天姫side
決戦日前日、大人組にまじって私も参加してます。
っていうか、恭弥が離してくれないだけなんだけど。
畳の上にそれぞれのポジション、決まってるのか知らんけど、円を描くように座る順序で、笹川兄、ラル、それに哲さん。そして恭弥と私。
皆、着物を身に纏ってある種のお茶会みたい。なんて、お茶じゃなくてお酒ですけどね。
ラルって色っぽいよね。哲さんはスーツだけど大人の渋さが出てるわ…。相変わらず見事なリーゼントですけど。
「浮気は許してないよ」
ぐぎっ!と顔に伸ばされた両手で私の首は強制的に下を向かされた。
「哲さん見ただけで浮気になるんかい!?」
「僕以外、視界に入れた時点でアウトだから」
私アウトしまくりじゃんか!?窮屈で仕方ない…。
それもこれもこのおっきい猫のせいだ。
私の太ももを占拠し続けるデカい猫、もとい恭弥。
のんきに寝たふりしやがって。私は指先で恭弥の頭をつんつんしてやった。
「恭弥、降りろってか、どいてください」
「いやだ、別にいいじゃないか。僕たち夫婦なんだし」
「よくない。うちらこれから何話すかわかってるだろーが、それに足がしびれてきたの。足限界!」
一応、体格差あるって理解してるのか、この男は。
「知らない」
そういって恭弥は尚更、私の腰に腕を回し離れなくなった。
「アンタは子供か」
もう脱力して何をいっても聞かないと判断した私は放置することにした。あえて、皆には
「コレの存在は無視の方向で」
とお願いしました。
「くだらん」
ラルには一蹴され、
「お嬢、申し訳ありません」
哲さんにはおもいっきり頭を下げられ、
「ヒバリ、場をわきまえんかぁぁああ!」
と怒っている笹川兄でした。すると、そこへリボーンがきました。
「俺は認めた覚えはねぇけどな」
物騒なもん(機関銃)を携えて。
「リボーン、殺気飛ばすのやめてくれませんか。これ以上話をややこしくしないで」
「いいよ、赤ん坊。納得するまで相手してあげるから」
恭弥もむくりと起き上がると殺る気満々になってしまった。
私は皆が目を見張る速さで恭弥の頭をはたき事をなんとか沈めさせた。
「…ったく、話が進まないでしょうが。哲さん、さっさと話を進めて!」
「へい」
哲さんが皆に報告したのは、明日の成功率を数値化したものだ。
結果それは
「0.0024%となりました。無論ラル・ミルチも含めての数字です」
たぶん、私を含めないでの数値だろう。
最初からここに残らせるつもりだと私は察知していた。
はっきり言って数値で言えば勝てる見込みなど奇跡に近い。
でも、私にはそんな風には思わなかった。
リボーンも同様らしい。私と視線を合わせ、コクンと頷いた。
「天姫もか」
「うんだって、ただの数値だし」
「そうだ、今のあいつらはどこまでが限界だなんて目盛は存在しねぇ」
私たちが思う以上にツナたちは大きく逞しく成長している。
修行の成果。試すときが明日やってくる。私は皆を顔を見渡して言った。
「私たちのやることは、ただ一つ」
あの子たちに未来を託すのなら、私たちが全力でサポートするだけだ。
大人組はコクンと頷きお互いの意思を確認した。
「君はいつも独断で動くから今回は一人で動かないように」
なんて恭弥から小言を言われたりしたけど気にしないもん!
突き刺さる視線は、たぶん一人だけではない。
私はそれを回避しつつ、自信なさげに言った。
「…大丈夫だよ、たぶん」
「僕の顔みて言って」
ぐぎっと横向いてた顔を無理やり恭弥の真向いにもっていかされた。
だから首、変な音したって!?
「痛いってば!恭弥のアホ、馬鹿力!」
「その言葉そっくりそのまま返すよ。天姫……どうやらお仕置きが必要みたいだね」
「げっ」
逃げようとしたけど無理でした。私はあっという間に恭弥に抱きかかえられ、彼は皆に
「じゃ、僕たち寝るから」
とお休みのあいさつをして別室へ移動しようとする。つまり寝室へ。私付きで。
「ちょっと待てぃぃいいい!たちじゃねぇよ、私含まないでアンタだけ寝てこい!ってか夕飯食べてないのにもう寝るの!?」
「僕は愉しみは先に食べるほうなんだよ。特に今夜は、ね」
そういって恭弥はニヤリと私だけに意味を含めていった。
く、喰われる!?いろんな意味で喰われる!!
「いやぁぁぁぁぁああああああ!!」
「俺が許すと思うか」
今度こそリボーンが両手に銃手にしてぶっ放してきました。
3人で追いかけっこする羽目になりました。
ちゃん、ちゃん。
※※※
理屈だけで自分を制御できたらどんなに楽だろう。
余計な感情に心を乱すことだってないしいつも平静でいられる。恥ずかしいところだって、愚かな所だってみられることなんかない。
冷めた感情して笑顔の仮面張り付けて、心が凍っていくのを頭で感じながらそれでもやめる事はできない。
今、私はとぼとぼと廊下を歩いています。恭弥から命からがら逃げてきたから。部屋に戻りたくない、っていうか戻れない!
でも、なんか後で捕まりそうな気がしてならない。
こんな時、私の勘は決まって当たったりするのだ。
当たってほしくない時だけ当たるってすごいと思う。
いやいや、ここは気落ちしてる私を無理やり元気にするために、あんな猿芝居打ったとか?
「あ~あ!大人なのになぁ、私」
なんで、明日はミルフィオーレに突入を仕掛ける大事な日だってのにこんな最低なテンションなのか。
駄目だ駄目だ!!
私は気合を込めるつもりで自分の頬を思いっきり叩く。
明日で、生きるか死ぬかが決められる。
気を抜くわけにはいかない。なんとしても、皆で帰らなきゃ。
そして、ツナと、
ううん、あの家とお別れをしよう。
また逃げるんですか?って燐華に飽きられるかもしれない。
狗楽も懲りないねとか、ハリセンとかではたいてくるかもしれない。
揚羽は仕方ないねって、また苦笑するかもしれない。
そう思われても仕方がない。私っていつも逃げてばかりだったから。
でもね、ツナが理由なだけじゃないんだよ。
私自身が整理しないと、先に進めないの。
いつまでも、過去に縛られたくないから。
私だって未来を歩みたい。
いつか、私と狗楽が異母姉妹だって狗楽に告白したい。
パパとだって、向き合いたい。
飛び出して、パパの本当の気持ちを聞いたことがないまま、魏を飛び出した私。
あれから色々あった。
劉牙を愛しいと感じて、燐華に怒られたりしたし、蜀の劉備殿を偶然助けたり、そのままいてくれって頭下げられたり、呉に行ったときに行方不明だった揚羽と狗楽に遭遇するし、昔逢った、伯言と再会したり、蜀と、呉が同盟組んだり、魏から逃れてきたじーじと共闘して、曹操様と夏候惇おじ様と戦したり、いがみ合ったり、時たま笑ったり、劉牙に何度目かのプロポーズ受けてオッケーして、大勢の仲間に祝福受けて、……劉牙を殺してしまって、自分を忘れて、皆を悲しませてきた。
迷惑かけ続けてきたんだ。もう逃げたくない。私は逃げたくない。
あの温かくて家族の匂いがする場所は私の本当の居場所じゃない。
じゃあ、私の本当の場所は何処なの?って聞かれたらすぐに答えられない。
でも、あそこは違うって言える。
だから、私は自分の力で見つけたい。
『虚像の花嫁』としての自分ではなく
神崎天姫として、私は見つけたい。
(向かう先は何処だろうと不安はない)