闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的130私のぽわわん、見つけたよ?

ああ、懐かしいなぁ。昔の記憶。

まだ幸せだった頃の記憶だ。

初めて彼と通じ合ったあの夜、お互い生まれたままの姿で大きなベッドで寝ころびながら彼といろんな話をした。

今まで言えなかった事とか、自分の過去とか色々話した。

ふと、彼は真面目な顔になって、私を抱き寄せた。

 

『俺なぁ?天姫』

 

なに?

 

『お前にずっと黙ってたこと、あったんだ』

 

……秘密にしてたってこと?

 

『ああ』

 

私には言えないような事だったから?

 

『言えないっていうか、思い出になりつつあったからかな。お前の事が大切だって気づかされた時にあいつの事、ようやく吹っ切れた気がしたんだ』

あいつ…

『涙風(ルイファ)、揚羽の母親だよ。俺と涙風、それに燐華は幼馴染だったんだ……。俺たちは劉一族だった。いっつもお転婆でな、元気良すぎて俺はいつもハラハラさせられた。俺よりもアイツの方が活発だったんだ。今じゃ信じられないかもしれないけどな』

 

立場が逆だったんだね。

 

『ああ、ホント。………アイツには驚かされる毎日だった。アイツが影動と出会うまではな。意外に知ってる人間少ないかもしれないけど、影動と涙風のなれ初めって、たまたま、俺たちの住む地に来てた影動に涙風が一目惚れして、逆に影動のいる魏まで乗り込んでいったの、涙風の方なんだぜ?』

 

えっ!?パパが口説き落としたんじゃないのっ!?

 

『やっぱり驚いた。そうなんだよ、影動なんか昔から女にもててたらしいけど、極度の女恐怖症と言うか、女が苦手だったんだとよ。まぁ、アイツ自身、母親の顔さえ知らなかったし、言い寄る女どもが信用できなかったんだろうな。最初は涙風もその類かと思ったらしい。だから斬り捨てようとさえしたらしい。だが涙風が大声で「貴方様に一目惚れいたしました。大好きです!」なんて大胆に告白するもんだから、影動も一瞬面喰ったらしい。そん時は軽くあしらって、影動は魏に戻った。けど、それからひと月もしないうちに影動に会いたいと衛兵に門前払いされる女がいると、たまたま聞いた影動が、なんとなしに見に行ったらしい。本当にその時は気まぐれだったらしいが、呆気にとられたんだとよ。なんとあの時の女が立っているとは夢にも思うまい。しかも影動見た途端、犬みたいに目をキラキラさせて「またこうしてお目にかかれてまたさらにわたくしの気持ちは大きくなりましたわ!愛しております!」ってまた愛の告白したんだよ。アレはほとんど押しかけ女房だって、影動が愚痴ってた』

 

……涙風さんってすごい人だったんだね。

 

『だろ?女の身一つで好きな男追いかける。しかも向こうは何とも思ってないのにだぜ?俺もアイツがいなくなったと聞かされて顔面蒼白になったぜ。で、俺は涙風を連れ帰るつもりで魏にいったわけ。そしたらいつの間にか影動とまで仲良くなって、そのまま魏に士官しちゃったわけ。で、二人は婚姻して揚羽までできたってこと』

 

劉牙って涙風さんの事、好きだったんだ、だね。

 

『………好きだった、いつかアイツと婚姻するつもりだった。親同士が仲よかったから、婚約はしてたんだけどよ、まだ小さいうちだったし、アイツが俺の傍離れるなんて考えもしなかったからな。横からかっさられたよりも、俺なんかただの幼馴染としてしか見られてなかったんだよなぁ~、なんてあとからショック受けたし?俺、繊細だからな。立ち直るまで時間かかったわ』

 

今でも、忘れられない、の?

 

『お前、俺の話最初から聞いてたか?』

 

……だって!そんな話されたら誰だって不安になるでしょ!?

 

『…………わり、泣かすつもりなかったんだ。けど、聞いて欲しかったから。アイツの事』

 

………

 

『俺は涙風の事好きだった。でもそれはアイツが幼馴染で昔から一緒にいて絶対守ってやらなきゃいけないってずっと思ってたんだ。責任感じゃないけど、そんなものがあったのは事実だ。でも、涙風にある日言われたんだ。影動と婚姻を迎える日にあいつに言ったんだ。今ならお前を連れ出せる。魏のしかも曹一族なんて、将来権力争いに巻き込まれるのがオチだって。俺ならお前を守れるから、だから一緒に逃げようって。アイツは笑みを浮かべて、こういったんだ』

 

今でも笑える話だ。俺は式の直前に涙風を連れ出そうとしたんだ。

花嫁強奪ってか?ま、お前を連れ出した時と同じことよ。

 

『劉牙、貴方は私といてほっとする?』

『ハァ!?こんな時に何言ってんだよ!ボケる場合かよっ』

『ボケてないよ、私は真面目に言ってるの』

『勘弁してくれよぉ~』

『いいから答えて?』

『………好きなのは間違いない。第一昔から一緒にいるんだぜ?ほっとするのが当たり前だろうが』

『じゃあ、違うね』

『は!?』

『劉牙、それは違うほっとだよ?幼馴染だからほっとするんだよ』

『意味わかんねーし!!ほっとするのに種類があるのかよ』

『あるよ。だって私は影動と一緒にいるとぽわわんってするもん』

『はぁ!?』

『でも劉牙といても、ほっとしかしない。それ以上でもそれ以下でもないの。劉牙は、ほっとしたいから私を連れ帰ろうとする。それは違う恋だよ』

『…………俺の想いを否定するのか』

『そういうことじゃない、劉牙がぽわわんってする女の子はきっと現れる。だからそれまでは私を想ってていいよ。でももしその女の子が現れたら、自然に劉牙はわかるはず。ほっと、じゃなくて、ぽわわんってするから』

『それは予知夢か?』

 

涙風は昔から、感が鋭い女だった。

夢に出たことが、正夢となることなんて日常茶飯事だったんだ。

だから、俺は聞いた。

 

『ううん、これは女の勘!』

 

アイツは清々しいくらいはっきり言いのけた。俺は目が点になっちまったよ。

 

『そういって笑って、涙風は影動と婚姻した。ホントにその通りになったからびっくりしたぜ。お前と一緒にいると、いつの間にかほっとっていうよりもぽわわんって言葉の方がしっくりくるんだから』

 

……ぽわわん…。

 

『そう、ぽわわんだ。俺はお前といるとぽわわんになる。涙風といた頃よりも、舞い上がっちまう、お前と一緒にいるとな。だからお前が俺の大事な女だってすぐに気がついた。たとえ、幼くとも、身の内に秘めたる宿命を背負うとも。お前だから一緒にいたいと願ったんだ』

 

…………変なの。

 

『変だろ?………もし、仮に俺が死んだとしてお前を残していくことになっても。

俺を背負い込むな。お前が俺以外の人間にぽわわんって感じた時はそれがお前が俺を吹っ切れる時だ。完全には無理だとしても、思い出として扱える日がくるかもしれない。俺が涙風に言われたように』

 

そんな事言わないでよ!絶対そんな日なんか来ないんだから!?

 

『ハハッ、冗談だよ。そんなに怒るなって、イテッ!?』

 

もう、知らないっ!

 

『お、おいっ!モノばっか投げてくるなっ、ちょっ!?』

 

死ね、アホが!

 

『ぐえっ!!………あの馬鹿、あんなに怒らなくても…………でも、涙風の言ってることは本当なんだぜ。なんせ、俺がそうだったんだからな』

 

昔の話、懐かしい………ぽわわんか。ホントに私にそんな時が来るのかな……?

綱吉と凪っぽい声が泣きそうな声だして私の名前を呼ぶ。

 

「天姫っ!」

「天姫、お願い、目を覚まして!」

 

チンピラみたいな隼人風の声と、リボーンみたいな殺し屋の声とめっちゃいい顔して黒属性の武風の声がうろたえてる入江みたいな声の男にいちゃもんをつけてる。

 

「おい、入江!天姫に何しやがった!?」

「わ、ちょっと待ってくれ!?催眠ガスを使用しただけだよ!僕が彼女を傷つけると思ってるのかい!?」

「そこんとこはまだ信用したとはいってねぇぜ?」

「そうだぜ、さっきの今で信用しろなんて虫のいい話ないよなぁ」

 

ジャキッ!

 

「やっぱり、咬み殺す」

「ふむ、俺も加勢しよう!極限に頭に来ているからな!」

「ひぇぇえええええ!」

 

恭弥みたいな生意気な声と、暑苦しい極限男の声がする。

あと、もやしみたいな男の悲鳴。

そして、私の周りをうろちょろ動く、小さい子供のような足音がいくつか。

 

「う………うぅ…」

 

煩いなぁ、何ここは。いつから大声発生所になったわけ?

だいたい私の名前連呼しないでよ…

 

「天姫!?もしかして気がついた!」

「え、ホントすか、十代目!」

「え、天姫が目を覚ましたの!?」

「天姫ー!ランボさんだよっ!」

『天姫ーー!』

 

あれ、恭弥の声が若くなったような…幻騎士に重傷を負わされた武、それにラル、そういえば恭弥は若いほうのと入れ替わって、隼人と笹川兄、哲さん、それになぜか凪にイーピン、ランボまで現れて、それで幻騎士と闘って、でも恭弥の匣が暴走して、逃げるために違うブロックに駆け込んだんだけど、その扉がしまって……思い出せない。

 

アレ?なんか誰かにツッコミを受けたような?

懐かしいあのハリセンの小気味よい音を聞いたはず……

そうだ、皆は!?他のみんなは無事なのかっ!!

私は勢い余って、状況を確かめずに痺れる体を無理やり起こした。

もう、守れないのは嫌だ、残されるのはもう、嫌だ!

 

「みんなっ!」

 

素早い動きで首もとに何かが抱き着いた。

 

「天姫っ!」「ぐえっ!?」

ゴンっ!!

 

天姫、昇天しました。

また意識が遠のいていく……。

 

「ああ、ダメ!?そっちに行かないで!」

 

綱吉が必死に私に向って叫んでくれたので、あっち側に行かなくて済みました。

でっかいたんこぶが後頭部にできた頭で周りの状況を確かめた。

凪は泣きながら私の首に抱き着いて離れないし、綱吉は恭弥に吹っ飛ばされて、代わりに恭弥が私の手を取って、

 

「心配したよ、天姫。あんな無茶して僕の寿命さらに縮めるつもりかい?今度、こんなマネしたら僕の背中に接着剤つけて君を離さないから」

 

と恐ろしいこと言われるし、綱吉がすごい速さで戻ってきて、恭弥と対立するみたいに、もう片方の私の手をとって

 

「俺も心配したんだからね。また同じことするなら首に縄でもかけて逃げられないようにしてあげるから」

 

と燐華と同じようなことを笑いながら言ってくる綱吉に必死に許してくださいと額地面にこすり付けて謝りたおして、武はものすごくニカっと輝く笑みをして

 

「それいいナイスアイディアかもな、俺もやってみるか。燐華さんに聞いてみようかな。天姫の扱いに慣れてるみたいだし」

 

などと恐怖しか感じられないことに同意しやがってリボーンもニヤリと、

 

「俺もそれには賛成だ。燐華なら天姫の扱い方はたやすいだろう。なんなら天姫の妹にも頼んでみるか」

 

などと、言いだしてそれだけは勘弁してください!と泣いて土下座しました。

隼人だけは私の味方でした。

 

「十代目!コイツなりに考えてやった結果なんです!どうか許してやってくれませんか!?」

「隼人…」

「たとえ、猪突猛進で後先考えず罠だと知りながらはまってしまうお馬鹿で唯我独尊な女だとしても、コイツなりにいい所はたくさんあるはずです!」

「おいっ!?」

 

全然フォローになってねぇよ!?

 

「フッ、いい事いうではないか!では俺も発言するとヘブシッ!?」

「オメーはこれ以上しゃべるんじゃねぇぇえぇええええええ!」

「グハァァ!?」

 

笹川兄は、ものすごい速さで壁にめり込んだ。

 

「見事な右ストレートですね。キレもあって、なおかつ目標を一発で沈黙させるとは…。さすがお嬢!」

 

恭さんを任せられるのはやはりお嬢しかおりやせんと叫んで感心しきってた哲さん。

 

「私が知っている天姫に近づいてきたな。たいがい私と喧嘩するときはあんなイイ顔していた」

 

フッ、私たちが意見の入れ違いからバトル勃発するたびに、怪我人が続出するものだから、ボンゴレ十代目がわざわざヴァリアーの連中を強制的に抑えるために派遣してきたものだ。

それに私たちの喧嘩がいつの間にかヴァリアーとの全面対決に変わっていて、私と天姫は共に共闘しまたお互いの友情を深く確認する結果になっていた。無論、私たちが立っている以外は死屍累々ばかりだったがな

…懐かしいものだ、

とラルは感慨深く頷いていた。

未来の天姫とラルというのは最強とも呼べるタッグを組んでいたらしい。

 

「アレが『蒼龍姫』なのか。俺の中でのイメージはガタ崩れだ」

「アハハハ、………変わってないなぁ~」

 

呆気にとられたスパナと、嬉しそうに笑う入江正一。

重傷を負っている人とか、いつの間に怪我治ったんですかと、突っ込みたくなったが、どうせ後でわかるだろうと。

凪の頭を片手で撫でて、ランボとイーピンをかまって。

ふと、思った。

あ、なんかぽわわんって感じ……する…

ぽわわん

 

「ぽわわん?」

 

あれ、もしかして……

 

「天姫?」

 

不思議そうな顔する凪につられて皆が私に注目した。

けど、私の頭の中にはある言葉でいっぱいだった。

ぽわわん、ぽわわん、ぽわわん

彼が言っていたのはこの事だったのか。ホントに当たってた。

 

「…ックク、プフフッくふふふ、あははっはははっはっははははははははっ!」

 

おかしすぎて腹が痛くなる!

 

「え!?どうしたの!」

「なんか面白かったのか?天姫」

「なんだ、笑いが止まらないガスでも噴き出したのかっ!?」

 

みんながびっくりした様子で私をみてくる。

でも笑いが止まらなかった。

心の底から笑えた瞬間って今までなかった。

でも今は本当に笑いたくて、笑いたくて仕方がない。

涙まで溢れてきた。私がぽわわんって感じるのは。『仲間』がいる瞬間。

その時は、劉牙の事ちょびっとだけ忘れられた。

みんながいるって思えたら、苦しくなくなった。

 

ああ、劉牙。私見つけたよ?

 

「これが私のぽわわんだ―――――!」

「おわっ!?」

「天姫!?」

「みんな―――!」

 

叫びたくて、叫びたくてたまらなくて、

おっきな穴ぎりぎりの所まで走った。

みんなが見えるように、みんなに聞こえるように。

 

「天姫、あぶねぇって!?」

「みんな、みんな、みんな――――!」

 

聞いてほしい

私の声をみんなに聴いてほしい

 

「大好き!みんなが、……みんなが私のぽわわんだったんだ――――!」

「「「はい!?」」」

 

劉牙、見えてる?聞こえてる?

一人の人に対して、劉牙はぽわわんって感じたのかもしれない。

でもね、私は違った。

私のぽわわんは、『仲間』だったんだよ?

劉牙、私の声、届きましたか?

 

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