ジルside
恒例のコーナーがやって参りました。
ハルハルインタビューならぬ、ジルジルインタビュー!
では、クロさん、お聞きしたいのですが、ジルさんのデータ集めは順調にいっているんですか?
「………」
そうですよね…残念ながら、うまくいっているとは言えない状況なんですよね。現実逃避したくてふざけてみたけど虚しさが増すばかりです。
どうも、ジルなり。並森に来てから結構日数立ったような。
ディーノから連絡があり休みが取れそうなので日本にくるとのこと。
すごく楽しみだ。顔を会わせていないがいつも彼の事を考えている。日課となっている電話連絡は欠かさずしているがそれだけじゃ物足りない。それにロマーリオや他の皆にも会いたい!
それまでに、情報収集頑に勤しみたいと思う。
『緑たなびく並森のー大なく小なく並がいいー♪』
おおっと、着信アリ。パカッと開いてある人物からの電話に不思議に思いながらもでることに。
「もしもし、ジルです」
「あ、僕だよ」
「きょん?あれ、どうしたの?今学校中じゃないの」
きょんとフレンドリーに呼んでいるのは少しでも彼が風紀委員長であるという役職を忘れたいためだ。そして嫌われないかなって願ってる。今の所効果の兆しはまったく感じられない。私のあっけらかんとした答えに彼ちょっと呆れ気味というかちょびっと怒ってる声音になった。
「どうしたのじゃないよ。…君がなかなか僕の所来ないから電話したんじゃない」
なんだなんだこれは。
ツンツンか?相手が相手なだけに信じられないが、私にツンしているのなら遊んであげようか。私相手(幼児)にツンしてもいいことないのに。デレはとのタイミングで出るのか非常に気になる。
「……私が来なくて寂しいから電話したの?」
「なっ?!………わかっているならさっさと来なよ!じゃないと…」
すごい、さっき動揺していたよ。クフフ。なんだ、咬み殺すとかいうのかな。定番だけど。
「じゃないと?」
「ナミモリーヌのアップルパイ食べちゃうから」
「行く!」
これは速攻で行きますよね!今日の予定は決まった。ケーキをご馳走してもらう!
ちなみに奈々さんに言ったらおめかしさせられてお弁当持たせてもらいました。しかも彼の分まで。奈々さん曰く、私はモテモテだから気を付けてねと送り出してくれたのですが、疑問しか浮かびません。学校までは勿論、歩きではなくタクシー横付けにしていきました。
普通は餓鬼一人で行くところではないのだが、並盛の風紀委員長様からお誘いを受けたのだから誰も文句は言うまい。堂々と開き直れば人の視線など気にしないほどだ。
たぶん授業中であろう校内をでかいお客様用のスリッパでぱかぱかと音を鳴らせて歩いていると、途中のあるクラスから『極限――――!』って雄叫びが聞こえた。
これはアレだですね、笹川センパイ。丸分かりである。
ま、別に構う必要もない。今はケーキ、ケーキ♪と鼻歌唄いながら着いたのはなじみつつある応接室。
上まであがるのきついな。彼に言って一階に応接室移してもらえないかな。
……言ったらほんとに実行しそうだから止めとこう。それにまた応接室に来ることもないかもしれないし。そう思いながらガラガラと扉を開ける。
「こんにちはー!」
アップルパイ♪アップルパイ♪とウキウキしていた私は、
「うう……」
「ぐはぁっ」
のうめき声と共にすごく違う意味で嬉しそうな笑みを浮かべつつ手にしていた血塗りのトンファーで挨拶をする恭弥を目にした途端、
「やぁ、待ってたよ。ジル」
「失礼しましたー!」
ガラガラピシャン!と勢いよく閉めた。急ぎ足と扉に背を向けた瞬間、扉は再びガラッと開かれた。ついでにガシッと肩をつかまれた。無論、掴んだ本人は恭弥である。
「なんで来た瞬間に帰るの」
「いえ、なんか取り込み中みたいだからお邪魔かなーと」
「僕の目をみて話しなよ」
「え、えーっと。久しぶりで恥ずかしいから?」(血濡れのトンファーが怖いからなんて言えねぇ!)
ちょっと頬を染めつつ視線は斜め上。自爆するほどのわかりやすい言い訳であるがばれるわけにはいかんぞ、私!
「……」
反応がない。
おそるおそる彼の様子を窺えば、片手で口元を覆い、耳まで真っ赤にしているよ。
「……きょ、きょん?恭弥?……恭弥サマ?」
小首をこてんとかしげればさらに彼はばっと視線を合わせようとはしない。
ま、まさか、私のこの演技がもろばれていてそれが笑えるから一生懸命笑いを堪えているのか!?だとしたら、そんなに堪えなくても大声で笑ったほうが身体にいいのに。
「……待ってて。すぐ中、片付けるさせるから」
彼はそういうとすぐに携帯を取り出して誰かに電話を掛けた。どうやら風紀委員に掃除させるらしい。倒れてる人も掃除されるんでしょうか。怖くて聞けないので待ってる間は生きた心地がしませんでした。それから、まぁ、ゴミ化した人間片付けて中、綺麗に掃除していって出されたケーキ食べているんだがアップルパイはどうした?
聞きたい。ケーキはある、それも無数に食べきれないほどに。でもアップルパイはない。どこにもない。もしかして売れ切れだったのか……ちょっとしょぼーんとしてしまった。
でもまぁ、仕方がない。次があるだろう。しかし、部屋掃除していた集団が気になって仕方がない。なんであんな髪型できるのかな。もしかして男なら一度は憧れるって髪型なのだろうか。あの不良ツッパリスタイル。私、女ですが遠慮したいです。
でも、恭弥があの風紀委員の頂点に立ってるんだったら、彼もあんな髪型にするべきだよね。
もしゃもしゃもしゃ。うん、うまい。
「ねぇ」
うげぇ~。余計な想像してしまった。口の中は林檎のうまみがあふれているのだが、
彼がリーゼントをしている禁断の姿を一瞬でも想像してしまった愚かな私。
ぐはぁ。もろ精神的ダメージきた。
「ねぇ、ってば…」
しっかし、コレおいしい。さすがナミモリーヌだ。常連の私でも飽きることはない!
だが幼い内から甘い物は良くないと奈々さんに酢昆布食べさせられた。あまり好きじゃないんだよな。
「……やっぱり、怒っている…?」
「ん?」
あれ、どうやら恭弥が話しかけてきていたようだ。至近距離にあって私がワォ!である。
「どうし」
ぐいっと引っ張られたと同時に感じる彼の体温。恭弥の髪が首筋に当たってくすぐったい。
「きょん」
「……お願いだ、……嫌わないで……」
切なげに声を震わせ懇願するかのように、恭弥は震えていた。
ああ、そうか。彼は私がさっきおかしなことをして笑いを堪えていたことを怒っていると勘違いしているのだ。だったら、もうそんなのは気にしていないというべきだよね。
なのでなんとか身体を動かそうとした。でもそれを感じ取った恭弥がさらに締め付けてくる。
ぐ、ぐるじい……
私はなんとか声だけでもと思い、
「大丈夫、大丈夫だから」と何回も彼に言った。
大丈夫だよ。私はそんな事で笑われて腹を立てる子供じゃないから。
もう成人しているんだから。(これは言えないけど)
それがどのくらい続いただろう。ようやく恭弥は腕を緩めてくれた。
でもまだ、離してくれない。なので仕方なく子供をあやすようにぽんぽんと小さな手で恭弥の背中を叩く。
「おなかすいたでしょ?お弁当持ってきたから食べよ」
「……僕の分、あるの?」
「うん、あるから、一緒に食べよう」
ようやく恭弥の機嫌が直ったのか一緒にお昼を食べた。でもその間も離してくれなくて彼の膝の上で食べるという屈辱オプション。今日は夕方まで恭弥とじっと応接室でまったりしていた。帰りは勿論恭弥がバイクで(安全運転、ヘルメットもちゃんとしたよ)送ってもらった。
◇◇◇
雲雀恭弥side
朝、緊張した手つきで電話をかけた。彼女は出てくれるだろうか。
僕の事は忘れていないだろうかと不安は数え切れないほど浮かんでは消えて浮かんでは消えていく。その繋がる時間が凄く長く感じた。
「もしもし、ジルです」
っ、彼女だ。
「あ、僕だよ」
緊張のあまり、声が震えた。裏返ってないといいけど。
「きょん?あれ、どうしたの?今学校中じゃないの」
僕のあだ名らしきもので呼ばれる。最初は面食らったけどこれもジルが僕の為につけてくれたんだって考えたら最初ほど気にならなくなった。むしろ、彼女にとって特別って感じがして気分がいい。それにしても……僕はこれだけ、ジルに恋焦がれていたのにジルはなんとも思ってなかったんだ。僕のことなんか、これっぽっちも考えてなかったんだ。そう、思ったら悲しいのと怒りが混ざったみたいにゴチャゴチャになった。
「どうしたのじゃないよ。…君がなかなか僕のとこ、こないから電話したんじゃない」
「……私が来なくて寂しいから電話したの?
電話越しに聞こえる甘い声。そしたら直に身体に響いた。そして電話越しで顔を赤くしてしまった。そしてついつい挑発口調になってしまった。
「なっ?!……わかってるならさっさと来なよ!じゃないと…」
「じゃないと?」
一呼吸してから喋った。
「ナミモリーヌのアップルパイ食べちゃうから」
「行く!」
なんとも可愛らしい返事が耳元で盛大に聞こえた。相当喜んでいる。
ふと、ジルのはしゃぎっぷりが目に浮かんだ。じゃあ、待っているからと電話を切る。
それだけで凄く汗をかいていた事に今更ながら気がついた。ふうと軽くため息を吐きすぐに風紀委員にジルの好きなアップルパイを買いに行かせた。
早く、早く、電話じゃなくて直接君に会いたい。
時間が迫るに連れて恭弥のジルに逢いたい想いも高まっていく。
そこへアップルパイを買いに行かせていた風紀委員が帰って来た。僕はこれで完璧だと思った。これで彼女の喜ぶ姿が直に見られると。けど、
「………ねえ、…なんでアップルパイ、ないの?」
風紀委員が買ってきたのはアップルパイのホールじゃなかった。それどころか頼んでもいない種類豊富なケーキの山々。風紀委員の男二人は顔を青ざめて土下座して謝って来た。
「申し訳ありません!実は品切れグハァ!?」
「委員長どうか、もう一度チャンスをギャア!」
でも喋ってる途中で僕はトンファーを持ち出して二人を噛み殺した。
ドカッ!バキっ!ドゴォ!
音だけは盛大にするけど今の僕の怒りはこれだけじゃおさまらない。無言で手を動かし続けた。
「……どうして、『バキッ!』くれるんだい?これじゃぁ、……ジルが、ジルが、悲しむじゃないか」
振り落とすトンファーには血痕がびっちりと付着している。すると可愛らしい声が背後で響き、視線はすぐに扉へ。
「こんにちはー!」
愛らしい声と共に扉が開いて僕は声を弾ませて出迎えた。
「やぁ!待っていたよ。ジル!」
「うう……」「ぐはぁっ」
「失礼しましたー!」
ガラガラピシャン!
自分の手に持っているそれを自覚しないまま、ジルに近寄ろうとしたらすぐに勢いよく扉を閉じられた。呆気にとられて腕を伸ばしたままの状態で固まっちゃったけどすぐに扉を開いて帰ろうとしている背中を必死に引き止めた。
「…っなんで、来た瞬間に帰るの」
「いえ、なんか取り込み中みたいだからお邪魔かなーと」
そんな事言わないでよ。視線さえ合わせてくれない彼女に胸が張り裂けんばかりだった。だから彼女の華奢な肩に力が入った。
「僕の、目をみて話しなよ」(お願いだ)
「え、えーっと。久しぶりにあってすごく恥ずかしいから!」
そういう、彼女の頬は確かにピンク色だった。
可愛い。ダイレクトに脳に直撃だ。しかもきょうは可愛い服を着ているからなおさらだ。
「………」
反応ができない。
この状態ではモロに彼女にばれてしまう。
そう、おそらく、今の自分は耳まで真っ赤だろう。案の定、ジルは不思議がっている。
「……きょ、きょん?恭弥?……恭弥サマ?」
僕の不振ぶりにジルは困惑気味に僕の名を呼ぶ。最後は様づけとか卑怯じゃない?
それがまた鳩尾に一発食らったかのような衝撃だった。
小首を傾げる姿なんてまさに小動物だで耳をつけるならウサギ。もう、視線を合わすことができなくて。
「……待っていて、すぐに中、片付けるから」
ぶっきらぼうにしか話すしかできなかった。それから一時間以上ずっとジルは黙ってケーキを食べている。どうしても話しかけられない。
途中チャンスをみて話しかけようとしたがそのたびジルの綺麗な顔は悲しみに歪んだり苦痛に満ちたりした。それだけで、僕の心はどうしようもない恐怖感に襲われる。彼女に嫌われてしまったら生きてはいけない。だから嫌われるのを覚悟で声をかけた。
「ねぇ」
「ねぇ、ってば……」
「……やっぱり、怒ってる…?」
ジルは僕に顔さえ向けてくれない。もう、存在さえいやなの?そんなの嫌だ!
そう思った瞬間身体は動いていた。
「きょん?」
「……お願いだ、……嫌わないで……」
どれだけの物をどれだけつぎ込んでもいい。君が望むものは必ず手に入れてみせるから
だから嫌いにならないで。知らず知らずに涙袋から微かな涙があふれてくる。彼女からの返答はなく、僕の中で動き出した。僕はそれを拒絶と思い、必死に彼女を放すまいとこの腕に閉じ込めた。
どうか、どうか、僕から逃げないでと願った。
「大丈夫、大丈夫だから」
「…え…」
安心させるようにぽんぽんとジルの幼い手が僕の背中を慰める。彼女のリズムよいテンポにさっきまで荒れていた心が静まり返っていく。不思議だ。どうしてジルはこんなにも僕の心を乱せて、そしてこんなに穏やかにできるのだろう。
「おなかすいたでしょ?お弁当持ってきたから食べよ?」
「……僕の分、あるの?」
「うん、あるから、一緒に食べよ」
それから僕はジルと二人で遅いお昼を食べた。無論、ジルを手放すことはまだできなかった。だから、小さな彼女は僕の膝の上にある。時々、彼女に強請っておかずをもらったりもした。その時のジルは僕よりもずっと年上に見えてなんだか照れ臭かった。この僕が、だよ。もう、僕は後戻りできないほど彼女にジルに溺れてしまったのだと気が付いたのはずっと後の話。
(戻りたいとも思わないけどね)