ディーノside
少女は言葉を喋れず片時も子猫は側を離れないまいとくっ付いていた。
俺はあえて何も言わずにそのままにさせている。少女はそのほうが安心しているようだからだ。だが食事を食べると時も美味しいか?と尋ねても首でコクンと頷いて口を開くことはなかった。何も話さないことを不審に思った俺と後から部屋にきたロマーリオはすぐに医者を呼んだ。診察が済みベッドに疲れたように寝ている少女の髪を指先で整えてやる。
銀髪が流れる水のようにベッドに広がっている。
あどけない顔はどんなに惹かれる容姿をしていてもそれは子供の微笑ましい寝顔だった。
俺の問いかけに医者は重い表情からゆっくりと事実を述べた。
「身体的外傷は何もありません。もしや精神面で何かしらあったのでは、と」
「それは嫌なことがショックを与えて声が出なくなった。そういうことか?」
「はい。もしくは本人が何かから自分を守るために伝える手段を自ら断った、というのが正解かもしれません。どちらにしろ痛ましいものです。この子はまだ5才くらいでしょうからな」
残念です。それだけ言い残すと医者は帰っていった。治る見込みは分からないと言われた。
俺はショックだったが、それよりもこの少女の方がもっとショックだろう。あの血まみれの中にいたのだ。普通の大人でさえトラウマになるものを、それよりももっと子供であるこの子は体験したはず。きっと、想像以上に心の傷を負ってしまったのだろう。
柔らかな髪の感触を指先から感じとりながら俺はロマーリオに言った。
「……ロマーリオ」
ロマーリオは肩をすくめ、もう俺の意図はわかっていたようだ。
「はい、わかってますよ。この娘を引き取るのでしょう?」
「ああ。みんなにも良く伝えてくれ」
ロマーリオが部屋を退出するのに発生したドアの音で少女の瞳がかすかに瞬いた。どうやら意識が戻ったらしい。ゆっくりと開かれる瞼は一度開いて、何回か瞬きを繰り返えす。すると「にゃぁ」と一鳴きした子猫がすぐに少女の横顔に擦り寄っていく。
「…………」
擦り寄る子猫に少女はわずかに微笑みゆっくりと手を伸ばして身体を撫でてやっている。
そして俺に視線を向けてくる。じっと見つめている俺を不思議に思ったのだろう。ゆっくりと体を起こそうとする。俺は咄嗟に手を伸ばして背に手を回して手助けをした。すると少女はありがとうという意味なのか、小さく笑った。
最初に目を覚ました時よりも俺に慣れてくれたが、やはりどこか距離感があるような気がする。それもすぐに慣れるのは難しいのは理解しているが、少し寂しいと思ってしまう。……ロマーリオに少女の素性を調べさせたが、一切身元情報が入手できなかった。この町に住んでいる形跡は愚か、家族なども分からない。まるで別世界から来たみたいに少女は謎に包まれていた。だからと言って今さら放り出すことなど考えられない俺はある決断をした。それは。
「お前は今日からここに住むんだ」
「……?」
突然の事に理解していないらしく目を丸くする少女。俺は小さな手を両手で包み込み、視線を合わせて言い聞かせるように話した。
「お前は俺の妹になるんだ。俺がお前の兄貴、お兄ちゃんになる。だからお前は俺と家族だ」
少女の口が動き声は出ないけれどその動きは『家族』と言っているようだ。俺は頷き微笑みんだ。
「そう家族だ。俺はお前と家族。今日から。ずっと一緒だ」
『ずっと?』
「そう、ずっとだ」
「…………」
「お前、名前は?」
『…………』
少女は悲しそうに軽く首を横に振った。名前を教えたくないのか、それとも言えない理由があるのか。なんにせよ、名前がないのはこれから共に過ごすという点で不便だ。俺はしばし思案したのち、ある名前を思いついた。
「……そうか……じゃあ、ジル。これはどうだ?」
『ジル?』
「そう、ジルだ」
ジルって呼んでいいかな。ジルは認識するように繰り返し口を動かす。
俺は心臓を高鳴らせジルの反応を待った。
「気に入ったか?」
コクン、とジルは小さくはにかみながら頷いた。
「よし!今日からお前はジル。……これからは俺がずっと側にいるからな?ジル」
俺は顔を近づけジルのおでこに自分のおでこをくっつけ、小さな手を両手でしっかりと包み込んだ。ことさら嬉しそうに微笑むジルが俺にとっては天使にみえた。
これからよろしくな、ジル。
◇◇◇
ジル side
どうも、こんにちは。名前をもらったジルです。
日本人だったはずなんですが神様パワーのおかげで素敵でキュートな可愛い銀髪幼女に大変身!失礼しました。だってこんな豪華な御屋敷のお兄さん拾われるとは思っていませんでしたもので。そうです。私ここでお嬢様になりました。
だって黒いスーツきたおっさんとかにお嬢様とかジル様って呼ばれるんだもん。
そしてあのカッコイイ金髪イケメンお兄さんはこうなった。
「ジル~!あ~今日も一緒にいれないなんて神はなんて残酷なんだ!?」
「ボス!いい加減にしてくれよ。会談の時間迫ってるんだぜ」
ロマーリオさんが必死に言い聞かせるが全く効果なし。現在私は彼に抱きしめられ身動きできません。むしろ嬉しいですよ?イケメンに愛されているんだから。
でもね、それが四六時中続くと正直うざったくなるわけですよ。
だって朝は一緒に起きてまず彼の朝の挨拶ほっぺにキスされてせがまれて仕方なくして朝食。自分で食べられるのに恋人同士がやるハイ!ダーリン?あーん!ってやつをやられて断るわけにもいかずそれを受けて仕事だと彼をせきたてるロマーリオさんが無理矢理引っ張っていくが喚く彼を黙らせるため申し訳なさそうに私に側に居てくれっていわれて私が彼の側でクロと遊んでいると彼は超やる気を出し猛スピードで仕事を仕上げてじゃあ終わったらショッピングに行こうと無理やり連れて行かれ物凄い値段のするフリフリのスカートやらドレスやらアクセサリーやらすべて私のだと買い捲る彼勿論その間も彼に抱っこされたままだショッピングが終わって豪邸についてヘトヘトな私を彼はやっぱり離してくれなくてそのまま軽く遊び夕食へ食べきれないほどの夕食をとりデザートだとこれまたカロリーありそうなシフォンケーキを出され大好きなので食べてお風呂ださぁ行こうといわれるがこればかりは一人で入れと断固拒否し、泣きながら一人で入る彼を見送り私はシロとゆっくり疲れを癒しさぁ寝ようとなると彼が私が寝起きする乙女系ベッドに入りこみお休みのキスをせがむ彼だがこれもこっちじゃ習慣なのでするけど寝る時はかならず彼の腕の中。これが毎日の繰り返しなんだが、彼は飽きないらしい。
「ジルも連れて行く。じゃなきゃいかねぇ」
「ボス!?」
駄々っ子もここまでくると親父の鉄槌が下るってもんでぃ。仕方ないとここは軽くお願いしてみた。ロマーリオさんが疲れ果てた顔して困っているのは見ていていいものじゃないから。ディーノの顔を小さな手で掴んでぐいっと引っ張った。
「おわ!?」
軽く頬にキスをプレゼントを送った。
呆気にとられた彼にとどめの一発。首を軽くかしげ瞳うるるさせさもキラッキラな笑みで、
『ジル良い子で待ってるから、だから行ってらっしゃい』
と口ぱくぱくさせて送り出せば、
「おら!何してる。さっさと行くぜ!」
ディーノはモアイもびっくりの速さで移動し自分だけ車に乗り込んでいった。
「……おい…まぁ仕方ないか」
大きくため息をつくとロマーリオさんは私の頭を軽く撫で
「サンキュ」
といって車に乗り込んだ。ディーノは窓から身を乗り出しこちらに向かって全力で手を振った。腕ぶんぶん振ってまるで彼の方が子供みたいとつい笑ってしまう。
「すぐに済ませてくるからなぁ~!良い子で待ってろよぉ~~~」
私も軽く手を振り見送った。こんなに簡単にも騙されやすいとは、彼の女性関係が心配になるってもんだ。
◇◇◇
ディーノside
目が覚めて俺の妹になったジルの寝顔をみてはじめて朝だと実感できる。一緒のベッドに寝るようになってそんな弱い俺になるとは思わなかった。
ジルが言葉を発しなくても俺に甘えてくれるそれが嬉しくてたまらない。
だからずっと側を離れたくなかった。この子が悲しそうに笑うのをみてしまったから。
それは俺の屋敷で暮らし始めて数日がたったある日の事。
どうしても二日ぐらい屋敷に帰れない状況があり、面倒はメイドたちに任せていたのだが帰ってきてすぐにメイドから告げられた言葉を聞いて俺はショックですぐにジルのもとに駆けた。ジルが全然食事を取らないということだ。
部屋に駆け込んだ俺はベッドの上に身体を抱えうずくまるジルをみた。
ジルはカーテンも開けない暗い光もない部屋でずっと閉じこもっていたのだ。
「ジル!」
俺はジルの側によりその身体をぎゅっと抱きしめた。
ジルはゆっくりと俺を見て己を抱きしめていたか細い腕で必死に抱きついた。
『ディディ』
俺を呼ぶときジルが言う俺を求める名前、声にならずともジルがどれだけ心細かったことが痛いほどよく伝わってきた。
もっとよく見ていればよかった。ジルは俺が居る前ではいつもちゃんと食事をしていた。だがそれは裏を返せば俺がいたから安心して食べられたということ。
ジルの心は脆く壊れやすいガラス細工のように繊細で大切に扱わなければいとも簡単に崩れてしまう。
だから俺はジルから絶対目を離さないって決めたんだ。
今は傷ついたこの銀の幼い子供を癒すため。俺が愛情を注ぐ。