沢田綱吉side
天姫の口からこの季節に花見ができるよなんて言われるなんて思わなかった。
だって、山の葉が綺麗な紅葉となり秋の訪れを知らせている今。
この時期に花見?なんでも神男さんが気前よく桜の花を咲かせてくれるらしい。天姫は嬉しそうに語っていた。
なので、急遽みんなに連絡をとり集まれる人数で花見をしようというになった。
突然の申し出にみんなは意気揚々とした様子だった。
みんなたぶん、花見を楽しみたいということよりも天姫と過ごしたいって感じなんじゃないかな。
現に俺もそのうちの一人……ってち、違う!
俺は天姫がハメ外し過ぎておかしなことしないように見張りとして同席するだけなんだから。それにリボーンとか絶対余計なことすると思うしな!
絶対、天姫が男子たちにちょっかい出されるのが嫌だとかそんなんじゃない。
俺は天姫の保護者、俺は天姫のストップ役……。よし、いつもの俺オッケーだ。
ってなわけで、気を取り直して。先に場所をとっておかなくちゃということで俺は天姫と一緒にみんなより先に約束の場所に訪れたわけだ。
秋を迎えた並森では見られないほど圧倒される花々だった。
そして、隣を歩く天姫はその一部に溶け込むほど、その……綺麗、だった。
歩く距離は近いし、元々の天姫は整った容姿をしているからまともな時はそれなりに綺麗だと思う。表情崩すと面白いけどね。
天姫はこの世界に留まることを選んでくれた。
それはきっとまだこの世界に後ろ髪引かれる存在があったから。
それがなかったら、天姫は元の世界に帰っていたかも。
実は気になっている。
天姫が誰のために残ったのかを。
勿論、皆って選択肢もあるかもだけど、きっと天姫に一番影響を与えた人物だ。
……俺、じゃないよな。……俺じゃない。と思う。
いや!残念がってるわけじゃなくて、ちょっと悔しいっていうか……。少なくとも俺じゃないってのはわかってる。だって、前に嫌いだって面と向かって言われたから。
あれは結構凹んだ。天姫はケロッとしてるけど俺は内心びくびくしてた。
天姫と会ったときなんて言えばいいんだって。
だから少しは気障ったらしい花束なんて渡したけど、それも拒絶されないようにっていう馬鹿馬鹿しい不安からあった。巧みに言葉並べて、信用させて、相手に好印象を与えようとして、それで俺は安心する。
天姫に近づける位置にいるって。
再確認できる。
色々と精神的に不安定になる彼女だ。言葉一つで信用するなんてない。
けど、一応俺たちには共に過ごした時間がある。だからそれをうまく利用して俺は彼女の信用を得ようと画策する。それが自分自身の為といえど。
目の前で楽しげに神男さんと戯れている天姫は俺の薄汚い心情など知ることもない。
これだけ、近くにいるのに。
「天姫、未成年の飲酒は禁止だから」
「私は永遠の20歳です」
「永遠だろうが何だろうが今は、未成年でしょ?」
俺よりも年上なのはわかってたけど、20歳ね。年齢詐欺だな。
でも俺には見た目よりも天姫の中身が若く見える。まるで同年代?
元々、子供っぽい性格なのかも。それはそうか。望んでいないとはいえ、一時は幼児で通してたんだからな。子供っぽいのはあたりだ。
「沢田君はあんな男になっちゃいけないよ」
大人ぶって俺を子供扱いしてくる天姫とかなんかムカツク。
天姫だって子供っぽい性格のくせして。
負け惜しみじゃないけど反論してやった。
「大丈夫だよ。俺よりも天姫の方が心配じゃない」
「は?なんでさ」
「鈍感なとことか、単に人に好かれちゃうとことさ。しかも無条件で?それはさすがにないか、漫画じゃあるまいし」
そう、人のことなんかお構いなしに行動する
束縛を嫌う彼女は所詮、人の言葉に左右されないのかな。特に俺とか。
あー。なんでだろ、気分が落ち込む。
「やっぱり理解してない。……準備始めるよ?」
「あっ、沢田君?」
天姫の前では極力笑顔でいようと決めたけど、余計なこと言いそうで怖い。
天姫の薬指にはまだ自分との契約の証が存在している。
事実上、彼女は俺のものってものじゃないけど周りとかボンゴレ関係者にはそう認識されている。ボンゴレ十代目になるかっていえばはっきり言えない。
ザンザスと対決するときは天姫を助けるためにって無我夢中だったけどいざ終わってみると、自分は相当大変なことをしでかしてしまったんじゃないかと思う。
契約としてではあるけど、人の一生を左右するような軽はずみな行動。
天姫を縛るのはボンゴレの鎖。
その鎖を解くことができるのは、唯一ボンゴレボスのみ。
その鎖を継続させるのも、解くのもボスしだい。
時期ボンゴレボスが、もし仮に俺になるのならその選択を迫られるのは、俺。
かといって俺が辞退すればきっと別の奴が天姫の権利を主張するに違いない。
ザンザスは、きっと天姫を解放してあげると思うけど。
かといって、ザンザスがボンゴレ十代目っていうのも納得いかないって言うか。
アイツに一時でも天姫の権利を持っていかれるのは釈然としないっていうか。
あ―――!
もやもやする、なんかもやっとする。
……
叫びたいけど傍に天姫がいるから不審がられるし、ああ、ストレスだ。
なんていうか、もう荷が重い……。
今の俺には重たすぎる問題で、考えただけで頭が重くなりそうだ。
俺はとにかく雑念を振り払うように準備に取り掛かった。
※
山本武side
なんとなく数分がたち妙な違和感に苛まれた。俺は周りに気を配りながら静かにその場を立つ。小僧は気がついていたみたいだった。そして桜舞う中彼女の姿を見つける。
一瞬天姫の姿が花びらに包まれるかのように揺らいだ。
だが、それはほんの一瞬の事で目の錯覚だったと思った。
ランボを抱き上げているが、なんとなく茫然とした様子だった。駆け足で彼女の元へ急ぐ。
「天姫!なんか問題でも起こったのかとおもったぜ?……どうかしたのか?顔色が悪い…」
真っ青なほど天姫の顔色は悪かった。だが、天姫は頭をふり
「…なんでもない、心配かけてごめん。」
何もなかったとは思えない表情だ。また問題でも起こったのか。
「……なんかあったのか…?」
俺の問いかけに強情な彼女が答えるはずもなく、取り繕った笑顔で返され
「なんでもないよ。行こう?」
「あっ、天姫!?」
ランボを抱えたまま天姫は先に戻ってしまった。
少し遅れる形で戻った俺は、天姫にさっきの事を聞こうとしても軽く話を流されてしまうか距離をとられるだけだった。天姫を傷つけた何かは存在しているはずなのに、それがわからないもどかしさ。彼女はすぐになんでも抱え込んでしまう。
挙句の果てに誰にも相談せずに勝手に自己完結させてそれで全てを終わらせる。
天姫は今までそうやって生きてきたのかもしれない。そうすることでしか、生きる術がなかったのかも。だが、今は俺たちがいる。俺がいる。
なのに、どうして頼ろうとしないんだ?どうして、『助けて』と言わない?
俺はむしゃくしゃした気持ちで食べ物を口に運んだ。視線は相変わらず、天姫に注がれたまま。
(気になるビームは届かずイライラMAX)
※
雲雀恭弥side
朝から携帯が繋がらない。もちろん天姫の携帯に。
さっきから一向に繋がる気配のない番号に何度舌打ちしただろう。
電源を落としているか充電が切れたか、なんにせよ彼女と話せないことがこんなにも辛い。
応接室でただ一人書類に追われる僕。彼女がここにいればどんなに仕事がはかどることか。天姫がいてくれると実感するだけで僕の気分は上昇するのに。
深くため息をつきこれ以上仕事ができる気分ではないので、直接天姫の住む家に行こうとした。
けど家に行ってもみんなで何処かへ出かけたわよという奈々さん。
何処へ消えた?僕を残していくなんて……。
怒りへと変わった激情と寂しさと哀しさが入り混ざる。奈々さんにお礼をいい、その場をあとにした。
天姫は何処にいるんだ…。
どうしようもなくなる僕の感情。だが、そこへ天姫のお気に入りのロボが姿を現す。
グォングォングォン…
「君、邪魔だよ」
グォングォングォン…
「また、僕に噛み殺されたい訳?」
グォングォングォン…
全然退く気配がない。
ジャキッ!とトンファーに手をかけた。その時、大きな手の平を見せられた。
「何?」
そこには原型を留めていない携帯。僕に戦慄が走った。
だって、それは天姫の携帯だったから……。
「天姫に何かあったの?」
グォングォングォン…
ロボは飛ぶ体勢をつくり、僕を見る。
「案内するってこと、か。いいよ。乗ってあげる」
僕は巨体ロボの背に飛び乗った。天姫の無事を確かめに行くために。
着いた場所は、異様な場所だった。だって、この季節に桜が全開だなんて。
そして、群れてる連中の中に天姫の姿を発見した。
「恭弥?」
よかった、どうやらケガなどは見当たらない。
でも、なんで魔女っ子な姿な訳?可愛いから許すけど、僕以外の男の前でそんな格好しないでほしい。
なので、ちょうど群れてる奴らに八つ当たりようとした。
けど、寸前で天姫に腕を掴まれてあっという間にありえない場所へ連れて行かれた。
だって、さっきまで昼間だったのに、急に真っ黒な夜に変わるんだから。
平安時代の姫が着る装束を身にまとった彼女は映画の中から飛び出たかのような美しさだった。池に浮かぶ船の上で、君と過ごす時間。僕はこの時間がほしかった。部外者に邪魔されずにのんびりとする。
「恭弥は船酔いとかしないタイプ?」
「全然しないよ」
君には溺れているけどね。
君の髪は指どおりが良すぎる。簡単にすり抜けてしまうから、何度も掴みたくなる。
「ねぇ、天姫」
「ん?」
天姫の指が僕の髪を優しい手つきで撫でる。慈愛に満ちた眼差しで僕を捕らえる。
「君は、此処に存在してるよね」
あんなに焦がれた存在を手放したくは無い。ずっと、側で生きて行きたい。君の隣で
「………いるよ……」
今度こそ、信じていいんだよね?今度こそ、僕のものになってくれるよね?
「僕から、二度と離れないで…」
本当にこりごりだ。君を失くす恐怖を味わうことが。
だから、君の手の動きを奪い離れてしまわぬよう祈りを込め、キスを送り続ける。
「そうだ、ね。私も離れたくない…今のとこ」
絞りだされるみたいな弱弱しい声音。
「今のとこ?」
「うん」
「素直じゃないね」
「うん、私。素直じゃないから」
ふと、見上げて思った。
夜空に輝く月夜に照らされた君の顔はなんとなく儚さが出ていたような気がしたんだ。