天姫side
どうも皆様おそろいのようで。突然乱入してしまった形なので皆さまの注目を集めるのは必然でした。
「ザンザス!」
これも全てザンザスの所為だと八つ当たり気味に名前を叫ぶ。沢田たちもびっくりした表情でこっち凝視してるし。私だってこんな展開予想できてませんよ!でも表情には出しません。出さないよう頑張ってるんだから!なんとか高台にいるヴァリアーの皆を見上げた。
なんでそんな高いところから優雅に見下ろしてるんだか無性に腹立たしいものを感じる。
「天姫様!」
「無理をなさらないで下さい、まだお体が」
双子のお姉さん方が私に近寄ってゆく手を阻もうとする。けど今それどころじゃない。余計なことしてくれたザンザスに一発文句でも言ってやらないと腹の虫も収まらん!
「離せ」
すると、スッと二人は退いてくれた。よし!障害はなくなった。私はズンズンと彼目指して進み、ある程度の距離で止まった。そしてザンザスをギッと睨む。
「私に言いたいことはない?ザンザス。あるでしょう」
「……………」
無言はいけませんなぁー、無言は。あれでしょ、言い訳の一つや二つでも必死に考えてる最中なんでしょう。おほほほ!その証拠みてごらんなさいっ!
石みたいに固まってるしでも許しませんよ!
「天姫ちゃぁ~ん!」
「ぐはっ!」
黒いサングラスからキラキラ光る大粒の涙を流しながらルッスーこと、ルッスーリアが駆け寄ってきて勢いそのままに私にダイブ&絞め殺し技を食らった。
「もう、ずっと眠ったままだったから心配したわよぉぉお!」
「…ぐぇ…」
「う゛お゛ぉいい!てめぇぇえ、天姫を殺すきかぁあ!?」
ああ、スクアーロ、お願いです。早くこのアホを剥がしてくれ……酸欠で死、ぬ。
スクアーロにルッスーを引っぺがしてもらってようやくまともに呼吸することができた。
「お姫!」
「天姫、元気そうだね」
ベル、マーモン。うん、相変わらずだね。
第一声がそれかアンタら。人が窒息死しそうになってたってのにニマニマ笑って指さしながら観察してただろ。ちゃんと見てたぞ。後で覚えとけ。
「……可憐だ」
忘れてた、レヴィの存在を。ちょっと視線外して欲しい……。
それと後ろの大きいガスマスクしてる奴?なんか気になるんだよなー。
っていうか、もう私の本当の名前知ってるんですね。後で色々と教えてもらわねばならない話題が次から次へと増える。
「天姫」
「え」
皆があっという間に蹴散らされ漫画みたいに吹っ飛ばれていくのをスローモーションのようだと感じつつ、ぐいっと引っ張られて気がつけばあの懐かしい腕の中にいた。
私の身体は完璧に彼に閉じ込められたのだ。
「ザンザス?」
「………もう、起きねぇ、と思った……」
「ゴメン。心配かけちゃったね」
首筋にザンザスの吐息が当たって妙にくすぐったい。でも拒否することはしなかった。
むしろ、ぎゅっと彼の背中に腕を回して密着度は増した。彼の、ザンザスの気持ちが嬉しかったから。
ザンザスが氷漬けされてしまった時、私はボンゴレ十代目なら何とかしてくれると勝手に期待して現実目の前に自滅したタイプだから。そうだね、数ヶ月の間だったけど逢えて嬉しいのは私も一緒だよ。でも、なんとなく気恥ずかしいんだけどね。今は我慢してあげよう。感動の再会もつかの間、遠慮がちに片割れのお姉さんが声をかけてきた。
「ザンザス様、よろしいでしょうか?」
ザンザスは案の定、殺気を込めた視線で威圧した。
「…………」(ギロッ!)
「ザンザス、離して」
彼に用があるのではない。なんとなく彼女は私に用があるようだ。けどザンザスに一応断って置こうと命捨てる覚悟で声をかけたのだろう。
ぽんぽんと彼の背中を軽く叩き、離せと伝える。ザンザスはぶすっとした顔で離してくれた。けど不服そうである。
「何の用」
ニッコリ微笑めばお姉さん方もほっと息をつく。
「ハイ。本来リング争奪戦において中立の立場を本来は取られるはずなのですが、天姫様の場合は特殊なケースですので」
「つまり、ザンザスと契約したから最後のボンゴレ十代が決定するまでは私はヴァリアー側になる、そういうことね」
「その通りです」
私は説明してくれたお姉さんにお礼を述べた。
これでなんとなく自分の立ち位置が理解できた。今、ヴァリアーとボンゴレの間で対立が起きていて、リング争いにまで勃発している。それに私もそれなりに絡んでいるらしく本来は中立、つまりどちらにも属さないところをあの子が独断で動きザンザスと無理やり契約なり、なんなりしたところで情勢が変わった。
私はヴァリアー側に属すことになっているので、基本ヴァリアーと共に行動するべしといいわいわけだ。
ふむふむと納得したところで、
「ジル!」
と突然名を呼ばれた。叫びに等しいその声を上げたのは、沢田綱吉。
私はゆっくりと彼を見やる。
私に向かって腕を、手を伸ばす仕草をする。
馬鹿みたい。
私はもうジルではないのに、あの小さな子供はこの場にいなくて、いるのは天姫である私なのに、あえてその名で呼ぶのか。アンタは。
いや、そもそも彼は私が誰であるのかを知らないはず。
今だって、私がジルであったという証拠はない。赤の他人だと思う人もいるはずなのに。彼ははっきり私に向けて叫んだ。
ジル、と。
どうして、そんな悲しそうな顔するわけ。
いなくなって清々するのではないの。生意気な餓鬼一人消えたところで痛くも痒くもないでしょう。婚約者なんていらないって言ってたじゃない。
ボンゴレ十代目なんてやりたくないって言ってたくせに、なんでザンザスと対峙してるわけ?ただの気まぐれ?それとも急にボンゴレ十代目に魅力を感じたとか?
意味わかんない。何がしたいのか理解に苦しむ。
だから言ってやろうと思った。アンタが知るジルなんて幻だって、もう消えちゃったんだよってはっきり宣言してやろうと思った。
けど、
自分の口から出てきた言葉は違った。
「……綱、吉……」
彼の名を呼んでいた。ジルであった頃、親しみを込めて呼んでいた言い方で。
すぐに我に返ってハッと口元に手をあてた。
何を、口走ってしまったんだ、私は…。
自分のセリフに信じられず半場茫然とする私にザンザスがすかさず動いた。
「行くぞ」
「え、ザンザス!?」
ガシッと掴まれた腕はいくら抵抗しようともびくともしなかった。
むしろ、籠められた力の強さに顔に苦痛が浮かぶ。
彼の、ザンザスの綱吉を睨む視線は決して憎悪だけではない。
射殺さんばかりのものだ。
「痛い!ちょっ、待っててば」
「いいから、来い!」
「ジル!?」
沢田だけではない。他にもいたリボーンや隼人や武、ランボ皆が私の名を叫んで呼び止めようとする。無理矢理に引き摺られるまま私はザンザスに強制的に連れていかれその場を離れた。
※
問答無用と言わんばかりに抵抗する天姫の意志など一切無視したザンザスの手によって、豪華なホテルの一室に連れてこられた天姫はこれまた無理やり座らされた高そうなソファに腰を落ち着けつつ笑顔で一言放った。
「話して」
否、命令であった。
雰囲気が怖い。というか、この場所全体の温度が少し寒く感じるのは気のせいではないとヴァリアーの面々は思う。さて、ボスであるザンザスはなんと言い返すだろうかと、皆の注目を集める先で憮然とした態度のザンザスはこう言うだけで終わらせた。
「お前は知らなくてもいい事だ」
一方はニコニコニコと微笑み続け、
もう一方はツ――――ン!とそっぽを向くという状態。
一瞬の間だが、皆の間に言いようのない緊張が走った。
先手を取ったのは天姫。ふーんと頷くと目を細め、にっこりと笑ってこう言った。
「……そう、そういう言い方するんだ。私に心配かけまくってそういう態度しか取れないのね。了解わかった。なら、今後一切ザンザスとは無関係だから。ええ!ええそうよね!所詮その程度のお付き合いですものね?そうよねそうよねだったら私のことなんかお気になさらずご自分のお好きなようにどーぞ。ああでもヴァリアーの皆とは楽しく!仲良く!お茶したり買い物行ったり遊びに行ったりしようかなー。楽しみだなー、ザンザス抜きで思いっきり楽しめそうだなー!よぉし!そうと決めたらさっそく下調べでもしようかなー。明日はさっそくお買い物でもしようかしらー」
そう棒読みな独り言を思いっきり大声で言いつつ、天姫はソファから立ち上がり別室へと繋がるドアの方へ向かいがちゃん!とドアを開けて思いっきりドン!と閉めた。
「……………」
「あの、ボス?」
「………………っ―――!」
ドッタンバッタン!と耳を塞いでしまうような騒音といくつかの悲鳴が隣の部屋から発生。
けど天姫は一切無視して適当に置いてあった雑誌を手に取り一人用のソファに足組つつ腰をつけゆっくりと読書タイム。閉ざされたドアの向こうではいろんな怒号やこの世の者とは思えない叫び声がするが聞こえないふりを通す。
……30分後。
コンコンと控えめにノックする音と共に、これまた控えめな声がした。
「……………俺が、悪かった……」
とザンザスからの謝罪の声。
聞いた瞬間、よしっ!勝った!と雑誌を後ろに放り投げるほどガッツポーズかました天姫。彼の素直な謝罪を受け入れ、ドアを開けて出てきた天姫はぼろっぼろの部屋とズタボロ状態なヴァリアーの面々を眺めつつ、ソファへとゆっくり座りこれまでの経緯を全て教えてもらった。それから小一時間ほど、ようやっと事の次第が理解できた。
「ふーん、なるほど。事情は全部わかった。結論から言いましょう。なんでこんな回りくどいことするかな?もっとうまくできたでしょう?曲がりなりにも暗殺集団なんだから、こんな派手な派閥争い起こさなくてもいいじゃない、気に入らなきゃ殺せばいいだけの話なんだし」
「…………」
それはそうだとザンザス以外、神妙に頷いた。
ザンザス、蟀谷がわずかにぴくっと反応。
「ところで後ろの機械。ゴーラ・モスカだっけ?アレって一体どこから入手したの」
「………あの女が寄こしたもんだ」
(あの女、つまりあの子のことかしら)
ザンザスの返事に天姫はふーんと眉を軽く吊り上げて立ち上がった。
ゴーラ・モスカの前まで歩き、手前でしげしげと眺め、ゆっくりと回りながら観察をする。
「動力源は?何で動いてるの」
「…………」
ザンザスから返答はなかった。何かやましい点でもあるってことか。
天姫は顔には出さず、行動にうつした。今まで存在感がなかったペットに初めて命を下したのだ。
「シロ、襲え」
「ガウ」
普段はそれは可愛らしい白猫ちゃんが命令一つで大きな体躯の白虎に変身。獰猛な唸り声をあげ、鋭い前足がブン!とゴーラ・モスカ本体に襲い掛かる。ゴーラ・モスカは抵抗する暇なく、あっさりぱっかーん!されルッスーリアが慌てながら声を上げた。
「天姫ちゃん?!危ないわよ」
「おいおい。派手にオジャンじゃん!」
ベルが楽しそうににやりと笑った。
桃が簡単に割れるかのようにゴーラの中から姿を現したのは…一番あってほしくなかった現実だった。くたりと床に転がるように倒れる人物に天姫は駈け寄って抱き起した。
「おじい様!」
ボンゴレ九代目。その人が焦点の定まらないsideで必死に声の主を探す。そして、ようやく絞り出すようの声をだした。
「………………ジルちゃん…か、い……?」
「はい、私です、ジルです。すぐに手当てしますから!気をしっかり持ってくださいっ!」
すぐに近くの病院をルッスーリアに手配してもらって緊急搬送される九代目をホテルの裏口で見送った。表では大事になってしまうし今はリボーンたちに勘付かれるわけにはいかなかったからだ。
後で病院へ行かなくてはと焦る気持ちはあるものの、今はやらなくてはならないことがある。だから天姫はすぐにでも行きたい気持ちを抑えて部屋に戻った。まずは、
「ザンザス、そこに立ちなさい。ああ、うん。そこそこ。んで、歯ァ食いしばんなさい」
ザンザスを思いっきり殴ること。
天姫の突然の暴挙にザンザスは動揺することなくその拳を受け入れた。
ドゴォ!
「ぐふっ!」
右ストレート綺麗に入りました。ザンザスは勢いのまま壁に叩きつけられる。
「よし、これで許してあげる。本当ならおじい様が苦しんだ分受けるべきだと思うけど、これ以上しない。けど自分の父親を犠牲にしてまで私を助ける馬鹿は大っ嫌いよ」
吐き捨てるように天姫はザンザスに言い放った。
「あ~あ、怒っちまった。お姫」
「僕、知らないよ」
「ボス~!華麗に吹っ飛んでも素敵よ~」
「お前等、ズラかるぜぇ!!」
はははのは。ヴァリアーの皆様は自分たちにとばっちりがくるまえにずらかろうという魂胆らしいです。ですがそう簡単に天姫が逃してくれるはずもなく、
「あんたらも、お仕置きよ!」
という具合に、
「グヘ!?」「んなっ!」「のへっ!」「バキッ!」「グフッ、そんな貴女も可憐だぁー!」
それぞれ奇声上げながらお仕置きされる結果に。
ザンザスは天姫に正座させらヴァリアーの面々はその後ろにて同じ姿勢に。
脅しと言わんばかりに仁王立ちする天姫の後ろには白虎シロが大口開けて鋭い牙を見せ「ガウ」と威嚇。
「みなさーん!反省しましたかー?」
「「「はーい」」」
「うーん、一人だけ声が聞こえないなー。もう一回ねー」
「みなさーん!今度こそ反省しましたよねー」
「「「はーい」」」
「……ザンザス君はー?」
天姫とは決して視線を合わせようとはしないのは、最後の抵抗だろうがじとーと睨みつけてやったら、ついに根負けした様子。ヴァリアーのボスらしからぬ、
小さい、小さいぼそっとした声で、
「……ッチ………ねぇよ……」
と白旗を上げた。天姫はそれを見届けて一つ満足に頷いた。
「よろしい。じゃあ、今後の動き確認しようか!」
パン!と一つ手を叩いてはみんなの視線を注目させる。
ヴァリアーの皆は天姫の発言をいまいち理解していないようで、目を白黒させ唖然としていた。ザンザスはわかりやすい舌打ちをまたしてたけど軽く無視。
(目覚めたからには、黙ってないぜ。私流で滅茶苦茶にハッピーエンドにさせていただきますよ!)