中央に置かれたソファに横たわるジルの姿を見た途端
ツナはアイツに向かって叫んだ。地の果てまで届きそうな怒気を大量に含ませて。
「骸ォオオオオ―――!!」
ツナの渾身の叫びにジルの銀色の髪に指を躍らせる男、六道骸は瞳を細め、笑った。
「ようこそ、ボンゴレ十代目。沢田綱吉」
すべてが当たり前のように骸は佇むのが腹立たしかった。
ツナはすぐにでもジルを助けたい衝動に駆られる。
あの時、病院からの連絡で皆はパニックになった。
ディーノさんでさえ、血走った目で部下の人にジルを探させようと指示を出していたしいつもの余裕ありげな彼の雰囲気ではなかった。全身に怒りを現しロマーリオさんでさえ抑えるのに苦労していた。もちろん、ツナだって気が気じゃなかった。
あの昏睡状態から自分で起き上がって消えることなどジルには無理な話だ。ジル目当てで誰かが連れ去った。リボーンはすぐに本部に連絡を入れ九代目の指令の内容が送られてきた。
今、並森を騒がせている脱走者3人を捕獲し囚われた人質を救出せよと。
囚われた人質それはまさしくジル。でも内容はそれで終わっていなかった。
『虚像の花嫁』を救い出し12時間以内に契約をせよ、と。
ジルとの契約?ツナは意味が分からずリボーンを問いただした。だが赤ん坊は決して口を割らず、お前はただ言われたとおりにすればいいと同じ言葉を繰り返すだけ。
隼人や笹川も襲われていく中ツナ達は奴らの根城とされる黒耀センターに向かった。
そこで骸が非道なやり方で今まで生きてきたことを知りジルさえ、ツナをおびき出そうとする餌にするなんて許せなかった。
ツナを庇って左腕を負傷した山本、そしてツナ達を進ませる為に隼人が単身残り敵と戦っている。ツナは戻りたい衝動を振り払ってつい先ほどまで本音で語り合っていたランチアの痛ましい様子を脳裏に浮かばせながら走った。
彼は可哀想なほど骸に利用されていた。本当に優しい人だったんた。
なのに、なのに!
だからこそ、許せないのだ。六道骸は。
「絶対、許さない!骸!」
ツナはジルの為仲間の為に本気で骸を倒すと決意し、
「…クフフフ。君に許しを請うつもりは、ありませんよ!」
骸は己の命を懸けて天姫を救う為、ボンゴレを潰そうとする。
決して相容れぬ言い分、なれどその思いの奥底は同じもので作られているのに。お互いの熱き想いはこうもすれ違う。
両者の闘いは幕を開けた。
※
やめてやめてやめて、彼は違う、骸は違う、全部私の為なの全部私が悪いんだ、だから骸を許して!
叫びたいのに声は枯れたみたいに出ない。動きたいのに体の隅々まで重石をつけられたみたいに動かない。恭弥が倒れて、犬と千種が倒されて、フゥ太が倒れていく。骸があのエストラーネオが開発していた禁弾とされる『憑依弾』を使い倒れたみんなの身体を乗っ取り沢田を追い詰めていく。
恭弥、ビアンキ姉、隼人皆、みんな、ボロボロなんだ。
骸、もう、いいじゃない。そうやって悪役にならないでよ。そうやって沢田をけしかけないでよ。もう、十分なんだよ。こんなに想われて、慕われて
君達がどんなに私を想ってくれていたか、返すことが出来ないほどいろんな楽しみをくれた。
友達をくれた。家族になれた。悲しみも苦しみもあったけど素敵な思い出をくれた。
私の『役目』から少しだけ解放してくれた。
もう、終わりにしようよ。もう、いいじゃない。争う君達を、もう、みたくないよぉ!
瞳から止めどなく流れる涙だけが私の意識を体現する。それでも、血が流れる闘いは終わらない。
ジルのタイムリミットまで、後10分。