闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

4 / 160
標的04真珠は泡にとける

ジルside

 

「ジル、今日は俺と外出かけようぜ」

 

朝は兄、ディーノと二人きりで朝食をいただくスタイルに慣れてきた。相変わらずゴージャスというか、ああ、この人はマフィアなんだなーと思える出来事もあったりしたけど。

私の小さな相棒、クロは私の足元で優雅にミルク飲んでいる。ちなみに、クロ専用の猫ミルクなるものを用意させたとか。

うーん、以前の記憶が不確かだがこれだけはわかる。

私、前は絶対庶民派だったに違いないと。これだけ豪華な毎日を送っているけれどいまだに慣れない。時にはこれが現実なのかと疑ってしまうことも多々ある。

もちろん、自分の今の状況を100%受け入れているかと言えばそうでもない。私自身に起こっている現象はそう簡単に誰かに打ち明けられるほど軽いものでもないし、ましてや、こうして受け入れてくれている彼や、ほかの皆にもすぐに相談はできない。

もっと、私自身が何かを取り戻さなくては……。

よし!気分を入れ替えよう。もんもん悩んでいても解決するわけじゃないんだ。

今日は特別な日。心躍る素敵な日だ。本当に朝、ベッドから起きてすぐにベッドの上で小躍りしてしまったほどだ。

 

だってすごく嬉しい。

 

最近は外へ出かけることができなかったから。それは彼が私を一人で外へ出してくれないからだ。本人曰く心配だからとのこと。まあ、見た目幼児なのでその気持ちもわからなくもないが中身精神年齢は二十歳いってますので複雑。

だから暇つぶしにと屋敷の中にある本を読み漁っていたら一週間もしないうちに読破してしまった。ディーノの執務室のとか図書館の奴とか。 読み返すのもなぁと退屈しそうに感じていた次の日の朝、彼自らが私を起こしに来たときに言ってきたのだ。

 

食いつかない訳がない!どこに連れてってくれるのかなぁ。

 

私はウキウキしながら朝食の焼きたてブリオーシュを頬張って食べた。

甘い!けど美味しい!でも米が欲しくなるなぁ。

 

◇◇◇

 

ディーノside

 

俺は目の前の光景に驚いた。ジルは部屋中に本を投げ散らし埋まるほどの中で本を読んでいた。それは本来なら、幼い子供がやらかした些細なことかもしれない。だがその本が問題であった。絵本や図鑑やら子供が読むにふさわしいものならいくらでも目に留まらないだろう。ジルが読んでいるのは到底子供のしかも女の子が読むものではないのは明らか。分厚い、大人が読んだとしても途中で放り投げてしまいそうな政治に関する本や歴史、偉人らが残した書物などなど。俺はある本を一つ拾い上げた。

その本のタイトルは『宇宙の神秘と現代化学の最先端』と書いてあった。ますます、ジルという少女に戸惑いを感じずにはいられなかった。

ジルは立ち尽くす俺に気がつくことなくじっと読み続けている。とんでもない集中力だぜ。いずれ読み書きを習わせようと家庭教師をと思っていたのだが。

まさかこれ程のしかも相当な量を読めるとは…

 

「ボス」

 

後ろからロマーリオに話し掛けられた

 

「これ、ジルが書いていた落書きなのですが見てください」

 

「コレは?」

 

「みたらびっくりしましたよ。数式がびっしり書いてあるじゃないですか。しかもこれ超難関と言われて誰も解けないっていわれている問題らしいです。ここの花丸で囲まれてるとこ答えみたいで」

 

だとするならばジルはこれを解いたことになる。何度もてもそれは現実だ。

 

「………ホントに天使じゃねぇか?」

 

俺の冗談にロマーリオは苦笑いしながら賛同した。

 

「かもしれません。どちらにせよこれは普通の子供ではできませんよ」

 

ジルの吸収力は異常なものだった。

ためしに大学院レベルの問題を与えてみたらものの五分で書き終えその可愛い口を尖らせつまらないとクロと遊びだした。天才レベルを超えている。

本人は遊びでやっていると思っているのだろう。

こちらの度肝を抜くことばかりする。これは俺では手におえる問題ではないかもしれない。

ジルはなんでも吸収し、自分のものにする。

それは勉学だけではない。ダーツで遊ぶ部下の姿をみつけたジルはやりたいと俺にせがみ、ジルの背では届かないだろうからイスを用意したが本人はいらないと拒否しその背丈のままでやったのだ。そしてすべて的はど真ん中に刺さった。

何回やってもそれは変わらなかった。

ジルの目線、でやってだ。ジルは手を上げて喜んでいたが部下と俺はただ驚きしかなかった。4歳か5歳になるだろう子供に果たしてこれだけのことができるだろうか。

彼女の存在は今俺の部下やあの人しかしらない。

だがこれが俺を憎む奴やジルをなんらかの形で利用しようともくろむ輩が嗅ぎつけ現れるかもしれない。

 

そのときに俺はジルを守れるだろうか?

 

俺はジルをボンゴレ九代目のところへ連れて行くことにした。

彼なら力になってくれるだろうし、なによりジルのことを話したらぜひ会いたいといってくださっていたから。

 

「ジル。今日は俺と外出かけようぜ」

 

俺の言葉に嬉しそうに笑うジル。

その笑顔を守りたい。どんな手からも。今の俺じゃきっと力不足なのは明らかだから。

守る力が、確実に欲しかった。

だから、この後に起こることを予想できなかった。それがジルと離れ離れになる要因になるなど。

 

◇◇◇

 

ジルside

 

「こんにちは。ジル」

 

連れてこられたのはディーノの何倍もの大きさのドデカイ屋敷だった。警備の数も半端ないもので明らかに一般人ではないことは丸代わり。でもそこは幼児らしく何も分からない風を装った。ディーノに手を引かれクロを胸に抱いて気が遠くなりそうな屋敷の中へと案内され進んだ時、たぶん一人帰れといわれたら100%迷子になって泣き叫ぶ羽目になるだろうと思った。だから義兄の手を離すまいと必死に握ったものだ。ディーノは私の心境を察してか知らずか最後には抱き上げて歩いてくれた。

行き着いた先は立派な執務室。そこに優しそうなおじいさんが私の到着を待っていてくれた。

 

「ジル、この人がお前に会いたがっていたんだ。挨拶して」

 

いやぁ、なんかほっとする感じの印象だなぁ

ディーノが私をおじいさんの前で降ろすとおじいさんは私が目の前までくると杖を片手にしゃがみ込んで私と同じ目線になってくれた。

 

「ティモッテオだ。君のことはディーノから聞いているよ。可愛い天使を拾ったとね」

 

『初めまして、ジルです』

 

「にゃ」

 

可愛い天使という言葉に疑問を感じたがまあ深く考えずサラッと流すことにした。

声がでないのは申し訳ないが精一杯挨拶させていただいた。クロも一鳴きして挨拶をする。相当身分高い人みたいだから粗相はできないから最高級の笑みを浮かべた。あくまで自分なりですが。

おじいさんは目じりの皺を寄せて嬉しそうに笑った。

 

「君に惹かれたディーノの気持ちがわかったような気がするな」

 

『?』

 

「……そうですか…」

 

二人にしか分からない会話なのだろう、大人二人は笑うだけで何も語ろうとはしなかった。

 

「ほらジル?ここにはいっぱい本があるだろう?好きなのを読んでいいんだよ?」

 

おじいさんに抱っこされた(拒否ろうとしたができなかった)ままなにやら本が沢山あるところへつれて来られた。

ワオ!なんとも読み応えのある本がズラリと並んでいる。私はおじいさんから降ろしてもらいすぐに本の山に飛びついた。少し離れた場所で大人二人は難しい顔してお茶をしだしたことに気が付かないほどに私は本にのめり込んだ。

 

◇◇◇

 

ディーノside

 

「あの子はどこか人間離れした雰囲気を持つ子だね」

 

「…やっぱり九代目もそう感じましたか?」

 

夢中で本を読み漁るジルを見守りながらイスに座った俺達。出された紅茶からほのかな香りが漂う。

 

「どこか脆く危うい、それでいて惹かれずにはいられない強い力をあの子から感じるよ」

 

「……それは超直感ですか…?」

 

「そうだね。それもあるかもしれない。……ただ」

 

「何か?」

 

俺は次の言葉を待った。九代目はゆっくりと言葉を繋げた。

視線はジルを見つめたまま彼は言う。

 

「ボンゴレに古くから伝わる文献があってね。そこには蒼龍姫という一人の女性の存在があったと言われている。優れた頭脳、卓越した運動神経、そしてずば抜けた美貌、どこも引けをとらないまるで天からの授かり者だったと伝えられている」

 

「…………」

 

「彼女は初代ボンゴレとも深く関わりがあり、切っても切れない関係にあったらしい。初代ボンゴレも彼女の存在をけして他のマフィアに渡さなかった」

 

「それは二人が恋人同士だったと?」

 

九代目はやや躊躇った様子で言葉を続けた。

 

「………そうだったかもしれないし、そうじゃないかもしれない。とにかく彼の側にいた彼女はその自身の全てを彼に捧げファミリーを繁栄させた。だが彼女ある日忽然と姿を消した。置手紙とリングを残して。彼女は二度と姿を現すことはなかったそうだ」

 

「……リング?」

 

「そうだよ。これは神の悪戯だろうか、または必然なのか。君がジルを拾ったと連絡をしてくれた時見つかったのだよ。今まで文献だけの話だと思っていた。彼女の存在がね」

 

そういって九代目はポケットから古ぼけた一枚の紙と小さな箱を取り出した。その紙に書かれていた言葉は『私は再び貴方の前に戻ります』と一言書かれている。その文字は掠れているが何とか読めた。

そして箱を開くとそこには銀色に光り輝く細い指輪がある。中央に青い宝石があしらわれ龍が描かれた見事な細工をしてあった。それは明らかに女性もの。

 

「これは……彼女の?」

 

「そう、彼女が残した『虚像のリング』別の名を」

 

『虚像の花嫁』というそうだよ―――。

 

俺は自然とジルに視線をやる。何気なく、だ。

 

するとジルはいつの間に本を読むことをやめていて手にしていた本を膝に置いてこちらを見ていた。紫紺の瞳を瞬くことせずその指輪を食い入るようにじっと見続けて、まるでそれは失われたものを求めるようにその唇がゆっくりとある言葉を形作っていく。

 

『それは、わたしの、ゆびわよ』

 

と、ジルは言った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。