闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的158奪われたキミ

天姫side

 

こっちに戻ってきて日常と化した平穏な日々。

色々と関係が変わった私と綱吉たち。未来での記憶が今の私たちに受け継がれ二度と起こることないだろうあの悲しい世界での出来事から

それでも接する面で何か問題が出ることはなかった。

むしろ、気持ちの面で彼等と距離が縮まり私の心も前よりも穏やかになった。

長く離れていた『自分』を取り戻したという事もあるけど、人との繋がりは何があっても途切れることはないって実感できたからかな。

夕飯時、燐華とゴーラちゃんが奈々ママと一緒に作った食卓を囲んで、奈々ママがさぁ、いただきましょうかと言った時私は話題を持ち出した。

 

『私、骸たちと暮らします』

 

綱吉は私の言葉を理解できずに持っていた箸をぽろりと落とした。

 

「え?」

 

リボーンは雰囲気が怖くなったし奈々ママは驚いて声も出ない様子で

皆、シンと一斉に静かになった。

 

「突然でびっくりするかもしれないけど私、骸たちと暮らすことにしました。今までお世話になりました」

 

簡潔と言わんばかりにペコリと頭を下げ深く礼を言った。燐華も続いて言葉をいう。

 

「短期間とはいえお世話になりました事改めて御礼申し上げます。このご恩一生忘れはいたしません」

「天姫!?どうして…燐華さんも!?」

「そうよ、天姫ちゃんに燐華ちゃん。何か理由があるのね?」

「…ここは私の家じゃないんです」

 

そういえば、顔を歪ませる綱吉。ごめん、そんな顔させたいわけじゃないの。

でも違うんだ、ここは。温かいけど、私が帰る家じゃない。

それに、凪と約束した。皆で一緒に暮らそう。『家』を作ろうって。

 

「凪と約束したんです、みんなで暮らそうってずっと前に」

 

いい機会だからそうしようってずっと考えてました。

 

「…そんな…いきなりすぎじゃ」

 

納得いかないと綱吉は顔を歪ませる。

 

「ごめんね、綱吉」

「ランボさんつまらなーい!」『嫌だ!』

 

ランボとイーピンが飛びついてきて嫌だ嫌だと泣きまくる。

 

「…天姫姉……僕、淋しいよ…」

「フゥ太…、遊びに来るから。そんな顔しないで?」

「……意思は固いんだな」

「うん、勝手かもしれないけどもう決めてたんだ」

 

いつも勝手な奴だと思ってたけど、こんな時もかよとリボーンは深くため息をついた。

 

「貴女らしいわね、それに燐華も」

「…ビアンキ姉…」

「いつでも帰ってらっしゃい、天姫ちゃん」

「奈々ママ」

「…母さん…」

「天姫ちゃんは学校を転校するつもりはないのかしら?」

「え、あ、はい」

「なら大丈夫ね。ホラ、ツっくんもそんなしかめっ面しないの?男らしくないわよ?」

「………」

「ここは貴女の『家』でもあるわ、だから、ね?」

 

そういって、奈々ママはふんわり微笑んでくれた。

 

「……ありがとう、ございます…」

「姫様、大切にしなくてはいけませんわね。この『絆』を」

「…うん……」

 

あったかい眼差しに込められた『愛情』のようなもの。

こみ上げてくるものをこらえるのに必死な私は口元を抑えながら礼を言うだけ精一杯だった。ゴーラちゃんがティッシュを差し出してくれたからそれでチーンと鼻をかむ。

私は本当にこの家に住めて幸せでした。

この家族に囲まれることができて幸せでした。

たくさんのありがとうを送りたい。

 

「にゃ~」

 

おいしいご飯を食べて満腹だ~、と私のベッドでごろごろと寝ころんでいるシロ。

 

「今度から奈々ママの料理も食べられなくなるんだよね…」

 

アンタはのんきでいいわね、少しは働きなさいよと指でえいえいと指して遊んであげた。

シロは「みゃあ~!」と抗議の声を上げる。

溜息は出るものの決して嫌な意味ではなかった。

やっと肩の荷がすこしだけ降りた安堵感によるものだろうか。

夕飯を食べ終わった後、綱吉とはちょっと微妙に気まずい雰囲気が発生してしまい、私としても心苦しいものがあったが、そこはリボーンが間に入ってくれてなんとか形としては納得してくれた。

でも、まだまだ完全にとはいかないかもしれない。

ドアがゆっくりと視界の隅で動いた。

 

「そのぶんわたくしが奈々様から授かった料理を披露しますわ」

「燐華、お風呂あがったんだ」

「はい」

 

お風呂に入って部屋で寛いでいると燐華も風呂からあがってきたらしい。

私と燐華、シロとゴーラちゃんは一緒の部屋で寝起きしている。

私はベッドだし、燐華はお布団。シロは私のベッドの上だし、ゴーラちゃんは隅に体を収縮させて寝起きしている。

狭いとは思わなかったけど、これから人数が倍に増えるとなると住む場所をどうしようか少々考えているところだ。

育ちざかりの子供が4人となると、それぞれに部屋を設けなくてはいけないだろうし

かといって私が黒曜に行くことになると、綱吉たちが口うるさいだろうし。

何より奈々ママと学校は並盛に通うと宣言してしまった以上、約束を違えることはできない。

 

「燐華も現代の料理の数、結構覚えたよね。さすが奈々ママ」

「ええ、奈々様のご指導ご鞭撻のたまものですわ。何よりビアンキ様のあのポイズンクッキングをマスターしたいと思いまして。わたくし色々と研究いたしましたのよ?」

「ごめん燐華。それ、骸たちには食べさせないでね」

「もちろんですわ、姫様、何を御冗談を」

 

おほほほ、と燐華はお上品に笑う。けど、雰囲気が怖い。

隙あらば毒見させてやろうと思いましたのにと彼女の心が言っているのを、私は顔を青ざめて身を竦ませる。

 

「それで姫様。お住まいの方は如何いたしましょうか?こちらの世界ではマイホームを持つと借金地獄に襲われ心身ともに痩せ果てると言いますが?」

 

どこでそんな情報聞いてきたのか、まったくもって燐華の情報源はわからない。

 

「マイホームは持たないから安心して、借金もしないから。一応黒曜ランドにでも行こうかなって。骸にはまだ話してないからな」

「それでしたらクローム様が骸様に申されているのでは?大変喜ばれておいででしたもの」

 

確かに、燐華の言う通り。

電話で聞いてみようかなと思ったが、今は夜の11時。さすがに迷惑かなと思い明日かけてみようと考えた。その時、机に放り投げていた私の携帯が鳴った。

 

『緑たなびく並森のー大なく小なく並がいいー♪』

 

恭弥に強制的に設定された着信。

間の抜けそうな声だけど、これはヒバードの唄声だ。

相手はどうやら凪だった。

ちょうどいいと私は電話に出る。

 

「もしもし、凪?丁度良かった、あのね『天姫!』」

 

携帯から聞こえる凪の声は震えていた。というよりも何か切羽詰まった状況。

私はすぐに違和感を察知し、自然と声を低くさせ問いかけた。

 

「凪、何があったの」

 

彼女がこんな動揺しまくっているなんて、よほどのことがあったに違いないと推測できた。

 

『骸さまが、骸さまが!』

 

でも、事態はもっと重く私が考えていた以上の事件だった。

 

『連れていかれちゃったっ……!!』

 

むくろ、が?

ポトリ、と私の手から携帯が落ちた。

 

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