闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的43そんな君は

沢田綱吉side

 

「ジル!」

 

久し振りに会えた少女は何もかもが様変わりしていた。

見た目も、中身も俺が知るジルの面影は一切消えていて、怖かったんだ。

ジルが俺たちを、俺をまるで赤の他人を見るかのように底冷えするような冷たい感情の籠らない瞳で見るから。

怒鳴らずにはいられなかった。

この胸の憤りをぶつけてしまいたかった。

 

雨降りの中、雷の守護者同士の対決が始まった。

学校の屋上で行なわれる避雷針のエリアで雷がごうごうと音を立て何十万ボルトという電撃を落とす。

向こうの方では二時間も雨の中待ったという、レヴィ・ア・タンの姿があった。

他に来客の姿はまだない。遅れているのだろうか、それともヴァリアーにとっては勝利して当たり前の決闘だとで余裕綽綽?

どちらにせよ気分がいいもんじゃない。

今にも眼力ビームでも放ちそうな気迫がアイツからは感じられて、こんなんで大丈夫かよ…と不安が走った。

俺はおふざけしているランボの肩を掴んで言わずにはいられなかった。

 

「ランボ、行かなくてもいいんだぞ?」

「ガハハハ!ランボさんは無敵だもんね~」

 

こんな時にまでおふざけ全開のランボが正直羨ましいと肩を落としかけた、その時だ。

 

「そんな腑抜けじゃ彼には勝てないわ」

 

まるで小ばかにするかのような言い方に俺たちはむっとし、その声がした方へと視線を向けた。そこにはいつの間にかレヴィの後ろに現れた集団がいて、ザンザスに抱き寄せられている人物がすぐ目に入った。

 

「なんだとっ!?ってお前は……」

「まさか、……」

 

山本も獄寺君もすぐにわかったみたいだ。

だって忘れるはずがない、俺たちがこの争奪戦に参加した最大の理由。

あの子を取り戻すことなんだ。

少し低い声で喋っているけどあの時の少女を忘れるはずがない。

 

「ジル!」

「久しいわね、沢田綱吉。ちょっとは逞しくなれたかしら」

 

ウフフと含み笑いをするジルはヴァリアーが黒のかっぱで統一された中、一人だけ特別と言わんばかりに赤いカッパを着込みフードを深く被っていて彼女の表情を読み取れるのは妖しく微笑む口元のみだ。

今、沢田綱吉って言ったよな、聞き間違いじゃなよな。

そうだ、確かにそういった。

ジルは俺を呼び捨てにした。今まで『綱吉』って呼んでいてくれていたのに。

もう俺たちのことはどうでもいいって?関係ないって言いたいのかよ。

……あんまりだ。皆、ジルを助けようと必死になって修行して怪我とかしてまで強くなろうとしてるのに。その行為を嘲笑うかのような態度をとるとかありえないだろ。

 

「ジル……どうして、?そんな言い方するんだよ」

 

あまりにかけ離れすぎている目の前の人物が信じられなかったんだ。

あの少女が

あのジルだなんて信じたくもない。

『アレ』が同一人物だって?

こんな威圧感を与える存在がジルと同一人物だなんて俺は認めたくない…!

口元が大きく歪んで両手に知らず知らずに内に力が籠ってた。

俺のショックなんかに気が付かないジルは、俺の言葉に早口で反論してきた。

 

「そんな言い方?私の何を知っていたの?4歳児の私?それとも今の私?ほら!即答できないじゃない。本当の私を知らないくせにそんな言い方?何、何様のつもり?笑わせないでよっ!」

 

鼻先で笑い飛ばすかのような言い方に俺はなおさらショックを受けた。

なんだって、どうしたってんだよ!

ジルは、ジルは一体どうしたってんだ!?

狂喜を宿している目だ、あれは。俺が知る、ジルが消えちゃった。

 

「天姫」

 

ザンザスに名を呼ばれ、ジルは肩をすくませるとこちら一瞥し

 

「…ハイハイ……今日は、楽しませてよ。色々と」

 

まるで、悪魔のような微笑みを見せた。

リボーンside。

 

あいつの真の目的はなんだ?

 

「仲間を守れないなら俺は指輪なんかいらない!」

 

大きな死ぬ気の炎を燈した綱吉は真っすぐにザンザスを睨みつける。

 

「……ならば散れ」

 

まるでゴミでもみるかのような冷徹な瞳でザンザスは憤怒の炎をその手に宿し、今にも俺たちに仕掛けてこようとしていた。その様を驚きながら待ったをかけるチェルッペッロ機関の女。

 

「ザンザス様!?お待ち下さい。ここで手を上げられては意味が無くなってしまいます!蒼龍姫様とて……!」

 

だが女の言葉も無視し実力行使に出ようとするザンザスに俺たちは防御の構えをとっさにとる。だが奴の攻撃を止める者がいた。天姫だ。

アイツはすっと自身の手を奴の腕に乗せて静かに首を横に振って制した。

 

「…………なぜ止める、天姫」

 

ザンザスは不服そうに眉間に皺をよせ天姫を見る。

驚きだ。あのザンザスが動きを止めるとは……。天姫だからこそ、いう事をきいているのかもしれないが。

 

「無駄に力を使うことも無い、そうでしょう?」

 

口調はとても丁寧だがそこには有無を言わせぬ圧力が確かに感じられると同時に、まるで子供の悪戯を窘める母親のようでもあった。ザンザスはしばし、無言であったがぷいっと天姫から視線を外すと

 

「………興が、そがれた……」

 

とメラメラとヤツの手の中で燃えあがっていた憤怒の炎を終息させた。

天姫はその様子を見終えた後、

 

「試合の結果を言い渡しなさい」

 

と、チェルベッロ機関の女に先を促す。

 

「ハッハイ!」

 

もう片方の双子の女が天姫の迫力にビビりつつ、試合終了宣言をした。

あまりのもそれは依怙贔屓な内容で、俺たちは不満を叫ばずにはいられなかった。

 

「今回の守護者対決。沢田氏の妨害によりレヴィ・ア・タンの勝者とします。それにともない、雷のリングならびに大空のリングはヴァリアーの物となります」

「なんだって!?」

「なんで十代目のまで!」

 

だがツナの選択は正しい。ファミリー(仲間)を大事にしない奴はボスに相応しくない。

だがこれほどの大規模な対立を果たして、九代目が望んでいることなのか。俺にはどうもキナ臭くてたまらないぜ。無駄な争いを一番に嫌う男のはずなのに、今回の指輪争奪戦を許可するとは考えにくい。

 

「フィールドへの接触は勝負を妨害したものとみなされ失格の対象となります。例外はありません」

 

ツナの大空のリングがチェルベッロの女によりアイツの元へと渡っていく。

 

「…ザンザス様、お受け取り下さい」

「………………やっとオレの物に……」

 

奴により二つに合わさった大空の指輪。本来ではれば正統なボンゴレに受け継がれるものをザンザスは不正というやり方で手に入れやがった。まさに九代目が嫌いそうな手口だぜ。

天姫がすっと

その場に腰を下ろしつつ片膝をついて軽く頭をたれた。

 

「おめでとう、ザンザス。……いいえ」

 

そこでいったん言葉を終わらせ、驚いて固まってるザンザスの指に、はめられた手を

ほっそりとした手で持ち上げては誰もが予想だにしない言葉を告げた。

 

「……我が、主よ」

 

聞き間違い、じゃない。

天姫はザンザスを『主』と言った。

これが示すことはただ一つのみだ。

 

「………天姫……」

「この身朽ち果てようとも全て私は主のもの。

いつ、いかなる時も我が力惜しみなく注ぐと誓う。付かず離れず守り通す。

今、ここに揺ぎ無い忠誠と永遠なる親愛を貴方に捧ぐ」

 

決して他の者が邪魔することを許されない儀式。

真なる契約が交わされたのだ。

いくら『虚像の花嫁』を従えることのできる人物であろうと、彼女が認めた者でなければそれは扱えない。

つまり、ザンザスは『虚像の花嫁』の主に値する人間だと判断したのだろう。

天姫が大空のリングに口付けした。

『契約』はついになされた。部外者が入り込む隙などない。

 

「……………先に、帰る……」

「気をつけて」

 

たったそれだけで二人には俺たちが培ってきた絆が断ち切られたような感覚に陥った。

ザンザスの姿がなくなるまで見送った天姫はすっとこちらに視線を戻した。

彼女の左手の薬指に収まっている『虚像の花嫁』が、妖しく光り輝く。

 

「…真の契約が実行されただと!?」

「……そ、そんな……ジルが、ジルが…」

 

激しく狼狽するツナたちの表情はわかりやすいほどに面蒼白になっている。

 

ッチ、俺だって今あったことが信じられないぜ。

 

「沢田綱吉、私はもう『ジル』ではないと言った筈。まだ理解していないの」

 

もはや俺たちは眼中にないといった感じで背を向ける天姫様。

 

「!?」

「天姫様!」

「何?」

「この後の守護者対決はいかがなさるおつもりですか!?契約をなされてしまうなど余りに軽率では…!」

「争奪戦は変わらず続行。だって」

「「!?」」

「面白いものが見られるのよ。……そういえば九代目と連絡は取ってるかしら。沢田家光」

「………、九代目に何をした…!?」

「何も、知らない?……そう、だったらいいわ。別に今更知ったところでどうなるというものでもないし。それにしても門外顧問というのは存外役に立たないのね」

 

吐き捨てるかのような物言いに天姫の声が若干トーンが上がったのは俺は見過ごさなかった。何か情報を掴んでいるのか。

俺は呼び止めずにはいられなかった。雨が降っているというのに冷や汗が止まらない。

フードからかすかに覗く紅い瞳に惑わされそうで。

 

「天姫」

「何?リボーン」

 

ゴクリと緊張感からか喉が鳴る。

アイツは気づいているのだろうか、先ほどまでの紫紺の瞳から徐々に赤みをおびてきていることを。

俺と合わさっている瞳が、異質のように感じる。

あの黒曜ランドで会った時のあの残酷に笑う少女を連想させるのだ。

姿形はこうも違い過ぎるのに、どうしてそう感じるのか。

それは、きっと本質がそうなのだろう。

アイツという人間が枠から外れた人種。

 

「……それは、お前の本音か?」

 

お前は、本当はこんな事望んでいないんじゃないか。

それは俺の希望でしかない。

 

「…………当ててみなさい、アルコバレーノ。………貴方は『最強』のヒットマン、でしょう」(もうすぐよ)

 

言葉の駆け引きは一瞬でアイツは言うだけいって消えるようにこの場から去った。

もう用はないと言わんばかりに俺たちはの呼び止めなど無視して。

 

俺には分かった。俺だけは最後に呟いた言葉が何か気が付いた。

だがツナたちに言うつもりはない。

確信がないっていうのもあるが、まだ俺の中で整理できねぇことがあるからだ。

だがこれだけは言える。

 

アイツは、何かを企んでいる。

それも天姫のことだ。きっと大どんでん返しがあるに違いねぇ。それがどういった形でこの先あるのかは知らねぇが、何か、あるはずだ。

 

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