闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的160求めた故に試される器

ぷかぷか

 

宙に浮かぶ私の状態に擬音をつけるならそんな感じ。

真っ白の世界に私一人だけいるような

でも心淋しいわけじゃないの

誰かが傍にいるような、そう誰かいるのだ

私の心に寄り添うようにぴったりと

 

『姫御』

 

ぷかぷか ふわふわ

 

ああ、眠たい。癒される

絶対的な安心でここの空間はできている。

 

『姫御よ』

 

アレ、私をそう呼ぶのは、決まってるの。彼しかいない。

かれ、彼?沈みかけていた意識が一気に覚醒した。

 

「蒼龍?」

 

目の前にぷかぷかと浮かんでいたのは、未来の地にて手に入れた匣兵器『蒼龍』と虚像のリング。天姫がいくら実践してみても御することができなかった匣兵器。

それら二つがゆっりと合わさって、膨大な光が頭上に輝きだす。

あまりの光の多さに天姫は、目を瞑った。

 

『姫御』

 

脳に直接語りかける声。

ずっと求めてきた存在が目の前にいる。

かつてないほどの歓喜に天姫は顔をほころばす。

天姫が腕を伸ばし、必死に声を上げ上空にいる愛しい半身を求めた。

見事な体躯で蒼い鱗を持ち神々しい光を帯びながら出現した『蒼龍』。

天姫を慈しむ瞳は優し気だった。

 

『…愛しき姫御よ、また再び会いまみえん日が来ようとは…』

「…会いたかった、蒼龍!」

『姫御、我の半身よ。其方をずっと見ていたぞ。よくぞ戻った』

「蒼龍、知ってるのね、未来に行ってきた事。ううん、それよりも私の中に戻って」

 

これで一緒になれる、私は本当の安心感を得ることが出来る。

これ以上天姫にとって喜ばしいことはないと思った。

しかし、蒼龍は天姫の考えをキッパリと否定した。

 

『それはかなわぬ』

「…どうして…。私が『忌子』だから?」

 

あの親に捨てられた記憶がまた彼女の中で蘇ると同時に哀しさに顔が歪んだ。

 

また裏切られるのか、私は、また捨てられるのか

 

気がつけば天姫は、頬を濡らしていた。

だが、蒼龍はそうではない、そうではないのだ、姫御。と言って天姫の前にゆっくりと降りてきた。

蒼龍の湿った鼻先が天姫の小さな顔に一瞬だけ触れる。

 

『それは違う、姫御。そなたは生まれるべくして育ったのだ、『忌子』などではない。我は姫御の龍。我にとって姫御は唯一無二よ。其方は生まれるべくして産まれたのだ。愛しき姫よ己を蔑むな。我はそなたが大切だ。愛おしい。できることならそなたの願いをかなえてやりたい。だが、今の力無き我ではかなわぬ』

「……私が、弱いままだから?」

『そうではないのだ、姫御よ。其方は十分に強い事を我は知っている、己を卑下するでない』

「卑下するなって……。骸を奪われて守れなかった私を卑下するなって言うのっ!?私は弱いままよ、あの子を守れなくて凪たちに傷をつけさせてしまって、それでも蒼龍は私が強いっていうの?」

『其方の輝きは以前よりも強くなった。『神』にも引けを取らぬものよ』

「意味がわからない…」

 

私は強くなんかない。たとえ自分を取り戻そうが私は弱いまま。

 

『我は彼の地にて眠っている。今の指輪では我を目覚めさせる事叶わん』

「ゆび、わ?」

『この匣兵器の仮の我を呼び出した鍵よ。これは其方の前の蒼龍姫のモノ。『其方自身』の指輪を手にいれるのだ。それが我を呼び出す手段となろう』

「まって、行かないで!?」

『もう、刻がきた。姫御よ、強くあれ、我は其方の半身。いつも其方の事を想っておる。心を強くもて』

「嫌だ、蒼龍っ!?蒼龍ぅぅうううううううう!!」

 

パァン!

 

蒼龍の体は無数の光となり消え、匣兵器はカコンと下に落ち、『虚像』の指輪が砕けた。

 

沢田綱吉side

 

唖然、この言葉に尽きるよ。突発的な天姫の発言とか行動とか。

今までそれに何度悩まされて、怒りを感じたことも何度もあった。

未来での出来事とか、特にね。

でも、『今回』は違ったんだ。

今度の天姫の『勝手』な行動にはちゃんと理由があった。

俺でさえも立ち入ることのできない『約束』されたもの。

明日は抜き打ちテストがあるらしいとリボーンからスパルタ勉強攻撃を受け、俺は

はかどらない勉強と机の上で額から汗を流しつつ格闘していた。

でも普段から真面目にこなしてきた覚えがないからそれもすぐに集中力が途切れてしまう。口うるさい、手も早いリボーンは「しっかりやれ」レオンを見張りに残して言い残し部屋から出ていった。

 

「……天姫、……何してるんだろ……」

 

ぼんやりとさきほどの光景を思い出す。

彼女の透き通るほどまっすぐな声が食卓に響いたんだ。楽しい夕食の時間だったはずの時間が

 

「私、骸たちと暮らします」

「え?」

 

俺は天姫の突然の言葉が聞き間違いかと思った。

けど、違った。

天姫の顔は真剣そのもので俺の箸を持つ手は力を失くし、音を立ててテーブルにコロコロと落ちた。

 

「突然でびっくりするかもしれないけど私、骸たちと暮らすことにしました。今までお世話になりました」

「短期間とはいえお世話になりました事改めて御礼申し上げます。このご恩一生忘れはいたしません」

「天姫!?どうして…燐華さんも!?」

 

リボーンは雰囲気が怖くなったし母さんは驚いて声も出ない様子で皆、シンと一斉に静かになった。っていうか、天姫の雰囲気がそうさせたんだ。

あそこまで真剣な天姫は久しぶりだから。

だから俺もあの発言がただの思いつきでないことを思い知らされた。

ある意味ショック状態な俺は、それ以上言葉にすることができず代わりに母さんが静かに天姫に尋ねた。

 

「そうよ、天姫ちゃんに燐華ちゃん。何か理由があるのね?」

 

天姫は、一息飲んで小さな声で、でもはっきりと言う。

 

「…ここは私の『家』じゃないんです……」

 

そう、ここは天姫の本当の家じゃない。

だからなんだってんだ?

俺はずっと天姫にこの家にいて欲しいと思ってたのに、

変に遠慮してるだったらそんなの気にするなって、喉まで出かかった。

テーブルについた手をぎゅっと握って拳状態にして、声に出るまであとちょっと。

けど、声もその威勢も引っ込んだ。俺は固まってしまった。

 

「凪と『約束』したんです、みんなで暮らそうってずっと前に」

 

目を細めて、懐かしむように嬉しそうに語る天姫に俺は何も言えなくなってしまったんだ。

それから、俺は不機嫌なフリして天姫から逃げた。

天姫のあんなにふんわりした緩んだ表情が、久しぶりすぎて

ああ、俺、あの時言わなくて良かったって思った。

 

『ずっとこの家にいて欲しい』

 

それって、天姫をこの家から、俺から縛り付けたいからに他ならないからだって。

どこまでいっても、俺はダメダメだ。

天姫に自由にいて欲しいって契約を解除したのにまた理由をつけて縛り付けようとしてた。

 

「……はぁ……」

 

溜息すら重く、気持ちは尚さらズドーンと下降気味。

苦手な勉強でさえ、シャーペンを掴む手は止まったまま動くことない。

くあぁ~、とあくびが出た。

……なんか、眠いな……。

勉強からくる疲労感からか、俺の意識がゆらゆら眠りへと誘われるようだ。

ゆっくりと体は机にもたれかかっていく。

明日、朝いちばん早く起きて天姫に言おう

昨日はごめん 

俺は寂しいけど、でも我慢する。いつでも帰ってきていいんだって

笑顔で言おうって思って暗い世界に向かって瞼を閉じた。

 

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