さて、ようやくザンザスの元から帰ってきた天姫を迎え入れたは、すっかり未来の恭弥の部屋にて寛いでいる雲雀恭弥でした。
帰ってくるの遅すぎと天姫を叱り、和服に身を包んだ彼は天姫の膝を陣取ってこう言いました。
「浮気は許してないから」
「誰が浮気してきたって言ったよ!?ザンザスの猫見てきただけだからっ!」
と叫ぶ天姫は実は声が上ずっていました。まさか猫見に行って愛の告白されて赤面して帰ってきたとは言えないからです。
言ったら、修羅場かもしれない、と天姫はなんとなく必死に隠そうとしました。
でも、簡単にばれてしまいました。なぜなら恭弥は天姫の態度があからさまな事に
気がついていたからです。っていうかバレバレでした。
「じゃあ、その顔は何?」
ギロリと睨みつけた恭弥は恐ろしく嘘つくんじゃないよ、と脅している風に
天姫は見えました。慌てた彼女は、手で顔をパタパタと手で煽ぎながら苦し紛れの言い訳をしてみました。
「ここって暑いね~…、ちょっと水飲んでこようかな…」
ガシッと恭弥は天姫の腰をがっちりと捕まえ逃がしませんでした。
「逃げたいの見え見えだよ、僕を侮らないで」
「いえ、逃げるつもりはありません」
「僕の目を見てから言いなよ」
「スイマセン、逃げないから力込めないでぇぇぇえええええ!!」
痛い痛いと叫ぶ天姫は苦痛に顔を歪めて叫びました。そしてこの馬鹿力がぁぁああ!!とも叫びました。
愛というのは痛いものです。
恭弥はとりあえず力を緩めましたが相変わらずがっちり離さなかった。
「君の妹って今何歳?」
「レディに歳を聞くもんじゃないよっていうかなんですか唐突に」
「なんで?聞いて困ることでもあるの?」
「……私は永遠の20歳です。そして狗楽は永遠の腕白少女です」
「…もっと他に思い当たる言い訳ないの」
あきれ返った声が自分の膝から聞こえた天姫は
「いいわけじゃないもん、本当の事だもん」
と反論した。だって本当だしね、マジに。
「……ふーん……。だったらやっぱり『お義姉さん』って呼ぶことはなさそうだね」
となんか納得した様子の恭弥君。天姫は突然の言葉に理解できませんでした。
なんとなく嫌な予感はしたが興味本位から聞いてみました。
「あの、なんでそんな事聞いてきたんですか?もしかして恭弥は誰かと義兄弟の契りでも交わすとか?」
「なんで僕がそんな古風な事しなくちゃいけないの。っていうかそれっていつの時代の儀式?」
「いや、だって狗楽をお義姉さんだなんて唐突に言うもんだから不思議に思ってさ」
「君と結婚してるんだからやっぱり義妹(いもうと)って呼ぶのが普通じゃないかって。そう思っただけ」
「ふーん?まぁ確かにそれが世間一般的には当たり前だろうね」
私の妹なんだし、と天姫はふんふんと首を動かし納得いった様子でした。
そして一瞬だけ間があき、
「…………結婚っ!?」
と驚きの声をあげました。
気がつくのが遅い人です。っていうか鈍い天姫。
恋愛ごとになると本当に鈍感すぎるのがたまにキズかもしれないですね。
「何、そんなに驚いてるの?」
と恭弥はいきなり大声をあげた天姫にびっくりしつつ問い尋ねました。
「きょ、きょ、きょきょきょきょきょきょきょ!?」
と天姫は動揺しまくりひたすら『きょ』を連呼していた。
「天姫、一回深呼吸しなよ」
となんとか落ち着かせようとする彼の言う通りにスーハ―と深呼吸する天姫。
そして真剣な表情で恭弥に問いました。
唾を飲みこみ、抑えた声音で
「…恭弥は、…誰と、結婚してるか、知ってるの…?」
と。あっけらかんと恭弥は
「君とでしょ」
とあっさり言い返しました。
「ついに本人に知られてしまったぁぁぁあああああ!!」
と天姫は頭を抱えて羞恥心から赤面どころか頭から湯気を大量噴射させる勢いで
叫んだ。
「そんなに恥ずかしがることじゃないのに」
と恭弥は言いますが、その本人も若干照れた様子でほっぺピンクに染めました。
「いいか、恭弥!!よく聞け」
天姫は恭弥の胸倉掴んで言いました。
「天姫、目が血走ってる」
冷静に彼は指摘しますが彼女は無視しました。
「私たちが結婚したわけじゃなくて『未来』の私たちが結婚したんだぞ!?」
「それがどうしたんだい。だって僕たちの『未来』の世界じゃないか」
「だから『未来』の私たちなんだって、あくまで『未来』の私たちなのっ!」
と天姫は言います。でも恭弥にはかないませんでした。
「『未来』でも『現代』でも君は僕のものだしあんまり関係ないと思うよっていうか僕以外のものになってたら咬み殺す」
「ああ!ここでも恭弥の独占力は絶賛発揮中!?」
何言っても聞かないのが彼だからこれ以上話した所で無駄に終わる…。
しかしこのままは今日から私たちは夫婦です!なんて言えるわけがない!
天姫自身、やっと周りを見るという事に気がつき視界が開けた瞬間
この愛猛烈アタック攻撃が天姫に襲い掛かるという
ある意味直球に弱い彼女にとって弱点を突かれると事態。
気が動転しまくりな天姫にさらに追い打ちをかけるがごとく
猫のように彼女に甘えてくる彼は言いました。
「僕は天姫が好きだよ」
「……………」
天姫は無言のままゆっくりと自分の両耳を塞いで
「ああ耳が遠くなってしまった」
とわざとらしい行動をとるものだから恭弥はム!と不満そうに天姫の手を外そうと
自分の両手を天姫の両手に重ねました。
でも、馬鹿力な彼女です。まったく微動だにしませんでした。
しかし恭弥とて負けてはいません。なんだこの仕打ちは!?と納得いかないと言わんばかりに
「絶対外してやる」
「絶対外れるもんかっ!」
グググッと互いの限界までの闘いは地味に数分にわたって続きました。
そして恭弥があることをしたことによってあっけなく天姫は負けました。
それは…恭弥がおもむろに天姫の耳元後ろ近くに顔を近づけ
『フウ~』
と息を吹きかけたのです。その瞬間
「ギャッ!」
と乙女らしからぬ悲鳴を上げた天姫は押さえていた両手を耳から離してしまい
あっけなく彼女の敗退となったのだ。
そうです、天姫の弱点はまだほかにありました。
耳が弱い事、だったんです。
「恭弥の卑怯っ、鬼、悪魔!」
「天姫が悪いんでしょう、子供みたいな事するから」
ジロリと睨みつければ、天姫は一瞬口を噤みその視線にたじろぐ。
「っ……うぅ~」
また耳を塞ごうにも今度ばかりはガチっと両手は彼の手の内に捕まっているので
逃げようにも逃げられないこの状況。
「いい、もう一度だけ言うから」
「いや」
「強制的に押し倒してもいいよ」
「スイマセン」
「……僕は、君が好き」
「………」
「君が抱えるもの全部知りたい、僕に頼ってほしい、どんな我儘でもなんでもいいから秘密にしないでほしい」
「…………」
「君が欲しい、僕を君で満たして、僕を君だけのものにして」
「……………」
「返事、聞かせてよ?」
甘くねだるように耳元で囁く恭弥。ビクッと体を反応させ
赤面しつつ固まる彼女が導き出した答えとは
「保留でお願いします」
でした。