私は返せないほどの気持ちをもらった。みんなの愛で天姫が私を思い出してくれるならなんだってする。骸さまを生贄にしてもいい。えっ?神さまいらないの?
けっこうおもしろいよ。側にいると飽きないでいいもの。
……そんなに全力で拒否するなんてやっぱり骸さま人気ないんだね……。
私からの天姫に対する愛はアザレア。
※
クローム髑髏side
天姫は風のように颯爽と現れて私に光をくれた。
荒んだ家庭環境の中で育った私をかまってくれる人なんかいなかった。
学校も家も私の居場所がなかった。
だからいつ死んでもいいって、自暴自棄になりさえしてたの。
事故にあった時、ほっとした。やっと、『生』から解放される、そう思って。
でも、天姫は私に死ぬことで解放されちゃいけないって。
貴女には同じ想いをもつ仲間がいる。
家族になってくれる人がいる私もそう。
同じ境遇を持つもの同士でいればたとえ絶望しても、一人で悲しまなくていい。
自分の内に溜め込まなくていい励ましてくれるから。
解決策が見つからないなら共に探してくれる。
凪は今までそういう人が側にいなかっただけでなら、そういう環境があるのならもう一度試してみてもいいんじゃないかなって。
私の意志を汲み取って答えをくれるのではなく、貴女の意思で決めてと夢の中で天姫はふんわり笑った。
道を示してくれたのは天姫、その道に進むと決めたのは私自身。
ヴァリアーとの問題が終わったら一緒に暮らせるよ。
そういって、私の頭を撫でてくれたのに。
なのに、天姫は。
「……天姫」
言いなれた名前を言うのにこんなに緊張するなんて。
見た目は同じでも、違う。天姫はあんな言い方しないもの。
でも、本当は信じてるの。天姫は絶対忘れてなんかいないって。
天姫が私を忘れるはずがないって思いたいから。
「クロームちゃん、君もまめだね。私の所に来ても意味はないのに。それほどに記憶が戻ってほしいの?でもごめんね、私は貴方たちを知らないから」
夢の中で笑った天姫は幻で
あまりにも違うのは『凪』そう、呼ばなくなったこと。
天姫だけの特権だったのに。寂しいよ。
『凪、おいで』
最後の私『凪』を知っているただ一人の友達。
……ううん、友達以上だ。
もっとずっと大切なの。
お願い、彼女を返して下さい。
大事な家族で大切な友達を。
(アザレアの花言葉。『愛されることを知る喜び』)
※
あら、こんにちは!急にジルちゃんが外国の親戚の方に引き取られたって聞いて私すごく悲しくて…え?ビデオレターでジルちゃんに映像を届けるですって?
まぁまぁ!じゃあみんなを呼んでくるわね。えっ?私が代表ってことにしてくれ?わかりました。
元気ですか?ジルちゃん。私はすごく寂しいです。貴女がいなくなったこの家は明かりが消えたようよ。でも、貴女の幸せが何より一番だからね?テーマが『愛』だそうなのでこの言葉を贈るわ。
もちろん、私たちが貴女に届ける愛の言葉は母子草よ。
※
土曜日綱吉自宅にて。
ランボ、イーピン、フゥ太、ビアンキ、ハル、京子、笹川兄、奈々ママ、家光
「いらっしゃい!ツナから聞いているわ。天姫ちゃん」
「こんにちは、お邪魔します」
「天姫っ!いらっしゃい!」
「ちゃおっす、天姫」
「よう、天姫!元気してるか」
「ちゃおっすです。リボーン君、沢田君。声大きいです、沢田さん」
家にいる時はなんか親父くさい格好してるんですね。沢田君のお父様は。
「ガハハハッ!」
「天姫っ!」
「天姫姉!」
上から、ランボ君、イーピンさん、フゥ太君ですね。
しかも、みなさん。近寄ってくるから前へ進めないんだけど。
子供達がガヤガヤと足元で遊ぶ。
元気がいいですね。転ばないか心配です。
部屋に案内された部屋には女の子二人となんか熱い少年一人。それに棘がありそうな美人。この3人が揃うとろくなことがないと思った私だった。
なんで京子の兄までいるのか、その意味が解らない。
「天姫ちゃんっ!」
「久し振りですぅ~!」
「極限!元気そうではないか」
「天姫、久し振りね。顔色もよくなってるし」
「ええっと、初めまして。獄寺君のお姉さん。今日はお招き有難うございます」
「あら、ビアンキ姉って呼んでちょうだい」
なにやら今日はここでパーティ?ですか。
賑やかメンバーもとい、予想外メンバーじゃないですか。
「私たち初めじゃないよ?もう何回も会ってる友達なんだから」
「そうです!ハルは天姫ちゃんが魔女っ子でも気にしませんから!」
「あ、そうですか?魔女っ子だと名乗った覚えはまったくないんですけどね。みたいんだったら見せてもいいんだよ、私のとっておきの呪い」
だれが魔女っ子だ。
いつ私が魔法のステッキ持ちながら呪文唱えた?
不思議なダンスとかしてそれが魔法発動の条件よ♪つった?
「ふむ、ならばお前のその得意な呪いとやら見せてもらおうかっ!?」
理解できてない空気読めない人間一人発見。
「えーと、そこの芝生メットは黙れって感じです」
「ぐふっ!!?」
近くにあった、ぬいぐるみ勢いよく叩きつけてやった。
どうだ私の呪いは恐ろしいだろう!
「さあ、貴女はここよ?」
美人ねーちゃんもとい、ビアンキに案内されて席につく。
「今日は女子会なんですぅ!天姫ちゃんもぜひ、誘おうと思って」
「なぜか、そこに男がまぎれて居ますよ」
「お兄ちゃんは今日は特別に女の子なの!」
「全然女子には見えません」
目、おかしくありません?病院行ってきたほうがいいッスよ?
「暗示すれば大丈夫よ」
「ビアンキ姉さん、その毒臭みたいなケーキなんですか?」
「これは暗示用のポイズンクッキングよ。殺傷能力は低いわ」
「いや、全然やばそうですから、それ」
「さぁ、天姫。暗示にかかりなさい。笹川了平は今日一日だけ、女子よ」
ジリジリ…
「了解です、芝生メットは今日一日華麗な女の子。なので暗示用のケーキは不要です!!っていうか殺さないで!?」
「……よかった、うまくかかってくれたみたい」
「さすがビアンキさんですぅ!」
「うん、うまく成功したね!」
「有無、よくわからんが良かったな。京子!」
なんだよ、この女子会最強じゃん。
なぜか、アップルパイ大量に食わされた。嬉しいけどさ。私の好きなものだし。
でも胸焼けしてきて後半泣きながら食べた。夕食はガヤガヤとみんなで食卓囲ってご馳走になりました。なぜか、子供達は私の周りを固め離れない。
「そろそろ、帰らせていただきたいんですが…」
「え~?ランボさん、もっと遊びたい!」(くいくい)
「イーピンちゃん、そんな顔しないでください」
フゥ太が私の背中に乗っかり甘えてくる。他のチビ達もくっ付いてきて離れない。
「天姫姉~。もっと遊んでよ?それに帰るだなんて言葉おかしいよ!」
「え?」
「だって、天姫姉の家はここでしょ?」
素直な子供の言葉だ。気にしなければいい。
だが、私には耐えられない。その純粋無垢な瞳が私を追い立てるのだ。
馬鹿なことしている私を視界に捉えて、醜い自分を自覚させられる。
「……っ…………すいません、私は帰らせていただきます。夕飯ご馳走さまでした」
おチビさん達の頭を優しく撫で私は足早に玄関へ向かった。でも外まで出てきたところで声をかけられた。
「いつでもいらっしゃいな。天姫ちゃん」
奈々さんだ、彼女は自分の息子を送り出すみたいな『母親』みたいに言ってくれた。
「……お邪魔しました」
私はペコリと頭を下げた。けど気配は奈々さんだけではなかった。
「お前は、俺らにしてみればまだまだ、子供だ。遠慮するんじゃねぇぞ」
だらっとした沢田君の親父さんは消えていた。その顔はまさに『父親』そのもの。
なんだその上から目線は。赤の他人にそんな扱いをしなくてもいいじゃないか。
私じゃなくて自分の息子ともっと話せばいいじゃないか。
「赤の他人にまで気を配るなんて、貴方も損な性格ですね。私には真似できませんよ」
ムカツクんだよ。親じゃないくせに馴れ馴れしい。
「その言い方はないんじゃないか?心配して言っているんだぞ」
吐き気がする。反吐が出る台詞だ。親なんて必要ないだ。私には。
パパだって、私の力欲しさにああなってしまった。結局、親なんてのは飾りだ。
頼れるのは己自身のみ。命を預けれる少数の仲間だけ。
「誰に対してその言葉を言っているんですか?貴方の子供になった覚えはありません。しかりつけるなら、貴方の息子をしかりつけてください。正直迷惑です。記憶などもうありはしないというのに、しつこく私を追いかまわし、私のペースを躊躇なく壊す。迷惑以外の何者でもありませんよ。それも貴方似ですかね?」
「なんだとっ!?」
ああ、それでいい。怒ればいい。
愛する者の為だけに行動すればいい。私だってそうだもの。狗楽の為ならこの身を捧げても構わない。それに殴れば気が済むでしょう。所詮、人はそんなもんだ。
八つ当たり所が欲しいんだ。だったらそれに当たればいい。
ただそれをすることで自分がどんなに馬鹿か惨めか後に思い知らされるのだ。大切な人を失った瞬間にね。
スローモーションのように伸ばされた拳はどのくらい痛いのかな、なんて目を瞑りながら思った。
……痛みがない。ちょっと、うっすらと視界を開けてみた。
「馬鹿娘が」
デコピン一発。
「うっ!?」
額に食らった。デコピンを。
「そういう事を口にするもんじゃない。だいたい、お前泣きそうな顔して、全然毒舌っぽくないぞ」
「は?」
何を言っているんだ。このおっさんは。額を抑えつつ後ろに下がった。
理解できない。新たな人種だ。ヤバい取り乱すな私よ。体勢を立て直すのだ。
「あなた!」
「あいたっ!?」
私が隠すことのできない動揺を感じているときにそれは起こった。
奈々さんがおっさん突き飛ばした。
そして、私は引っ張られる。
暖かな腕の中に。
「女の子にデコピンだなんて、何考えてるのよ!……まったく、痛くない?ああ、痛いのね?女の子泣かすなんて、しょうのない人!!」
泣く?誰がだ、ふざけるな。
デコピン一つ喰らっただけで?私が狼狽えるとでも思ったか。
冗談じゃない。
奈々さん、かばってくれるのはいいけど過剰に表現しなくてもいいですよ。
それに私は畏れられる類なんだ。
すぐに冷静な私が復活する。
良かった、これで隙を突かれない。
そうだ、先ほどのは不意をつかれただけだ。
もう問題はない。完璧な私だ。
そして、なぜ私は抱きしめられている。ぽんぽんと背中を叩かれた。リズミカルに。
「天姫ちゃん、大丈夫よ。そんな怯えた顔しないで?私は怒ってないわ」
怯える?誰がいつ怯えた。
「貴女はツナの為に言ってくれたのよね?」
勘違いも甚だしい。
私は自分の為に言ったんだ。
奈々さん、優しいのも問題ですよ。いつかそれが貴女に逆に襲い掛かってくるかもしれないんですよ?
情けなんてかけるもんじゃないですよ。
「泣かないでちょうだい、ジルちゃん」
「っ!?」
彼女の言葉を完全に私が認識する前に
バッと彼女から離れて私は身を翻した。
「奈々、おまえ」
「あら、私ったら、……なんとなくあの子だったような気がして……」
「……無意識か…」
「え?」
「い、いや。なんでもない」
「あの子もあの娘と同じ顔をしていたのよ」
「………俺と同じ考えか?」
「ええ、……ツナと会話している時、たまに見せていたわ。寂しそうな哀しい顔、親にすがりたくても出来ない子供みたいな表情をして」
奈々は切なそうに天姫が駆けていった方向を見やりぎゅっと彼女に触った手を握りしめた。家光は何も言わずに自分の妻の肩を引き寄せ、自分もあの少女が抱えるものが
自分が思っていたよりも根深く簡単にどうこうできるものではないという事を思い知らされた。
散々走ったところで、私は止まった。誰に言うわけでもなくただ声が出た。
「誰が、泣いてるって?」
そうだ、これは私自身に言っているのだ。嘘だ、私が泣くわけない。
私には不必要なものだ。親の愛情など。それにこの私が泣くわけがない。この私がだぞ?
だから、この頬に流れるものは『汗』に違いない。そうだ、これは『汗』なんだ。
「にゃおん」
誰もいない道路の真ん中でシロが座り込んでいた。
たぶん迎えに来てくれたんだろう。
帰りが遅いから心配をかけさせてしまったのだろう。
なんて主人想いな奴だ。
「ゴメン、シロ、帰ろうか?」
ふわふわとした毛並みのシロを抱き上げた。
「……ン…やめろ、シロ。顔を舐めるな!?」
ペロ
シロはやめようとしない。
「……やめろってば」
一向にやめない。
「…………やめろ……」
全然やめない。私はその場にシロを抱いたまましゃがみこんだ。
シロが証拠隠滅してくれるまで待つことにしよう。どうせ時間はある。まだこの世界にやるべきことは残されてるんだ。
少しくらい、立ち止まろう。今まで全力で走ってきたんだ。
息が上がるくらい走ってきたんだ。何を言われようとも、何を思われようとも。
途中で止まったって、いいよね。それくらいは許される、よね。
しょっぱい、雫が消えるまで私は、止まることにした。
(母子草の花言葉は『いつもおもう』『優しい人』『永遠の想い』)