闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的52君が怖い

沢田綱吉side

 

家に戻って来て疲れ切った体をベッドに横たわらせても脳裏にあの時の光景が浮かび上がって消えない。正直、眠れない……。今も、あの時の怖さが残ってるんだ。

あの、止まない雨が降りしきる中、暗がりに紅く光る瞳が今でも忘れられない。

 

※※※

 

「…雨のリング争奪戦。山本武の勝利とします。それでは次回の対戦相手を発表します」

「…まて」

 

重症のスクアーロを先に病院へ行かせたジル。だがチェルベッロの女二人を視界に捉えたそれは殺す対象とした殺し屋の目でゾクリと背筋が凍りついた。

 

「チェルベッロ機関。お前達の行なっている『筋書き』に興味はない。だが、」

 

パチン、と一つ

たった一回だけ指を鳴らす。何気ない行動で、でもそれは妙に耳に残る音だった。

突如、誰もが信じられない光景を目の当たりにするなんてあの時、誰が予想できただろうか。そこにあろうはずもない何もない空間に俺たちのすぐ目の前でアクエオンに放たれ山本やスクアーロにも襲い掛かろうとした、あの獰猛な大鮫が出現したのだ。

何もないはずの場所にあるはずのないもの。まるでマジックでも見ているかのような芸当に俺たちは驚愕するしかなかった。

 

「なっ!?」

「どういう仕掛けしてやがる……」

 

獰猛な鮫は陸上といえどその牙を向けてきた。

だが、ジルの一言とある動作で全ては終わった。

 

「私の大事なものに手を出すならこうなる」

 

ぐしゃりと手で何かを潰しこむ動きをする。

すると、それに反応するかのように、大きな巨体の大鮫がビクン!と一度体を震わせた。

それはビクンビクン!と回数を増やしていき、しまいには痙攣をおこし始めた。

 

ブシュッ!

ぐちゃ、べちゃ。

 

まるで風船が破裂するかのように大鮫は内側から破裂して息絶えた。

臓器や肉や骨なんかがぐちゃぐちゃに四方八方に飛び散って凄惨な場面へと様変わりしてしまった。

 

一体、何が起こった?

 

頭で理解するには数秒かかったかもしれない。

でも肉片の一部が俺の顔や服にとびかかってきて、そのまだ温かさに現実にひきもどされた。

 

「―――!!」

「ぐっ!?」

 

認めてしまったら終わりだ。でも、目の前の異物は残ったままで、それから視線をそらすことができない俺はせり上がってくる嫌悪感と吐き気に襲われて思わず、口元に手を当ててその場にガクッと膝をついた。

胃液が逆流してくるような感覚と激痛が喉元まで迫った。

俺は何とか吐き気を抑えようとするけど我慢しきれなくてその場に情けなくも吐いてしまった。

 

「十代目っ!」

「沢田殿!?」

 

獄寺君が俺と同じように膝をついて背中をさすってくれたり、バジル君が俺を守るように一歩前へ出てジルを睨みつけた。

雨の匂いと錆びた鉄の匂い、いや魚臭い…かな。

気が狂いそうになる。非現実的なこの空間から早く逃げたい。

皮膚にかかる生暖かいアレが、嘘であってほしい。

 

「丁度いい実験だった」

 

まるでポップコーンが弾けるのが当たり前みたいにジルは平然と言ってのけた。

いや、むしろ楽しんでいる風さえ感じられた。さきほどまで生きていて襲い掛かろうとしていたアレ。がいまや、あの姿。

さっきまでアレが生きていた証はどこにもない。

生臭い血を体中に浴びて紅い瞳が爛々と輝く。

 

「貴様等に替えがいようがいまいがそんなもの同じだ。全て、こうしてやる。次はないと思え」

 

脅し、じゃない。あれは警告だ。

ジルがやると言ったら本気で殺すつもり。今のはパフォーマンス。次は実践。

あの異能の力は身をもって体験したことがあるからわかる。あの骸との戦いを終えた俺とリボーンに攻撃を仕掛けてきたときのジルの能力。

いや、正確には裏のジルがしてきた攻撃だ。その証拠にさっきのジルの瞳は紅かった。あの裏側の人格が出ていたんだ。

 

「………天姫……」

「ああ、顔についちゃったね。ごめんね、さぁ帰ろうか」

 

ガラリと印象を変えたジルはカッパを着こんだ、顔はわからないが見知らぬ人物の頬をそっと拭いさりながらにそう優しく言い直した。もう興味は失せたかのように俺たちの存在すら忘れたかのごとく、ジル達はこの場から去った。

 

後に残された俺たちに追いかける気力なんかない。

戦意喪失してるも同然だったから。

 

「…リボーン…」

 

力ない俺はすがる想いでリボーンの名を呼んだ。

けどリボーンは冷たかった。

 

「ツナ、お前はジルって名前に囚われすぎじゃないか?」

「……え……」

「…………俺は先に帰る。お前らツナを頼む」

「リ、リボーンさん!?」

 

帽子のつばで顔を隠すとリボーンは、ぽてぽてと歩き出した。

それから俺は獄寺君に支えてもらいながら家路に着いた。山本はディーノさんに付き添われ病院へ向かう学校で別れた。バジル君は別件で親父と用があるらしいので途中で別れた。身辺には気を付けろと警告されて。

そして俺は家の玄関の前で獄寺君と別れた。

部屋まで連れて行ってくれるという彼の申し出を断って。

 

「十代目……」

「…………ゴメン、今はいっぱいいっぱいなんだ…」

 

とにかく寝たい。

誰かに気を配れる余裕がなかった。

 

「……そう、ですね。俺も正直、信じられなかったッスから」

「………また、明日…」

「……はい、……また明日」

 

家に帰るまでその言葉が頭をずっと、ぐるぐる駆け巡っていた。

リボーンは翌朝になるまで帰ってこなかった。

天姫side

 

すっかり修復された部屋にて、さっそくお説教を受けた。

柔らかい四人掛けのソファに真ん中に座らせられ、ホカホカのお風呂に放り込まれ念入りに自分で斬った部分を手当てされ、はやっと一息つけると思った。

でもそう簡単にいく話ではなかった。

またも、ヴァリアーの面々に心配をかけてしまった罰としてしばらくアップルパイをお預けとなった。まー、今回はしょうがない。大目に見てやろう……っていうと思ったか!

誰が言うか!!こっちは自分の命かけて助けに行ったんだからもっとアップルパイ食べていいわよご褒美とかあるべきなんだ!

という訴えをゴーラちゃんがお茶を出している最中にルッスーに訴えた。

でも逆に泣かれたしまった。

 

「スク助けただけなのに泣かないでよ。ってか罰とか必要?」

「少しは反省なさい!こっちは死ぬ思いしたのよ……うぅ…」

 

ハンカチがずぶ濡れになるまで泣いてるルッスー。

 

「うししし、お姫ってばやること成す事サイキョーじゃん王子の次に!でも王子はそこまでアホじゃないから」

「でも反省は必要だよ。天姫は独断で動きすぎ。物事考えなさすぎ単細胞だし猪突猛進だしもっとまわりの人の気持ち考えなよ」

 

ベルにマーモンも酷い。マーモンのファンタズマでさえ、コクコク頷いている。

 

「俺は素敵だったと思う」

 

レヴィ、こんなときだけ君の存在が嬉しいと思ったことはないよ。

 

「あの蹴りを俺にもくれ!」ドカッ!!

 

前言撤回。お前にはゴーラちゃんの蹴りが贈られた。

 

「お前は、大人しくするって言葉を知らないのか」

 

あの、暴れん坊のザンザスからまともな事を言われ、

 

「天姫、次こんなことしたら……」

 

隣の凪が珍しく恐ろしいことを言おうとしてる。

彼女が纏うオーラがどす黒いものがある。

 

「そうですよ!あんな無茶ばかりして、僕の心臓を止める気ですかっ!?」

 

嗚咽まじりに抱きついてくる骸はいるし。

 

「天姫は昔から、秘密主義者」

「柿ピーの言うとおりらって。天姫、お転婆すぎだぴょん!」

 

ああ、千種と犬の心の中の私のイメージはガタ崩れだわ。

骸はごりごりと私の頬を削るかのごとく擦り寄ってくるしウザイったらない。

あれ、そういえばいつの間にこんなに人数増えたんだっけ……。

……ん…………ちょっと待て?………なんかいちゃいけない人が三人ほどいるような。

 

「ちょっと、待て――――!?」

「なんですか?大声出して。夜なんですからもっと小さくしないとご近所迷惑ですよ」

 

骸がしぃーと人差し指立てて静かにと言ってくる。

常識を語るな普段非常識の塊が何をいうか。

いやいや!そういうことじゃない。それは突っ込むところじゃないぞ私!

 

「そういう問題じゃねぇだろ!?なんで骸たちが此処にいるのさ!凪は分かるけど」

「なっ!?酷いです、天姫。クロームは良くて僕等は駄目だなんて……!」

「クローム?」

「私の名前。でも天姫は凪って呼んで。天姫だけ呼んでいいから」

「そ、そう?…じゃなくて、骸に犬に千種。なんで君たちがヴァリアーの皆と茶を飲んでるのかが聞きたいんだよ私は」

 

あやうく凪に流されるとこだった。私の睨みで骸とルッスーはそれはそれは息ピッタリに

 

「天姫の無茶振りを語りだしたらで意気投合しまして」

「すっかり、仲良しよ☆」

 

てへ☆って舌だすなよ。

ルッスーサングラス割ってほしいんですか。今なら無料でやってやろう。

でもイタイ事に気がついた……。こうなった原因の元って…。

 

「………私が原因か!?」

「やっと自覚したのか…」

 

ため息混じりに言われたザンザスの言葉が、グサッと突き刺さった私でした。

その日はみんなでガヤガヤして結局骸たちは泊まって行きました。

夜、骸が部屋に侵入したり、

一緒に寝てた凪が撃退したり、

ザンザスが乗り込んで憤怒だしたり、

ゴーラちゃんが私を抱えてまた脱出しようとしたり、大変だった。

正直に言おう。寝れるわけないじゃん。

次の日の朝方に、散々

 

「天姫、天姫、天姫ー!」

 

とひたすら連呼する骸を三叉槍を装備した凪が叩きのめして、

千種と犬が白目向いた骸を引き摺りながら根城に帰っていきました。

ふぁぁああぁ………

欠伸しながらバイバイと見送り、隈ができた目で今日の霧の試合見てきます。

 

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