闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的148Sometimes you have to tell a lie.『嘘も方便』

天姫side

 

なんとも間抜けな事をしでかしてしまった。

川平の予想外の言葉に動揺してしまった私はあっさりと敵の侵入を許してしまった。

霧の術士であるトリカブトは「外に行くー!」ドアを開けたランボと入れ替わり

ユニを引っさらってこの川平不動産を襲撃してきたのである。

ユニと凪の様子がおかしいことに気がついた綱吉たちは外から襲撃が来ると予想し

扉付近で待ち伏せしていたのだが、敵は内にあり。

ランボに変装していたトリカブトがユニをあっという間に連れ去っていった。

しかも私の目の前で、だ。

悔しさよりもそれを許してしまった自分の失態が許せない怒りとどうしてこの場所が敵に知られたか、という疑問だ。

連れ去られたユニを追いかけ外にでた瞬間、待ってましたと言わんばかりに

真6弔花の桔梗とブルーベルが私たちの行く手を遮った。

 

「退け」

 

獣が唸るように私の声は、低く殺気に満ちていた。

 

「ハハン!貴女にも来ていただきますよ。白蘭様が首を長くしてお待ちしているのですから」

 

だから人をモノ扱いするなっての。

喉元まで出かかった怒鳴り声は急速にしぼんだ。彼の声によって。

 

「そんな事させるか!」

 

綱吉が私を庇うかのようにたち桔梗を睨みつける。

……ここは綱吉たちに任せようかな。無駄に雑魚に力使う必要もないし

何より、私の体力がちとキツイ状態にある。

未だ、血が止まらないのだ。

正一の傷をいやす為自分の腕を傷つけで正一が元気になったまではいいのだが、

自分の事までは考えてなかった。

特殊な体故、いつも神男が傷を治していたし、通常よりも傷口が塞がりにくくなっている私の体。

厄介なもんだ、とちょっとフラフラしそうな体を無理やり踏ん張って立っている状態。

他の皆にはまだ気づかれていないのが幸いだ。

とにかくユニを助けよう。

そう思って、行動しようとしたのに……。したのに……。

ユニはちゃんと救出された。

そいつの出現によって目が点になる私の目の前上空で。

ユニのほっぺがポッとピンクに染まって

奴が生きていたことに嬉しさを隠し切れずに真珠のような涙を流して

奴が当たり前のようにユニに微笑んでいる。

初めて会ったはずなのに、ここまで熱烈に視線を送ってくるとは私も有名になったもんだ。

ずっと首を見上げているのも飽いた。

 

「さっさとユニを降ろせ。電気男」

 

地上にいる私の声が届いたか届かないかわからないが、

上空に浮かんでいる奴の反応がユニに向けていたものとは

まったくの真逆のものになっているのは感じとれる。

上から偉そうに見下ろされるの嫌いな私にとってユニを助けるのが私の役目なのに

アイツがユニを大事そうにしてるのが余計腹立つ。

あの男の様子からしてこちらにも敵意を燃やしているのはあきらかだった。

ユニを大切に、大切に抱える男が私を見下ろす。

ぎりっと歯を噛み砕かんばかりに私に殺気を叩き込んでくる。

 

「…神崎、天姫…」

 

それは呪詛を呟くかのように、男にとってはその名を言うのも苛立たしい。

それは天姫にとっても同じことだった。

この未来の世界で守らなきゃいけない対象を目の前で攫われた気分になっている

天姫。苛立ちはピークに達していた。

でもユニの手前堪えていたのだ。

何かに依存しなければ天姫は生きることさえできない女なのだから。

さて、綱吉がトリカブトと空中戦をしている間、ボケッとしてる訳もいかず。

何より、人をモノ扱いした桔梗とか言う奴がムカついた私。

確かにフラフラだけど、怒りが収まったわけではない。

ちょうどいい、ちょっかいだしてやろう。

子どもが玩具を見つけた時の笑みのように私は嗤った。

嗤う事で痛みを誤魔化したとも言う。

敵と同じ土俵=空中に跳ぶ事にかなり体力を使ったけど、遊ぶならなんてことないや、と頑張った自分をねぎらいつつ、敵には恐ろしさをプレゼントしてやろう。

 

「その妙に変な言い方気に入らないんだよ、桔梗?」

 

風に揺れる自分の髪を手で整えながら片手は愛刀に到達している。

抜くのは不毛な会話が終了した時。

 

「生意気~!」

 

ブルーベルがプンプン!!という効果音付きでもいいような怒り方していて、ウケた。

思わずふきそうになったのを押さえつける。

 

「ハハン、名前を憶えていただけたとは光栄ですね」

「ちょっと、桔梗…」

「いいじゃないですか。ブルーベルは手を出さないでくださいね?私がお相手するんですから」

 

そういって桔梗の雰囲気が一変する。

下等なクセして態度デカすぎ。私に敵うと思ってんの?

遊びのつもりだったけど……。今消してもいいんだ。

 

『消して鬱憤晴らしましょうよ』

 

誰かが私の耳元で静かに囁いた。

そうね、確かにその方がストレス発散できるしと天姫は同意する。

不思議とその瞬間だけは痛みが消えた気がした。

ジクジクと少量づつ溢れていた血が止まった感覚がした。

気のせいかもしれない。

血を流し過ぎて気がおかしくなったのかもしれない。

けどこれでいいの、と誰かが言う。

天姫の紅く染まる瞳がより一層輝きを増す。

何かと呼応するかのように、何かと同調するかのように。

音もなく『月光』を抜く。

 

「相手してやるよ、お前のプライドごとぐちゃぐちゃにしてやる…」

 

煌めく刃に自身の姿を映して。

舌舐めりする天姫は恍惚にあふれ出てくる歓喜を隠そうとはせずに

獲物を切り刻める興奮から頬を紅潮させて

ただひたすらに桔梗を視界から逃さんと言わんばかりに捉える。

さぁ、遊ぼうよ?

 

(本当の苦しみとはどういうものか、『遊び』で教えてあげよう)

 

 

惜しくも、天姫のストレス発散もとい敵滅殺するという遊びは敵が撤退するという非常に残念な結果に終わり、本人はずっと機嫌が悪かった。

それには理由がある。

日が闇に隠れ夜が訪れた後、綱吉ボンゴレ組と生き残っていたγたちとで

敵から身を隠す為、綱吉たちが未来に来た場所。

綱吉の棺桶があった森の中に身を隠すことにしたのだ。

しかし皆が焚火の周りに暖を取っている中、天姫一人だけはその輪に入ろうとせずにいた。

 

「天姫?」

 

彼女の普段らしからぬ態度に違和感を覚えた凪が名前を呼んでも返事を返さず

 

「天姫……アハハ…ちょっと雰囲気が怖すぎなんだけど…」

 

綱吉が天姫の変貌ぶりにビビりながらも声をかけるが返答なしに終わり

 

「焼きもちじゃねぇか、γに」

 

ユニを盗られた気分だからだろうと、冷静に指摘したリボーンにはすぐさま反応し

すかさず食らいつくように

 

「焼いてないっ!」

 

と大声をあげ、、またムスっと不機嫌そうにある一点を恨めし気に見る。

そこには仲良さげに話しているγとユニの姿が。

鈍感な天姫でさえわかろうと言うもの。二人の雰囲気はまさにラヴラヴなカップルのような空気を漂わせているのだ。

あのγの視線は一心にユニを追い、ユニもまたγに逢えた喜びを隠そうとはしない。

アイツが来るまでは私が守っていたのに…。

うぅ~と唸りひたすらγを睨んでいると

 

バチコン☆

 

お互いの目が合っちゃったら戦闘開始!

なんて事はないけど言いたいことがたくさんある天姫は、

腸に煮えくり返っている感情を抑えることできずにγに向かって歩き出しました。

お互いある程度間があいた所に真正面に立つ。

 

「おい電気男、お前にぶつけたい事たくさんあるけどまず、その敵を見る目やめろ.

ってか上から目線やめろムカツク」

「………フン、卑しい女が。何処の口がそれを言うかと思えば……」

「……100歩譲ってそれがお前のあいさつの仕方としよう。だがまず私はお前と初対面。なら正式なあいさつってもんがあるだろうが。それさえわからないほど馬鹿なのか?だったらご愁傷様。脳細胞死滅してるわ」

「俺の貴様に対するあいさつは殺してあの世に送ってやることだぜ」(ぶちっ)

 

天姫の蟀谷がもう駄目だー!!と叫んだ。

腰を低くし刀に手を添え、いつでもγに斬りかかれる体勢を作り出した。

 

「だっだら私が実行してやるよ。あいさつ代わりに消してやる」

 

ドス効かせた声はあきらかに怒気を滲ませてじりじりと足を動かし距離を近づけていく。

反対のγも「上等だ」と眼力ビームで壁を破壊できそうなほど殺気を含ませ自分の匣兵器をとりだした。

 

「兄貴!俺たちにも相手させてくれよ」

「……ボスの敵だ……。ここで恨み晴らさせてもらう…」

 

野猿、太猿の二人もγに加勢し3対1という状態に。

 

「なっ!?」

「天姫っ!」

 

綱吉たちが予想だにしない展開に驚きを隠せず、凪は天姫の危機だとすぐさま

天姫の後方に走り出し戦闘態勢を取った。

 

「凪、危ないよ」

 

天姫が後ろを見ずに彼女に声をかければ凪は三叉槍をぎゅっと握りしめ

 

「危なくないもん、それに…天姫に攻撃するなら…容赦しないつもりだものっ!」

 

と血気盛んにムクロウが凪に呼応するかのように羽をバサバサっと

させ敵方であるγを瞳に捉える。

 

3対2。

 

ビリリっと空気が震える。それほどまでに二人の気迫はすさまじいものだった。

一瞬即発な空気に介入する者が現れた。

それは

「天姫姉様っ!γっ!?やめて―――!」

 

天姫とγの間に飛び込んできたユニだった。

 

「ユニ!?」「…姫…どうしてだ……!」

 

びっくりする天姫と、納得がいかないように顔を歪めるγ。

 

両者を見やるユニの頬には涙の粒が流れるが彼女はそれを気にした素振りすら見せずに

必死に叫んだ。

 

「やめて、γ!天姫姉様を憎まないで」

「どうしてだっ!アイツはボスを殺した女だぞっ!?」

 

頭を振り、必死に真実を伝えようとユニは叫ぶ。

未来の天姫がしたことを。

 

「違う、違うの!!天姫姉様は…お母さんを殺したんじゃないっ!!」

「お母さんを助けようとしたのっ!」

「「「なっ!!?」」」

 

絶句する面々、もちろんその中には天姫自身も含まれていた。

 

「……ユニ、どういう事なの…」

 

静かに彼女に尋ねた。ユニは涙ながらに語る。

誰も知らない真実を。

ユニの母親、アリアは死の淵にいた。

彼女が大空のアルコバレーノであるかぎり死からは逃れられなかった。

それを捻じ曲げようとしたのが未来の天姫であった。

天姫とアリアは友人関係にありお互い本音をぶつけ合える数少ない友達だった。

しかし、アリアの命の時間にリミットがあることを知った天姫は、

蒼龍姫で無くなった自分の『血』に不老や癒しの効果があることを偶然知り

アリアの自分の血を飲ませようと考え実行した。

次第にベッドから起き上がる事が出来なくなってきた友の体を傍でヒシヒシと感じながら、それでも自分の腕を斬りつけ館を訪れてはアリアに血を飲ませてきた。

たとえそれが許されないことだろうと天姫にとって大切な人が目の前で死んでいく光景を二度と見たくない

置いていかれたくない

その一心でやったことだった。

でも無理やり与え続けても効果は一向に現れず、それどころかアリアの体は衰弱していく一方だった。

γたちも次第に怪しんでいく。

天姫の行動にアリアと面会するときはかならず二人っきりになり天姫が出て行った後のアリアの寝室には血の匂いが蔓延していた。

それに天姫はいつも腕を庇うかのように手を添えていた。

とうとう、アリアの寿命が尽きるその時アリアは、体力が残っていない手で天姫に頼んだ。

 

『天姫、あの子を頼むわ』

 

と。

あの子とはユニの事を示していた。

残していく我が子を天姫に託したい、アリアはそう願い、友として楽しい人生を送れたと笑みを残して逝った。

残された天姫は嘆き悲しみ、どうして私は友人さえも助けられないんだと

自分で自分を殺したいほど苦しんだ。

だが、先のユニの安全を考え、γたちをうまく鍛え上げる方法を思いついた。

それは自分がアリアを殺した事にすれば復讐心からきっと自分を殺す事を目標に

彼らは強くなる。そう直感し、嘘をついた。残酷で悲しい嘘を。

γたちがアリアの異変に気づき寝室に駆け込んできた時、天姫は言った。

狂気という仮面をかぶってナイフを手にぼんやりとした表情から凍りついたγの顔を見ながら

 

『アリアは旅立った』【今から私を憎め】

 

にぃっと笑みを浮かべて。

 

【ユニを守る為強くなれ、今度こそ手放さない為に】

 

誰も気がつかない嘘を天姫は貫き通した。

憎まれて憎まれて胸が痛い時があっても

殺されそうになって重傷を負っても

血を流しても天姫は嘘を言い続けた。

アリアとの約束だから。

その真実にユニが心痛めたとしても

ユニに口止めしγたちに話す事を許さなかった。

天姫は徹底してボンゴレにも打ち明けることは一切なかった。

彼らがγたちを標的としないように

彼等をボンゴレから守る為。

天姫は孤独になりながらも友を想いユニの身を案じ白蘭に囚われるまで、ずっと独り嘘で周りを固めていたのだ。

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