リボーンと武の修行の一歩はある約束からだった。修行場所として言われた地下10階に来た武。しかし、来てみればそこは電気もつけられていない真っ暗な場所ばかり。
武はエレベーターを降り、暗闇の中を進むことに。
「小僧、どこにいんだ?」
しんとしたフロア。誰もいないとそう思った瞬間、ピィィーン!と鋭い殺気を感じ取り、武はバっと『時雨金時』をある方向へ構えた。
「この殺気に気づくとは腕を上げたな。山本武」
「誰だっ!?」
その声の主にスポットライトが当てられ、その人物のシルエットが壁に照らし出される。
銃を構え、隙を一切見せない相手に、武は警戒心露わにする。
「だがまだ時雨金時を使いこなせてねぇな。お前はこれからどんどん伸びていく」
よくよく確認してみると、そのシルエットの人物は武のよく知る者だった。
「あ、小僧!」
影ばかりに集中してまさかリボーンだとは気がつかなかった武。
「俺との修行、最後まで残れたら俺の本当の姿を教えてやってもいい」
「小僧の本当の姿?」
今の姿は、では違うものなのかと武は首をひねる。リボーンの言い方にまるで、天姫が#name1#だった頃のようだと印象を受けた武。
「ああ。それに、天姫の事もだ」
「天姫の事!?」
武はその話題に食いついた。
リボーンはやはり、と思いながらも、そう簡単に話すわけじゃねぇけどな、と前置きを忘れなかった。リボーンは殺意をありったけ込めて銃を構えた。
「お前に話してもいい。お前にその覚悟があるならば、話をきけ。ないのだったら、尻尾巻いて失せろ。アイツが抱える闇はお前が考えるほど甘くはない」
本能からの冷や汗が武の頬を伝う。今まで以上のリボーンの殺気は恐ろしいものだ。
けど、武は逃げなかった。
真っ向からリボーンの視線を受け止めたのだ。
「俺はとっくに覚悟した。俺の全てをかけて守ってやるって。天姫にとって押し付けなのかもしれねぇけど、俺がそうしたいんだ。俺自身がそう願ったんだ。だから天姫を知りたい。アイツが抱えてる闇を理解したい」
リボーンは再度確認を取った。
「その覚悟、偽りはねぇな?」
「ああ」
武の眼差しに嘘偽りはないと感じたリボーン。
そう、武の目は決断した男の目だ。
リボーンはにやりと笑みを浮かべ、
「いい度胸だ」
と言った。
そして、リボーンは武に語るのだ。
天姫がどのように生まれ、どのように育ち、なぜ、『縛られる』事を過剰に恐れるのか、を武に包み隠さず話した。そう、あの対価で得た昔話をそのまま。
本当なら、天姫の過去をベラベラ喋ることなど彼女にとっては許されないことかもしれない。
しかし、リボーンは天姫に対して遠慮をすることをやめたのだ。
天姫が壁を作り自ら背負いこむならその壁をこっちからぶっ壊していけばいいのだ。
強固な壁をドカドカぶっ壊して、アイツの驚く様を面白く見て、言ってやればいい。
『かくれんぼは、終わりだぜ?』
と。
こののち、リボーンと武の過激で過密で過酷な修行が日夜続けられたのだ。己が目標を達成するために。
一方、隼人はというと自分の姉、ビアンキとレッスンへ。
隼人は間近にビアンキを直視してしまったので、いつもの発作に見舞われて倒れてしまっていた。
夢現に、隼人の中であの音が聞こえていた。
自分が育った城で幼き頃いつも弾いていたピアノの音色。
隼人にとっての、思い出深い旋律だったのだ。
その音が今でも鮮明に思い出すことができる。
そう、ある部分の音がいつも外れていた。
ソの音だけが……。
隼人の意識は徐々に、はっきりしていきありえない者を見た瞬間、一気に体が起き上った。
「なっ!」
それはピアノを演奏している後ろ姿の人物。
それが隼人にとって、目を疑う光景だったのだ。
そう、自分の母親の後姿を見た。
しかし、それはすぐに錯覚だと思い知らされる。
「起きたのね、隼人」
振り向きざまに顔を見せたのは、ゴーグルで目元を隠したビアンキだったのだ。
隼人は呆然と姉の名を呟いた。
「…姉貴…」
「…このピアノは城から運ばせたものなのよ。懐かしいでしょう」
そういって、ビアンキはピアノから離れると隼人は反射的に大声で怒鳴り、ビアンキに反抗した。
「そんな事どうでもいい!!なんで姉貴が俺の修行の付き合いしやがるんだよっ!?俺は姉貴となんかと」
特訓なんかしたくないという前に、ビアンキの
「貴方が弱いからよ、またγとの闘いのように失敗するつもり?今度は命さえ危うくなるかもしれないのよ」
と痛いところをぐさりと言われ、ましてや正論を言われてしまえば隼人は言い返す言葉もない。なおさら隼人はあからさまに苛立ち不機嫌そうに舌打ちをした。
「ッチ」
ビアンキは弟のその生意気な態度を見ても叱ることはなかった。
むしろ、さらに追い打ちをかけるようにあることを言った。
「貴方が私の事を嫌っているのは知ってるわ。それでも貴方は嫌でも私と修行しなければならないのよ、なぜかわかる?」
とのビアンキからの問いかけに、隼人は
「俺が知るかっ」
とそっぽを向く。
どうせ、リボーンさんのためだとか言いだすに決まってる。自分が知る姉はそういう人物だったと、そう隼人は考えた。
だが違った。ビアンキが言った台詞は隼人が考えていたようなものではなかった。
「10年後の天姫は『自分』を拒んだわ。故にあの子は力を失ってしまった。だから知っているのよ。貴方が所有しているものの存在を。隼人、貴方『鍵』を持っているわね。でも天姫に使うことを躊躇っている。あの子にまた『忌々しい現実』を与えることを躊躇している、そうね?」
隼人は愕然とし、ビアンキを見た。
『鍵』の事は、山本と俺しか知らないはずなのに…と。
「姉貴、なんで」
「山本武と貴方のγにやられた傷。普通ならもっと日数がかかるものを貴方達の怪我は3日で良くなった。この現象を逆に素直に受け入れてしまう方がおかしいと思わないの?」
ビアンキは私は馬鹿じゃないわよ、と視線を鋭くしなおも言葉をつづけた。
「未来の天姫のような結末を迎えて欲しくない、あの子には強く生きて欲しい。現実を受け止められる強い子に」
だから、まずは、あの子を狙っているミルフィオーレを倒す必要がある。
でなければ、『鍵』を受け入れる状況どころではない。
それを達成するには、隼人たちに強くなって貰わなければならない。
だから、貴方は私と修行する必要がある。
ビアンキは隼人にそう説き伏せた。
まだ、理解できない所もあったりしたが、隼人とて痛感させられていた。
このままじゃヤバい。
あの時、γとの戦闘で『鍵』に助けられていなければもっと大怪我を負っていたはずだったし、怪我の回復にもアイツは一役買っていたのだ。
俺は助けられてばかりだった。
俺だって、強くなりたい
アイツに頼らなくても、天姫をこの手で守れるくらいに。
「…やってやる…。…これ以上あの女の減らず口なんか聞きたくねぇからよ」
女の背に守られるなんて十代目の『右腕』失格だしな。
隼人の決意に
「それでこそ、私の弟」
と、満足そうにビアンキは微笑んだ。
さぁ、レッスン開始よ?
姉と、弟のわだかまり以前に二人には共通するものがあっただから意見が一致した。天姫を助けたいとおもう気持ちが一緒だったから。