闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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いつ頃マジカル?まだマジカルなし。


標的14突き進みたい気持ち

ジルside

 

今日は日曜デー。というわけで奈々さんとイーピンと買い物に来ている。クロは大人しく家でお留守番。今頃お昼寝している頃だろう。

 

「これ、おいしそうね」

 

「わぁー!ケーキだぁ!」

 

『おいしっそうー!』

 

買い物の途中でケーキの名店ナミモリーヌに来たのだけど、なんとケーキの種類の数が多い。沢山あって迷いそうである。奈々さんは好きなの選んでいいって言ってくれたけど何にすべきか。うーんと悩んでいるとイーピンがくいくいとスカートを引っ張って来た。

 

『好きなケーキ、選んでお互いに半分こにしよう』

 

「本当?ありがとう」

 

私は嬉しくて思わず素直に喜んだ。

 

「決まった?」

 

「うん!」『うん』

 

「そう、じゃあ、これとこれと……」

 

可愛らしい箱に入れてもらい、会計を済ませた。

 

「……有難うございましたー!」

 

お店のお姉さんに見送られ、外を出たときには空がどんよりと灰色で運悪く土砂降りの天気と遭遇。傘も持っておらず、お店の軒先で雨宿り。

 

「あらあら、今日の天気よかったはずなんだけど困ったわね」

 

「濡れるよ」

 

『大変大変!』

 

「どうしようかしら」

 

首を傾げて困り顔の奈々さんとケーキの箱を持ったまましょんぼりと肩を落とすイーピン。

 

「あれ?おばさん、どーしたんすか?」

 

ああ、女神さまだ!違った。山本武登場だ。

 

◇◇◇

 

山本君に誘われて山本寿司へお邪魔することになった。暖簾をくぐって中に入ると奥のカウンターから出迎えたのはニカッ!と愛想よく「らっしゃい!」と挨拶してくる山本父。

こちらもニコリと愛想笑いする。カウンター席へと案内されすぐに温かいお茶を出された。山本父はジュースでも出そうとしていたが、私が寒がっていることが分かるとお茶に切り替えてくれたようだ。子供でも持てるようカップに注がれたお茶は冷えた体をゆっくりと温まらせてくれた。

 

「うーん。温まるー」『同感』

 

「そうか!そうか!お茶ばっかりで申し訳ねぇけどな」

 

おしぼりを用意してくれた山本君はそう言いながら私の横に立つとフッと顔を上げた私の顔をマジマジと見つめてくる。

……何だろう、穴が開くほど見つめられている気がする。自意識過剰?

だがここで視線を逸らすのはワザとらしいので私も負けじと眼を飛ばす。

 

何見てんだ、あーん?

 

そんな行為を保護者たちは微笑ましい光景ととらえたのだろう。

和やかに会話は進む。

 

「有難う。山本君。お父様も申し訳ありません。突然上がりこんでしまって」

 

「気にしないでくださいよ!奥さん。子供らが風邪引いちまうなんてことあったらいけねぇ。おう、どうせだったら、スシ食っていってくだせぇ!」

 

「え!?そんな、悪いですわ」

 

元々ケーキを家で食べる予定なのだ。そんな豪華な昼食があっていいのだろうか。奈々さんも遠慮がちに断っているが、山本父は人柄のよい笑みを浮かべて言った。

 

「気にしなさんな!子供らも腹減ってるいるみたいじゃねえかい。ウチも暇だし、なぁ?武」

 

「そうですよ。おばさん。親父もこういっているんで、ぜひ」

 

苦笑しながら山本君も勧めてくれた。お人よし親子にそろって言われちゃ奈々さんも断るに断れない様子。結局お言葉に甘えることになった。

 

「そう?じゃあ、お言葉に甘えて…ジルちゃん、イーピンちゃん。お寿司食べられるわよ」

 

「寿司!」『やったー!』

 

ってなわけでお寿司ご馳走になりましたよ!得した!だがなんという不幸だろうか。まさか一枚目にしてドストライク!ワサビ付きを食べてしまうとは。

 

「およ?もう、終わりかい?お嬢ちゃん」

 

「~~~!」(声にならない悲鳴)

 

涙目になり口元を抑えて顔を俯かせる私を心配して奈々さんは驚いて背中をさすってくれた。別に喉に詰まったわけじゃないんですよ、水下さい。

 

「ああ!?な、泣かないでくれよ!」

 

「お、おい!?」

 

「よし、よし、大丈夫よ……大丈夫」

 

子供あやすように私を抱えて背中をたたいてくれるがそれ応急処置としては間違っています。大丈夫じゃないです、ヘルプです。暫く私の口の中は悲惨だった。

 

家に帰ってケーキにかぶりついた。奈々さんはなぜか自分の分のケーキまでくれた。イーピンも。嬉しくて口回りに生クリームを付けたままいたら帰って来た沢田にビシッ!と指摘されてしまった。っチ、目ざとい奴。

 

◇◇◇

 

山本武side

 

親父の買出しで町にでていたのだけどツナのおばさんがいた時には驚いた。急な土砂降りだったからな。おばさんは女の子抱いて困った顔をしていたから家に誘って正解だった。

さっきまで青白い顔してたけど温かいお茶を飲ませたら血色も良くなった。

目の前で一生懸命お茶をふぅふぅと冷ましている姿なんて隣の子もいっしょにやってるから可愛いなと思った。

 

「うーん。温まるー」

 

『同感』

 

「そうか!そうか!お茶ばっかりで申し訳ねぇけどな」

 

ニカリと笑みを見せれば少女、確かジルっていったけな。ジルがこちらに微笑み返してきた。よく見れば可愛い子なんだなとまじまじと見つめてしまっていた。親父の咳払いでハッと我に返れたけどな。正直、さっきはやばかった。内心、深く安堵している自分がいる。奈々さんが一息ついたみたいでお礼を言ってきた。

 

「有難う。山本君。お父様も申し訳ありません。突然上がりこんでしまって」

 

「気にしないでくださいよ!奥さん。子供らが風邪引いちまうなんてことあったらいけねぇ。おう、どうせだったら、スシ食っていってくだせぇ!」

 

「え!?そんな、悪いですわ」

 

「気にしなさんな!子供らも腹減ってるいるみたいじゃねえかい。ウチも暇だし、なぁ?武」

 

「そうですよ。おばさん。親父もこういっているんで、ぜひ」

 

「そう?じゃあ、お言葉に甘えて…ジルちゃん、イーピンちゃん。お寿司食べられるわよ」

 

「寿司!」『やったー!』

 

ジルは外国人みたいだけどちゃんと日本語は喋れているから日本で育ったのかなんて勘ぐっちまう。でも、そんな軽く考えていた俺はジルが抱えている問題に気づいてやれなかった。

 

「およ?もう、終わりかい?お嬢ちゃん」

 

親父の作る寿司を一皿分で終わらせてしまうジル。親父もいぶかしんでいる。

おばさんも心配してジルを覗き込んでいる。

 

「……」

 

目にいっぱい涙を溜め込んだジルが溢れんばかりに涙をこられていた。

それには俺も親父もぎょっとした。

 

「ああ!?な、泣かないでくれよ!」

 

「お、おい!?」

 

どうすることもできず、ジルの涙は今にも零れ落ちそうだ。そのとき隣にいたおばさんがジルをぎゅっと抱き寄せた。

 

「よし、よし、大丈夫よ……大丈夫」

 

まるで魔法のように。おばさんの声に、ジルも気分が落ち着いたのか眠ってしまった。

呆気にとられた見守ることしかできなかった俺達におばさんは声を潜めて悲しそうに笑った。

 

「実はこの子、少し体が弱くて」

 

ご飯もまともに取られないというおばさんの言葉に衝撃が走った。

おばさんは教えてくれた。ジルは生まれつき体が弱くて薬が手放せないとのこと。それも子供が服用するには多量の薬で、義兄であるディーノさんは薬だということをジルには教えておらず、お菓子だと嘘をついて与えているらしい。

 

「ジルは、分かってないのか」

 

「ディーノ君は知ってほしくないのよ。ジルちゃんには普通の子として過ごして欲しいんじゃないかしら」

 

酷い時なんか、水一杯で満腹だと言ってしまうのよと、ジルを切なげに見つめながら。

 

だから、さっきつい泣いてしまったという。俺や親父に申し訳ないって。

 

親父も俺もそれ以上なにも言えなくなって俺は眠るジルを家までおんぶさせてくれと願い出た。心が落ち着かなかった。こんな小さい子なのに俺たちのことを案じてくれて鳴いてくれるなんてさ。

なんだか、小さな命が愛おしくてどうしようもなく傍を離れたくなかったから。

小さな体で懸命に生きようとしているジルが気になって仕方なかった。思えばツナ繋がりで学校で会った時から気になってたんだ。

 

これはただの通過点。

気になるから好意に走るのにそう時間はかからなかった。

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