天姫side
ムカつく男どもがいなくなった後、舌打ちをしながら私は冷静さを取り戻した。
ベスタ―の毛で遊びつつ椅子に座るザンザスを見上げた。
彼はただ私を見つめてくる。
ただ黙って、静かに、私だけを。一瞬だけドキっとしてしまった。
でもそれは錯覚だろうと思い彼に問いかけた。
「ところでさ、未来の私ってどんな感じだった?」
「……破天荒だな…」
「それだけ?」
「まったく予想がつかないトラブル起こすし、ラル・ミルチとの喧嘩にヴァリアー駆り出すほど破壊行為に及んでたしなそれに」
「ストップもういいです十分すごい事が伝わりましたわ」
自分の未来の事はあんまり知らない方がいいよね?そう思ったので即行立ち上がり彼の口を手で封じさせてもらいました。
直接当たる彼の唇の感触。彼は私の手を取り
「指輪、外したんだな」
と目を細めた。視線は私の左手に集中している。
彼がいう指輪は『虚像の花嫁』をさしているのだろう。
私は軽く頷くだけにとどめておいた。
途端、彼に握られた手ごと引っ張られた。
気がつけば彼の体の上に跨るような位置に固定されていた。
ザンザスの大きい手が指が私の黒髪を弄び、そのまま耳に移動する。
そして片方だけつけられたピアスで止まった。
「つけたんだな、ソレ」
「…うん、…もう片方は現代でもらいそびれちゃって…」
だから片耳だけなの、と説明した。
「そうか」
彼はそれだけ言って一瞬思案を巡らせ、ジャケットのポケットから何かをとりだした。
それは私がつけているピアスとまったく同じ代物。
「もしかして、今つけてるピアスのもう片方?」
「ああ」
「未来での私は両方もらったんじゃなかったの?」
「いや、違う。今のお前と同じだ」
お前にやると彼は簡単に告げた。私は慌てて彼に言った。
「だったら、それは彼女にあげなくちゃ」
だってそれをもらう資格があるのは未来の私なんだよ?と。
でも彼は何も言っても聞く耳持たずで
「いいだろうが、別に」
ザンザスは無理やりに私の片耳を触り鋭いピンのようなものを刺した。
瞬間走る痛みに顔が歪む。
「っ!」
「我慢しろ」
「…強制的……うぅ」
ついに私は両耳にピアスをつけることになってしまった。
ああ、これで不良の仲間入り……。
ザンザスは私の心情などお構いなしで
「これで揃ったな。……綺麗だ、天姫」
とほめてくれた。
「………ありがと……」
「俺が前に言った事、覚えてるか」
「ん?」
彼はあの頃と変わらずに言う。
「お前だけをずっと愛し続けると」
「………」
「お前はもう知ってると思うが、未来の天姫は雲雀恭弥と婚姻している」
「………うん……本人から聞いた。びっくりしすぎて目玉飛び出るくらい驚いたけどね」
「そうか。それでも俺の気持ちはあの時から変わらない」
あの時、彼が言うのは私が『虚像の花嫁』を受け入れ、綱吉と契約した日。
あの瞬間、私はザンザスから綱吉の手に渡った。
「…お嫁さんもらいなよ…」
「いらねぇ」
即答された。でも私は構わずに言葉を続ける。
「寂しい余生を過ごすことになっちゃうよ」
「構わねぇ」
これまた即答だった。また私は言葉を続けていく。
「虚しくなるかもよ」
「ならねぇ」
なんで即答できるの。彼の熱っぽい視線があまりにも真剣すぎる。
気がつかないうちに私は早口になっていた。
「だってすでに未来の私は選んでいるんだよ、報われないよ」
「選ぶのはアイツだ、答えを出すのもアイツだ。俺はアイツの意思を尊重する」
どうしてそんなに真っ直ぐに言えるの?
どうしてそれを今の私に言うの?
戸惑いを浮かべるしかない私。
でもな、と彼は私を射抜く。見えない弓矢で私の心を射抜くのだ。
真っ直ぐな情熱と熱情と愛を。
「俺はこの先誰も娶るつもりはない」
「…………」
「お前だけでいい」
「………」
「お前だけしか」
欲しくねぇ、と彼は呟いた。
私は彼から視線を外し、自分でも自覚がないまま
口元を両手で隠した。
その時の私は気がつかなかったがたぶん顔全体が真っ赤だったと思う。
だって、気温が上昇したわけじゃないのに私の体温は異常に熱く感じたんだから。
ああ、参った…ここまでストレートな告白は…正直困る…。
でも、不思議と嫌だとは思わないのだ。
むしろ うれしい?
なんて返事すればいいんだ…
決めるのは未来の私なはずなのに。
とりあえず彼女の代理という事で赤面した顔を手で隠しつつ
「……とりあえず、保留ってことで」
許して、と彼には言いました。
ああ、なんでイタリア男ってのはなんで女にクサい台詞を真顔で堂々と吐くのかね。
こっちの心臓がもたないっての!
※
天姫side
ザンザスからの情熱的なプロポーズを真正面から受けた私は
彼の事を意識するのは無理な話でひたすらおとなしいベスタ―で遊んでいた。
彼がそれ以上自分の気持ちをいうことはなかったけど、確かな彼からの
一途な『愛』をひしひしと感じ私は心臓をバクバクと高鳴らせながら耐え忍んだ。
決して落ち着けるような愛情ではなく、でも確かに確実に響くもの。
ゆっくりと蝕んでいくような
気がついてしまった後でも、もう戻りできないような麻薬のようなもの
いまだ、彼の視線は私に注がれている。っていうかさっきからずっとこんな状況が続いている。
違う、正直に暴露します……。
ホント言うとあの告白から2日目の2時頃になってます。
そう、ヴァリアーの面々が生活している住居に移動してみんなで他愛もない話して
二人っきりになって彼からあんな台詞を言われて衝撃受けて眠れない夜を過ごして
朝の朝食時も彼を意識するつもりなんかなかったのに
彼の熱い視線を感じられて食事もなかなか喉を通らず、ルッスーに心配されて
慌ててごまかしてベスタ―と遊んでくると部屋を飛び出して
彼から逃げたけど、ごろごろとベスタ―と遊んでいたらいつの間にか
ザンザスが椅子に座って何するでもなく喋るのでもなく
ただ私だけを見ていて
私はそれを気にしていないように必死に務めて
でも限界…ああ、もう駄目だ…
私はベスタ―がびっくりする横でたまらずに叫んだ。
「私、帰る!」
自分でもびっくりするほど私は腹の底から叫んでた。
「ああ」
彼は淡々と返事をした。表情はどこも変わっていない。
クールに偉そうに。
「……どうせ、日本に来るんでしょ。白蘭との闘いに備えて」
「ああ」
まだ変わらない、ああ、ムカツク。なんで私だけこんな感情に翻弄されなくてはいけないんだ!
「……ザンザスの、意地悪…」
「クっ…。そりゃ光栄だな。お姫サマ」
彼は真底おかしそうに笑い、おもむろに私に向かって立ち上がった。
そのまま頬を膨らませた私の顔に手を伸ばし、黒髪を指で弄ぶ。
距離、近すぎじゃない…異常に彼の顔が間近にある…。
もしやと思った私は遅かった。
私の唇はいとも簡単に彼に奪われてしまったんだから。
それは一瞬ででも確実に私を捕らえた瞬間でもあった。
「んなっ!?」
ニヤリと彼は嗤う。
「お前に散々翻弄されたからな、お返しだ」
彼の瞳に映る私は林檎のように顔を熟させていた。
簡単に言うなら顔真っ赤ということである。
「あ、あ、あ、あ、、ああああああああああ!?」
今度こそ完全に壊れてしまった私。ひたすらあああと言葉を言い続ける。
そして、一気に彼の腹に蹴りを決めていた。
ドゲシっ!!
「阿保ぉぉぉおおおおおおおおおお!」
「げほっ」
吹っ飛ばされる彼を目の前にして、私はすぐに能力を使って日本に跳んだ。
もちろん、これ以上傍にいたら私が死んでしまうと思ったから。
さて、天姫が光の速さでいなくなった後、壁にめり込んだ彼は
ようやっと壁から脱出しその場に座り込みました。
「アイツの照れた顔、初めてかもしんねぇ…」
と嬉しそうに忍び笑いしてました、とさ。
※
さて、その天姫が日本に音速の速さで帰ろうと決意した時並盛にあるボンゴレ地下アジトでは新たな仲間として加わった
バジル君と笹川兄、笹川了平の歓迎会なるものが催されていた。
天姫がいないという事で皆は多少意気消沈していたが、久しぶりにどんちゃん騒ぎすることで寂しさを紛らわせようとしていた。
クロームは京子とハル、それにイーピンやビアンキといった女友達を得たようではにかみながら嬉しそうに彼女たちと談笑していたりしていたし雲雀恭弥はと言うとありえない事に未来の雲雀恭弥が使っていた区域内に腰を下ろしていたのである。
つまりそこで寝起きしているという事。
群れる事を嫌う彼がどうしてそこまでするかは単純明快。
天姫が戻ってくるのがすぐにわかるのが地下アジトだからである。
それに、彼は色々と自分の私物を調べていたのだ。
天姫の妹からなぜ自分が天姫の妹に対して『お義姉さん』と呼ばなくてはいけないのかという疑問を解くために。
各々各自がそれぞれ秘めたるものを胸に宿し、これから8日後に始まるであろう世界の命運を賭けた勝負に緊張しながらも眠りにつこうとしていた夜。
それは起こった。
ツナがほんの少し自分の炎を灯した事で入江から託された自分の大空の匣兵器がガタガタと反応したことから匣の中では狭かろうとツナは仲間内で決めた皆で匣兵器を開匣しようという約束を破ってしまい先に匣を開匣してしまう。それがすべての引き金となった。
匣の中身はツナの予想を通り越し狂暴な牙を主であるツナに向けてきたのだ。
部屋を破壊しツナは何とか対抗しようと死ぬ気モードになり応戦する。
騒ぎを聞きつけて駆けつけた仲間は目の前で繰り広げられる光景に半場唖然とし、
すぐにバジルの匣兵器『雨イルカ』の機転でツナの匣兵器を鎮めようとするがあと少しというところでうまくいかなかった。そこに手を貸したのが武の匣兵器『雨燕』であった。
力尽きたのかへたり込むツナに仲間が駆けより何があったと事情を聞こうとする。
そこへ思わぬ人物が登場した。
「アレはお前が悪いぜ、ツナ」
「え」
ツナたちに声をかけた人物は未来の跳ね馬ディーノであった。
優美なる大空の彼の匣兵器『天馬』に跨り颯爽と現れた彼はツナに告げる。
「あの姿は本当のお前の匣兵器の姿じゃない、あんな乱暴な開匣を続けてはいずれ匣を破壊してしまう事になるぞ」
と馬上からアドバイスした彼は大人としての余裕と魅力にあふれたイケメンになっていた。
「元気にしてたか、弟分。それに10年前のボンゴレの守護者たち?」
「ディーノさんっ!」
ツナは歓喜の表情を浮かべると同時にディーノはある男の姿に目を驚いたというか懐かしむように目を細めた。
「…こうしてまた逢えるとはな、リボーン…」
「相変わらずへなちょこだな、ディーノ」
感慨深く言うディーノの言葉には本当に嬉しさが溢れていた。
「かわらねぇな…ったく…」
ディーノは昔と変わらない口調である師匠に苦笑いし馬上から降りようと
足を動かした。
だが、彼はある意味変わっていなかった。なぜなら
ドスンっ!!
「イテっ」
盛大に転がり落ちてしまった彼は痛そうに涙目になった。
ツナ以下他のメンバーが口をあんぐりとあけ呆ける。
まさか、と彼らの脳裏に一つの答えが浮かび上がった。
「いてて、よくこけるよな…。ここまでくるのに1㌔もかからない所だったのに3時間もくっちまうし…」
不思議そうにディーノは愚痴る。とりあえず皆の代表をしてツナがディーノに聞いてみた。
「あの、部下の人たちはどうしたんですか?」
「ああ?ロマーリオなら草壁と飲みに行ったぜ?アイツら結構仲が良いんだよな」
(((((部下がいないとへなちょこなのは変わらねぇぇぇぇええええ)))))
同時に仲間たちはそう思った。
さてさて、そろっと彼女が現れる時間帯になりました。
案の定彼女はフッと姿を出現させました。
もちろんお約束なのでディーノの真上にです。
「ふげっ!?」
「んにょっ!」
ディーノさんの上に落ちてきたのは、待ちにまった彼女であった。
「「「天姫!?」」」
変なうめき声が可愛いと天姫に惚れている男どもは同時に思ったのはご愛嬌。
「…………」
ディーノは沈黙しました。
「何か、下敷きにしたような…ってもしかしてっ!」
天姫は慌てて自分のお尻に敷いてしまった人物から大急ぎで退き叫んだ。
「ディディ!?」
「………天姫、か?」
「………ディディっ!!」
まさかまさか自分の大好きな義兄を自分の尻に敷こうとは考えていなかった
彼女は彼が目を覚ますまで顔を青くさせていましたが、彼がこうして目の前にいることに耐え切れず感情を爆発させました。
懐かしい存在に天姫は涙腺を緩ませ飛び込んだ。
「うわっ!」
勢い余った彼女の体に耐え切れずにディーノは後ろに天姫ごと倒れこんでゆく。
「………」
天姫はディーノの首にしがみ付いたまま顔を埋め寝ころんだ体制のまま
ディーノにくっついていた。
不審に思ったディーノが天姫に声をかけたが彼女はそれでもその体制のまま
黙りこくる。
「天姫?」
ぎゅっと抱き着いてくる天姫をの顔をなんとか見ようと悪戦苦闘した結果
ほんの一瞬だけ垣間見えることに成功した。
乙女のように頬を染め涙目になっているレアな天姫を見てしまった
義兄はとりあえず、ため息をつくと
「お前はホントに、じゃじゃ馬だな。あっちで何してきたんだ?」
と彼女の滑やかな髪を丁寧に撫でた。
これは後でちゃんと聞く必要があるなと、ある意味で嬉しい感情を表に出すことなく
うわーんと泣きまくる天姫をあやし続けました。
さて、明日から白蘭との決戦に向けての特訓がスタートするんですよね?
雰囲気があまりにもその事実を覆っているものだから
誰もがこの瞬間だけ忘れていたのかもしれないけど。