雲雀恭弥side
天姫がいないってあの赤毛包帯男に言われてすぐに彼女の家に行けば奈々さんが顔を青ざめていなくなったって泣いてた。僕にできることは天姫を一刻も早く捜す事だけだから奈々さんには絶対見つけるからと言って家を出てきた。
天姫は赤ん坊と一緒に消えたらしい。
あの赤髪の包帯男が言ってた事が全部本当だったって思い知らされた。
それと同時にどうしてもっと早く天姫と会っていなかったんだって自分を呪った。
もう少し、もう少し早ければ……
何度と後悔しても君の姿はまったく見つからない。
自分の力の限界をまだまだ僕は弱い。
あの赤髪の男にさえ軽くあしらわれたのだ。
もっと強くなりたい、天姫を手放さずに済むように
今度こそ 離さないんだからっ!
黄色い小鳥と一緒なのは彼女はいつも彼を可愛がっていたから
彼ともその気持ちを共有できるかと思ったからだし何より彼も天姫を捜すのを手伝ってくれたからだ。
それから何か月が経った頃、天姫は依然として行方不明だった。
しかもあ天姫だけじゃなくて他の主要生徒たちの行方不明も次々に報告されてきた。
天姫と親しい位置にいる人間ばかり。
こんなことってあるんだろうか?偶然なんて言葉はもう通用しない事態だ。
学校にいる僕宛てに宅配便が届いたんだ。差出人は神崎狗楽。
天姫の妹からだった。箱の中身はなぜか白いハリセンと手紙一つだけ。
僕は訝しみながらそのハリセンを手に持った。しっくりくる印象を受けたのはなんでだろう。
そしてハリセンを持ったまま手紙を読む。そこに書かれていたのは
『へろ~?雲雀恭弥さん。姉がいなくなって意気消沈な日々を過ごしてるかと思いますがもうすぐ、っていうかこれを読み終わったすぐに向こうに跳ばされると思いますんでしばしお付き合いください。
あのですね、どうやら姉がいる世界というのはわたしが干渉できない掟やらが存在するようで、姉が暴走しだしたときにストッパー役がいないんですよ。
姉の所為で貴方の世界を崩壊させる訳にもいかないんスよね。
そこで雲雀さんにわたしの役目をお願いしたいと思いましてこのわたし愛用のハリセンを送りたいと思います。貴方ならイイ感じの音を出せると思うんですよ、コレはわたしのただの勘ですけどね。結構当たるんだよ。信じる価値あると思う。
ってなわけで姉を頼みます。
なんで雲雀さんを選んだかって疑問は未来じゃ姉の旦那さんみたいだしいずれはわたしの義兄になるかと思ったからですかね?いや、でも年齢はたぶんわたしの方が上だからもしかしたらわたしの義弟になるのかも?やべっ、新鮮な響きでいいかも……。
今度会う時ぜひ『お義姉さん』っていってくれっ!
ちなみに仮に貴方が姉の暴走食い止めに失敗して死んでも恨まないでくださいね☆
ばい狗楽』
未来?姉の旦那?
それって僕の事をさしてるわけ?
すぐには理解できないような奇妙な事ばかりが書かれていた。
恭弥が『ばい狗楽』の部分を読み終えたと同時に彼の体に衝撃が走った。
それは何かが恭弥自身の体に直撃したようなものだった。
咄嗟にトンファーで防御の形をとったけど辺り一帯は煙が酷くてまったく状況が掴めなかった。
ゆっくり煙が薄れていき視界が明らかになっていく中、僕は目を疑った。
だって、まさか瓦礫の山が散乱してる場所に愛しい彼女の姿があるなんて夢にも思わなかったんだから。
ミニスカは僕の前以外禁止だっていってたはずなのにあ天姫はミニスカ穿いてた。
似合ってるから文句も今は言えない。
っていうか、少し見惚れてしまったのは内緒だよ。
「何、ここ。……って天姫!?」
天姫は気軽に片手をあげて僕にあいさつをしてきた。
「なんせ、ボンゴレ『雲』の守護者なんだから。よっ!きょん、おひさ~♪」
僕の今までの葛藤とか心配してた気持ちとか、とにかくもやもやしてたのが一気に飛んで行った。とにかく彼女に会えたのが嬉しい。
今すぐ駆け寄ってこの腕に抱き締めて離したくない、そう思ったのに。
僕は天姫が刀を手にしているのを見て、言葉を失った。
どうして彼女があんな物騒な武器を持っている?
それが示すは彼女の前に敵がいるほかならない。
その事実が分かった途端、僕の目標は定まった。
流れるような動作でトンファーを腕に装備し、獲物を瞬時に捕らえた。
「そこの変な眉毛の君、天姫に物騒なもの向けないでくれる?ってか」
ふざけないでよ?せっかくの久しぶりの天姫との対面を無粋にも邪魔した報い。
許さない……許してあげない…!
「僕の、天姫から離れろ」
怒りがこみあげてくるのを抑えられない。ううん、抑えなくていいんだ。
どうやら天姫の方も僕に感化されたのかすごくイイ顔して刀の矛先を変な眉毛の男に向けた。そしてとろけそうな笑みを浮かべてこう言った。
「第2ラウンド、逝っとく?」
ニヤリと天姫が笑った。ああ、ゾクゾクするよ。
こんなに鳥肌が立つ事なん久しくなかった。
だって君が僕の側にいなかったから味わえなかったんだ。
ああ、久しぶりに天姫の攻めがみられる。君を堪能できる瞬間でもあるんだ。
でも逆にムカついた。だって僕の天姫を虜にさせてるんだよ?
ある意味……。ねぇ、ソイツ消したら次こそは僕を見てよね、天姫?
そう思ったのに天姫は全然僕どころかアイツばかりに夢中なようだ。
嫉妬心ばかりがメラメラと燃えてくるし、それに自分の体を斬られても何ともないみたいにまた攻撃を仕掛けようとするから、僕もキレた。
僕をみてよっ!!
変な眉毛男がヨロヨロになりながらも天姫を睨みつけた。
「……殺してやる…」
「ひゅ~。怖い怖い……」
とか言いつつ天姫は下唇をペロリと舐めつつアイツばかり見まくる。
僕はその辺に投げ捨てておいたハリセンを左手に持ち彼女の後頭部に目がけて振った。
「貴様が死ね」「ちょっと待って」
スパァァァぁぁぁアアアんンンン――――。
「イダァァアアアアアア?!」
変な眉毛に向かって歩み出そうとした天姫の歩みが止まったと同時に天姫の手から刀がカシャンと落ちた。
音だけは凄かったけどそんなに力いれていなかったんだけどな、と心の中で思いつつやっとこっちを向いてくれたことに歓喜した。
信じられないと言った驚愕な表情で僕を見つめる天姫は
「我が愛しの狗楽ちゃんのツッコミ!?」
「なぜ恭弥が!?」
と叫んだ。狗楽って君の妹の名前だったよね。
軽いイメージしかないんだけど、結構気が利くタイプだよ。
「君の妹が宅急便で送ってきたから。天姫が暴走しだしたらこれではたけば一発で我に返るって。当たりだったね」
「恭弥ァァァァアアアアア―――――!」
どうやら泣くほど嬉しかったらしい。何か絶叫してるけど気にしなかった。
「第2の狗楽を見ているようで、懐かスィィィイイイイイイイイイ!」
天姫が嬉しそうにずっと泣いてるから僕も嬉しくて顔を緩ませたけど
よくよく考えたら彼女は血を流している。
そうだ、天姫は傷つけられた。あの男に。
その事実を思い出したらムカつきが再上昇し、僕の手は自然と指輪へのびていた。
「よくも天姫の柔肌に傷つけてくれたね?」
僕の中でくすぶっていた炎が瞬時に現れた。跳ね馬がこーやれって言っていたのが今思い出すとムカツクけど聞いといて正解だったかも。
群れてる奴らがうるさい。天姫はなんだかいまだに
「えーん、狗楽ちゃんのツッコミが懐かしすぎて寂し――――!」
とか頭を抱えて叫んでる。
そんなにハリセンで頭を叩かれたのが嬉しかったのかな。
っていうかさっきから狗楽狗楽言ってばかりいないかい?
僕の空耳かなと思った。
指輪を箱みたいなのに差し込む。
カチリと嵌ったそれから派手に出てきたのは小さいハリネズミだった。
酔っ払いみたな印象だったけど可愛いから思わず手を伸ばした。
けど当然針があるから僕の手に刺さった。
痛くないわけじゃなかったけどハリネズミにとっては相当、僕を刺した事がショックだったみたい。
「……キュウ………キュゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウ!?」
涙目になりながらハリネズミは暴走状態となり
ボンボンボンっと鋭い丸い針の球態が異常なスピードで大量に増殖していった。
「クっ!」
僕はすぐさま右腕にトンファーを装備し防御しつつ、
いまだ涙目で項垂れている天姫の腰に手を回し、引き寄せた。
もしかして僕じゃなくて妹に叩かれたいと思ってるの。
そんな……、せっかく君の嬉しそうな顔を見れたと思ったのに…。
僕の勘違いだったなんて……
おいおい泣きだした天姫を姫抱きしてさらに
ショックで落ち込みそうになりそうだったけど副委員長が焦って顔して
「恭さん、ここをまず出ましょう!」
と言ってきた。
「僕に命令するの、副委員長」
機嫌が悪くなるのは当たり前じゃない。
こんな状況じゃなかったらぶっ倒してるのに。
でも針が増殖しだしてここにいるのは彼女にとっても僕にとっても危険なのは確かだった。
群れてる奴の中に行方不明の男子生徒もいた。なんで天姫と一緒にいるのかは後で問いただしてやることにした。
逃げ込んだ先で罠みたいなのが発動して押し迫る壁。
そんな時天姫の体に異変が起こった。
『オホホホホホ~狗楽に会いに行こう~~♪』
「はっ!?天姫の魂が半分抜けかけてる!?」
魂だって!?
魂飛ばすほど妹に叩かれていない事がショックだなんてっ!!!
眼帯少女の叫び声で瞬時にまた反応した僕の体。
投げ捨てたはずのハリセンを手にし、再び天姫の後頭部に容赦なく素早い動きで叩いた。
「天姫!ツッコミなら僕にだってできるさ」
ぐっと自信満々にハリセンを握りしめた。
そうさ、僕にだってできる。できるんだよ!
だから僕を見てよ、天姫!
僕の決意と裏腹に彼女は相変わらずふよふよと魂飛ばしていた。
意識が無くなる直前、ふと思い出した。
僕がなんで天姫の妹を『お義姉さん』って呼ばなくちゃいけないの?と。
手紙に書いてあったある文章を思い出すのはもうちょっと時間が経ってからだった。