闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

130 / 160
標的131どうして私は操り人形なの?

天姫side

 

劉牙、貴方と出会って私の視界は一気に明るいものへと変化した。

ずっと闇のどす黒くなった部分でしゃがみこんでいた私に手を差し伸べて狗楽以外に囚われる事を恐れていた私に違う世界を見せてくれた。連れて行ってくれた。

お前のいるところはある一部分でしかない。

世界はもっと広い、大きい、一生をかけてでも見られない壮大な場所だって。

確かにそうだった。狗楽以外の人間との接触が多くなるたびに私は違う神崎天姫になっていく。

自分に様々な感情を感じる心が存在していた事が不思議でならなかった。

痛い、悲しい、嬉しい、楽しい、怒り、満たされていく心。

それは私が堕ちた世界、復活でもそうだった。

真の意味で私を知らない復活の世界の彼ら。私は彼らを漫画で知っていただけの世界。

お互いがお互いを知らずに、でも時間をかけてぶつかって怒鳴り合ってようやくお互いの半分にも満たない部分を知れたのだからこれだけ素敵な事はない。

皆がどう笑ってどうやって悲しいのかどうやって怒ってどうやって私をみてくれているのか、長い時間かけてようやくそれが分かった私だからこそ。

彼らとの絆を大切にしたい。

彼らを守りたい、出来ることならばもう少し彼らとこの世界を生きてみたい。

自分の体を傷つけてまで彼らを守りたい。でもそうしたら皆が悲しむ。

だから極力自分の体を労わりつつ、全力を出し切ろう。

 

自分が強くなる為に迷惑をかけないために

自分に足りない部分を取り戻そうと思う。

 

私の半身である『蒼龍』。彼も大切であり外せない者。

でもね、それよりも大切なのがある。

私が否定して傷つけて逃げてきた存在。本来ならその子を否定することは私自身を否定することになる。足りないのは本当の自分。

『夕闇の女王』彼女を見つけなきゃ、自分を取り戻す為に。

劉牙、貴方に恥じない私になります、今度こそ。

遠い御空の向こうで見ててくださいね?

 

笑っててくださいね。

 

私がまた一歩を踏み出すその時まで。

 

 

皆に対する気持ちが整理した所でハタっと私はあることが変化していることに気がついた。

条件反射で笹川兄に拳を喰らわせた後でよくよくみたら彼は過去の笹川兄ではないか。

とすれば、入れ替わりがどこかであったはず。私が入江正一によって催眠ガスで眠らされていた間に未来のヴァリアーの組によるイタリア主力戦が始まり敵との戦闘がヴァリアーの面々による勝利に終わったと通信で伝えられた後。

彼が現れたらしい。

私たちの最終目標である敵、白蘭。立体映像を介して行った通信は彼の余裕を伺えたそうだ。

その時の私は当然眠っているから彼の顔を見れたわけじゃない。

でも凪がこう私に教えてくれた。

 

「天姫、あの人に以前に会った事あるの?」

「……夢の中の出来事かと思ったのよ。彼はたしかに自分の事を白蘭だと名乗ったわ。でもまさか未来に繋がってるとは思わなかったけど」

 

今考えてみれば彼と会ったのは偶然ではなかった。必然だったのか?

 

「……あの人、天姫に伝えろって言ってた」

 

凪はどこか戸惑いながらも伝えていいかどうか迷っている様子だった。私はいいよ、教えて?と先を促す。

そして、やや口ごもりながらも凪は言った。

 

「……あのね、『天姫は気がついてない。君は奴らの操り人形にしか過ぎない…だから僕が天姫の為に新しい世界を創る、未来の君は保護したから僕の側にいる限り安全だから』って」

「奴ら、の操り人形?」

「うん」

 

凪はコクンと頷いた。

これはどういう事か。彼が言う奴らとは一体誰の事を指示しているのか。しかし今は情報が少ない。敵である彼の言葉だけをうのみにするわけにはいかない現状だ。

 

「天姫は私が絶対守るから、だからアイツのいう事なんか信じないでね?」

 

私はいまだ心配そうな顔をする凪の頭を優しく撫でながら

 

「大丈夫だよ、私は」

 

と伝えた。凪は納得いかなそうな顔をしつつもそれ以上いう事はなかった。

白蘭は一体、何を知っている。

どうして、未来の私を自分の側は安全だと言う言い方をするのだ。

普通逆ではないか?ボンゴレから連れ去ったなら誘拐とか奪ったという言葉の方があっているはず。

なのに彼は私たちに違和感を持たせるような形で『保護』という言葉をわざわざ使っている。敵である事に変わりはない。けどそれだけでこのもやもやした気持ちが晴れることはなかった。

果たして、彼は真の意味で『敵』と呼べるのかどうか。

天姫の心内では今ははっきり白蘭を敵と言えるかどうか自分でもわからないものだった。

私が目を覚ました事でようやく話を進める入り江正一。あの白い丸い装置に封印されていたものを託す時が来たと彼は言う。

入江から未来の綱吉が過去の皆に託したという匣の数々。

皆はそれを手にしてまた闘いへの士気を高めたようだ。私はそれを自分のように嬉しく感じていた。

でも、そうじゃなかった。彼らだけではなかったのだ。

匣を託されるのは。

入江正一が私の前にゆっくりと歩み寄ってきた。

 

「天姫さん」

「何?」

「これを、渡そうと思って」

 

そういって彼がポケットから取り出したものに目を見張った。それに眼球が釘づけになったのだ。

それは一つの匣兵器であった。

どうして、彼がそれを持っている?

どうして、懐かしい気持ちに溢れてしまうの?

自分の声が震えてしまったのだがよくわかる。周りにいる仲間も何事かとこちらの注目していた。

 

「そ、それ…は…」

 

もしかして…

もしかして…ずっと待ちわびていた。

ずっと、逢える事を待ち望んでいた存在?

ドクンと心臓が高鳴った。それは早鐘のように速くなっていく。

コクンと入江正一は私の回答の答えを理解して頷いた。

私は彼の手に乗せられた匣に震える手を伸ばした。

ボンゴレの紋章が各方面に施されている中、一面だけは蓮の華と雲と龍の彫刻が施されていた。

空を泳ぐ立派な体躯の龍だった。

 

「……どうして、これを…」

「未来の君に託されたものだ。彼女は『もう自分には使えない、『資格』がない。でももしかしたら必要としてくれる人が現れるかもしれない。だから正一に託すよ』って笑顔で投げてよこしたものだよ。もしかしたら未来の天姫さんは君に託すことを知っていたのかも知れないね」

 

今となってはわからないけど、そういって苦笑した彼。

でも今の私には目の前の匣以外認識できていなかった。

両手で包み込み自分の胸に抱き寄せた。

嬉しくて、嬉しくて。

 

「天姫さん?」

「天姫?」

 

皆が心配して声をかけてきたりした。でもゴメン。今の私は目の前の存在以外感じとれない。認識できていないの。

だって、だって

 

「私の、蒼龍がここにいる…」

「天姫、の龍?」

「うんっ」

 

私の半身がいる。私の蒼龍がここにいる。この小さな匣の中に。

蒼龍の波動は欠片みたいに小さくてわかりにくいけど、でも彼を感じる。

ぽろりと涙が落ちた。

離れた時間があまりにも永くて不安だった。

狗楽みたいに自分の心にぽっかりと穴が開いたみたいに落ち着かなかった。

もしかしたら消滅してしまっていたのかと諦めてた日もあった。

でも、今は彼の気配を感じる。残り香みたいなものでも安心できる。

私は溢れくる涙を止めずに匣を大切に抱き締めながら、戸惑った表情をしている彼にお礼を言った。

 

「ありがとう、入江正一さん」

「天姫、さん…」

 

息を呑む彼。まさかお礼を言われるとは思わなかったのかな。

でも私はありがとう、ありがとうと涙を流しながら微笑んだ。

 

「本当に、ありがとう」

「どう、いたしまして…それと、ついでってわけじゃないんだけど」

「え?」

「その、できれば……僕の事は呼び捨てにしれくれない、かな?」

 

照れつつ笑顔を浮かべる彼は少年のように幼く見えた。

お返しというわけではないが私は快く了承した。

 

「わかった、ありがとう。正一」

 

たとえ、コレが彼の力の断片なのだとしてもそれだけで私には嬉しかった。

小さい、小さい彼だけど。

でも私の半身がここにいる、それだけで安心できた。

満たされる感情がこんなに心地いいとは思わなかった事。

神崎天姫は手に入れた。それが微力な力と言えど、彼女にとっては命とも言えるものを。

私は未来の私から匣兵器となった『蒼龍』を託されたのだ。

ヴァリアーからの通信が入ってきたのは正一から匣兵器を渡された後だった。

声からして皆は元気そうだ。綱吉たちに激励の言葉?みたいなのをかけてるくらいだからね。敵との戦闘も大けがをするほどではなかったのだろうか。

そう考えていたらどうやら彼らの通信の目的は私だったようだ。

一番手を打ったのは元気な鮫だった。

 

「天姫!元気かぁ?」

「スク!」

「ハァーイ?天姫ちゃん、私よ!」

「ルッスー!」

「しししっ!お姫。声変わってねージャン!ちなみにレヴィもいるし?瀕死だけど」

「ベル!?今なんて言った!!レヴィ大丈夫なの!?」

「大丈夫よ。私が全力で介抱してあげてるから!」

 

全力で介抱してるなんて、どんな恐ろしい治療なんだろうか……!

 

「レヴィ、お気の毒に…ルッスーの毒牙にかかるなんて……」

「んまっ!?」

「どうもでーす。ボスの10年前の奥さんって貴女のことだったんですねー」

 

若い少年の声が乱入してきた。天姫は突拍子もない発言に唖然とした。

 

「ハ!?」

「あぁ!?」

 

無論、天姫の周りもである。

 

「話だけじゃ全然わかんないなぁって思ってたんすけどあーでもミーの師匠の過去でのオカンとも聞いたんですけどねーあー他にもあったなぁ10年前ボンゴレ守護者全員はべらせてる魔性の女王様とか天然で自覚なしな癖して男性を口説いてたりとか武勇伝?とかありますし超気になります。なんで僕とデートしません?」

「貶されてるのになんでデートの申し込み?!」

「あははやっぱ自覚なしの女王様ですね。遊んでみたいっすね」

 

いいだろう、その減らず口を二度と叩けんようにしてやる。

ヴァリアーのみんなと一通り話したあと。

 

「天姫」

「…ザンザス?」

 

現代の彼よりも低い声。まさに大人の魅力溢れるボイスだ。

彼の一言はみんなになぜか衝撃を与えた。後で笹川兄から教えてもらったんだけどね。

 

「逢いてぇ」

 

なんかキュンとくる台詞言ってくれるもんだから顔がにやけてしまった。

子猫のうるうるした瞳みたいな?

私弱いんだよね、そういうの。

 

「………私も、逢いたいよ……」

 

みんなの10年後の姿とか気になるルッスーとか、レヴィとか、ベルとかスクとか?あとさっきのフランとか言う奴。女王女王連呼するな。

 

「暇なら、来い。猫みせてやる」

「うん!!」

 

猫?どんな種類のかな?ザンザスやっぱ、可愛いの好きだな。

どうせ、能力使えば一発でいけるし?

ブツ!

会話終了みたいな感じで回線は途絶えた。

なんか後ろのほうで怒号とか暴れまくる音がするんだけど、私はザンザスの猫がどんなのか気になって全然わからなかった。

というわけで、白蘭との戦闘を10日後になっているというので

私はザンザスの猫を見る為にイタリアに行ってこようと思います。

 

「みんな!!私ザンザスの猫みてくるね~」

 

と言い残し凄い形相して追いかけてくる皆から逃げて

 

「天姫!?」

「また自由奔放なっ!」

「行ってきまーす!」

 

しゅぱっっと光の速さでいなくなりました。

いざ、行かん!ザンザスの猫見物に!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。