闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的120とりあえずげっと。

凪は夢の中で不思議なものを見た。

暗闇の空間、自分は真っ白なワンピースを着て誰もいない廃墟を歩き回る。

 

いつも、この夢は天姫と骸さまに繋がっているのに………

 

『天姫!』

『骸さま!』

 

いくら叫んでも、返事が返ってくることはなかった。

じわりと凪の瞳に涙が生まれる。

 

一人だ……今、私一人なんだ。だって闇が深いから。

 

私に向かっておいで、おいでって手招きしている。

 

でも、違う。天姫は私のお母さんだもん。

これからはずっと一緒だよって言ってくれたもん。この未来での闘いが終わったら、一緒に暮らせる家族みんなで一緒にいられるんだ。

 

落ち込んじゃいけない 負けちゃいけない。私にだってできることがある。そう、私にしかできないことがあるんだ。

 

凪は闇の中を走った。走って走って大声をあげた。

 

『変態な骸さまー!』

 

『天姫大好き人間でひねくれものであっぽーでパイナップル星から来たパイナップル星人で天姫の腰に抱き着くのが大好きなお子ちゃまで変な交信とかできてなおかつ犬を苛めるのが大好きなくせして天姫に攻められたいって密かに思ってるムカツク骸さま―――――!』

 

『早く出てこないと天姫独り占めしちゃうからぁぁぁあああああああ――――!』

 

凪の声は闇に吸い込まれていった。

しばらく経っても何も変化は見られなかった。

 

やっぱり駄目だったのかな…。

 

そう思い落ち込んで肩を落としていた時、ある足音が響いた。

そう、凪しかいない空間にダッダッダッと勢いよく地面を蹴る音がだんだんと近づいているのだ。凪はきょろきょろと辺りに気配を巡らせた。

 

どこから?でも、近い…

 

『なぎぃぃぃぃいいいいいいいいいい』

『許しませんよぉぉぉぉおおおおおお!』

 

雄叫び上げながら俊足で後方から走ってきた生き物。

馬のしっぼのような髪を後ろで縛り、三叉槍を右手に持って血走った眼でひたすら凪を睨む長身のイケメン男が出現した。そして、凪の前でピタリと止まる。

 

『あ、なんか知ってるっぽいかも』

 

凪はイケメンを目の前にしていった。

 

『っぽいとは何ですか!?私を忘れたとは言わせませんよ!』

 

ゼハゼハ息を切らしながら男は凪に文句を言いました。

凪は目をぱちくりと瞬きさせこう問いました。

 

『もしかして、10年後のあっぽー?』

『あっぽーではありませんっ!さっき骸って言ったでしょうが!?それに天姫を独り占めしていいのはこの私ですから!それに色々としっかり聞こえましたからね?私の悪口をこの!』

 

むにゅ!

『はにゃ!?』

 

骸はキレ気味に凪のほっぺを左右にひっぱった。

 

『口が言っていた事を!』

『いひゃいっ!』

 

凪は抵抗しようとするが、骸のほうが身長は高いし、ぶんぶん凪の手が骸をはたこうとするが一向に当たる気配はなかった。

 

『う~!』と唸り涙目で骸を睨みつける凪と、

『クフフフ』と愉しそうに上から目線をする骸。

 

とりあえず、凪は骸の足を思いっきり踏むことで脱出に成功した。

そして痛みに悶絶する骸を見て頷いた。

 

『よし、骸さまげっと!』

 

これで、天姫の心配の種は一つ減った。

 

 

そして、もう一方天姫は、同じく夢の世界に足を踏み入れていた。

そこは白く、何もない世界。ただすべてが白に染められた、純白であり、汚れ無きものだった。光に守られ、決して闇が侵入できない場所。天姫はそこに立っていた。

黒くふんわりとしたワンピースを着て、まるで自分が異物ようだと天姫は冷静に観察する。

 

『なんで、こんな所に』

 

ワキワキと己の手を動かしてみる。うん、どうやら感覚はあるらしい。

 

だと、すればこれは誰かの空間なんだろうか。

現代にいた時、天姫と凪と骸がよくいた夢と現実とのはざまの世界にも似ている。

勿論、あの空間とは少し違うものと感じるのも事実。

もしかしたら、誰かの想いに引き込まれた可能性が高い。

 

しかし、私の知り合いでこんな芸当ができるのは……数えるほどしかいない。

うーん、と唸っていると、一つの気配が出現した。

おもむろに、天姫はそれに視線をやる。現れたのは、小柄な少女だった。

天姫を見た瞬間、彼女はなぜか歓喜に震えそしてこう叫んだ。

 

『天姫姉様!?』

『へ?』

 

突然の事に天姫は間抜けな声を出すしか対応できなかった。

アルコバレーノしか持つことが許されないおしゃぶりを首から下げ、目に涙を溜めた少女は天姫に全力でタックルした。

 

『天姫姉様!』

『ぐげっ!?』

 

それが丁度みぞおちに入った天姫は、少女ごと後ろに倒れて行った。

 

『あ!?天姫様!天姫姉様ぁぁああああ?!?』

 

白目向いて倒れてしまった天姫を見て少女はパニックになり悲鳴を上げた。

それから、数十分後。何とか白目から生還した天姫は再度、少女と向き合った。

 

『えーっと、私の事知ってるみたいなんだけど、前に会ったかな?っていうか、いいタックル持ってるね』

 

少女は恥ずかしさから赤面し、

 

『ごめんなさい!だってあんまりにも嬉しくて……』

 

と恐縮してしまった。

なんと、その様子が天姫の胸をときめかせた。

きゅん!と。

 

『可愛い!』

『え?』

 

むぎゅうっと抱きしめていた。

 

『可愛いなぁ、癒されるぅぅぅううう!』

『!?』

 

少女は天姫に抱き締められたことによってさらに顔を赤くさせた。

 

『それで、貴女の名前は?』

『あ、あのユニです』

『そう、ユニちゃん。可愛い名前ね』

 

ユニちゃんかぁ、にっこり微笑みながら、天姫はユニから離れようとはしなかった。

それにユニもまんざら嫌という事もなくされるがままとなっていた。

 

『ユニちゃんは、ここで何してるの?』

『はい、ある場所から逃げています。そうしたら、天姫姉様の事を考えていて、そしたら本当に会えたんです』

『そう、私はユニちゃんに呼ばれたのね。っていうか、何処でユニちゃんと会ったっけ?』

 

こんな可愛い子なら、忘れるはずないんだけどなぁ、と首をかしげた。

ユニはその様子をクスクスと笑いながら言葉を付け足す。

 

『天姫姉様はご存知ないのも無理はありません。だって私があったのは未来での天姫姉様なんです』

『未来の、私?』

『はい、天姫姉様はお母さんの古くからの友達だって紹介されたんです。

いつも焼き立てのアップルパイを作って持ってきてくれました。

そして、私に同じ台詞を毎回言って毎回同じ行動をするんです。』

『へぇ~、どんな?』

 

ユニはさっきも言いましたよと、笑った。

 

『え、そうだっけ』

 

まったくわからんと、しばし考えて天姫は降参と両手をあげた。

ユニはにこっと笑みを浮かべ、こういって抱き着いてきた。

 

『可愛い!』

『可愛いなぁ、癒されるぅぅぅううう!』

 

むぎゅうっと、さっき天姫がユニにしたことをまたユニはしたのだ。

 

『もしかして、さっきのを毎回私はユニちゃんにしてたの?』

『ハイ!』

 

きっぱりとユニはイイ返事をしたそして、天姫は脱力した。

 

『未来の私って進歩ねぇぇえええ』

 

と。でもと、ユニは言葉をつづけた。

 

『私は嬉しかったんです。天姫姉様は全然、変わらなかったから。私を大空のアルコバレーノの娘としてではなく、一人の人間として、天姫姉様は見てくれました。だから嬉しかった』

『ユニちゃん…』

『ユニと呼んでください。天姫姉様』

『……ユニで、いいかな?』

『ハイ!!』

 

それから色々と話した。

ユニは、アルコバレーノのボスであり、大空の持ち主。そして白蘭から他の仲間の魂を守るため、逃げていたと。

 

『お母さんはいつも天姫姉様の話をしてくれました。天姫はいつも私の先見をことごとく破るって。破天荒で天姫だけは先が読めない、だから天姫は私を楽しませてくれる大事な友達だって。

笑って言ってました』

『そう、破天荒……フフフ、当たってるから何も言い返せない私です』

 

と天姫は落ち込んだ。

 

『こうして天姫姉様に会えるとは私も思いませんでした。だって最後の闘いに天姫姉様の姿はなかったのもの……』

 

天姫はユニに静かに尋ねた。

 

『最後の、闘い…、ねぇ、ユニ。アルコバレーノは呪われた証を持つ故に赤ん坊の姿となっている。ユニ、貴女が今の姿でいるのは何が代償となっているの?』

 

ユニは口を噤んで、それには話そうとはしなかった。

いや、話したくはなかったのかもしれない。だが重要な件なので天姫は問い詰めるように言った。

 

『………先見の力、弱くなっていない?』

『………それが、私たちの呪いなんです。大空のアルコバレーノは代々短命にある。それが、私が受け継いだものです』

『今はどのくらい先を知っているの?』

『…今ははっきりとは言えません、でも遠くない先、また天姫姉様と会えます。それは確実に自信を持って言えます!』

 

だから、とユニは天姫の手を握った。

 

『天姫姉様も前に進んでください。私は待っていますから』

 

今の、天姫の心境を理解したうえでユニは言ったのだ。

 

『………わかってるよ。ユニ』

 

そういって、ユニを手を握り返した。

 

『かならず、ユニに会いに行くから。だから待っていて』

『ハイ』

 

ユニはとびっきりの笑顔で天姫を見送り、そこで天姫の意識はだんだんと薄れていく。

 

再び、意識がはっきりしたとき、視界に広がったのはいつも見上げている天井。

隣には恭弥が寝ていてあどけない表情をしている。

天姫はクスリと微笑み、自分の手を持ち上げ見上げた。

 

あの感触ははっきりとまだこの手に残っている。

ツナたちの修行にいそしんでいる。皆が現代に無事帰れるために。

 

私も進まなきゃ、ユニに出会う為にも、ユニを救う為にも。

 

(『虚像の花嫁』は自分の歩むべき道を決めたたとえ、それが茨の道であろうと。彼女は決断した。自分の在り方というものを)

 

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