闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的116家の娘に何しやがる!!

天姫side

 

和って癒されるよねぇ~。

 

ぼけっとする事が多くなってしまった私。何もすることがない、なんて表現はおかしいか。はっきり言って今の私は腑抜け状態だ。

ツナたちがいる区域には行きたくない、戻りたくないから、恭弥の所に入りびたっている。

京子やハルが会いに来てくれたりするし、ゴーラちゃんがおチビたち肩車しながら遊びにきたりしてくれるから淋しくはなかった。

もちろん、恭弥がいない時間帯を狙ってきてるけどね。

恭弥は相変わらず群れてるのが嫌いみたいだから余計は被害は出さないに越したことはない。

 

ビアンキは隼人と特訓だし、武はリボーン。ラルと恭弥はツナの修行。

それぞれがミルフィオーレに向けての時間に費やしてる。

敵のアジトが判明した以上、その地下基地に乗り込む作戦のようだ。

これはゴーラちゃんからの情報による。

 

どうやら、私には秘密のようだけど筒抜けです。

 

まぁ、こんな状態の私に話した所で無茶な行動はしないと勘ぐっているのだろう。

しかし、恭弥は相当、未来の私を大切にしてくれている。

というのも、この恭弥の部屋だって本来は、未来の#name6#天姫がいるべき場所なのに、私にも僕の妻なんだからここにいるのが当たり前なんて言ってくれてるし。

ツナの修行に付き合う時間以外は、つきっきりで私の傍にいてくれるし武も休む時間惜しんでわざわざ私に会いにきてくれた。

何を話す訳もなく、ただ、共に一緒の時間を共に過ごす。

 

それだけで、私は満たされた。

それくらいのことで、私は癒される。

 

あの忌々しい記憶を見ることも段々少なくなってきた。

最初は瞼を閉じたら、あの光景に襲われそうになって夜中に泣き叫んだりした。

 

頭がおかしくなりそうで、壊れそうで、怖かった、苦しかった、闇が怖かった。

 

そのたびに一緒に寝てた恭弥が私を抱きしめてくれて大丈夫だって囁いてくれた。

僕がいる、僕が傍にいるって。

じんわりと、私の心に沁みこんでいった恭弥の言葉が、あったかい、心地いいと感じられて、あの恐怖が嘘のように思えて不思議だった。

まるで魔法にかかったみたいに私は彼に抱き締められながら眠ることができた。

 

今は、彼に対する気持ちがどういったものなのか判断することはできない。答えを出すなんて器用なこと私には無理だ。なんせ、ツナ曰く『卑怯者』らしいからね。

 

でもやることがないのは、ちょっと困ったもんで哲さん(そう呼んでいいらしいから)が気の利く人で何かあったらすぐに呼んでください!なんて力んで言ってくれたんだけど、暇で話し相手になってくださいなんてアホらしい事頼めないし皆が一生懸命に動いているってのに、私が邪魔していいものじゃない。

 

一人悶々とするしかない私の頭の上に何かが乗っかった。

それは恭弥の相棒の黄色い鳥さん、恭弥曰くヒバードというらしい。

 

「ぴ」

「ヒバード、お帰り。恭弥は一緒じゃないの?」

 

私は頭上の彼を自分の手に乗せかえて、そのふかふかな毛を撫でて感触を楽しんだ。

 

「ぴ!」

「そう、…まだツナの修行に付き合ってるの」

「ぴ?」

 

どうかしたのかと、ヒバードは私の手に体をこすり付けてくる。

 

「なんでもないわ、心配しないで」

 

心配させる訳にはいかない。

私は表情を作って、ヒバードを再び頭に移動させた。

 

うーん、何しようかな…。

また振りだしに戻ってしまった。

なんて呑気にしてたらズキリとこめかみあたりに痛みが走った。

 

「痛っ!」

 

それと同時にある言葉が浮かんだ。

 

『みんな、何処にいるの』

 

ズキズキと痛みがひどくなる一方で、脳裏に映し出される不可思議な映像はより鮮明になっていく。

 

そう、これは黒曜センターじゃないか。どうで見たことあると思った。

けど私が知る黒曜センターとは少し違っていてさらに荒れ果ていた。もしかしてこれはこちらの10年後の黒曜センター?

人気も無さそうな淋しい場所に女の子がポツンと座り込んでいた。

 

『犬、千種…骸さま……私、ひとりぼっち…になっちゃった……』

 

「この声は…」

 

まさか、なんであの子が…!?

私は信じられなくて声に出していた。

 

『……天姫、どこに行っちゃったの?……』

 

一人、足を抱えうずくまる少女が頭の中に映像として浮かび上がった。

どうして、あの子が!?

 

「凪!」

 

再び瞼を持ち上げると、そこは私がいる和室だった。

あれはテレパシーの一種?

無意識にチャンネルが合わさった結果、あの子状況がこちらに流れ込んできたということか。

 

あの子が、この時代に来てる。

凪もこの世界にとばされてしまっていたのか?だとしたら、早く迎えに行かなくちゃならない。今、『霧』の指輪がどちらの手にあるのかはわからないけど、あの子は『骸』と契約している。

いつ敵に所在が判明するかわかったもんじゃない。

いてもたってもいられずに私は自分の能力を使ってあの場所へ行くことにした。これ幸いと虚像の指輪は私の指から外されている。今は首からネックレスに通して身に着けているが、これは置いていったほうが凪の身の安全のためにも、このアジトのためにもいいだろう。私は、恭弥の愛用の文机の上に指輪をそっと置いて立ち上がり、靴を用意して庭先に降り立った。

パタパタと羽ばたかせてヒバードが私の後を付いて飛んでくる。

 

「ヒバード、皆には内緒にしててね」

 

私は内緒のポーズでヒバードに言うと、

 

「ぴっぴ」

 

とヒバードは私の肩に乗っかった。

 

「え、一緒にくるの!?危ないかもしれないからダメ」

 

と反対するも、

 

「…ぴ~~」

「連れて行かなきゃ恭弥に告げ口するって?それは勘弁してほしいわね」

 

可愛い容姿しておいて、性格が恭弥そっくりになってしまったヒバード。

長年共に過ごして彼に毒されてしまったのね。

逆らってホントに恭弥に報告されても困るので、私は頭にヒバード乗っけて共に行くことにした。

 

「落ちないでね」

「ぴ」

 

準備万端と言わんばかりにヒバードは、私の髪の一部を銜えてをツンツンと引っ張った。

 

「では行きますか」

 

意気込んで私は立ち上がった。

さっきまでの塞ぎ込んでた自分が嘘のように思えたのはあとから気がついたこと。

 

天姫side

 

荒れ果てた懐かしき黒耀センター。

あの映像の中、荒れ果てた建物が一部映像として浮かんだのだ。

凪は絶対ここにいる。女の直感がビンビン反応していた。

皆が何かの拍子に未来の自分と入れ替わっている現象が起こっているのだから、凪の身にそれが起こったとてなんら不思議な事ではないはず。

 

「さて、ぜったいここにいるはずなんだけど」

「ぴ」

「結構荒れ果てたもんだね、ここも」

 

闇雲に探すのも得策じゃない。でも気配が探れなくて私は軽く息を吐いて自分の足で探すことにした。私は頭にヒバードを乗せて思い出深い土地を歩き始めたけど、自分が知る光景はあれどそこに大切な人々の姿は見つけられなかった。

ランボの10年バズーカーを直撃したのだから凪がいるのはこの10年後なはず。もしかして、凪以外はまだこの世界に入れ替わっていない?

ともするとあの映像の中での凪の言葉も合点がいく。

 

一人でこの世界に来てしまった故、仕方なく慣れている黒曜センターに身を隠している。

 

そして私は黒曜センターを歩きまくった結果、あるものを見てしまった。

巨大イカ従えた眼鏡のひょろっこい野郎を。

なんで、廃墟にイカと首をかしげるもそれが重要なのではない。

 

「なっ!?いつの間に!」

 

顎がハズレそうなほどの驚愕の表情を浮かべて私をみるからそいつの影になっていて彼女の存在に気がつかなかったのだ。

 

「っ!」

 

そして、私は息をのみ、硬直する。

 

信じられようか、ああ信じられるか!

 

私の、目に入れても痛くないほど可愛がっている、滅茶苦茶可愛い凪が!

なんだか白いもふもふで思わず頬ずりしたくなる生き物を抱え涙を浮かべているのを。

 

凪がボロボロ→涙流して隅っこに追い詰められている。

眼鏡野郎がいる→大イカが廃墟に生息している。

凪が大イカに襲われた→眼鏡野郎の大イカ?

眼鏡野郎は大イカの持ち主→凪が怪我した→乙女の肌に傷をつけた

 

結論。

眼鏡野郎の死、決定。

 

ブチっ!と蟀谷の血管が切れかかりそうになる。

 

ヒバードは危険を事前に察知していたようでさっさと頭から退避していた。

ちゃっかりな子は割と好きである。

さて、私なんですが…。

 

「私の可愛い可愛い凪に手を出しやがった、そこのイカ野……。ぶっ潰してやる。っていうかお前の存在そのもの抹消してやるから覚悟しろ」

 

呪詛とか呪詛とか呪詛とかぶつけてやりたい。

 

「…貴、様……まさ、か………」

 

まさかまさかの天姫様登場です。ええ拒否権なんかありません。

それに知り合いに眼鏡野郎はいない。いや、千種は別だよ、あの子はいいの。

 

そこのアイツ限定で。あ、もう眼鏡でいいよお前。眼鏡決定だ。

その眼鏡は

 

「まさかっ!?生きているなどの情報はなかったはずっ!?キサマ、過去から来たのかっ!」

 

と、さも私がいることそのものが可笑しい言い方をする。

そうですけど、過去から来ました。なんて馬鹿正直に答えるかっつーの。

私は答えるのも面倒なのでスルーした。反対に

 

「下種が、黙れ」

 

と挑発して、凪から意識を逸らさせる。少しでもあの子の不安を取り除くためだ。

 

あの眼鏡が所有する匣はイカ?

趣味悪い、つかイカよりも鮫のほうが好み。

だって殺りがいあるもん。

 

私の研ぎ澄まされた意識が一瞬にしてイカ(もうイカでいい)に向けられる。

空間を操る能力というのは、便利なもので敵をちょちょいのちょい!なんて集中しちゃえば、こんなこともできちゃうのだ。

 

「なァ!?俺の……!!」

 

そう、眼鏡の大イカを切り刻んだりなんて芸当もできちゃうわけです。でも相当な集中力を要するのでそんなホイホイできるものではない。

イカの刺身出来上がったところで、あの匣イカはフッとシャボン玉のように儚くも消えた。

私は額に浮かんだ汗を悟られぬように動きつつ、

 

「………天姫…」

 

と凪をふわっと自分の腕に抱き寄せた。

 

「ごめんね、すぐに来てあげられなくて」

 

こんなに怯えて可哀想な子。

でももう安心よ、そう意味を込めて凪の髪を撫でる。

 

「……天姫!!」

 

凪はぼろぼろと涙を零し私にぎゅっと縋り付いた。はぐれた子供のように。

愛しさがこみ上げて、私は

 

「もう大丈夫。私がいるから」

 

と凪が安心できるように声掛けをする。と同時に、あの糞眼鏡が凪を追い込んだ張本人かと考えるだけで膨大な殺気が一気に膨れ上がりそうになる。それはこの空間にあるものすべてを押しつぶしてしまうほどの圧力となる。それに怯えて凪が声を震わせて、ひどく怯える。

 

「……ぁ、ぁあ………」

「凪」

 

ゴメン、すぐに終わらせるから。

その意味を含めて凪の頭を自分の胸に引き寄せた。

眼鏡野郎はなんとか、私の殺気圧に負けん気で別の匣を取り出した。

 

「これで俺が負けると思うなよ!」

「もう負けると思ってますけど」

 

私は茶番に付き合う気はさらさらないので、匣に狙いを定め意識を集中させ遠慮なくぶっ壊す。パリンっと匣は笑えるくらいあっけなく粉々に割れた。

 

「ぐぐぐぐっ!」

 

あの眼鏡、血管浮き出るほど怒ってるようで、ある意味見苦しい。

スイマセンねぇ、手癖が悪いのは昔からなんで直すに治せないんですよ。

 

「目障りでしょうがないんで……『退出』、してくださいな」

 

言葉遣いは丁寧に、でもスマートに終わらせましょ。

私がそういった瞬間、奴の骨という骨がボキボキボキッ!といい音を鳴らして、「ぎゃぁぁああああ――—!!」と眼鏡がその場にのたうち回るのを横目に、凪に

 

「さ、行こう?」

 

と促した。あ、目が異常に熱い……。たぶん赤くなってるな、私の目。

凪は怯えたようの顔を真っ青にして、眼鏡を見やる。

 

「天姫、アレ死んだの…?」

「まさか!大丈夫大丈夫。死んでないよ。だって叫んでるし」

『うがっ、ああアアア…』

 

ね、と一つウインクかませば、凪は私の両目の異変に気が付いて、

 

「………」

 

ぎゅっと心配そうに私の袖の服を掴んできた。私はぽんぽんと彼女の頭を軽く叩いて気にするなと伝えた。どうせ、時間が経てば目の色は元に戻るし。

 

「さぁ、敵に感づかれる前にここを去らなきゃ」

 

と、先を急ごうとしたが、どうやらまた別のお客様がいらしゃったようだ。明らかにこちらを目指してやってくる一つの気配を確認すると。私は凪を自分の背後にやった。

 

「…天姫…」

「大丈夫、凪は私の背から動かないで」

 

さて、今度はどんな奴が来るのか…。

だが、顔を見せた相手は私の予想を外れた男だった。

 

「おお!?これは夢でもみているのか、俺は…まさか、天姫に出会うとは……!」

 

もしかしなくても暑苦しい男、しかも10年後の極限男、笹川兄が登場しようとは。

私もこの時ばかりは思わなかったのである。

 

天姫の恰好は見惚れるほど格好良かった。

身体にフィットしたキャミソールに体の線を優艶に表現し、豊満な胸が動くたびに揺れるの。羨ましい、あの胸……。

ギリギリの線というきわどいところまで出しているスリット付きのミニスカ。

引き締まった太ももはすらっとモデルのように伸び、ブーツの足の先まで完璧さを出していて腰まで伸ばされた艶やかな黒髪は私の憧れ。いつかあんなに髪を伸ばしてみたい。

そして、天姫がサングラスを外す。

 

そのサングラスは私にとって思い出深いもの。

だって大好きな人にプレゼントするために何時間も悩んで選んだものだったから。

現れたのは、意思の強さを表す瞳、それは吸い込まれそうなほどの深い紫。

 

天姫だから似合う高圧的な態度。

セリフも無駄に決まってる。さすがだ。

 

「………天姫…」

 

やっとあえた。あったかいお母さんのような眼差し。

それが私だけに向けられた。

 

「ごめんね、すぐに来てあげられなくて」

 

優しく髪を撫でられ、凪の堪えきることができなかった感情が一気に押し出された。

 

「……天姫!」

 

私は耐え切れずに子供みたいに涙を零して天姫の胸にぎゅっと縋りついた。

 

「もう大丈夫。私がいるから」

 

天姫が壊れ物を扱うかのように優しく抱き込んだ。

さっきまでの恐怖が一気に消し飛んだの。

不思議、やっぱり天姫はすごいよ。

淋しかった、心細かった、骸さまも犬も千種もいない。

天姫がいなくなって、怖かった。

寂しかった、心細かった。

家族が恋しいって初めて感じたの。

 

この後、静かな怒りを天姫は垣間見せて、少し怖かったけど。でもそれよりも私は天姫があの『力』を使うたびに、天姫の瞳が紅く染まることに不安を拭いきれなかった。あれは、天姫を確実に、変える何かじゃないかって、勘ぐってしまうから。

 

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