があんな風にお前を責めるなんて信じられなかった。

お前がどんな状態で、どんなに追い詰められていたか、子供の俺じゃ理解できないのが悔しくて、お前が、自分を傷つける方法しか知らないのがやるせなくて。

 

己の考えの未熟さと悔しさに感情が入り混じって、武の視界が緩んだ。

 

「大丈夫だ、お前を利用したりなんかしないっ!お前を閉じ込めたりなんかしないっ!天姫は自由だ、自由なんだっ!」

 

武は自分が涙を流していることに気がつかなかった。

ただ、天姫を助けれない自分が不甲斐なくて、

なんで俺はこうすることしかできないんだ!!とひたすら心うちで責め続けた。

 

「……俺が、俺が!お前を、守るからっ!だから、泣くな、天姫っ!」

 

武のあらんかぎりの叫びは天姫の耳元に響く。

暴れていた天姫がピタリと止まる。

 

「…た、けし……」

 

ぽつりと呟かれた、名前。徐々に天姫の瞳に光が宿っていく。

けれど、涙は止まらない。

お互いに涙は溢れ続ける。

 

傷は天姫を永遠に苦しめ続けるのだろう。

そして、武もそんな天姫の傍に寄り添い続けることを、この時から誓ったのだろう。

 

(癒されることのない傷痕を持った『虚像の花嫁』と決意を背負い守ると覚悟した『雨』

複雑に絡み合った糸は簡単に解くことはできない)

 

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