闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的150コレ、超危険につき取扱い厳禁!

何だかんだゴタゴタは発生したものの、なんとか終息には至った面々。

忘れてはならない現実はすぐそこにまで迫っているのである。

そう、白蘭との最後の戦いという現実が。

先見の力を持つ彼女が言う静かな声がこの場所に響いた。

 

「明日、夜明けとともに始まる闘い、それで、この永く苦しい闘いが終息を迎えます」

 

確信が込められたそれは、ユニがずっと以前から知っていた唯一の未来。

皆が夢見た過去へと帰る唯一のチャンス。

未来の世界の運命を根本から変える勝負。

そして、天姫が自分を取り戻すか否かそれで彼女の辿る運命は決まる。

 

「それは本当か?」

 

ラルの問いにユニはコクンと頷いた。それに続き正一は不思議そう自分の疑問をぶつけた。

 

「勝負の勝敗は予知できなかったのかい?」

「…私が予知できたのはこうして皆さんと話す所と、勝負が始まる前まで…それ以降は…」

 

予知はできなかった、と瞼を伏せ首を振ったが

 

「でも、この世界での出来事は他のパラレルワールドと繋がっています。つまりこの世界で事を正せば他の世界での悲惨な出来事も全て、正しく元に戻る結果になります。だからみなさんは、もうこんな恐ろしい世界……平和な世界に帰ることができるんです」

 

帰れる、その言葉に女子たちの顔は歓喜に包まれた。

女子たちだけではない、綱吉たちも心は躍る。

大切な人が生きている世界、家族が待っている世界。

彼等にとってそれは帰る場所なのだ。

いつもの変化あり笑いあり涙ありの日常こそが生きる場所。

隣に立つ凪は嬉しさをこらえることなく天姫の腕に抱きついた。

ニコッと心から戻れることを喜んで

 

「天姫、帰れるって!」

「そうだね」

「これで一緒に暮らせるんだよね?」

「うん、一緒にね」

 

天姫が目を細めて笑みを浮かべて答えれば凪は安心したかのように腕に頭をこすり付けて甘えてきた。

ようやく、ようやく帰れると言うかのように。

良かったねという意味を込めて凪の柔らかな髪に手を伸ばし撫でた。

天姫の手は凪を構っていたけど、視線はユニに向けていた。

喜ばしい、ことだ。

確かに喜ばしい。

仲間が嬉しいという感情を理解することはできる。

でも、天姫だけは違った。

皆が喜んでいる側で天姫だけはユニの寂しそうに微笑む姿に違和感を覚え

どうしても沸いてしまう不安を拭いきれなかった。

私たちが帰るというのは、何によって引き起こされる現象なのか、と。

誰も犠牲がないまますんなりと行くものなのか?

心の中で問いかけた所で答えが返ってくるわけでもない。

でも今その事を発言するわけにもいかない。

この空気を壊しちゃいけないと思ったから。

でも、天姫は後に後悔する。

あの時に聞いておけばユニがああなるなんて地獄を見なくて済んだのに、と。

 

 

白蘭との戦闘で勝利を確信させるためには作戦が重要だとの考えで元メローネ基地隊長という大役をこなした正一が立てることになった。

 

「じゃあ、まずは負傷していて戦闘に出られない人を確認しておこうか」

 

正一がズバリ名をあげていったのが獄寺にラル、笹川に野猿に太猿。

名を言われた本人たちは、俺たちは戦えると文句をいったりしたが、リボーンが撃った一発の銃弾と「うるせぇぞ」の一言で一気に黙った。

正一は冷や汗をたらしつつ、次は使える匣兵器を確認しようと提案した。

確かに、闘いの上で中心的役割となるのは、匣兵器他ない。

するとγがある思い付きを口にした。

以前の戦いで垣間見た雨イルカだけにあるという特殊な能力を。

それはブレインコーティング、別名『ボックス間コンビネーション発動システム』

という雨イルカが主に電波役となり他の匣兵器との連携を結びより高めるだけでなく

ときに匣兵器同士のコンビネーション技を生み出すという

まさに敵との戦闘で有利な状況を作れる技なのだ。

それを実行する価値はあると、γの全員の匣兵器を開匣するんだの掛け声で

一斉に匣兵器たちが出現する。

 

まず、獄寺の嵐猫 『瓜』

続いてバジルの雨イルカ 『アルフィン』

三番目、クロームの霧フクロウ 『ムクロウ』

四番目、ラルの雲ムカデ 『ザムザ』

五番目、ランボの雷牛 『牛丼』

六番目、笹川の晴カンガルー 『漢我流』

七番目、γの黒狐 『コルル&ビジェット』

そして最後に綱吉の天空ライオン 『ナッツ』

 

こうして勢ぞろいすることになった匣兵器たちに感嘆の声が漏れる。

 

「うわぁ、…やっぱりこれだけ揃ってるとすごいな…」

「確かに……」

 

正一の言葉に賛同する声があったが、ふと誰かが呟いた。

そういえば、天姫も匣兵器を持っていたよね?と。

その疑問を耳にしてしまった、当の本人は……。

ぽりぽりと頬を軽くかきながら

 

「…私のは……あんまり期待しない方がいいかも…」

 

と何とも頼りなさげな言い方をしました。

 

「………なんで?……」

 

凪が皆が感じた違和感を代表して天姫に問いかけた。

別に出し惜しみをしているわけではない。

ただ制御できるかどうか天姫には自信がないのだ。

以前に出したときに森を一面に焦土化させてしまったし。

被害がデカすぎて誰にも言えていないのが現状である。

だが、天姫はなるべく自分の事を皆に理解してもらいたいと言う気持ちが強く

口で説明してもいいんだけど実際に感じてもらった方がわかりやすくていいかな?

とすら思っていた。

 

「…出してみようか…?」

 

疑問形なのは許してほしい。だって、どうなるかわからないんだもん。

身の保証はしないから、と後から付け加えて。一呼吸する。

精神を統一させて、ソレだけに意識を集中させる。

すると、彼女の黒髪が風に吹かれてなびいた。

夜風ではない。

彼女の体の周りを包むかのように、風が発生しているのだ。

渦を巻くほどに風は強さを増していく。

 

「……なんか、風、強すぎじゃない?」

「…同感だ…」

 

誰かが、ヤバいよと叫ぶ。

そう、木々がバッサバサ葉を枝を揺らし、台風でも来るのではないかとさえ思わせる

風が今、まさにこの場に起こっている。

 

「おい!天姫、やめろっ!」

「天姫さんっ!す、ストップ!!」

 

獄寺や入江らが迫りくる暴風から身を守り顔を歪ませ大声を上げるが、

その声は本人に聞こえていない状態。

本人は周りに異変が起きていることすら認識できていない。

それほどに今やろうとしている事から意識を逸らすことが許されないのだ。

天姫の匣兵器を見る前に周りにいる綱吉たちに被害が出そうなこの状況。

皆吹っ飛ばされないように仲間と踏ん張ったり、地面に爪立てて辛うじて己の体勢を保っていたりと大変だった。

天姫は虚像の指輪を自分の腰元にぶら下がっている匣兵器にカチッと差し込んだ。

そして声高らかに叫ぶ。

 

「開匣!」

 

その瞬間、膨大な光が生まれ天姫を包み、仲間を飲み込んで

 

どごぉぉぉおぉんんん!!

 

大地を揺るがすほどの大爆発が発生した。

※※※

 

あわや大惨事を引き起こしていたという状況、幸いにも死傷者は出なかった。

というか、白蘭との決戦前に出ていたらお先真っ暗である。

とにかく天姫はめっちゃ怒られていた。

 

「制御できないならなんで言わないんだよっ!」

「……じゃあ、今い……」

「今言っても遅すぎだろっ!?」

「…そうですね…」

 

天姫の髪からぷすぷすと焦げた箇所の煙が立ち上がり、彼女の服もかなり焦げているが今は本人は正座状態でお叱りを受けていてしょぼんとしている。

天姫だけではない。叱っている綱吉の髪も焦げてるし所々煤だらけである。

綱吉だけではない。仲間内皆、服が多少ボロボロだったり焦げてたり煤だらけだったり。

 

「俺たち、よく生きてたぜ」

 

リボーンもびっくりした様子。というか呆れてそれしか言葉にでない様子。

今なら、奇跡って言葉信じてもいいぜ、とまで呟いているのだから。

まさに奇跡だ。これで怪我人がいないというのだから。

周りの景色はさきほどとまったく違うものになってしまったが。

簡単に言うなら私たち、敵から丸見えじゃない?

という感じ。

せっかく隠れていたというのにこれでは見つけてくださいと言っているようなものである。

 

「……しかし、とてつもないパワーだ…」

 

ずれた眼鏡を直しつつ正一は感心するように呟いた。

 

「規模がデカすぎて感心どころじゃねぇよ」

「確かに、な」

 

獄寺のツッコミに珍しくγが賛同する。いつもの調子さえ吹き飛ぶほど

皆に精神的ダメージを与えたようだ。

女子たちに至っては、今回ばかりはさすがに青筋浮かばせて叱っている綱吉から天姫を助けるほど気持ちに余裕はないようだ。

とにかく怖い、これだけは怖いと身の危険を感じたのだ。

 

『コレは危険すぎる!』

 

ちなみにこれは皆が同時に感じた台詞。

とりあえず、天姫は当分、というか未来の世界で匣兵器禁止令が綱吉によって決定された。

白蘭を倒す前に、仲間全員共倒れなんて笑えない冗談だよとキレながら。

天姫は不服そうに「えぇー!?」

と声をあげるが即行大多数の人間に同時に睨まれ萎縮する。

 

「………」

 

無言の圧力により天姫は泣きそうになったとか。

自滅する前に、白蘭との戦いに勝利しなくては…!

と固く決意した綱吉たちがいたとかいないとか。

 

とにかく、ボロボロになった彼らはついに来たる白蘭との戦いが幕を開いたのである。

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