闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的125蜻蛉に夕闇の女王よ踊れ

入江正一side

 

第一戦闘地下3階第二格納庫にて。

 

沢田綱吉VSムダマッチョ デンドロ・キラム

沢田綱吉の圧勝により、ムダマッチョ敗戦

 

第二戦闘地下8階にて。

 

ラル・ミルチVSジンジャー・ブレッド

ラル・ミルチの捨て身の攻撃により、ジンジャー(人形)敗戦

ラル・ミルチ負傷

 

第三戦闘地下10階用水路にて。

 

沢田綱吉VSストゥラオ・モスカ4機(スパナ)

沢田綱吉の生存確認できず、同様にスパナ行方不明

 

第4戦闘展示室にて。

 

笹川了平VSバイシャナ

バイシャナの油断により笹川本領発揮、バイシャナ敗戦、か。

 

みんな、計画通りに成長してくれた。

守るべき対象があるというのは当たりだったね。

途中冷や冷やさせられたけど、ようやくここまでこれたんだ。

失敗なんて許されない。一度きりの勝負だ。

白蘭さんの監視といたる所にあるし、今も続行中だし。

ああ、おなか痛くなる。

でもここでおなか抑えたらおかしく怪しまれるよな、だって緊迫した状況だし。

こう、切れる男を演じるのも僕に合ってないような気がするんだけど。

 

「入江様」

「わかってる、このまま奴らに研究所を奪われてなるものかっ!!」

 

歯ぎしりしながら、画面を睨みつける。僕は踵を返した。

後ろの女二人も当然ついてくる。形式上は僕の部下だからね。

僕が目指す場所、それはこの基地の秘密と言えるものが眠っている場所だ。

指紋認証を無事にクリアし、足を進めるごとにドアが次々に開かれていく。

たどり着いた所は、先ほどとは比べられないモニターが置かれ、中央には僕の匣がセットされた、台が2本立っている。

僕はすっと、その中央に立ち、右手に装備された指輪で匣を開口する。

 

「さぁ、目覚めろ」(うまくいってくれよ!)

 

大きな振動が基地全体を揺るがす。とてつもない地震。

うまくいったようだ。ふぅ、冷や汗出ちゃった。

 

「随分と遊んでくれたよ、ボンゴレの鼠ども。……次は君たちが僕に遊ばれる番だ」

 

いかにも冷静でありながらも、怒ってますっていう表情はこんなのでいいのかな。

自分で怒った顔とかあんまりよく見ないからな。自信ないけど。

僕のイメージでは天姫さんって怒ると口調とか変わってたからこんな感じだったから、普段の僕って、天姫さんみたいに振る舞えばいいのかなって感じてた。

ずっと、待ってたんだ。

この日を綱吉君と、雲雀君と計画して、ようやく今日という日を迎える。

 

永かった、ホントに永かった

 

過去の天姫さんがここに来ていたとしたら

違う君だけど、もう一度逢える。

あの時、君を救えなかった僕が君に懺悔しようだなんてお門違いはわかってる。

でも、言わずにいられない。

君を助けられなかった、すまないって。

 

「蒼龍姫を渡してなるものか。アレは僕にとって数少ない貴重なサンプルだ」

 

できるならば、君を僕の手で救いたかった。僕自身が招いてしまった結果。

いくらでも償って見せよう。これからたくさん。

 

 

入江の策略により、基地全体がパズルのように動かされた結果によって、一番目的地に近かった獄寺と笹川、山本とラルは二つのチームに分断されてしまった。

ひとまず研究室の破壊が優先と判断した笹川により足を駆けた先は、研究室ではなかった。おまけに思いもがけない相手と鉢合わせしようなどと誰が予想できようか。

 

『電光のγ』

 

獄寺に、屈辱をあじあわせた相手である。

まさかのハプニングではあったが、獄寺もγ同様、血走った眼で相手を睨む。

 

『獄寺VSγ』

 

と、始まりそうな闘いであったが、

笹川兄が自身の死ぬ気の炎で作り出した縄で獄寺の動きを止め、闘うのは俺だと、γと対峙した。

まだ、獄寺には強すぎる敵と判断したのか、はたまた熱くなりすぎるなと、教えるためなのか

その時の獄寺には理解できなかったが。

γの攻撃によってやられる寸前に獄寺に託した言葉。

笹川兄は身を挺してそれを獄寺に理解させたのだ。

あの熱き想いを感じた獄寺は、なりふり構わずに突っ込むのではなく、物事を見極め冷静に対処すべきと学ぶ。

かならず、勝利への道は隠されている。

笹川からのメッセージは獄寺の胸に確実に届いた。

獄寺はようやく自分に匣兵器の使い方を理解した。

嵐の属性だけで匣兵器は使えない。

複数の指輪を順序良く使い、技が生み出される。

それにようやく獄寺が気がついたのだ。

形勢逆転と思われた闘いは、しかしγが封印していたアップデート匣の出現によって、覆される。

ユニに手渡したはずの匣兵器を、幻騎士が直接γに手渡した。

お前に返すときがきた、と伝えればわかるはずだ。幻騎士はそう言い残し部屋をでた。

圧倒的な力の前に、獄寺は地に伏してしまう。

そんな時、あの女が、今まで眠っていた瞼を開いた。

γが所有する匣兵器である『黒狐』らが、ガクガクと震えだした。戦慄が走る。

 

「これ、は」

 

γ自身も経験したことがある、恐怖。

あの屈辱をあじあわされたあの日のような。

あの時の感情も今鮮明に蘇る。

甘い媚薬のような声がシンとした室内に響き渡った。

『夕闇の女王』が目を覚ましたのだ。

 

『ちょっと、ワタシのおもちゃに手を出すなって言っておいた言葉、忘れてしまった訳?猿だから当たり前、か』

「神崎、天姫!!出てきやがったな」

 

γの蟀谷に血管が浮かび上がった。

自分の拳を強く握りしめ、一心に彼女を睨みつける。

 

「てめっ、また…!?」

 

勝手にホイホイと出てくるなっつーの、文句言いたげな獄寺だったが、『夕闇の女王』の様子がいつもと違うことに気がついた。

冷徹な仮面をつけ、γだけを見つめているのだ。

その様、凍てついた氷の刃の印象を受ける。

底冷えするような瞳、血のように紅い。

言うならば、絶対零度。

『夕闇の女王』は、ふわりと地面に降りる。

すると、瞬く間に彼女の体は足先から実体化していく。

 

「アンタがさっさと殺さないからワタシが出てきてあげてるんじゃない、感謝しなさいよ。……それにしても、雷坊やはよほど、ワタシに恨みをお持ちのようね?私怨に囚われるのは人間共の悪いクセであり、もっとも愚かな事。いつの世も腐った輩は何処にでもいるものだわ」

「ああ、違った」

 

わざと、言葉を遮った彼女。

『夕闇の女王』は、自分の紅く潤った唇を一舐めした。

紅い舌がペロリと見え隠れする。

 

「咆えるだけが唯一取り柄の男、よね?」

 

ピクリ

またγの蟀谷に血管が浮かび上がった。

 

「貴様っ、……貴様がそうやって言葉遊びを好むことは昔から嫌気がさすほど知ってるんでな。殺戮だけが唯一の癒しとまで言い切りそうな奴だった。貴様は昔から『血』に塗れた卑しい女だ、そして今も……この時を指折り数えて待っていたぜ」

 

『夕闇の女王』の右手におさまっている、自身の愛刀、蜻蛉(かげろう)が唸りをあげる。

 

愚かなり。

我が主を愚弄し侮辱した罪にまみれた若者よ。

跪くがいい。

恐れおののけ。

生意気なその顔を苦痛にゆがめてやる。

そなたの生血を捧げよ。

減らず口を叩けるのも今の内よ。

そなたは本能の叫びを知らぬ。

我に斬らせよ。

我に血を与えろ。

宴を始めるのだ。

甘美で誘惑的な死の宴を捧げるのだ。

 

蜻蛉はそう唄う。

そして同調するように『『夕闇の女王』』もニィっと紅い唇を吊り上げた。

 

「…まだ、減らず口言えるの。来なさい、今日は遊んであげる気分じゃないのよ。

……代わりに…『グチョグチョ』にしてあげるわ!!」

 

そう思い、『夕闇の女王』が手を前に差し出そうとした時、獄寺がスッと前に出た。

 

「コイツには手を出させねぇ」

 

『夕闇の女王』にとって、獄寺のとった行動、言葉そのものが理解できなかった。

呆然と、獄寺の背中を見やる。

 

「……は?なんでアンタが庇うのよ。関係ないじゃない」

 

なんでアンタがそんなに怒るのよ、そう彼女は言いたかった。

だが、言えなかった。

あまりにも獄寺の剣幕に驚くばかりだったから。

真っ向から獄寺はγに言い放った。

 

「お前が恨み抱いてる女は未来の神崎天姫じゃねぇのかよ。アイツは理由もなしに人を傷つけることなんかしない。コイツだってそうだ。確かに、コイツはいっつも偉そうで意地悪くて性格が最悪だ。根性も悪い。けどな、だからって自分から人を殺すマネなんか、俺の前じゃしたことは一度もねぇ。ただ、天姫を溺愛しまくる女なだけだっ!

テメェに、コイツを罵倒する理由なんか何一つありはしねぇんだよっ!!」

 

獄寺の叫びがヒシヒシと彼女に一字一句伝わった。

今度こそ、彼女は言葉を失った。

いや、言葉を失ったのだ。それほどに彼女には新鮮で味わったことのない感覚。

『夕闇の女王』にとって、他人に庇われた瞬間であり、初めて、『自分』という者を受け入れられた瞬間でもあった。

 

「…ハッ、てめぇもその女の毒牙に引っかかったオチってか。どいつもこいつも女見る目がまるでなってねぇ、ボンゴレ十代目といい、雲雀恭弥といい、おまけに白蘭までがな。殺戮女にひれ伏せいてやがる」

「てめぇ」

 

と、獄寺も眉を吊り上げ怒りを露わにした。両者一歩も引かぬ睨み合いが続く。

 

「何も知らない餓鬼が粋がるなっ!」

 

γにとっては忘れられない記憶が脳裏に思い出された。

血走った瞳でただひたすらに、彼女を睨む。

 

「俺は貴様を絶対に許さねぇ!お前は、お前は俺の大切な人を殺したっ!」

 

恨みを果たす機会が来た。

 

「テメェを神が許そうが、俺が絶対に許さねぇ!」

 

潰えることがなかった復讐心。

彼をここまでさせた原因とはなんだろうか。それは、あの頃にまで遡る。

 

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