闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:松魚

123 / 160
標的124原動力=彼女

沢田綱吉side

 

俺たちは地下アジトから出て、並盛の駅を目指していた。

もちろん、皆、駆け足で、ヒバリさんと天姫が大多数の敵を足止めしている間に、敵の警備はやっぱり手薄だったから。

本当は心配だった。

じゃじゃ馬な彼女の事だから絶対京子ちゃんたちと一緒にアジトにいることは考えてなかったけどね。俺たちと一緒に行ってほしかった。

ヒバリさんと一緒に居ることは何か彼女に理由があったのかもしれないけど、本音はこんな感じ。山本も内心は俺と同じなんじゃないかって思う。

それにね。君の去りゆく後姿がこんなにも眩しいだなんて思った事なかった。

君が今まで守られる立場じゃなくて守る立場だった事が痛感させられた。

普通の日常を送ることがなかった君の普段は、いつも警戒しなければ生きていけない環境だった事。それが、強く逞しい君を育て上げた。

だって、君は僕らに去り際に言った言葉。

 

『またな』

 

だって、不敵な顔して余裕たっぷりに言ってくんだから。

カッコいい…って久しぶりに赤面しちゃった。

男の俺よりも、毅然と確かな勝利を確信してるみたいで、絶対皆が無事に戻れることをわかって言ってるみたいだったから。

俺も君を信じるよ。天姫。だって最初から君を知ることにしたんだから。

俺は自分の右手にはめられた『大空』の指輪を一瞬見た。

確かに『契約』は破棄された。

未来の自分が天姫との『契約』を破棄していた事実、その天姫がヒバリさんと婚姻していた事。

聞かされた事実は俺にとって、衝撃であり途方もない苦痛だった。

でも、未来の俺は何か深い理由があって、天姫との『契約』を破棄したんじゃないかって考えた。

未来の俺の気持ちなんて、そんな簡単にわかるわけないって思われるかもしれないけど、今俺と天姫の関係を考えれば納得もできたんだ。

だって、俺は天姫を自分の所為で失いたくないから。

彼女には笑っていて欲しい、天姫には大空が似合う。囚われて表情を失くした彼女は、彼女ではない。

俺は笑ってる天姫が好きだ。自然体の彼女が好きだ。

ありのままの彼女が大好きだから。

だから、未来の俺もそんな気持ちで神崎天姫を手放したんだと思う。

彼女に笑って過ごせる世界で生きて欲しい

そう願って、手放した。

気がついたら、獄寺君と山本が俺を抜かしていたことに驚いた。

あれ、さっきまで俺の後ろ走ってなかったっけ?

目的地にはビアンキが先に誘導するために危険な中、来ていてくれた。

 

「ビアンキ!」

「見送りにきたの、この中からダクトに行けるわ」

「ありがとう」

 

少し、緊張気味だったけど、ビアンキが笑みを浮かべてこういってくれた。

 

「京子とハルの事はまかせなさい。それに天姫の近況も随時知らせてあげるわ」

 

う、やっぱ気がついてたんだ。天姫の状況どうなってるかっていう気持ちに。

気まずくて頬をぽりぽりとかいた。

 

「……ありがとう、その…皆をよろしく」

「ええ、しっかり暴れてきなさい」

 

そういって俺の肩を思いっきり叩いた。

 

「痛っ!?」

 

手加減してくれよ…でも、これで腹はくくった。

 

「いってきます!」

「いってらっしゃい」

 

俺は笑顔でビアンキに言ってダクトに備え付けられた梯子に足をかけた。

さて、ツナ君だけがあの天姫を心配しているわけではない。

隼人くん、武くんも実は心配しまくりだったりしました。

※

並盛ショッピングの地下駐車場を目指している最中の会話です。

緊迫した状況のなか、武くんが最初の言葉を発しました。

 

「しっかし、さっきの天姫ってかっこよくなかったか?」

 

無論、問いかけているのは、隣を走っている隼人くんです。

彼は、のほほんと話しかけてくる武くんにキレ気味に怒鳴り返しました。

 

「てめ、喋ってる暇があったら走りに集中しやがれ!!」

「しっかり走ってるぜ、俺は」

 

確かに、そういう武くんは一切息を乱した様子は見受けられませんでした。

リボーンとの根性の修行のたまものというものですね。

隼人くん、う、と言葉に詰まってしまいました。

 

「……確かに、男前だった、クソっ…惚れ直しちまったぜ…」

 

ぼそっと、照れ気味に言ったのを武くんは聞き逃しませんでした。

 

「獄寺って、天姫にベタ惚れだったんだな」

「なっ!?馬鹿、ちげぇ!?」

 

あわあわと顔を真っ赤にさせて否定しまくりました。

しかし、その顔をみてもどう否定しても言い訳できません。

武くん、とても爽やかにに言いのけました。

ええ、それは本当に爽やかにこれから敵地に突入する人の台詞とは思えないほどにです。

 

「天姫の騎士(ナイト)のポジションは誰にもやらねーから」

「アァ!?」

「つまり、俺は全力でアイツを守るってことだよ!!」

 

そういって、武くんは隼人くんを追い越していきます。

隼人くんは危機感を募らせました。

あの余裕ありまくりな素振りが隼人くんのやる気に火をつけました。

 

「ふざけんなよっ!?天姫を守るのは俺の役目だぁぁぁぁああああああ!!!」

 

そういって、武くんの隣に並び、追い越しました。

今度躍起になったのは武くんです。

 

「上等だっ!」

 

と言ってさらにスピードを上げました。ぐんぐんと。

 

「クソがっ!」

 

隼人くんも負けじとさらにやる気を出しました。

グングンと進んでいく二人。

いつしか、先頭をゆくのは隼人くんと武くんになりました。

ツナくんは、何やら上の空でなにもわかっていない様子でした。見守る大人二人は

 

「………アホが」

 

とラルがあきれ返り

 

「フム、やる気に満ちているのはいい証拠だ!!俺も負けていられん」

 

そういって、笹川兄がうぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!!と叫び、俊足になりだしました。

「………お前まで感化されてどうする」

 

とラルはまたさらにあきれ返りました。

しかし、天姫らしいと、内心関心していました。

 

こうやって、アイツは奴らにとって原動力となり、さらなる力を発揮させる。

本人が自覚しなくとも、十分、皆にはやる気をださせている。

自分も例外ではない。

 

コロネロを失い、未来の天姫を敵に捕らえられたと知った時、絶望した。

大切な人を、大切な友を失くした事。

我武者羅にやってきた。

自分の体のことなどかまわずただひたすら敵を倒すことだけを考えてきた。

しかし、過去の天姫に出会い、アイツが悩み苦しみながらも成長していく様を陰ながら見てきた。

俺は思い知らされた。立ち止まっていたのは自分の方だった、と。

ただ、悲しみを受け入れられず悩み、下を向いた日々死んでいたも同じだった。

だが、あいつが来てから過去のボンゴレの奴らが来てから、俺の環境は一変した。

 

先を見ることができた。とにかく進むことができた。

先がどうなるかわかるわけじゃない。だが、進まなければわからない。

そう教えられた気がしたんだ。

 

常々、未来の天姫とケンカしていた日々を思い出す。

その理由は大半がアイツ自信が無鉄砲な行動をする事だった。

普段から敵に狙われることが大半だった日常の中、アイツはしょっちゅう居なくなったり、帰ってきた時なんか返り血を大量に浴びて帰ってきて卒倒ものだったりするのが多かった。

そして、そこからお決まりのバトルが始まる。

口喧嘩から、手が出て足が出て、双方の武器で闘い、果てには周囲を巻き込んで、建物を軽く吹っ飛ばすことなど、たくさんあった。

瓦礫と化した場所で俺はいつも通り、天姫に説教していたな。

 

『もっとおなしくできんのか、お前は』

『だってラル。世界は広いんだよ?閉じこもってるなんて性に合わない』

 

そういって、アイツは俺から目線を外した。

だから、無理やりアイツの頭をガシっと両手で掴み無理やり顔を合わせた。

 

『合わないからって突然消えて2週間後に血まみれの泥だらけで帰ってくる馬鹿があるか!?』

 

天姫はうぎゃ!!?と悲鳴を上げながら俺に抵抗したが、無駄だと、鼻で笑った。

 

『しょうがないじゃない、アレは抗争に巻き込まれて仕方がなく相手してやったまでだし。私、売られた喧嘩は買うことにしてるの、アダッ!』

『そのたびに冷や冷やさせられる立場にもなれっ!!』

 

この石頭が、あの時、グーでげんこつをくらわせたのだが、俺の手の甲もジンジンしていた事は絶対言えなかった。

 

『痛いよ、ラル~。手加減してよっ』

『するか、アホっ』

 

俺も痛いなんて情けないこと言えなかった。

ある意味意地だった。

 

『…………』

『………』

『……スイマセン…』

 

天姫が正座の姿勢になり土下座した。これで懲りたかと、俺が天姫に言った。

 

『もう二度としないと誓え』

 

だが、天姫は顔を上げてなぜか晴れ晴れとした笑顔でキッパリと俺に言った。

 

『それは無理』

『!!』

 

このアホが、一かい地獄見せてやろうかと、本気で思った時、アイツは真剣な声で

 

『だってね』

『動かなきゃ、始まらないでしょ?』

『はぁ!?』

 

さっきのげんこつで頭がおかしくなってしまったのか、そんな心配をしてしまったが、天姫はまっすぐに俺を見て

 

『私は、自分が選んだ道を後悔したくない。だからとにかく動く。動いて何かをする。今まで『アレ』に縛られてたから。縛られてた分を取り戻す。私が自分に正直に生きたいって思えるようになれたから、だから自分の好きなことしようって思って行動してるまで』

『だから、ラルも行こうよ?』

『一緒に、行こうよ』

 

天姫は笑顔で俺に手を伸ばしたんだ。でも、俺はそれを振り払った。

 

『馬鹿馬鹿しい、お前だけ行ってこい』

 

そういって、アイツだけを残してその場を離れた。

どうせ、またコイツは同じことを言うんだろう。

また同じような事をしでかすんだろう。

だから、『また』が来ると思った。

馬鹿なアイツを説教する日々は終わらないって思ってたんだ。

けど、それが最後だった。

天姫と怒鳴りあって、喧嘩しあって、喋ることができたのは、あの日が最後だったんだ。

あの時あの手を取っていれば、お前はミルフィオーレに囚われることもなかった。

氷の檻に閉じ込められることもなかった。

 

俺がお前の考えを否定しなければ、お前は今、一緒にいたのだろうか。コロネロを失う事もなかったのだろうか。

 

それから俺は後悔の念に囚われる毎日だった。もう失うのはたくさんだ。置いていかれるのはもう嫌だ。

 

置いて行かれるくらいなら、先に進んやる。アイツらが驚くぐらい先に進んで行ってやる。

俺よりも遅いんじゃないかってな。アイツらの呆けた顔を眺めてやる。呪われた体でどこまでいけるかわからない。

先が見えないが前に進むことで何か見えるかもしれない。暗闇の中に何かを見出せるかもしれない。だから、待っていろ。天姫。またお前にげんこつを食わらせてやるからな!

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。