闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的149素直に嬉しいと思えた瞬間

身を挺してユニを守る事に執念すら感じさせる内容。

ボロボロと純粋に悲しむユニはただ二人の闘いをやめたいが為真実を打ち明けた。

これでわかってくれる、そう思ったから。

案の定、暗い森に閉ざされた場所にいる仲間たちは真実の重さから口を開くことを躊躇っていた。何と言えばいいのかわからなかったからだ。

だが、その空気をぶち破る人物がいた。

腰に手を当て威張るようにγを睨む天姫はこう言い放った。

無論、その相手はγである。

 

「そこの電気男、まだ私を殺したい衝動あるの?だったら相手してあげるわよ」

 

とまだ度胆を抜く言葉を言うもんだから、周りの人間は何考えて発言してんだよっ!?

と同時に思った事だろう。

それは真実を知ったγも同じ事。

呆れ半分信じられないものを見る目で偉そうな天姫を見やる。

 

「……なんでだよ、…なんで……」

 

至極当然に天姫はケロっと言う。

 

「だって、結局は未来の私の手のひらで踊らされた感じが残ってて嫌な気分しない?

憎しみが簡単に消えるわけじゃないでしょう?人は単純だけど、ある意味単純じゃない。全てを吐き出したいでしょう?スッキリしたいでしょう?私が手助けしてあげようって言ってるんじゃない?」

 

だから、来なさいよ、と手招きするみたいに天姫は手を差し出した。

γに向けて妖艶に微笑みながら。

 

「天姫、いい加減にしろよ!」

 

天姫の誘いの手を奪ったのが制止するために怒鳴った綱吉。

だが彼女は冷徹に切り返す。

 

「……部外者は黙りなさい。これは私と彼の問題よ」

「何が部外者だよ!この状況でまだ関係ないって言い張るつもりか!?」

「関係ないとは言ってない。けど私自身が関わってるならそのままハイ終わりですって放っておくわけにいかないもの。何にしろ決着はつけなくちゃ。簡単に仲直りとか漫画じゃあるまいしできるわけないじゃない。それとも綱吉。貴方は裏切ったにも近い人間を簡単に許すことができる?すんなりとああ、あの時の事は水に流そう!そんな昔のこと今は関係ないだろ?なんて笑顔で相手の顔を見れる?ずっと憎い敵(かたき)と信じて疑わなかったのに手のひら返したみたいに許すことができるの?」

 

まくしたてるようい次々と出てくる言葉はどれも本当の事。

人の心は割り切れるほど単純にできてない。

笑顔を張り付けて相手に接していても心ではどこか拒絶していることがあるかもしれない。

白と黒

天姫は白と黒がごちゃまぜになった灰色の世界で産まれたから

だから余計にはっきりさせたいんだ。

素直に分けることが出来るほど、綱吉は言える言葉が思いつかなかった。

それでも、今は止めなくちゃいけない

 

「…でも、今は止める。天姫の選択は間違ってると思う」

 

静かにでもこの場にいる全員に聞こえるくらいハッキリしたそれ。

じっと見つめ合う二人。周囲もその雰囲気に呑まれる。

張り詰めそうな空気に一つの溜息が漏れた。

 

「…フゥ……そう、…わかった」

 

降参よ、と両手をあげ瞳を伏せた天姫は、ゆっくりと対峙する綱吉に背を向け岩壁の方に歩いていった。

そして腕を組んで壁に身を預けたまま、黙り込んでしまう。

残された面々は重苦しい雰囲気からなんとなく脱せずに、そのままどう行動するかの話し合いをすることにした。

γも無理やり継続させた会話に参加するも、どことなく天姫の気配を気にする所があった。

天姫はぼんやりと白蘭との最終決戦に向けての皆の話し合いを聞いていた。

よくよく思い返してみればさっきの私の発言って自己中以外の何物でもない。

どうして暴走しちゃうかな、私って。

制御が利かないっていうか、昔に戻ってるっていうか…。

ああ、白と黒をハッキリさせるのってムズカシイなぁ~。

ぼやきじゃないけど溜息すら出てしまう。

実際に自分の口からはハァ~、と重い二酸化炭素が出ていく。

皆に自分の事を理解してほしいと願う反面、やっぱり皆には理解できない自分の面があってそれを出すことによって皆との距離がだんだん離れていくような気がしてしまう。

それが寂しくて、悲しくて、でもしょうがない事だってわかっている。

努力して努力してみんなとわかり合いたい、少しだけでも皆と『普通』になりたい。

『普通』な会話して

『普通』に遊んで

『普通』な家族で過ごして

『普通』な人生を送る

 

そんな些細な事が私にとっては、天の光を掴む事と同等なのだ。

『普通』じゃない私は『普通』な女の子に憧れてます。

 

「天姫ちゃん」

「端っこにいないであっちに行きましょうよ?」

 

ボケッとしてたらいつの間にか京子とハルが私の両脇に立ってた。

あらら、全然わからなかった…。

よほど意識が飛んでたらしい。思わぬ失態にまた落ち込みつつ何か用?と尋ねた。

彼女たちの顔は見ずに。

怖いから見たくない、恐れられるのが怖い。

嫌われたくないから見て見ぬふりをする臆病な私。

だから声だけが私の両耳から入ってくる。

 

「私たち舐めないでください」

 

とハルが私の左手を取った。

 

ぎゅっ

 

「天姫ちゃんって変な所で臆病だね。でもそういうとこ、…見れてよかった」

 

京子の優しい声と共に右手も掴まれた。

 

むぎゅっ。

「…あ…」

 

そして目の前には怖そうに仁王立ちした凪の手が伸びてきた。

反射的に叩かれる!!と思った私は目を瞑った。

けど、痛みが起こるようなことはなくただ頭を撫でる感触。

 

「天姫はもっと自分を出して?」

 

なでなでと頭を撫でられる感覚に、何だとおそるおそる目を開ければちょっと背の高い私の頭を背伸びしている凪。今の状況って?すぐに理解できなくて呆けてしまった。

でも三人の気持ちがすぐに理解できてわかって涙が溢れてきた。

 

「…わた、し…わたし……」

 

じんわりと広がっていく温かさ。理解していくほどに心に浸透していく。

ハルが言った舐めないでとは、私が皆に恐れられる事なんてないという事。

京子が私が臆病だと言ったのは、皆が私から離れていくという不安。

凪が言った自分をもっと出せとは、もっと自分をさらけ出して皆に接しろという事。

私は強くない、弱い。だって本当は嫌われることが怖い。

だって私は

 

「「「天姫(ちゃん)は不器用だから!」」」

「っ!」

 

笑顔で言う三人に先に言われてしまった。

不器用だって知ってていてくれている。

みんなの気持ちが嬉しくてこそばゆくて今度こそ線が切れた。

 

「……う、うぅうぇぇぇええええええええ―――――んんんんん!」

 

餓鬼みたいなんだけど止められない。

年甲斐もなく私は鼻水出して号泣するという初めての事をした。

嬉しくて、嬉しくて泣いた事なんてなかなかなかった人生だ。

散々醜態を見せた私の所にきたのは、苦虫噛んだような表情のγだった。

鼻水すすりながら充血した目で自然上目づかいになる私。

地面にへたり込み凪がくれたティッシュでちーん!と鼻をかんでそれでも鼻が詰まってる感はぬぐいきれない。

 

「…ずびっ……にゃんか用……」

「……その、さっきは悪かったな…」

 

歯切れ悪くとぎれとぎれではあるが謝罪の言葉を紡ぐ彼。

さっきの私ってそういえば見られてたのか…。

気がついて穴があったら入りたいほど一気に赤面した。

 

「……」

「………」

 

一瞬お互い、間があき沈黙。

 

「………」

「…………」

 

どちらとも気まずい雰囲気がしばらく続いて

 

「………私も、挑発するようなマネしてごめんなさい…」

 

ペコリと頭を下げた、と同時に彼も困った顔して

 

「…いや、俺も罵っちまった……し…」

 

またお互いそこで黙ってしまう。

そこに飛び出すように来たのがユニだった。

にこにこと嬉しそうに笑みを浮かべて私たちの間に立つと、

 

「これで仲良しですね?二人は」

 

ね?とそれはそれは可愛らしい笑顔で

逆に言えば

おめぇらいい加減にしないと怒るぞ?

とも取れる笑みで私たちを軽く脅すお姫様に

 

私とγは

 

「りょ、了解!!」「…わかった…」

 

と返事するしかなかった。

わぁ~、ユニってこんな面もあるんだ~

と普段の彼女と今の怖さに少しギャップを感じて面喰った事はユニに内緒。

さて、次からはとうとう彼との対決が待ってるぞ?

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