ミルフィオーレの日本支部、地下アジトにて。
入江正一は一人、机の前で新たな反応の情報を検出していた。
それは、この並盛のどこかで、過去の人間が未来に来た反応だったのだ。
カチカチっとマウスを動かしながら、それは決定的で間違いないと判断する。
……また、過去からの訪問者か。いったい、どこから来てるんだ。
なぜ、反応が見つからない…!!
入江は極度の緊張状態が発生すると、かならずおなかが痛くなる癖がある。
ストレスからによるものなのか、
本人はそのたびにおなかに手をあてる。入江は深くため息をつき、頭を抱えた。
はやく、見つけないと、白蘭さんが…
計画通りに事が進まなければ、彼女を犠牲にしてまで行った意味がなくなってしまう
焦る想いと裏腹に事態は計画通りには進まない。
ここで部下の女二人が入江に声をかける。
「やはり、ここでしたか、入江様」
「上着は肌身離さず持ち歩いていただかないと連絡がとれません」
「君たち、ノックしたの」
「ちゃんとしました」
「何のようだい。ボンゴレ捜索会議は午後のはずだろ?」
「問題が発生しました」
その内容とは、第8グリチネ隊隊長、グロ・キシニアが重傷を負ったというもの。
しかも単独で一人、黒曜ランドに向かったということだ。
入江は詳細を尋ねた。
すると、妨害電波により感知できなかったらしいが指輪での戦闘は確実にあったとの有力な情報が入った。しかし、黒曜とは、
「あそこは、昔、骸が」
と思い出したように呟いた入り江に突如通信が入った。
『ヤッホー』
「うわぁ!!?……って、白蘭さん!?」
入江はぎょっと目を丸くして驚いた。
『グロがやられたって聞いて、正チャンの驚く顔みたかっんたんだよね~。ドッキリ成功』
「何をこんな時に、しかも!これってノーマル回線じゃないですか!?ちゃんと保護回線でしてきてくださいよっ!」
上司を平気で叱り飛ばす入江に白蘭は、さらっと流した。
『ハイハイ、正チャン。そんなに眉間に皺寄せてたらハッピーになれないよ?スマイル・スマイル♪』
「笑っていられますか、こんな時に!?」
『もう、そんなに怒んないでよ。僕だってグロの単独、知らなかったモン』
「え?」
『さすが、下種のやること。どこで嗅ぎつけたんだが』
白蘭のいつもの猫みたいな糸目が開いた。
入江はすぐさま背を向け、冷たく言い放つ。
「とにかく、次は保護回線使ってください」
『え~?もうおしまい?』
入江は答えずに強制的に回線を切った。
「入江様、どちらに」
女の片割れが突き進んでいく入江の行動を問いただした。
無論、入江は振り返ることなくこういった。
「もちろん、グロ・キシニアの所さ」
「しかし、彼は重傷で」
「かまうもんか!」
上官特権で入江はグロがいる医務室に足を運んだ。
しかし、看護師に門前払いされ入江は怒りを露わにする。
「なんで会えないんだ!」
「意識はありますが、グロ様の体は骨中を砕かれていてしゃべることが不可能なんです」
だがそんなのお構いなしと入江は乱暴に看護師を突き飛ばして中に入った。
そして入江は愕然とした。
体中に包帯を巻きつけられ、身動きが一切取れない男の姿を目の当たりにして。
確かに、これでは意思疎通などままならないかもしれないと頷ける状態である。
だがこちらからの話は通じるはずと読んで、
「貴方がどこで黒曜の情報を得たのかはすぐにわかります。我々に背いた反逆罪は重い罪と思ってください」
と無情に通達を下した。
入江はグロの血管がビキビキと反応していることを盗み見ていたが、わざと気がつかないふりをした。
そう、彼に『今』しゃべられては困る。
相手が誰であれ、彼の骨を容赦なく砕いてくれたのはありがたいと、入江は思いその場を後にした。
グロは、血管筋をビキビキ浮かび上がらせて、入江に視線を送り続けていた。
なぜなら、彼にとって、お土産ともいえることが三つあったのだ。
一つ目は、組織内に裏切り者がいること。
二つ目は、あのクロームのバッグに発信機を忍ばせたこと。
三つ目は、あの女『虚像の花嫁』が過去からやってきたこと。
ついにミルフィオーレにとって必要不可欠ともいえる『虚像の花嫁』と『虚像のリング』が手に入る時がきたのだ!
と伝えたいけど、ミイラ男なので目力で訴え続ける努力をすることに。
でもなかなか伝わらなかったり。
※
天姫side
なんか、皆の顔をまともにみるの久しぶりかもしれない。
そりゃそうだよね、軽く引きこもってたし。
「天姫ちゃん!」
「心配しました~!」
「京子、ハル……それにビアンキ姉…」
ツナたちはこれから作戦会議に入るのだろう。
さっき、笹川兄が相撲大会がどうとか、言っていた。苦し紛れの言い訳は昔から変わっていない。
ゴーラちゃんが私を抱えだした。
やめてくれ、ゴーラちゃん。嬉しいからって、私は恥ずかしいよ!!
ビアンキ姉がふんわり笑って、こういってくれた。
「なんか、抜け出せた顔ね?」
「………うん、なんとなく」
はっきりとは言えないけどでも目標は定まった。
それは良かったわって言ってくれた。それに京子もハルも嬉しそうに私の両腕をとって
「天姫ちゃん、今日こそは一緒にご飯食べましょう!!ハル、張り切っちゃいますから」
「あ、ずる~い!私も天姫ちゃんの為に頑張るからね!?」
「いや、あの…一応、恭弥の許可貰わないと…」
たじたじになりつつも、そこはちゃんとしっかりと言わせてもらいます。
でも無駄でした。我が道を行く女子たちには私の発言なんてないに等しいんですよね。
そうですよね、前の勉強会でも経験したことだった。
「え~!?いっつも旦那さんにべったりしてなくてもいいんでしょ?だって未来の天姫ちゃんの旦那さんだし、今はそんなに気を使わなくても」
「京子!?恭弥との事知ったの!?」
私の発言にしまった!?と慌てて口元を抑えるももはや遅し。
どうやって情報を仕入れたんだ!?
まだほかの皆には言っていないはずなのに…?
「ハルは驚きで目玉飛び出しそうですぅ!?天姫ちゃんの旦那さんってどういうことですかっ!?」
ああ、ハルが案の定鬼気迫る顔つきで食いついてきた……。
ヤバイ、逃げる機会を逃してしまった。
「ハルが納得できるまで説明してもらいますからね!?天姫ちゃん!」
「ごめんね?天姫ちゃん。でも秘密主義者もほどほどにね」
仏頂面のハル、それに笑顔の京子、京子がめっさイイ笑顔ですよ。
うぅ、頭痛がしてきたかも。
さっきよりも、腕をからめられる力が強くなったように感じるのは気のせいではない。
ビアンキ姉に助けてと視線で訴えれば
「自業自得ね」
と斬り捨てられました。
「うえーん!」
「「泣いてもダメ!」ですぅ!」
ズルズルと私は強制的に連れていかれました。
やはり、女子力というのは侮りがたし!
でも嫌じゃなかった、とは面と向かって言えないので内緒です。
※
イタリア、ミルフィオーレ本部にて。
一番上の最上階、部下であるレオナルド・リッピは上官である白蘭を一人待っていた。
そこにようやく食事を済ませてきた上官が帰ってきた。
ミルフィオーレのボスともあろう男が一人ぶらぶらしてくるとは、レオは顔には噯も出さずに
「お帰りなさいませ、白蘭様。お食事に行かれていたのですね」
と和やかに対応する。白蘭はレオの問いかけに、
「うん、ラーメンとギョーザ食べにね。レオ君。どーしたの?もしかして僕を待ってたの」
と言い返す。レオは少々声を震わせて(わざとであるが)、
「は、はい」
と返事を返した。
レオはこの男がどういう態度に出るのか興味があったのだ。
少々、遊び心が出てしまったともいうべきだろうか。場にそぐわない顔して中身は余裕そのもののレオはまるで仮面をつけているかのように、冷静に白蘭の行動を観察する。今までもレオという新人を演じていたのだ。
白蘭はああ!と納得した様子で、レオを見やる。
「そんなかしこまらなくても僕とレオ君の仲じゃない。あ、もしかしてやめたいとか?」
「あ、はい!…その白蘭様には大変に申し訳ないのですが、一身上の都合でやめさせていただきたく」
「え~?もったいないなぁ。だって君の才能、僕は高く評価してたんだよ?」
レオは困った顔をした後、小さく体をちぢこませて「恐縮です」と苦笑した。だが内面じゃ、その才能というのは、どこら辺をさして行っているんでしょうねと悪態づいていた。
なんてくだらないやり取りを交わしている間に、白蘭のおふざけモードが解除されたらしい。白蘭は自身の机の上にあるマシュマロ袋からマシュマロをひとつかみし、口の中に放り投げる。そして、「あー、美味しい」と好物に舌鼓する。そして、満足したのか、白蘭はレオにこう言った。
「だってさ。君はあのグロをうま~く誘導して黒曜に向かわせたんだからね。そんな有能な部下を失うなんて惜しいじゃないか?」
「え、何をおっしゃって」
なるほど、そうきたかとレオは少し悪戯心に火が付いた。
一応、演じてみますか。どうせ、見破られていると思いますがね、と即興お芝居を演じることに。
「そんな、白蘭様。僕がそんな白蘭様を、ミルフィオーレを裏切る真似なんてするわけないじゃないですか!?」
「そうかい?」
「はい!僕の忠誠はたった一人だけに捧げていますっ!」
「それって誰に向けての忠誠心?」
そう聞きますか。
ここで貴方だと言えばセオリー通りなんでしょうが、あいにくと私の忠誠心はここ(ミルフィオーレ)にはない。
レオが押し黙ったのを楽しそうに見ながら、白蘭はズバズバと真実を語った。
「君はどうしてもクローム髑髏を勝たせなくちゃいけなかった。だからグロを単独でいかせ情報を操作した。違う?……六道骸君」
クフフフフフ、愉しいですね、この掛け合いは。
ですが、ついに潮時ですね。
私=六道骸は一瞬にしてレオナルド・リッピの仮面を剥いだ。
「貴方が入江正一に知らせたりしなければ、もっと遊べたんですがね」
ガラリと口調を変えたレオに驚く素振りどころか、まるで旧友との会話を楽しむかのような素振りで歓迎をする白蘭。
「よく言うよ。遊びを超えて大っ嫌いなボンゴレの仕事しだしたのは君だろ?」
「ボンゴレですって。心外ですね。あくまで私は天姫のものなんですから、他の連中と一緒にしないでいただきたい」
ぴしゃりと白蘭に言い放ったレオナルド・リッピの体はあっという間に濃霧に包まれ、全てが明るみに出た時は、10年後の六道骸として堂々と白蘭に対峙した。
あのレオナルド・リッピは骸が形代として使用していたに過ぎないもので、バレてしまえばもう用済み。
「へぇ、君が骸君か。天姫ちゃんが大事に育てたって言う。結構カッコいいね。それにしてもそのレオ君だっけ?それは第2のクローム・髑髏って考えていいのかな?」
白蘭の質問は単なる興味本位だろうと推測した骸はただ妖しく含み笑いするだけにとどめた。自ら情報を曝け出すバカな真似は、10年前の誰かさんくらいだと嘲る。
「クフフ、どうでしょう。ご想像にお任せします」
「そう簡単に企業秘密は話せないか。残念だな。それにしても骸君殺る気満々じゃない。そんなに彼女を盗った僕が恨めしいのかい」
恨めしいどころではない。
むしろこの手で直接引き裂いてやりたい、それ以上の苦痛を与えてやりたいと骸はこの機会を虎視眈々と狙っていたのだ。
彼女を、天姫を籠に閉じ込めるなど神でさえためらったというに、この男はぬけぬけと天姫を奪っていったのだ。
天姫がミルフィオーレに捕らわれの身になったと連絡を伝えられた時は、骸自らミルフィオーレに単身乗り込もうとさえした。それを10年後の犬や千種が何とかして抑えたのだ。ある理由で、直接自分の体ではなく他人の体を利用してはいるが、もし仮に自分の体であったなら、遠慮なく白蘭を八つ裂きしにかかっているところである。
「当然ですよ、私は愉しみにしてましたからね。ベールに包まれた貴方の力が試せる。…そして、私から天姫を奪った事に対しての報いを受けさせる為にね」
そういって、骸は一個の匣を持ち上げた。
そして、白蘭も己がマーレリングをかざす。
「食後の運動くらいにはなるかな?楽しませてよ」
※※※
二人の白熱した闘いは、骸の敗北により終わってしまった。
白蘭によって負わされた右目の傷は深く、ドクドクと赤い血が目元から頬を伝って流れていく。骸は右目を抑え片膝をつきながらも、目の前に悠然と立つ白蘭から警戒を緩めることはない。
少し、傷が深すぎますね…。
焦りを感じ取りつつも、できる限りの時間稼ぎをしなければと画策する。
だからこそ、お得意のお喋りを始めた骸。
「なんて恐ろしい能力なんでしょうね。さすが、ミルフィオーレの総大将といったところですか?……敵いませんよ」
「またまた、そんな事言っちゃって、喰えない骸君だなぁ。君のこの場所での闘いは下調べみたいなものだろ?謎に包まれてた僕の戦闘データを持ち帰る事が一つ♪。もう一つは…彼女の居場所を捜しにきた、とかだね。いやそっちのほうが目的に近いかなァ?ねぇ」
と白蘭の目がすぅっと細くなった。骸の眉がピクんと反応する。白蘭はその僅かな変化を見逃さなかった。
彼女、その存在を示すのは骸が求めるただ一人の女性だ。
今もこのアジトの何処かに隠されている神崎天姫。
どんなに天姫に近い場所だろうとも、今骸の状況は非常に危うい立場にある。
骸は必ず助けに行きますと、強く想った。
「ほう、面白い見解ですね。だとしたら、どうすると言うのです」
骸は決して白蘭から視線をそらさないまま、その場に立ち上がる。
白蘭は「おや、立てる気力がまだあったんだ」と軽く目を見張っては、
「叶わないよ、それは。この部屋は少し特殊でさ、光とか電気とか、あ!あと、思念とか?そんなものも遮断できるんだよ、知らなかった?」
とまるで骸の胸の内を見透かすかのように言ってのけた。
「クフフフフ、何を言っているのか、さっぱりですね」
狸と狐の化かし合いはこれで終わり。
もう、この体は用済みですね。長居する気はないですから。
時間稼ぎは十分すぎるくらいに満たされた。逃げるが勝ちという時もある。
「では、楽しかったですよ」
「残念、実体化解くのに失敗したでしょ。だから、ここはそういうの遮断するってさっき言ったばかりじゃない?」
小馬鹿にするように白蘭は逃げ道を失った骸を追い詰める。
「クっ!」
窮地に立たされた骸には、本来骸が持つに相応しい霧のボンゴレリングはない。
そして、先ほどまであった指輪も白蘭の驚異的なマーレリングによって破壊されている。
よって、今の骸に白蘭に対抗できる力は残されていない。
「ボンゴレリング持たない君に用はないんだよね。いっその事ホントに死んでもらおうかな……ってなわけで、バイバイ♪」
白蘭はとどめを刺す為、マーレリングを光輝かせる。
天姫………私は、こんなところで…終わるには!
そこで骸の意識は途絶えた。
※※※
とある一方、日本ボンゴレ地下アジトにてそれは突然起こったのだ。
パリィィィイイイイインン!!
「っ!」
夕飯時、恭弥と食事中のことである。
その時の天姫は妙なざわざわとした落ち着かない気持ちを抱いていた。
まるで、一部が壊されたような、そんな悪寒が走ったのだ。
「天姫、どうしたの?」
隣にいる恭弥が何事かと天姫の手元を覗きこんだ。
そして、わかりやすいほどに顔を歪めた。
「……気にいらないね…」
「……」
天姫は何も言えなかった。
天姫の持っていた茶碗がパリンと割れたのだ。ヒビなど入っていないはずの新品の綺麗な茶碗だったというのに、それが真っ二つに割れるなど、ありえない。
だからこそ、天姫には言いようのない不安を感じたのだ。
まさか、あってほしくないことだが、確かめなければいけない!
そう思い立った天姫はバッと立ち上がり、
「天姫!?」
「凪のとこ行ってくる!」
そう言い残し、天姫は部屋を飛び出した。
この、感覚。
そう、現代で何度も共有し合ったパスだ。
目指すは、あの子と『契約』している凪の所へ。
全力疾走してたどり着いた食堂。天姫は自動ドアをけ破る勢いで入室する。
「天姫!?」
丁度同じく夕飯を食べていた最中だったのだろう。
皆が心配そうに凪に声をかけている最中で天姫はやっぱり凪も感じ取ったと直感した。
凪が床に座り込んで何かを抱え震えていた。
「凪!」
たまらずに、天姫は心配そうに集まる皆をかき分けて凪を抱き込んだ。
「天姫!?」
「いったい、どうしたんだよ」
「天姫ちゃん!?」
突然の行動に皆も戸惑いを隠せない様子だが、律儀に説明するほど天姫にも余裕はなかった。
ただ、凪を落ち着かせなきゃとその一身で震える凪を抱きしめるだけで精一杯。
「天姫、三叉槍……粉々になっちゃった……」
凪が、涙をにじませて震えさせた声を出した。
彼女が抱えていたものが、カシャンと音を立て落ちる。
それは、破片となった三叉槍の一部。
それが意味するものは、ただ一つ。
この三叉槍の持ち主である、骸の身に何か起こったという事。
しかも最悪な形で。だが天姫は「大丈夫よ、凪」と声をかけた。だが
「だって、だって!!骸さまの三叉槍が」
とひどく取り乱した様子で天姫にしがみついては泣きじゃくる。
「大丈夫よ!」
天姫の大声で凪の肩がビクンと震えた。
天姫は一旦、密着させていた己の体を離し凪と視線を合わせる。
ちゃんと凪を落ち着かせるためだ。
「信じなさい、凪。あの子は無事よ」
「……で、も……」
天姫は凪の顔に手を添えて涙を拭ってやった。
「骸が素直に殺せるタイプだと思ってる?あの子は殺しても簡単には死なないタイプよ。だって骸だもの」
「…確かに…」
凪はやや間を置きコクンと頷いた。認めてるのね、仲がいいのはいい事だわ。
「それに、ね?凪」
「天姫?」
凪の髪を丁寧に整えながら私は無敵に言い放った。
「私の『家族』が簡単に死ぬはずないもの。ね?だって私がしぶといから。そう思わない?」
あの子には、甘チャンな教育は一切していないから。
愛情たっぷりに注ぎ込んできたけど、自ら死を招く行為を教えたつもりは全然ない。
私がそういうのが嫌いなのをわかっているから、わざわざ私から嫌われてまで、するとはあの骸はしないし。
と天姫はウインク付きでおどけてみせた。
「信じよう、骸は生きてるって」
「……うん…!」
凪は弱弱しくも笑みを見せ、強く頷いてみせた。