それは…サルビアとラベンダーな触れあい。
※
水曜日 日本庭園デート
ディーノと九代目、午後はヴァリアーメンバー。
「…様になってるな。天姫」
「うん、綺麗だよ。天姫ちゃん」
着物を着た天姫。さすが何を身に纏っても似合ってしまう和美人というやつだ。
天姫は褒められ嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます。なんだか場違いな感じしてたんですけど。おまけに高そうな着物まで着せてもらっちゃってホント無駄に金ありますね。マフィアって一体どんな内容で金稼いでるんですかね。庶民な私にはとてもとてもまねできませんよ」
「いやいや、実は君の着物姿ぜひ拝見したいと思っていてね。機会ができてわしも嬉しいよ」
孫ができたようだと目を細めて笑うおじいさん。
天姫が笑顔で嫌味を言っているというのにまったく効果なし。
ホクホク笑顔で「娘ってのはいいねぇ~」とまで言う始末。
「しかし、着物ってのは動きにくそうだな。俺には無理かもしれないな」
「ソウデスネ、どうせだったら一回着物でスッ転べばいいとおもいます」
「……なぁ、天姫。俺の事キライか?」
「………記憶にないので好きとか嫌いとかいう感情はありません」
「……」
ちょっと視線逸らして言われた台詞にディーノはショックを受け石化した。
「どうして私に関わろうとするんですか?私には貴方達と過ごした記憶はない。
なのに皆さんはこうして一緒に過ごすことで思い出すことがあるかもしれないといいます。どうしてそこまでされるんですか?はっきり言って無駄だと思います」
「っ!?」
「天姫ちゃんはそう、感じるんだね?」
動揺するディーノとは反対に九代目は落ち着いた声で問うた。
天姫1はコクリと頷き返して自分の考えを語り始めた。
「はい失礼な事だとは思いますが。そちらの事情である『虚像の花嫁』としての責務。
それは記憶があった時に私が契約したと聞いています。ですが私にはそのような契約を結んだ記憶が一切ない。これは今の私では勤まらないものと考えられます。それにそちらの昔の文献や今までのボンゴレのなしてきた偉業を調べさせて頂きました。初代蒼龍姫が現れたのは初代Ⅰ世の世だけ。ならば、今までのボンゴレを支えて築き上げてきたのはその世代の人間です。過去の伝説化した力に頼るのは虫のいい話では?貴方がたには有り余る名誉と栄光、誰もがボンゴレの力に跪いている現状があるというのにこれ以上の強大な力をお望みですか?『虚像の花嫁』というおとぎ話のようなものに貴方がたは踊らされているだけに過ぎないと思いますよ。もう私も下らないやり取りに巻き込まれるのはゴメンです。そんな事に私を巻き込まないで頂きたい。はっきりいって迷惑なんですよ」
一切感情がない冷めた声で天姫はキッパリ言いきった。
それにディーノが信じられないとショックを受け声を荒げ叫ぶ。
「天姫……そんな、本心からじゃないだろ!?」
「………これ以上語る必要性がありますか?」
だが天姫の意思は固かった。いや意固地になっているとも思えた。
そう、これは天姫の意地なのだ。
大切にしてきた相手を傷つけることが分かっていながらそうするしかないと半場諦めかけている目の前の少女。その真意に気がつかないディーノはただただ戸惑うばかり。
「天姫っ!」
だがそんなディーノに待ったをかけた人物がいた。
「ディーノ!」
「…じいさん…?」
九代目である。彼はディーノを視線と言葉で窘めにかかる。
「よしなさい。レディにすることではないよ。天姫ちゃん。今からいう事は耄碌爺(もうろくじじい)の戯言と聞き流してくれないかな?」
そしてそっぽを向いた天姫に優しく話しかけた。天姫はだんまりを決め込む。
「……」
「確かにわしが言い出さなければ君はディーノの下で幸せに暮らせていたかもしれない。こんな争いに身を投じることもなかったはずだ。でもわしの超直感は言っていたんだ。君が何かボンゴレに変革を与えてくれると。永い時間の中で変わってしまったボンゴレに新しい風を運んでくれるとね。決して、君の力目当てでこのマフィアの世界に呼んだわけではないんだ。それだけは本当だ」
「………」
「よし!一人ごとは御終いじゃ。さて天姫ちゃんの大好きなアップルパイを用意しているんじゃ。一緒に食べるとするかい?それともわしとディーノだけで頂いていいのかな?」
九代目はワザとらしく部下にわざわざイタリアの有名なパティシエに作らせたというまるで宝石のようなアップルパイをこれ見よがしに天姫に見せつけた。
そっぷ向いていた天姫はそれを釣られガン見してしまう。
「………」(おいしそう)
ゴクリと喉を鳴らせるが、ハッと我に返りまたそっぽを向く。
だがいい感じに焼けているパイ生地の匂いにうぅぅ~と唸る。
九代目はニヤニヤして最後
「うん?もしかして嫌いかな?だったら「食べます」そうだね、一緒に食べよう!」
「…クッやられた………おっきいのがいいです」
天姫のつぶやきでディーノ復活。
「!?よ、よしっ!俺がデッカイの切ってやるからな!」
「でっかくないとダメだから」
『ディディ』と小さく付け足すように呟いて、ディーノは「!?」と高速で振り返ったとか。でも天姫は口笛吹いてアップルパイにまっしぐらでした。
※
午後は入れ違いでウ゛ァリアーの皆さんと面会。
いきなり恒例巨体ロボに抱っこされました。
うん久しぶりだねゴーラちゃんに抱っこされるの。
違和感なくなってきてるのは末期症状と冷静に分析する私ではあるが先ほどはしてやられてしまったが今度こそはうまくやらなくては。
「とりあえず降ろしてそしてなんか話すことありますか、オカマさん」
「嫌だ!天姫ちゃんってば!オカマさんなんて品のない言葉使ってワザとらしいわよ!?それ演技でしょネ!?演技なんでしょ!このルッスー姉さんの目は誤魔化せないわよ!」
「オカマ黙れ」
「めぎょっ」
「御姫が怒った怒った。イシシシ馬鹿丸出しわかりやす」
「そうだねベル。天姫の下手な芝居見るよりも僕はお金数えていた方が有意義だし」
「天姫女王様っ!!もっと俺をいたぶって!」
「レヴィキショいキモい消えろ」
ああ、スクアーロが血走った眼で睨んでくる。鮫みたいにかじられそうな勢いだわ。
さすが鮫。ホントに鮫と戦ってこい。
「お前、俺に生きろといったよな゙ぁあ゙。なのに言い逃げもとい胡散臭い演技してんじゃねぇぞぉぉぉおおおお!」
「ロン毛血祭男はずっと私のいない所で延々一人で血祭しててください。視界に入れたくないんで」
「あ゙あ゙ぁ!?」
「目が充血してます、目つぶししてあげましょうか」
ぷすり
「おぁあああぁぁぁぁぁぁぁあああっ!」
「ダメよ!?スクアーロムカついたからって剣振り回さないでっ?!被害が私たちの方にきてるからっ!」
わざとらしく傍観していた彼には『さん』づけをしてみる事にした。
「ザンザスさんザンザスさん帰っていいですか」
自分で言ってぶるっと鳥肌が立った。墓穴掘ってしまった自分。
「………帰すか、アホが」
阿保発言撤回しろ馬鹿ザンザスめ。
何々遊んでる風に見えるとか?これでも必死になのに。
心外だわ。私は真剣その者です。
「…………、ハッ!?私の変身時間が解けてしまう!?実は三分間しかこの場所にいられないのだ。とっくに三分過ぎているので私は星に帰ることにするんじゃ!」
しゅた!と手を上げてさよならの挨拶をする私と
逃さん!とマジ顔な彼が逃げようとする私の顔を遠慮なしに掴む。
「みょ!?」
ぐみゅっっと頬を片手でつまれタコみたいにされた。
マジで遠慮なし。
「天姫」
「ほれひひゃい」(離せ)
「ボンゴレをなめるな?お前が考えるほど騙される奴らじゃないというか、すでにバレバレだ」
「………………」
バレバレだろうが何だろうが私は貫き通すと決めたのだ。
虎と龍のにらみ合いは続く続く、みたいな。
私にとって知られるって怖い事なんだよ。
君たちにとっては無意味かもしれないけど私はそうなんだよ。
だから関わるなって言ってるんじゃん。理解してくれよ。
いい加減ウンザリなんだよ!
やられたらやり返せが私の信条なので素直にやり返した。
ぐみゅ!
後ろのほうでヴァリアーの方々が面白いものが見れたとかビデオカメラまわしてたりしてたので、
今現在進行中、私によってタコ状態にされている彼は
「!」
多分、ドカスがぁ!って言いたいはず。
でも言えないだって私が彼の口もとつまんでるから。
来る、憤怒が。ザンザスの顔色がどんどん変わっていく…。
よし好機なり!じゃあ、私はこのへんで~。
逃げ足だけは早い私は隙をついて逃げ出した。去り際ゴーラちゃんに手を振ることは忘れずに。
(サルビアの花言葉は『家族愛』そして ラベンダーは『疑い』)
※
俺も関係あるのか、神男。
ハァ?どうせ有り余ってるならさっさと吐けや!だと。
お前の仕事量あとで倍に増やしてやるからな。フッ!泣いて拝んでも許してやらん。
だいたい、お前に言われなくとも語ってやるさ。一晩と言わず一週間でもな!
フフッ。だから泣いて叫んで逃げようとしても無駄だ。俺から逃げれると思うなよ?
千日紅を君に贈る。
※
揚羽side
俺は、俺の為に神の眷属となった。
『神の眷属』なんて聞こえはいいが神男の部下になったという事だ。
ひつじと同じ立場…役職名で言うなら補佐官って所か。俺にはそんなつもりさらさらないが。俺は利用しただけだ、あののらりくらり男に黙って従うつもりは毛頭ない。
今の立場は非常に便利なんだ。天姫と狗楽と共にいるには。
俺は助けたいなどというお決まりの台詞を言うつもりはない。
俺が望んだことを形とする為その道を選んだ。
それが他人の目から助けるという行為にみられるのならそう思えばいい。
所詮、価値観なんてものは人それぞれだ。
『柱』などという、意味わからないただの人間が近づくことのできない領域に彼女はいる。
人間は齢100年と言った所生きるが『人間』ではない天姫は俺とは違う時間軸に存在する。俺はどんな形でも彼女の側を離れたくない。先に老いる俺をみられたくない。
死という最大の壁が存在するのなら、乗り越える。
それが人間を捨てることになるとしても。
立場が違えど人間を捨てることで俺は彼女と同じ土台に立てた。
以前、神男にこんなことを言われた時があった。
「おまえさ、歪んだ愛だよな。それって」
「ハッ!俺が選んだ愛情の形だ。文句いわれる覚えはないな」
笑い飛ばしてやったさ。あまりにも笑えたからね。
「こうも、酔狂な人間がくるとはね。長年麗しい神、やってるけどおまえみたいなの見たことないわ」
「当たり前だ。俺は一人しかいない」
「そういう意味で取るのかよ?!……おまえ、後悔しないのか。永遠を生きるという事だぞ」
契約を結んだ後で聞くなよと内心呆れたものだった。
奴なりに気を遣ったという事なのだろうか。後になって考えてもどうでもいいが。
俺は微笑すら浮かべ言い放った。
「後悔なら天姫の側を離れてしまった時にしている。むしろすがすがしいくらいさ」
そうだ、天姫だけでなく狗楽をも手放す事なんて考えられない。
親父がどうとか祖父とかもうこの際どうでもいいや。
それよりも大切な存在が出来てしまったんだ。
どちらを優先させるかなんて考えなくてもわかりきっている。
視界をさえぎる仮面は俺を縛る証だ。
けどこれで彼女たちの側にいられる。もう何も知らないままの俺じゃない。
守りたいものを守れる『力』がある。それはとても幸福な事だ。
天姫、狗楽。俺頑張るよ。
お前たちが互いの為に『対価』を支払った分俺は俺自身を『対価』にして前へと進む。
それが俺にできる唯一の愛し方だ。
(千日紅の花言葉『変わらない愛を永遠に』)