アルコバレーノが復活した事によって、この世界に発生した悲しい事は全てなかった事になるというまるで夢物語のような展開が待っていた。もちろん、みんなが現代に帰れるという事実も。
「…帰れる…」
その事実は嬉しい、そう嬉しいのだ。
みんなもようやく心から喜んでいる顔などを見るとここまで来れた実感が沸くというもの。でも、まだやることがある。
この世界で気持ちを告げられたのならこの世界で決着をつけよう。
次の世界で新しく始める為に
お互いがすっきり出来るために
もやもやのまま帰るだなんて失礼なこと私にはできないし耐えらない。
キッパリ言おう。
私は歩き出した。彼等の元へ。
※
ザンザス編
まずは、彼に言わなきゃ。私は、彼に逢いに行った。黒づくめの王子様。
「天姫」
「…ザンザス…」
「私、は……正直に言うと嬉しい…。想われて大切にしてくれて…私にはもったいないほど貴方が言った言葉が胸に響くの」
「………」
「でも、ごめんさない。今は、無理なの…。自分に余裕がない。
誰かの気持ちに応えることも、今の私は自分の事で精一杯。これ以上今は背負えないのよ」
「…………」
「これは、今の私の答え。未来の私の答えは本人に聞いて?」
「笑え、天姫」
「えっ」
「笑ったら、許してやる」
言った通り、笑顔になってみせた。そうしたら彼は目を細めて
「駄目だ」
と不満そうに文句を言ってきた。
「
笑ってるじゃん、他に何が不満なわけ?」
駄目だしとか意味わからないしと言われた通りにしてるのにと言い返せば
「お前が、心の底から笑っていなければ許してやらねぇよ」
と憎たらしく言われた。
だったら、大人しく諦めろと意地悪く抱き寄せられた。
筋肉質の大人な胸板にじゃれつくように私の体に絡んでくる腕がうっとおしく
暑苦しくそれでいて麻痺してしまうような温かさがあって
優しくて
涙が出そうになったのは、ザンザスには教えてあげなかった。
ちゃんと言ったはずなのに
彼には効果はみられなかったようだ。
※
雲雀恭弥編
次は、掴みどころのない雲の男子。
『話があるの』
そういえば彼は無言で私の手を引いて、アジトの中にある恭弥の住まいに向かった。
あの綺麗に整えられた庭を前にして、木の廊下部分に私を座らせて彼は
私の膝に頭を乗せて横になった。
重い感触、サラサラの彼の髪、閉じられた瞳。
自然に私の手は彼の髪を撫でている。これはもう習慣となってしまっていた。
それほどに私は彼と長い時間を過ごしてきた証拠だった。
「恭弥、私の答え、聞いてくれる?」
恭弥は、声だけを出す。瞳を閉じたまま。
「うん」
「恭弥。私は貴方が好きよ。友達としても仲間としても。
勿論、恋人だったらとても良い関係でいられると思う。
でも私は自分の気持ちがわからないのよ。
それが恋情なのか友情なのか。自分の中でもあいまいで形になっていない。
そんなままじゃいつまでたっても返事できないままだもの。そんなの貴方に失礼だから、言うわ。今貴方とは付き合えない」
彼は身じろぎひとつしないままだ。私は言葉を続ける。
「貴方の想いを否定するわけじゃないわ。告白された時だって嬉しかったしドキドキもしたわ。けど今は、特定の相手を作るつもりはないし付き合うつもりもない」
だから、諦めて
最後の言葉は声に出せなかった。ちゃんと言わなきゃいけないのに
なぜか声に出す事を躊躇ってしまったのだ。
「『今』は付き合えないだよね」
「え、う、うん」
「ならいいよ」
アッサリと彼は言った。膝から頭を起こして真正面に彼の整った顔を見つめ合う距離。
「前にも言ったでしょ?天姫。僕は『しつこい』んだから」
そういって恭弥は私の手を触って、引っ張って私は彼の胸にダイブ。
逃げる間もなく、私の唇は彼の濃密なキスによって塞がれた。
どうやら、私は恭弥のターゲットにされたらしい。
無期限状態に堕ちるまで
鋭く、捕らえられた鳥の気分だ。
(息が出来ないほど夢中にさせてみせる)
※
沢田綱吉編
君には、言い訳も嘘も通じない。
正直な綱吉には、ぶつかるしか彼は納得しないだろう。
それに今まで彼が私の為にしてきてくれたことに対してお礼を言いたい。
「綱吉、ありがとう。私の為に今までたくさんの事をしてくれて」
「へ?急にどうしたの?」
「ううん、ちゃんと言葉にしなかったから言ってみただけ」
「変な天姫」
「………変ついでにも一つ。聞いてくれる?」
「うん」
「私だけを見てくれる人が欲しかった、私だけを必要としてくれる人を望んでた。
劉牙を好きになった理由もそんなバカみたいなのがあったの。嫌な女でしょう。好き嫌いよりもまずそれを望んだんだから」
「……恋っていろんな理由があってもいいんじゃないかな。だってコレっていう形なんてあるはずないんだから」
フォローのつもりのか、彼の言葉には慰めのようなものが感じ取れた。
「ありがと、……年下に慰められるとは。情けない」
「あ、年下扱いしないでよ」
「ゴメン、ゴメン……綱吉。私ね、貴方を気持ちを向ける事は出来ない」
「……理由は…」
「いっぱいあって、キリがない……なんて失礼よね。まず第一私は歳をとらないわ」
「……死なないって事?」
「それは試したことがないからわからないけど、怪我はするし血も出るわ。けど私は永遠にこのままなの。貴方と共に朽ち果てることができない。老いることがないから」
「…不老…」
「第二にいずれ、私はこの世界を去るわ。いつとは言えないけど、時が満ちたとき別れはかならずやってくる」
避けられない別れがあるなんて、辛いだけじゃない。お互いに想いあえば通じ合えば尚の事。
「第三に………もう大切な人は作らない事にしたの。歪んでるでしょ?でもこれはもう変わらないと思うわ。綱吉の想いに対してとても失礼な事かもしれないけど、これ以上私は誰も失いたくないの。失うくらいなら背負わないことにする」
私は結局自分勝手でしか生きられない女なのよ
苦笑いで誤魔化すみたいに笑うしかできなかった。綱吉にどう言われるか怖くて
嫌ってほしいのにどこかで嫌わないでと泣き叫ぶ私がいる。
「それは天姫にとって負担になるから?だから背負いたくないんだよね」
「……うん……」
「天姫の隣を一緒に歩くことは負担にはならないよ」
「と、なり?」
予想外な答えだ。思わず目が点になってしまった。
「そう、だって自分の力で歩くのなら君の負担にならないだろ?」
「……それって、矛盾してない?結局同じ事じゃ」
「俺にとっては意味が違ってくるよ」
俺って一途だから、天姫が目の前からいなくなっても、たぶん君だけを想って生きていくと思う。違う人と結婚して子供作って孫がいて死ぬことになったとしても
結婚した相手を愛するんじゃなくて、形だけで終わるはずだよ。
最終的には失敗しそう。
それなら最初から一人でいたほうが気が楽だし
何よりそれくらい天姫は俺にとって、大きい存在なんだよ
彼が私の手を取ってきて、彼の手に絡まれてぎゅっと握られた。
照れくさそうに笑う綱吉は自分の気持ちに自信を持って言ったようだ。
結果
こっちとして申し訳なくみんなの気持ちに対して応えられないから
振ったはずなんだけど
尚のこと皆はこの恋にメラメラ激しく燃えたらしい。
誰もわかったよ、という返事はもらえない状態。
諦めの悪い男連中ばかりで困ったなって思いつつちょっと嬉しい自分がいましたとさ。