闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的76握り飯を作る、の巻

天姫side

 

そう、これは何気ない日常のほんの一部だ。秋一色となった今日。

通り過ぎるときに見かけた木々の葉は、オレンジや、黄色といった秋らしさを表現していた。そんな中……巧みな運転でバイクを走らせる彼、雲雀恭弥。

そして彼の腰元にしがみつきどうか無事に学校まで着きますようにと毎日祈っている女子は私である。

 

「寒くないかい?」

「ううん、大丈夫」

 

こうやってさりげなく気を利かせてくるところは恭弥の良いところだと思う。その面が発揮されるのが数少ない相手にだとしてもね。やっぱり気遣いは大事。たとえ、目の前の彼はノーヘルメットだろうとね。

規則破ると怖い人が違反してますけどね、この矛盾が許されるのって恭弥だからだろうね。

 

良い子はマネしないように☆

良い子じゃなくても、自分の命守れるのは結局自分だからマネしないように☆

 

通りすぎていく通行人の視線は常に私たちに注がれている。

たぶん彼の姿を見て驚いているか、はたまた違う意味で視線を向けているのか知らんが、こんなに堂々としている彼だからできること。

もちろん私はちゃんとヘルメット装備済みである。

彼の運転を信じていないわけではないが、やっぱりケガはしたくない。

しかしこうして彼の運転するバイクに乗っている時に思うことがある。恭弥って、腰細いよね。

私より細いんじゃない?だって、余計なお肉がないし私なんかおなか当たりとか昔よりヤバくなったと思う。ああ、歳はとりたくないもんだわ。実年齢20歳……以上ですから。

 

「しっかり、掴まってないと落ちるよ」

「……分かってるって」

 

体全体を密着させ彼にさらにしがみ付く。

瞬間、彼の体がわずかにビクンと反応したのはなぜだろうか。

うん、男の子の背中って逞しい。

無駄のない引き締まった筋肉、だからといってムキムキというわけではなくて綺麗なバランスの取れた体系。私もこんな感じになりたいなぁ。

 

「……あのさ」

「うん?」

 

どこか遠慮がちな声で話かけられた。

学校までもう少しというところ。どうしたのだろうか?

 

「………『アレ』なんでついて付いてきてるの」

「アレ?」

「そう、『アレ』。家を出たときからついてきてるよね」

 

恭弥がサイドミラーを睨みつけアレと連呼する。

 

ギュォォォオオオオオオーーーーーー!

 

どこも変わった様子はないが…ただ『彼』が後方で飛んでいるだけだ。

 

「………なんかおかしい?」

 

なぜ彼がアレなどと言われるのだ?ただロケットブースターを使いちゃんと道路を走っているではないか。なんら違反をしているわけではない。

 

「どうみてもおかしいでしょ」

 

私の言葉に彼は珍しくつっこみをかけて来る。

 

「………変な恭弥…」

 

だが私には学校についても、彼の問いが理解できなかった。

 

グォングォングォン……

「………、後で僕のとこ来てね」

 

なんで?そこまで束縛したいんですか私の日常を。

 

と、叫びたかったが此処で面と向かっていえるほど私の度胸は大きくもなく、仕方なく従うしかなかった。

 

「…わかった。でも授業中にしびれ切らして放送で呼ばないでね。……よし、じゃあ行こうか」

 

私は恭弥に背を向け彼を呼んだ。

 

「ゴーラちゃん!」

グォングォングォン……

 

並中の制服を身に纏った彼は立派な並中の生徒だ。

うーん、でもゴーラちゃんに制服って少しきつ過ぎたかしら。特注で作ってもらったからサイズはあってるはずなんだけど、ちょっとごついイメージがある。今後改良の余地ありそうだ。どうせ改造制服とか恭弥に頼めばオッケーもらえそうだし。

私はゴーラちゃんを伴ってルンルンと鼻歌歌いながら教室へと向かった。

そして、生徒たちがなぜか私に注目?する中、教室にたどり着き自分の席に着いた。

すると、後から登校してきたボンゴレズがお揃いで私の後ろに立つゴーラちゃんを見るなり、入口でしばし固まっていた。

私が「おはよー」とあいさつすると沢田君たちはハッと我に返ったかのように私の机の前までわらわら近寄ってくる。

状況説明求むと皆に迫られ、私は多少びっくりしながらも説明した。

で、沢田君が呆れたように、こういった。

 

「天姫、此処にまで連れてくることなかったんじゃない?アレはさすがに俺でもヒクよ」

 

沢田君、そんなジト目で見ないでほしい。

そして隼人や武の視線も同様に感じてしまうのはなぜだ。

 

「なんで?マスコットみたいで可愛いじゃん」

 

頬杖をつきつつ沢田君の問いに答えた。

 

「マスコットって言える存在かよっ!?どうみてもデカすぎだぜ!」

「天姫は淋しいの嫌いなんだな。俺ならお前にそんな想いさせないぜ」

 

はははのは。ナンとでも言いなさい。

私はまったく気にしませんってか武よ。君の考えていること全然違うから。

なんで淋しいって事に繋がるのさ?

 

グォングォングォン……

ただいま三限が終わったところである。

私の席の隣に移動し若干妨げとなって通れなくなっているが私は気にしない!

クラスの生徒から異様な視線を注がれ続けようとも。

それにゴーラちゃんはまったく気にしていないようだ。

すごいね貫禄が出てるよ。だてに、ヴァリアーの幹部?やってたことはある。

朝の担任からの紹介の時はちょっと笑えたけど。

 

だって、

 

グォングォングォン……

 

彼独自のオーラにクラス中の皆が引き込まれていたのだろう。

皆、ゴーラちゃんに釘づけだった。鼻が高いね!

うきうきと一人心躍らせる中、担任はコホンと一回咳払いをすると重苦しい口を動かした。

 

「えー、彼はイタリアから来たゴーラ・モスカ君だ。彼は何々を搭載したなんとか兵器だそうなのだ。ちなみに何々と言っている部分は余りに過激な内容なので詳細は伏せている。私に聞くなよ?私も知りたくないのでな。まぁ、様はだ。彼の持ち主は神崎君だ。

神崎君に不用意に近づかなければ被害を受けることはないので、絶対にモスカ君に刺激を与えないようにな」

 

グォングォングォン……

 

ゴーラちゃんってば、人前だから妙に緊張しちゃっていたみたいで、ロケットランチャー装備して皆を笑わせようと頑張ったみたいなんだけど、逆に教室内がパニック状態に。

それで一時間目潰れちゃった☆

それにしても担任の説明がそのまんまだから笑っちゃった。

可笑しさに笑いをこらえていると、今度は京子と花が寄ってきた。

 

「天姫ちゃん、学校にまでペット連れてきちゃうなんてよっぽど大好きなんだね!」

「京子、それは違うんじゃない?」

 

私の味方だけは京子だけのようだ。花は少しあきれている。

これは単なる我儘ではないのだ。それなりに深い事情があってのこと。

なんとゴーラちゃん、私が学校に行っている間にランボの悪戯によりゴーラちゃんのボディにそれはもうたくさんの見るに堪えない落書きを施されていたのだ。

それを見た途端、私はその場に卒倒してしまった。

ゴーラちゃんは基本、良い子なので子供の落書きぐらいで怒ったりしない。だからランボのいたずら書きも拒否しないでそのまま好き勝手にやらせたようだ。

子供達にも凄い人気があって遊び相手としても申し分ない。

だが私にはものすごく大問題だ。

油性マジックで書かれたもんだから全然落ちなくて後始末が大変だった。

これが毎回あったら、心労が増えて私がダウンしてしまう。

なので!仕方なくゴーラちゃんも一緒に学校に連れていくことにしたのだ。

 

「被害が出ないようにするためだからさ、みんなには迷惑かもしれないけど…」

「…私は迷惑だなんて思ってない、けど!」

「私もだよ。天姫ちゃんが辛そうな顔するのは嫌だもん」

 

花に、京子……持つべき者はやっぱり友だね……!

 

「ありがとう、二人とも」

「「…………」」

 

もう彼女たちの動きが止まり顔を赤くするという不可解な動作については考えるのをやめようと思う。

彼女たちの私に対する友情表現だと認識しよう。

さて今日の家庭科はなにやらおにぎりを作るらしい。

これは、原作であったような気がする。

沢田君が京子のおにぎりを欲するが故にリボーンに弾を打ち込まれ女子たちが作ったおにぎりをむさぼり食うという話。…………なんか、少し違うか。

 

「なぁ、俺にくれよな?」

「ん、何を」

 

いきなり顔を近づけてこないでくれるかい、武君。

 

「今日のおにぎり、楽しみにしてるからさ」

「あ!てめぇ、先駆けとは汚ねぇぞ!?天姫、俺にも、そ、その……くれ…」

 

ごめん、よく聞こえなかったけど隼人もおなかがすいてるから、おにぎりほしいと解釈していいのか。だったらもっとはっきり言ってほしい。ぼそぼそ喋っててうまく聞こえない。

 

「あ!…俺も……味見してあげるよ。前のおにぎりは形悪かったし、上達してるか見るのも俺の責任?みたいな……何言ってんだ…俺」

 

前のおにぎりって体育祭の時に作った不格好なおにぎりのことを言っているのか。

失礼な物言いである。あれ作るの大変だったんだから!

 

「………気が向いたら作るよ」

 

やっぱり育ち盛りな男の子だからたくさん食べたくなるんだろうなぁ。

成長期はたくさん食べるのはいいことだけど、何も私におにぎり食わせろとみんなして言わなくてもいい問題だろうに。ふと、ある考えが浮かんだ。

 

まさか恭弥も私におにぎり作れと強要してくるのでは?

だからさっき後で来いなどと言ったのではないだろうか。

 

恭弥におにぎりを献上するとな、うーん。それならちゃんと言ってくれなきゃ困るよね。

『後で僕のとこ来てね』っ毎回同じ台詞で聞いているものだからあまり深く考えなかったが、言わなくても理解しろなんて、熟年夫婦じゃあるまいし無理である。

以心伝心なんて論外だから。しかし………どのくらい作ればいいんだろ?

まさか風紀委員のみんなの分とかも作らなきゃいけないとか思ったりした。

やっぱり肩書きは委員長補佐な訳だし差し入れみたいな形で出したほうがいいのかな。

………お米って足りるかな。

私はしきりに声をかけて来るみんなを無視して膨大に消費するであろうお米の量を心配し続けた。そして家庭科の時間になった。私はひたすら握る握る握るを繰り返していた。

 

「天姫、どのくらい作る訳?炊いたお米の量がハンパないけど…」

「う~ん。ねぇ、花?風紀委員ってどのくらいいるのかな?」

「…………全員に差し入れするの……?」

 

花、そんなアリエナイでしょ?みたいな顔しないでほしい。

私は本気(マジ)モードなんです。

 

「うわぁ!おにぎりの山になってるね。それにすごくおいしそう」

 

そうでしょうそうでしょ!京子が目をキラキラさせて感心していた。

私一人じゃ到底無理なのでゴーラちゃんも一緒におにぎりを作ってもらった。

おにぎりはシンプルに塩をつけただけ。大量に作るのはきつすぎる。

ゴーラちゃん、女子に負けず劣らすに料理は得意なので大きな手で器用におにぎりを握り続ける。

その様は板についた様子。一切の無駄がない。長年の主婦といったところか。

まぁ、おにぎりは完成した。大量に。これならどんと来い!ってやつだ。

催促を仕掛けてきた沢田君たちにさっそくおにぎりあげたし、いつの間にか側にいたリボーンにも提供した。

結構みんなバクバクと食べたのでよっぽどおなかがすいていたんだなと推測。

 

「天姫?」

「ゴメン、ちょっと行くところあるから行くね」

 

そしておにぎりを密かに催促?していた彼の元へ向かう為私は家庭科室を出て応接室へ向かった。とりあえず、持ってこられるだけの量をお皿に乗せて持ってきた。(主にゴーラちゃんが)

そして、応接室へたどり着きドアをノックして私だと伝えると風紀委員が中へ招き入れてくれた。私は「失礼しまーす」と一声かけてゴーラちゃんと共に入室する。

恭弥はペン片手に書類とにらめっこ中だったが、私の姿を視界に入れた途端、これでもかというくらい目を大きく見開かせた。

 

「………ナニコレ……」

「いや、おにぎりだよ」

「ただのおにぎりじゃないよ。おにぎりの『山』だよ」

「そうだよ。だっていっぱい作ったもん」

 

ゴーラちゃんにお皿をテーブルに置いてもらって私はソファに座らせてもらった。

200人分くらいかな?風紀委員ってどのくらいか把握していないので。

恭弥はおにぎりの山に釘づけだったが、仕事を中断させてソファに歩み寄り私の隣へと腰かけた。

 

「なんで、…こんな?」

 

明らかに困惑している様子だ。え、この態度ってアリですか?

 

「……そんな事、私に言わせるの?」

 

おいおいあんたが私に献上させようとしてたんじゃないの?みんなの分作らなきゃいけないじゃないの!?

私一生懸命作ったのに、そりゃもうおにぎりに心血注いだってまでに。三角三角、ひたすら握って握って。今日の夜にはきっと三角に襲われる私が夢の中に出てくるだろって半分諦めながら作ってたのに。みんなに白い目で見られるのを我慢して作ったのに!

 

「……恭弥にとっては、『こんな』で済ます程度に見えたんだ」

「……天姫…?」

 

私はもうこれでおにぎり、一生見なくても生きていけるよって強く感じた日になったってのに、『こんな』?『こんな』だってさ。

私の苦労とかどーでもいいってことなんだね。ははは。

 

「もう、いい」

 

おにぎりの後始末をゴーラちゃんに頼み私は席を立った。

なんだかアホみたい事したと思い、居たたまれなくなった私は応接室を飛び出そうとした。

 

「えっ、あっ!?」

 

慌てた彼の腕が私の手を掠めた。

だが、それは掠めただけで終り、私は彼の制止を振り切り全力疾走で並中を出た。

ハッっと気がついた。

そして……いくトコないじゃん。

授業フケちゃったし。だが携帯と小さいお財布には幾ばくかお金があり、スカートのポケットに入れていたので適当な場所で時間を潰してゴーラちゃんに荷物持ってきてもらえばいいと思ったので、漫画喫茶に入った。そこで面白い漫画本を見つけツボにはまりのめりこむようにそれにはまってしまった。気がつけば、携帯の時計を見れば夜9時半を過ぎていて慌てて会計を済ませて店を出た。

ちなみに携帯はマナーモードにしていたため恐ろしいほどの着信の数とメールの嵐に気がつかなかった。

 

どこにいますか?連絡くれ!今何時だと思ってるんだ!

何かあったのか!?返信してくれ!

 

心配する内容のメールや留守番電話に残された数人の声。

ちょっと頬が緩んでしまった。彼らに心配されているって感じが伝わるからだ。

 

でも待てよ、私。

これって死亡フラグ確定じゃないか?

学校から消えて荷物はそのまま、尚且つ家にも帰らない。

家出?迷子?事件に巻き込まれた!?警察!?110番通報!

 

サーっと背中が寒くなる。さっきまでにやけててアホやないか私!

やばいやばい!!怒られるマジで怒られる!

まだこの若さで死にたくないっ!!

 

なんだか家に帰るのこ怖くてどうしようかと途方に暮れていたらゴーラちゃんが飛んで迎えに飛んできてくれた。

優しい彼に思わず歓喜してしまった。

だがそううまくいく話があるわけもなく、家にたどり着く前にバイクで待ち伏せしていた恭弥に飛びつかれ、抱き殺されるかと思うくらい圧迫され、一瞬意識が飛んでいきそうだった。

 

「ぐえ」

「もうあんな事言わないからっ!だから、だからっ……」

 

並森最強の男を泣かせてしまったっ!?

なんとかなだめて落ち着かせたけて、帰らせたがそれだけではすまなかった。

だって更に怖い人が玄関にいたんですもの。

玄関の明かりはついていたので、思わず二階のベランダから侵入しようかと考えたがそれじゃあ泥棒みたいだし絶対リボーンが勘づくはず。ここは開き直って玄関から入るべし。

ゴーラちゃんには待機してとお願いして、私は意を決して玄関のドアに手をかけた。

 

カチャ。

鍵はかかっておらず、ドアはゆっくりと開けた。

抜き足差し足忍び足、と。

コソ泥のように体制を低くして中へと入る。よし、近くに誰の気配もない。

 

「お帰り」

 

と思ったけどやっぱりそうはいきませんよねー。

仁王立ちした沢田様がいらっしゃいました。

 

「天姫。今何時だと思ってるの」

「10時過ぎです。はい」

「わかってるんなら俺の言いたいことわかるよね」

「いえサー!わかりません!失礼しま『ガシッ』あれ?」

「はいすんなり逃がしてもらえると思ってんの?」

「ソウデスネー!」

 

こってりねったりきゅ!っと皆に怒られました。

おにぎり作っただけなのに。今日はついていない。

 

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