闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

144 / 160
標的145Time is money『時は金なり』

天姫side

 

無事並盛に着いたのはいいが私は早く行動したいのだけどさせてくれない子が目の前にいる。骸がどうやら私たちを逃がす為に手助けしてくれたらしい。

やっぱりあの子が死ぬはずない。だって結構丈夫だと思うし、ね。

らしい、と私が言っているのは実際にその場にいたわけではなく凪から教えてもらったからだ。その凪はと言うと、目下起怒りまくりだ。うん、泣きながら怒ってると言ったほうがいいか。せっかく可愛い顔してるのに眉を吊り上げ目をくわっと大きくさせかつボロボロと大粒の涙を零しつつ私のほっぺを引っ張りながら

 

「天姫の馬鹿っ!」

「しゅひましぇん」(スイマセン)

「全然気持ちがこもってない、馬鹿天姫!」

「しょれはひはらしぇれてっから」(それはひっぱられてっから)

「全然反省してないっ!」

 

反省も何も無理ですよ。だってすでに終わってることだもん。

正一の傷はすっかり塞がったようだしおまけに彼の体力もちゃんと回復したみたいだ。

だって、あの口移しのあと、起き上がって顔真っ赤にさせて口パクパクして金魚みたいだったもん。

それはびっくりするもんよ。いきなり『血』を強制的に飲まさられるとは予想もつくまい。

私も未来の私がユニの母親にしたことを事前に聞いていたから実践したまでのこと。

上手くいってよかった。

結果オーライ!まぁ、自分の腕の血が止まる気配はいまだなくちょっとヤバいかも

なんて心の片隅に感じつつ

開き直ってさっさと行動しよう。凪はむぎゅっと抱きしめてあげたら黙り込んでしがみ付いてきたので心配かけてごめんね~?と謝っておいた。

凪の体が震えているのが体越しに感じとれた。

まだ血は止まってないんだけどもさっきよりましである事は言わないでおいた。

またほっぺ引っ剥られるのは御免である。

袖の下には包帯が幾重にも巻かれて手当がされているにも関わらず、白い包帯が滲んでくるのが肌で感じられる。

服にまで染みこみそうだ。

外の方では白蘭たちが少しでもこちら側に来るのを遅くするため転送システムを破壊しなくてはと元気に立っている正一が叫んでいる。

負傷していたはずの正一が立てるまでに回復していることに驚いた綱吉たちだったが

今はそちらが優先と隼人の攻撃により転送システムを破壊した。

攻撃は当たったのだが、破壊というには一歩遅かった。

一瞬的は消え、瞬きする間に再び姿を現したのだ。

白蘭たちがこちら側に来たのだ。

攻撃を受けた転送システムは四方に分散して並盛の地に瓦礫と共に落ちる。

敵も四方に散らばった事を理解させた。

 

「あれ、恭弥。どっかいくの?」

「一つ並中の方に落ちた。ちょっと見てくるよ」

 

さすが並盛大好きっ子。こんなときでも学校を気にするとは。

おばさん関心しちゃうわ。

 

「あらそう?ちゃんと帰ってきてねー」

 

彼に向って手を振ってやったら階段を降りようとした恭弥が再び私の前に戻ってきて

律儀にほっぺにキスをしてきた。

行ってきますの表現?

 

「ムっ、その言い方気に食わないけどちゃんとその包帯の事説明してもらうからね」

 

後でしっかりね、と含みを忘れない彼。

 

「……はいはい」

「はいは一回だよ」

 

そういって恭弥は今度こそ階段を下りて行った。

 

「俺にもちゃんと聞かせろよ?」

 

ディーノも恭弥についていくらしい。ゴシゴシと人のほっぺを自分の袖口でこすぐってくる。その箇所はさっき恭弥にキスられた場所だ。

痛いっつーの。しかも満足した本人はその箇所にまたキスをしてきた。

ようは消毒と言うやつか?

あ、それに久しぶりに怒った顔。

イケメンなディーノの怒った顔はレアだと思うし

懐かしいとは口に出さないお利口な私。

 

「はいはいはい」

「はいは一回で十分だ」

 

弟子と同じ事いってディーノも階段を下りて行った。

あ、言い直そう。落ちていった。

 

自分の足引っかけたみたい。だって下からうめき声がするもの。

そんな間抜けな姿でも私にとってはカッコいい義兄である。

うーん、綱吉たちもごちゃごちゃ言ってきたけど後で話すからと軽くあしらい

私はユニの手を引いた。とにかく身をどこかに隠さなければ…。

大勢でこんなとこ突っ立てたら目立ちすぎだろ。

綱吉たちは哲さんが地下基地に隠れては良いのでは?との提案に乗り

一向は地下に避難することにした。

私としては納得に欠ける理由である。逃げ道が確保されていない地下では身動きがとれないのはすぐにわかる。

ましてや女子供もいる状況に敵は情けなどかけてはくれないのだ。

甘い、甘すぎる。苛立ちが募る。

わずかに蟀谷(こめかみ)がピクピクと痙攣しだした。

 

「天姫ちゃん、ちゃんと手当しなくちゃいけないよ」

「そうです!!天姫ちゃんの玉のような肌に傷残しちゃいけませんっ!!」

 

着いてからの京子とハルのお世話好きも正直今ほどウザイと感じた事はない。

彼女らの美徳というものなのか、それとも友達だからここまで過保護になるのか知らないが状況は決して油断できるものではないし、なんで基地が確実に安全だと言い切れるのだ。

私の腕を引っ張る二人の手を振り払い、無理やりユニの手を引いて私は距離を置いた。

まさか振り払われるとも考えていなかった二人は半ば呆然と私を見やる。

それなりに拒否られた事がショックなようだ。

 

「ゴメンね」

 

女子たちには優しく謝り

やんわりとでもハッキリと私は彼女らにではなく男どもにも言った。

 

「そんな簡単に逃げ切れると思ってるの?」

「天姫、姉様」

 

大丈夫、不安そうな顔をしないで?

その意味を込めて彼女を見た。

 

「ユニに執着する白蘭の目を見たでしょう?気を抜ける状況ではないというのに」

 

本当の意味での戦闘を知らない。

知らないから余裕がある。余裕が生まれるからミスをする。

ミスをするから命を落とす。

ゴーラちゃんにユニを抱っこしてもらい私はさっさと逃げる為に彼らに背を向けた。

慌てた綱吉の静止がかかる。

 

「ちょっ、ちょっと待って!?何処にいくんだよ」

「見てわからない?外よ。身動きできない此処よりはマシだもの」

 

それに、気配が近づいてるわと囁くように言えば、案の定彼らの表情に動揺と言う二文字が走る。

 

追いかけっこは始まったばかりなのよ?鬼はすぐそこにまで来ているんだから。

 

それからあのマグマ男が「バーロ」といいながら(なぜバーロというのかわからない、もしかして『俺から逃げられるわけないじゃん、バーロ。ウケるぅ~(笑)』なんて意味があったのかもしれない)地下を破壊してやってきたのはすぐの事。

スクアーロがひっそりと自分だけで暴れたいと豪語したので頑張ってと手を振ってエールを送りつつザクロから逃げた私たち。すっかり元気になってる正一は後ろの方で走ってます。

 

今の所体に異変は見られない。良かった、拒絶反応か何かもしかしたら後から出るかもなんて考えたけど今の所それは杞憂なようだ。

 

しかし状況がよくなったわけではない。これからどう動く、か。ユニを守りながら他の皆にも気を配るなんて事は不器用な私には到底無理だ。

 

あえて数人、女子供優先だな。男衆には自力で防御してもらおうっと。

 

クソ、こういう時にあの神男とラビットが現れたらメッチャこき使ってやるのに…。

気がつかないうちに舌打ちしていた。押さえていた殺気がそれで一瞬だけ溢れ出す。

瞬く間にそれは伝染するかのごとく皆に伝わってしまった。

ピリっとした空気、呼吸の乱れ、警戒心が露わになる。

私はそれをすぐに内に押し込みわざと明るい声を出してゴメンゴメンと手をパタパタしつつ謝った。自分にも余裕がないなんて追い込まれてるカンジ?

 

あ~あ、昔の私だったらこんな状況考えられないかも。

 

溜息つきつつ、ハルの提案により一時的な避難場所として『川平不動産』が選ばれたので足を動かすことに今は集中しよう。

無論、ユニはゴーラちゃんに抱っこさせてね。

何かあった時はすぐに飛んで逃げてもらうためだから。

腰元にアクセサリーみたいにぶら下げた私の匣はいまだ活躍の場を見せずに

ただ走る振動で揺れるおもちゃみたいだ。

 

クローム髑髏side

 

天姫が明らかにおかしいと感じたのはチョイスの決戦が始まる前からだった。

ううん、違う。その兆しは前からちょっとずつわからないほどに広がっていたの。

ただ気がついたときには、天姫があまりにも遠く感じてしまって怖かった。

だから何処かに行かれるのが怖くて置いていって欲しくなくて

無我夢中で天姫の腕に抱きついたの。

そうすることで何かが変わるわけじゃなかったけど、でもそうせずにはいられなかった。

 

「どうした、凪?」

「仕方のない子だ。…もうちょっとだけだよ…」

 

ぐずった子供をあやすみたいに天姫は私に接した。

その時の天姫を見た時は、ああ、大丈夫だって感じられたのに…。

入江さんにとった行動を目の当りにしたとき、私は動くことができなかった。

止める事だってできたはずなのにただ見ていることしかできなかった。

天姫が『人』に見えなくて

天姫が『怖い』って思ってしまって

その感情を一時でも抱いてしまった自分が許せなくて

だから、並盛に無事についたときに私が取った行動は八つ当たりでもあったの。

天姫のほっぺを掴んで伸ばしてやった。

柔らかい肌にあったかさを感じて、天姫は『人』なんだと自分に言い聞かせる。

私と天姫との間には隔たりなんか存在しないっ!

馬鹿な天姫は私が大好きな天姫なんだっ!!て。

 

「天姫の馬鹿っ!」

 

違う、本当に馬鹿なのは私なの

 

「しゅひましぇん」(スイマセン)

「全然気持ちがこもってない、馬鹿天姫!」

 

天姫を怖いと感じてしまった私が馬鹿なの

 

「しょれはひはらしぇれてっから」(それはひっぱられてっから)

「全然反省してないっ!」

 

反省しなきゃいけないのは私なのに、どうしてあんな気持ちを消すことができないの?

今も、天姫に畏怖している自分がいるなんて

天姫は私の愚かな心に気がつくことなく、ううん、もしかしたら気がついて知らないふりしているのかも。

なんで、なんで私は……!

心配かけてごめんね~?なんて私を抱きしめてきた天姫に縋る事でその気持ちを無理やり消化しようとした。

誤魔化そうとしたの。

この拭いきれない不安を、見捨てないでほしいと

祈りにもにた気持ちを押し隠して天姫抱き着いた私の手は震えていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。