天姫side
実は、結構転校生率が高い学校だと思いました。
「転校生を紹介するぞ」
懐かしき制服に身を包んだ私はさっそく教壇の横に立っております。
もちろん好印象を与える為、笑顔全開満開やー。
すると、クラスのどよめきが一瞬で消し去った。
皆さん大きく瞳を見開いて一斉に私に注目しなさる。
……そんなに注目しないで下さい。転校生ってそんなに珍しいんかい!?
………一人ツッコミこそ、虚しいものはないね。狗楽ちゃんがいたら『何一人ツッコミしてんの!あ?寂しくない?』とツッコミかけてくれるのに……
しかし沢田君たちの表情があまりにも想像したもので笑える感じだ。びっくりドッキリ成功!
「嘘だろ…」
「おまっ!?」
「……マジかよ…」
「天姫ちゃんっ!」
「誰、あの子…」
まさかまさか!私が並盛中の制服に身を包み、こうして同じクラスにいることが信じられないのだろう。ははは、私だって冷静になってみればなんで中学生してんだよって言いたくなるもので。それに皆には内緒にしていたのだ。
だが、このクラスは見慣れた顔だけではない、一般人もいるのだ。
それなりに第一印象が大事なので間抜けな表情は出せない。
知的で大人しそうなイメージが私の中で構成され、よしイメージでは完璧。
後はスマイルスマイル。
「初めまして、神崎天姫と言います。海外生活が長かったので色々と不自然な事で皆さんにご迷惑をおかけする事もあるかと思いますが、どうか宜しくお願いします」
「言っとくが、こいつに手出したら命はないと思え」
カチャリと教師にあるまじき銃器で生徒を恐怖のどん底に突き落とす。
リボ山センセイ、生徒に脅しをかけるのは教師としていかがなものか。
だが私の呟きなど所詮、彼の前じゃ屁でもないだろう。
普通な、学校生活にあこがれていた。いや、もう一度中学生したかったって意味じゃないですよ。それじゃあいい年した大人のイタイコスプレになってしまうじゃないか。
そういう意味じゃなくて、こう平穏みたいな中学生らしい学校生活っていうのに、少し憧れていたから。だから、今回の件も勝手にちょびっとだけ期待を込めていた。
だがそれもこのリボ山先生のお蔭で全て最悪な結果に終わった。
私の転校生としての初挨拶が恐怖の印象付けられてしまったのだから。
ああ、どうしてこうなってしまったのだろう。
シンとお通夜のように静まり返ってしまった教室にて、私はしばし回想に逃げることにした。
※※※
時は遡る。私は沢田君の家にまた出戻りしたのです。
あ、この言い方だと実家に帰った妻の言い方みたいだから訂正しなおそう。
私は沢田君家に再び居候させてもらうことになった。
#name1#の時は奈々さんと呼んでいたが、彼女の優しい眼差しに何度救われたか。
「大歓迎よ!#name1#ちゃんがいなくなってから、私寂しくて…」
「ご迷惑おかけして申し訳ありません。奈々さん」
「あらっ、そんな他人行儀な!『ママ』って呼んでくれないかしら?」
「えっ?あ、あの…」
「貴方の妹さんの#name1#ちゃんも変に遠慮してる部分があったから、一緒に暮らす家族なんだし、ね?」
「……じゃあ、あの『奈々ママ』って呼んでもいいですか?」
ちょっと、遠慮がちに口にしてみたが奈々さんは本当に嬉しそうに笑ってくれた。
ほっと一息ができるような気持ちにさせてくれる。
この人みたいな女性を『母親』というんだなと、心のどこかで感じた。
で、奈々ママと呼ばせてもらうことにした私。
桜を見終わった昨日の夜、家まで送ってくれた恭弥が明日の学校へ行くのに朝迎えに来て上げるといってくれたのだが。私は全力で断った。
だって、朝からブォンブォン凄い音で来られたら沢田君たちに丸分かりだで、せっかく驚かそうとしている計画が台無しになる。
なので誘ってくれた恭弥には悪いが断った。だが素直にハイそうですかと引く彼ではなかったのを忘れていたおまぬけな私。
「……ふーん、そういう理由なの。じゃあ、交換条件」
「はい?なんでそーなるの」
「だって、あの草食動物たちにばれたくないんでしょ?だったら僕のお願い聞いて。そしたら『明日の朝』は迎えに来ないよ」
「なんか、今含みっぽくなかった?」
「天姫の気のせいだよ。それでどうするの?僕のお願い聞いてくれる?」
見事にスルーされた。
「………仕方が無い、わかった。けど無茶なお願いは勘弁してほしい。絶対無茶なお願いされそうな悪い予感しかないけどあえて言わせて。勘弁してください!」
「天姫は一言が余計だから。……今日はこれで引いてあげる。おやすみ、天姫」
「んっ」
やっぱり、彼にキスされた。条件反射で一瞬目を瞑る。
ソフトなのだけど、なんだかコレが習慣になってきているような……
「オヤスミ、恭弥」
颯爽と夜の闇に消えていく彼。しかし、彼のお願いとはなにやら。
不安で眠れぬ夜を明かした。
※
朝、沢田君とリボーンが家を出たのを確認し私も学校へと向かった。しかし、職員室へ向かう途中。彼に見つかってしまったのだ。小さな最強の殺し屋に。
「天姫、俺を騙せると思ってたか」
「………まぁ、100%無理かなとは思ってた。リボーン」
振り返れば、少し怒気を含ませた彼。
うふふ、もうオーラで痛いほど伝わります。これはあれか?
そんなに学校へ入ることを怒っていたということか?
やっぱり、義務教育を終えた人間は駄目ということなのか?
「お前はいつも何も言わない。山本も俺と同じ考えだ」
なぜここで武が出てくるのだ。
私が学校に編入してくることを彼も既に知っていたとか?
うぬぬ、侮れない山本武!
「いつ何が起こるかなんて普通の人間には分からないものでしょう?言った所で覆せないこともある」
もう、転入届けとか出しちゃってるからさ、いまさら通うなとか無理だね。
にゃははは!やったもん勝ちというやつである。
「だからと言って、………全て、一人で抱え込むことが正しいことだと思っているのか。お前は」
一人で抱え込む?いやだからさ、サプライズにならないではないか。
全部オープンにしたらドッキリの意味さえ消え去ってしまう。
それにしてもまだ続くの?この追及。
遅れてしまう、ってか。入る前から遅刻とか洒落にならん。
私は彼に背を向けた。
「もう、タイムリミットだよ。リボーン」
ヤバい!時間が迫っている、転入生が遅れるなんて洒落にならん。駆け足だ!
ちらりと気配だけ気にしてみたが、彼は追ってくることはなかった。
が!既に教室にリボ山に変装して担任として登場していたのである。
なんという素早さ、もしかしてリボーンは何人も同時に存在しているとか?
マジでありえない人種だ、リボーンは。で、冒頭に至るって訳。私の席は沢田君の隣である。
「宜しく、沢田君」
「一言言っといてくれれば良かったのに…」
なんか不満そうな顔して文句をいう彼だ。
それに続けて隼人、武も似たようなことを言ってくる。
「十代目の言うとおりだ。朝一緒に登校できただろうーが!」
「…………まぁ、これからは一緒に学校行けるしな?いいじゃねぇか。な?」
うーん、そうだといいんだけどな。なんか嫌な予感がする…。
こういう時の予感っていうのは結構的中するもんだ。私は曖昧に笑みで答えた。
「そうなるよう、祈るだけだよ」
あははは、私の平凡じゃない学校生活が初日から始まってしまった。
そういえば、恭弥のお弁当とかどうすればいいのかな。
まぁ届けるだけでいいだろうと自己完結する。
1限が終わる頃、私の席には人だかりというか、まぁ大概の気心知れたメンバーが周りを囲む。
「天姫ちゃん。これから一緒に勉強できるね!」
「京子、私も嬉しいよ。そっちの子は京子の友達?」
「あ、うん」
「……どうも、黒川花って言います」
おお、京子の親友、沢田君に遠慮なく毒舌を言い放つ少女。
女の子の友達は素直に嬉しい。だってなんか私の周りって男ばっかり密集してるから。
たまには潤いがほしいのだ。私だって。
だから、もう自分でもわかっちゃうほどにめっちゃゆるけた表情になった。
右手を差し出しつつあいさつを交わす。
「宜しく、花って呼んでもいいかな?」
「…っ!?………よ、ろしく」
あれれ?急に顔赤くさせてどもりがちになってしまった、彼女。
何か、まずかっただろうか。隣の京子でさえ固まってしまっている。
沢田君に助けを求めようとしたら、
「………久々、かもしんない」
と、私と視線を合わせようとしない。隼人は
「………耐性が無い人間にはキツイっすね。…俺もですけど」
とあさっての方向を見ている。武は
「天姫、ちょっとは加減してやれよ?」
意味深な台詞を吐く。何の加減ですか?私は精一杯やったんですけどね!でも、仲良くはなれたかな?
クラスの生徒は相変わらず、私に近づくことはせずに遠巻きにみているだけ。
くそっ、リボ山め。余計な台詞吐きやがるから、生徒に嫌われてしまった。
うぅ、私の平凡な生活を返せ!私の初日はまだ終わらない。
授業はまー、一応習ったところだし私にとってはそう難しいものではない。
適度に聞いて適度にノートに書き込んでいるって感じだ。そして、やっと昼休みになった。
「机並べて一緒に食べよ!」
「天姫、私の隣に来てよ」
京子と花と一緒に食べる約束をしていたのだが悪魔の鐘が邪魔をした。
ぴんぽーんぱんぽーん♪
『1-A、神崎天姫 至急応接室にくるように』
ぴんぽーんぱんぽーん♪
この空気読まなさ感はいつも通りというか、無性に腹立った。
せっかく!せっかくガールズトークを楽しめる時間だと思っていたのに!
人の至福の時を邪魔して何様僕様恭弥様ですか!?
「……………馬鹿恭弥がっ」
「あっ、天姫!?」
自分の弁当&恭弥の分の弁当を腕に抱えて私は高速で教室を飛び出した。
すれ違う生徒の間を俊敏に潜り抜け、元凶がいる場所へと駆ける。
応接室へたどり着くのに一分もかからなかった。
それほど、私には怒りが満ちていたからだ。弁当箱を右手で持ち右足を後ろに引く。
そして左足を高く上げ、
「はぁぁああーー!」
ノックもせずにドアを蹴り倒した。
ズゥン!
本来横にスライドさせるドアは真正面から倒れこむ。
ハッ!修理費用なんか怖くないさ。今の私は無敵だ!後の私だったら平謝りの連続だろうさ!
ズカズカと倒れたドアの上を歩いて部屋の中へと侵入する。目の前にいるのはなぜか格下風紀委員たち。
「姐さんっ!?」
「帰ってきたんだ、姐さんっ!」
「恭弥はどこ」
ってか、姐さんはやめろ。リーゼント共め。私の睨み&雰囲気に気圧されてか、恐怖の顔で逃げ腰になっている。というか若干一部涙目になっている。そんな中スッと前に出た一段と見事なリーゼントを持つ彼。
「…お嬢、お久し振りです……」
「草壁さん。そうね。けど挨拶はいいから恭弥を出してくれる」
「……っ、実は、委員長から先に呼び出しをかけておけと連絡が入りまして」
「連絡?じゃあ、彼は今ここに居ないわけ?人を呼び出すだけ呼び出しておいて?」
どんだけ自分勝手なんだ!こっちは文句言いたいだけいって弁当渡してさっさと教室に戻ろうと思っていたのに!
「申し訳ありませんっ!」
「「「「申し訳ありませんっ!!」」」」
草壁さん以下数人の風紀委員がリーゼントが崩れるのも気にせずに土下座をする。
やめてよっ!?これ今の状況、ドア壊しちゃったから全開なんだよ!?
丸見えじゃん!なんたる辱めだろうか。
「何これ」
「委員長!」
来たよ来ましたよ。問題児が。
草壁さんが救いの女神が現れたとでもいいたげな表情を浮かべた。
反対に私はむっちゃ不機嫌MAXに。なんだよ、私が苛めてたみたいじゃんか。
恭弥は私の顔と草壁さんたちの顔を交互にみて、
「君達、なんのプレイしてるわけ?」
「なんもしてないから!?」
ここでボケかますなよ。ドアはすぐに修理され、風行委員たちは恭弥に追い払われて退散。
私は以前不機嫌なまま弁当箱をテーブルに置き、恭弥とは距離をたもちつつ、反対のソファへ足を組んで座る。
「僕が悪かったから、いい加減機嫌なおしてよ」
「やだ」
さっきから、彼は私の隣に座ろうとするのでそのたびに席替えみたいに移動しまくる。
はたからみればなにしてるんだと突っ込みたくなるだろうが、生憎ここに突っ込む人物は存在していない。恭弥と私、二人きり。
何度か同じことを繰り返した後、ようやく彼は私の隣に座ることを諦めたか反対側のソファに身を落ち着かせる。
はぁと溜息をついては、小さく文句をつぶやく。
「強情すぎるのも問題だよ…」
「嫌なら私と関わらなきゃいい問題でしょ?」
すかさず私は言い返した。
そもそも、もう休み時間終わりそうなんだが。
憧れのガールズトークできなかったんですが、誰が責任取ってくれんの?
そして転向初日午後から授業サボることにあるだろう私の印象どうしてくれんのマジで。
お腹は減ったし、イライラするし、この際恭弥は放置で弁当食って教室戻るか。
うん、それでいこう。
そう自己完結した私はテーブルの上の自分用の弁当に手を伸ばした。
「……冷たくしないでよ。これでも急いで戻ってきたんだ……」
まるで叱られた子供のようにしゅんとしてしまった恭弥。
おいおい、私が苛めてる雰囲気ができてしまった。これじゃあ弁当平然と食べれないじゃん。私は仕方なしに彼の機嫌を浮上させるため彼の隣に移動し腰を下ろした。
「ごめん、仕事で忙しかったんだよね。急に呼び出されるものだから私も苛立っちゃって」
恭弥の肩に手を置けば、自然な動作で恭弥が私の手に自身の手を添えてきた。
噛み殺すは瞬殺でも大量にいたら時間も掛かってしまうよね。
いやいや、でもなんか恭弥の学ラン異様にどす黒くないか。
気のせいかな。なんか、ちょっと触った感触がべっとりするんだけが。
ちょっと学ランから浮かして自分の手の平をちら見した。
…………ペンキ?
恭弥は、ペンキを塗る作業でもしてきたのだろうか。
さび付いた赤だ。だが、当の本人はまったく気がついていない。
それどころか…。
「もう、怒っていない?」
恭弥の頭上に猫耳を見た。
しゅんと萎れていた耳がピクンと反応しているようだ。
ははは、腹が空きすぎて幻覚が見えている。
もしかして、恭弥のやってきた仕事って、まさかアレですか?
この感触といい、ちょっと嗅いだことのある匂いといい。
分かる奴はわかる。
「うん、もう怒ってないから」
「……よかった」
私の気のせいだろう。
そんな自分の学ランが血に染まるまで、噛み殺しに夢中になるなんて、な。
うん。私の気のせいだ。もう色々考えるのやめよう!
そして彼といえば、完全に機嫌が戻った。
やっぱり恭弥って猫みたいだと思った。
しかし私を呼び出した理由はなんだったんだ?
改めて人に抱きついてきている彼に聞いた。
「結局、私を呼び出したのはなんな訳?」
「昨日話したじゃないか。もう忘れたのかい?僕のお願いを聞いてくれるって事」
「……………」
忘れてた。
「…………忘れてたね…」
ジト目で見られた。うぅ、視線が突き刺さる。
ここはっ!秘儀、笑顔で誤魔化せ作戦!!
「ごめんね?」(はぁと)
私の考えではこうごめんなさいオーラがただよっているはず。
案の定、恭弥は動かなくなった。というか私にすがりつくように頭を押し付け顔を隠す。私と視線を合わせたくないと?成功したのか、しないのか。複雑だ。
「……………許してあげる。でもその顔は僕の前だけにしておいて、ね?」
恭弥専用に発動させよと!?
たぶん彼以外の人の前でもヤバイ雰囲気になったら発動すると思うけどここは素直に頷いとこう。利口な判断だ、
「で、恭弥のお願いは?」
「三つ聞いてくれればいいよ」
その三つが怖いんだよ、とはいえませんでした。
恭弥が言った三つのお願いとはこうだ。
☆1 『風紀委員会に入ること』
内容としては、恭弥の補佐。つまり委員長補佐という役職。おまけじゃん。
☆2 『普通に授業は受けてもいいが、呼び出しがあった場合はすぐに応じること』
問題が発生した場合、すぐに恭弥に連絡を入れれば彼自ら問題を対処してくれるらしい。物騒な事に発展しなければいいと思う。
☆3 『朝下校時は一緒に行動すること』
要約すると、一緒に登校して下校時は一緒に帰る。
私の一日のサイクル、半分以上は恭弥と過ごすことになる。これって新手の拷問?
もちろん、彼のお願いを拒否する権限など最初から認められていなかったことだけ言っておこう。
ああ、おなかすいた。
結局、お弁当は恭弥と二人で仲良く食べた。
追記:風紀委員の間で私を見かける度に大声で
「「「姐さん、ご苦労様ですっ!」」」
と大声で声をかけられるようになってしまった。
恥ずかしいのでやめてくださいとお願いしました。でも
「姉さんですから!」
ときっぱり断られました。