闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的60続・それぞれの決意

獄寺隼人side

 

あいつの夢は今でもウサギになることなのだろうか?

公園のブランコで俺は一人座っていた。

 

あの頃の俺はジルの容態に気をつかい煙草を吸うのは控えていた。

俺のせいでアイツに何かあったらと思うと、煙草に手をのばすことさえ、嫌だった。

だが、今アイツは俺の側にいない。

その時感じた感情がいまあるとは言い切れない。

 

だが、今だ俺は煙草に手を出していない。

なんとなく、林檎を食べてしまう。

アイツがねだったアップルパイなんかも、甘いものなど普段口に入れたりしないのだが、今はそれが当たり前のような生活。

アイツが好きなものを俺も好きになりたい。

そんな餓鬼みたいな感情が蠢くのだ。

近づけない距離があるなら、少しでも同じもので同じものを共有したい、近づきたい。

強く、想う。ふと、思った。

 

あいつが言っていた自分の夢は誰か大切な奴から離れたくないって事なんじゃないか?

 

愛情を注がなければ死ぬ。

人に愛されることに飢えている証なのでは?

 

只の推測だがもしそうのだとしたら。おれの考えは一つだ。

もし、俺が生まれ変わるならアイツとともに同じウサギになってやる。

同じもの同士なら、寂しくない。

同じ時間を生きて同じ目線で同じ立場で居られる。対等な関係で生きられる。

あいつも寂しくないし俺もお前がいるのなら満足だ。

まぁ、ホントは人間でいたほうが何かとアイツ、天姫を助けられたりするからな。

 

「よっしゃっ!」

 

考えるだけじゃ駄目だ。あいつに会って伝えなきゃな。

 

「待ってろ。天姫」

実は隼人を見守る人間が二人いた。

 

「若いねぇ~。女の事で悩むなんてな」

 

どこか茶化したような言い方をする白衣を着た男、Drシャマル。

そしてその男の隣にスッと並ぶ長身の美女。

 

「大人へ近づくって事でしょう。あんたみたいな女タラシじゃなく立派な大人へね」

「……ビアンキちゃん」

 

ビアンキは隼人へと視線を向けたまま、礼を述べた。

 

「礼は言っとくわ、シャマル。隼人を鍛えてくれて」

「……気紛れだ。ただの」

「そう、気紛れねぇ?」

「大体、知っているのか。今夜行なわれる事」

「ええ、知らないふりするのも苦痛だわ。何よりあの子のことだもの。心配よ」

 

『心配』、この一言にどれだけの想いが詰まっていることか。

 

リボーンから教えてもらっただけで直接ジルを見たわけではないビアンキ。

だが奈々ママ同様、彼女を心配する人間の一人であった。

あの入院先から消える事件からどのくらいの月日がたったか。

当初、病院から連れ去られたという情報は絶対に奈々には悟られるなとリボーンにきつく言われていたので、ビアンキは病院へ見舞いに行くという奈々ママを無理やりいかせまいと、それはそれは巧みな嘘で病院から遠ざけたが、それが長続きするわけでもない。

ジルが並盛から去ったという事実に衝撃を受けつつも、何も知らない奈々ママやフゥ太やイーピンらにどう告げていいものやらと考えあぐねいていた時、リボーンから『ジルの家族が現れて意識を取り戻したアイツを引き取りイタリアに帰った』と大胆に説明されたときは開いた口が塞がらなかった。

そんな嘘に奈々ママが納得するのかと焦ったが、案外あっさりとそうなの!?とリボーンに飛びついては泣いて喜んでいた。

意識戻らずあのままなのではないかと、どれほど苦しんでいたことか。

奈々ママは自分のことのようにそれはそれは涙をためつつ喜んでいたのを今でも思い出せる。

 

今、起こっている真実は奈々ママには必要のない情報。

ジルのボンゴレにとって重要な立ち位置は決して幸せなものじゃない。

一生を縛るそれは鎖の指輪で、他のマフィアにとって喉から手が出るほど価値があるものだから。

ビアンキは部外者だ。

ただ見守る側でしか立てないのがどんなに歯がゆいことか。

ジルを助けようと躍起する弟のことも、

まるでボンゴレというしがらみから逃れようとヴァリアー側に属するジルのことも。

 

ただ見ていることでしかできないなんて。

 

「神崎天姫ちゃん、謎めいた少女ってな訳か。無理矢理背負わされた宿命から逃れられず、将来ボンゴレに操られる運命にある不幸な娘。だが一生困ることはない。なんせ待ちに待ったボンゴレの宝だからな。大事にされる」

 

Drシャマルの言葉は間違った選択肢ではない。

そういう道もある。だがあの子は決して選ばないとビアンキはわかっている。

 

「あの子はそんな事、望まないわ。あの子には自由が似合うもの」

 

大空の名を持つ指輪に相応しい時期ボンゴレボス。

それがザンザスなのか、綱吉なのか、それはわからない。

ただ、その隣にいるのは彼女を束縛しない者だ。

あの子を守り、あの子の自由を守り、大空を翔る翼を手折らない、そんな人物がボンゴレ時期十代目に相応しい、はず。

 

「自由ねぇ。約束された道は自由ではないが…まぁ、結構お転婆だしな」

「放浪癖もかなりあるし。困った子だわ。でも、いないと寂しいのよ。当たり前にそこに居ると思わせるのが天姫だわ」

「それがまた続くことを願うよ。俺もな」

 

どうか、彼女にとって幸せな道が見つかりますように。

 

皆、言わないだけで願ってる。祈っている。

君が戻ってくることを。

 

日常の、中に。

 

笹川了平side

 

極限に困った!

なぜならば、俺を射殺さんほどの熱い闘志をもった、我が妹京子と三浦ハルが結託し

俺に闘いを挑んできたのだ。

青天の霹靂とはまさにこのことなり!

 

「お兄ちゃーん!ジルちゃん、ううん!天姫ちゃんの事今まで黙ってたなんて酷い!」

「ぐファッ―――!」

「なんで教えてくれなかったんですかぁ――!酷いですぅ―!くらいやがれなんです!」

「グフッ!?」

 

二人に間を挟まれ右ストレートに背負い投げ、後ろ回し蹴り、頭を掴み上げられ腹に数発蹴りを入れられかかと落とし。まともにかわすことさえ出来ないほどのスピード、パワー、そして俺を威圧させるほどの怒気。

 

「なかな、か、やるじゃないか!」

「嬉しそうな顔しないで!」

バコォ!「ぐえぇ!」

 

なぜか、フライパンで飛ばされる。走馬灯、俺がそんなものを感じてしまうなんてな。極限、……修行が足りん。

 

「勝手に倒れないで下さい!」

 

最後は三浦の目覚めの平手打ちを食らった俺。

 

 

事は数十分前に遡る。

俺はランボの見舞いにと病院を訪れたのだが、そこまではよかった。

だが、一言を言ったばかりに妹達は闘志むき出し襲いかかってきてしまった。

 

「あれ、お兄ちゃん?ランボ君のお見舞いにきたの」

「あれれ、京子ちゃんのお兄さん。はひっ、相変わらず暑苦しいですぅ」

「ふむ、なぜか貶されていると思うのは俺の気のせいか。極限、今日の為におれは勝利を誓いにきたのだ」

「相撲大会の事?」

「そうだ、なんせ。皆張り切っている。勝つか負けるかであの少女が戻ってくるかが決まるのだ」

「ええ、そんな重大な大会だったなんて。ハル、知りませんでしたぁ。ツナさん何も言ってくれませんでしたし」

「なんだ、京子。忘れてしまったのか?アイツだ。ジルだ」

「えっ!?」「はひっ?」

「な、なんだ、その反応は?」

「…だって、リボーンちゃんはジルちゃんはイタリアに帰ったって言ってたよ……」

「どういう事ですかぁ?ツナさんも親族に引き取られたって言ってました…」

「なぬっ!?」

「説明してくれるよね?お兄ちゃん?」

「納得するまで帰しませんから?」

 

俺は極限!女子二人に恐れをなし、全てを喋ってしまった。

そして冒頭に至る。

顔を両手で覆い悲しみに耽る京子に暴走娘が寄り添いながら俺をキッと睨みつけてくる。

 

「なんで黙ってるの?みんな酷い…」

「可愛い妹を泣かすなんて、どんなデストロイですかっ!?」

 

むはや、虫の息だが半分以上はお前達のせいだと言いたい。

そしてデストロイはお前だとも言いたい。

 

「おしゃべりだな、了平」

 

おお!救いの女神ならぬ、救いのちびっ子登場だ。

 

「あ!リボーンちゃん!」

「はひっ!?いつの間に」

 

ぬぬ、俺も奴の気配に気づかなかったぞ。

さすが沢田の家庭教師だ。

 

「京子、ハル。お前ら。抵抗ないのか?急に成長するなんて人間じゃねぇかもしれないんだぞ。変だと感じないのか?」

 

異様であるとちびっ子は言うのだ。

俺は変とは思わなかったが、京子や三浦ハルは普通の女子だ。ちびっ子の意見に賛同するかと思った。だがその予想は違った形で崩れた。

あの、大人しい京子がぎゅっと握りこぶし作ってはちびっ子の意見に猛反発する様には我を疑った。

 

「全然そんな事思ったことないよ!!むしろいつも守ってあげたい妹みたいな存在だったもん!」

 

それについで三浦ハルも突拍子もない話を続けた。

 

「そうですっ。ジルちゃん、いいえ。天姫ちゃんは魔女っ子なんですぅ。

恐ろしい呪いを受けて子供の姿にさせられていたけど、呪いが解けて元の姿に戻ったんですよ!ハルは天姫ちゃんが魔女っ子で魔法界から追い出された身でもそんなの怖くありません!むしろ大好きですぅ!」

「えっ!?天姫ちゃんって魔女だったの?」

「ハイ!天姫ちゃんは悪い悪い魔女のおばあさんに邪魔だからと追放されてしまった魔法界のお姫様なんです。きっとそうですよ!」

「わぁ~!お姫様だなんてピッタリ!私も普通の女の子じゃないなぁって思ってたの」

「京子ちゃんも感じましたか?天姫ちゃんのすごいオーラが!」

「うん。だって天姫ちゃんすっご可愛いもん。だから私たちが守ってあげなくちゃ!」

「そうですね。だって友達ですもんね!」

 

何処からそんな設定持ってきた!とツッコミしたくなったが俺の存在すら無視されているようなので俺もあえて言わずにいたものだ。

しかし俺も驚いた。

まさかあの極限ちびっ子娘がまさかの魔女っ子だったとは!それならば幼児から同年代へと変身を遂げたことにも納得がいくというものだ。

 

「「だから、私たちも相撲大会いくね!」いきます!」

「却下だ」

「「えぇぇぇえええええ!?」」

 

ちびっ子によって何とか収拾はついた。

ちゃんと天姫という少女を二人の前につれてくると約束して。

 

だが、リボーンは内心笑っていた。

まさか二人がアイツをすんなり受け入れるなんてな。

散々悩んだ俺が馬鹿みたいだぜ、と。

黒耀メンバーside

 

凪はさっきから落ち着かない様子であっちをうろうろ、こっちをうろうろ。

骸はさっきから黙ったまま動かない。

そして二人は同時に同じことを感じ取った。

 

「骸さま。なんだか天姫と交信しても全然答えてくれないの」

「クロームもですか。僕も同じ結果です。なにか天姫の身に起こりましたね」

 

さっきから二人は天姫に対し連絡をとっていた。

そこへ犬が羨ましそうな声を出す。

 

「二人してずるいびょんっ!オレも天姫と通信したいら!」

「…犬、それは普通できないよ」

 

千種だけはこのメンバーの中で常識ある人間だった。

骸はキリッとした表情で語る。

 

「千種、僕は真面目に言っていますよ?普段なら何か『うっとおしい』とか

『ひまひまぱいなぽー』とか返事をしてきますが今はまったく返事が返ってきません。

これは非常事態です!」

「骸さま、『ウザすぎ』とか『近寄ると私もパイナポーになっちゃう』とか『凪の方がすごく頼りになる』とか色々言うの。いつも愚痴ってくる天姫が何も言わないなんて、おかしいもの」

 

クロームのズバズバとした言い方に千種はフォローを入れた。

 

「クローム、骸様しょぼんでるから」

 

だが、クロームはまったく骸のことなど気にしたそぶりもなくはっきりと言い切った。

 

「でも、ホントの事だもん。天姫は嘘っぽい言葉は嫌いだって。だから私は正直に話すの」

「でも、天姫も俺らに嘘ついてたびょん!」

 

犬の咬みつくような言い方に骸もさきほどまでへ垂れていたパイナポー頭をシャキーン!とさせて、犬に続けとクロームに食って掛かる。

 

「そうですよ?クローム。貴女が大好きな天姫は僕達に嘘をついて裏の仕事をしていたんですよ!」

 

だがそれもクロームの前では歯に立たず。

 

「でもそれは骸さま達を育てる資金を稼ごうとしたって言ってた」

「!?」

 

確かに正論。そのお金があってこうして骸たちは生きているようなものだ。

現に天姫がいなくなった後の生活費は彼女が骸たちの為にと貯金しておいたお金で生活できていたの事実。どこまで天姫の愛情により包まれた三人。

 

「骸様の負けです」

 

今度こそ、骸はズーンと膝抱えて隅っこの方に沈黙した。

だがそれもあっという間に復活することになる。犬の

 

「骸様!オレも天姫と通信したいれす!」

 

という熱い熱い要望に応えて!

 

「クハハハハハハハ!いいでしょう。その夢叶えてあげますさぁ、こっちに来なさい」

 

そういう骸の右手にはあるものがあった。

 

「……骸様、なんれ、ハサミ持ってるですか?」

「決まっています!僕とクロームが天姫と交信できる理由は二つあります。一つは天姫への深い愛情!これが無くては話になりません。そして!!二つ目!僕をよくごらんなさい。気がつくでしょう?」

 

よくよく目を凝らしてみても何もいつもと変わらないふんぞり返った骸である。

犬は戸惑いながら首を横に振った。

 

「………………わからないびょん…」

 

すると骸は可笑しそうに吹いた。

 

「クハッ!駄目ですね。こんな簡単な事も分からないのですか?クロームも僕と同じですよ?」

 

クロームと骸の共通点。

意地悪なところ、上から目線なところ、Sッ気属性なところ、ほかにあったかと犬は一生懸命二人の共通点を探す。そしてある点に気が付いた。

気が付いてしまった!

 

「…まさかっ!?」

「気がつきましたか?そう!髪型です。僕達が天姫と交信できる二つ目の理由は髪型にあります。さぁ、そうとわかったら……」

 

そういうな否や、先に動き出したのは真っ青な顔で駆け出した犬であった。

 

「いやれすっ!?」「待ちなさい!?犬!」

 

二人は無邪気に追いかけっこを始めた。

しばし、見守っていたクロームと千種であったが一向に終わらないので置いていくことにした。

 

「……………千種、行こ」

「…………ああ…」

 

先を歩き出すクロームに千種は先ほど気になった件を訊いてみることにした。

 

「ねぇ、さっきのホント?」

 

天姫と心の交信ができる技の条件が、一つ天姫への愛と、もう一つ、骸と同じパイナポーヘアーにしなければならないという話の件である。

これが本当ならちょっといいなと羨ましがっていた千種には難易度高である。

主に、パイナポーヘアーという点で。

 

「半分ホント。私の天姫への愛は骸さま以上だし」

「…ふうん…」

 

パイナポーヘアーは置いといて、天姫に対する愛情なら自分も負けていないと思ったが、言うとまた地獄耳な骸が五月蝿いので黙ることにした千種だった。

 

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