闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的77マスコット来る、の巻

雲雀恭弥side

 

やっと望んでいた日常。そう、彼女がいる普通の日常。

そう、思っていたのに……僕の考えは甘かった事を、その時にやっと思い知らされたんだ。朝、彼女をバイクの背に乗せる時すごく緊張した。

 

「寒くないかい?」

「ううん、大丈夫」

 

だってこんなに密着するんだよ。彼女をこんなに感じることができるなんて凄く幸せだよ。けど僕も男だからね。

 

「しっかり、掴まってないと落ちるよ」

 

決して他意はないよ。危ないからそう思っただけなんだから。僕の考えはどうせ見透かされているはずだ。

 

「………分かってるって」

 

そういって天姫はむぎゅっと僕にしがみつく力を込める。無論体も更に密着度が増した。……彼女の豊満な胸がモロに背中に当たった。やばっ、ちょっと朝からは正直キツイ。天姫のプロポーションは誰がみても完璧だと叫んでしまうくらい見事だ。

それに加え彼女自身の内面の魅力にそれが相成って相乗効果。

一般人ならすぐに魅了されてまともな思考回路を働かせられない状況に陥ってしまう。

なんとか己を強く保つことに専念した。

でもどうしても気がそれてしまうことがあった。

僕の後ろ後方にピッタリついてくる存在。

 

「……あのさ」

「うん?」

「………『アレ』なんで付いてきてるの」

「アレ?」

 

天姫には悪いけど、名前では呼びたくない。あえて、アレと言う。

 

「そう、『アレ』。家を出たときからついてきてるよね?」

 

ギュォォォオオオオオオーーーーーー!

 

今、時速何十キロだと思ってるの?

天姫のペットじゃなかったら即刻咬み殺すところなんだけどね。

だって並森の風紀をおかしくする存在だよ、アレは。簡単にバランスを崩す厄介なモノ。それでも彼女はアレを溺愛している。

それも僕以上に可愛がっているし…

 

「………なんかおかしい?」

 

どうせ違和感なんか感じてないんだ。

そうやってわざとらしく首を傾げたりして僕を試す素振りをする。

君にふさわしくあろうと思えば思うほどその道が遠くなってしまうのは気のせいかな。

 

「どうみてもおかしいでしょ」

 

僕が嫉妬にかられてどんな醜態をさらすか愉しんでるんだ。

彼女の表情は窺うことはできないけど確実だと思う。

 

「………変な恭弥…」

 

ちょっと声が弾んでたよね。普段よりどこか楽しそうだ。

気配でわかるよ、君の考えてることなんとなく。

学校へ着いて早々、彼女はさっさとバイクから降りてペットのところへ向かう。

あっさり、捨てられた気分。

 

「………、後で僕のとこ来てね」

 

僕は負け惜しみで言った訳じゃない。

ただ、淋しかったから言ったんだよ。ねぇ、気がついた?

 

「…わかった。でも授業中にしびれ切らして放送で呼ばないでね。……よし、じゃあ行こうか」

 

………やっぱり僕の気持ちに気がついていてそんな事言うなんて卑怯だ。

君が言ったことやろうと思ってたのに。先に駄目って宣言されちゃった。

………、なにか噛み殺してこよう。フラリと足を動かした。

少しはこのどうしようもない気持ちも紛れるかもって思ったから。

 

(どれだけ血を浴びてもやっぱり満たされない)

 

獄寺隼人side

 

十代目の言葉は確実に当たり前のことを言っていると俺も思った。

 

「天姫、此処にまで連れてくることなかったんじゃない?アレはさすがに俺でもヒクよ」

「なんで?マスコットみたいで可愛いじゃん」

 

気軽に言っているが本題はそうじゃない。

だが天姫は大して問題はないと軽く流す。

相変わらず常人では考えないことをさっさと行動に移す女だ。

予想がつかないことばっかりしやがる。

 

「マスコットって言える存在かよっ!?どうみてもデカすぎだぜ!」

 

制服着せてもまったくマスコットなんて可愛い存在の欠片もないぜ。

……、まぁそんな突拍子もないところも、ッチ!いいんだけどな。

 

「天姫は淋しいの嫌いなんだな。俺なら、お前にそんな想いさせないぜ」

 

山本め、どさくさに紛れてアイツにちょっかい出しやがって!

担任もいい加減な事はきやがって。

 

「えー、彼はイタリアから来たゴーラ・モスカ君だ。彼は何々を搭載したなんとか兵器だそうなのだ。ちなみに何々と言っている部分は余りに過激な内容なので詳細は伏せている。私に聞くなよ?私も知りたくないのでな。まぁ、様はだ。彼の持ち主は#name#君だ。#name#君に不用意に近づかなければ被害を受けることはないので、絶対にモスカ君に刺激を与えないようにな」

 

グォングォングォン……。

 

誰にも発言を許さない様にロケットランチャー装備して脅すのはやり過ぎだと思うぜ。

あの騒動後、一般人ならドン引きだろうが意外と骨太な奴等もいる。その例が笹川と黒川だ。天姫の机を囲む十代目と俺を押しのけるように割って入ってきた。

 

「天姫ちゃん、学校にまでペット連れてきちゃうなんてよっぽど大好きなんだね!」

「京子、それは違うんじゃない?」

 

一瞬、天姫は憂いをおびた表情を見せ、声をトーンを落とした。

 

「被害が出ないようにするためだからさ、みんなには迷惑かもしれないけど…」

 

こいつは、いつ誰に襲われる環境になってもおかしくないよう、あいつを連れてきたのか!?

確かに、虚像の花嫁として世界中のマフィア連中に注目の的とされてしまっている今。

どんな予兆も見逃すことはできないぜ。

それをカバーする面でもアイツは重宝する。

だから、マスコットなどと誤魔化すようなくだらないことを言っている。

 

「…私は迷惑だなんて思ってない、けど!」

「私もだよ。天姫ちゃんが辛そうな顔するのは嫌だもん」

「ありがとう、二人とも」

「「…………」」

 

こいつの自覚無しのフェロモン放出はどうにかならないのか。

でも、本人に自覚させるとなると困難を極める難題に発展するな。

しかも最近、天姫様ファンクラブとかいうものができやがったと聞く。

 

「なぁ、俺にくれよな?」

「ん、何を」

「今日のおにぎり、楽しみにしてるからさ」

 

クソッ!!山本、ずる賢い奴めっ!?

 

「あ!てめぇ、先駆けとは汚ねぇぞ!?天姫、俺にも、そ、その……くれ…」

 

何を?みたいな顔をしやがるなよ。

お前の作ったのが食いたいなんてはっきりいえるか!

……こんな大勢が注目してる中で恥ずかしいじゃねぇか……。

 

「あ!…俺も……味見してあげるよ。前のおにぎりは形悪かったし、上達してるか見るの4も俺の責任?みたいな……何言ってんだ…俺」

「………気が向いたら作るよ」

 

十代目っ!?ここっ、ここでそんな事をっ!?

 

ってまったく俺の事は眼中にされていない。

天姫も呆れ気味に言いながらも咎めたりする節はまったく見受けられない。

こいつも満更でもないってことか?

クソっ、こんな事でへこんでいられるかっ?……負けません、こいつに関しては絶対に。

公の場で婚約者と宣言するのを羨む俺ではないです。いつでも横から掻っ攫う事はできる。

女子に囲まれながら和気藹々と調理を開始する天姫をみながらそう、思った。

だが、少し疑問に思った。

なんで、あんなに米が必要なんだ…?

 

(どんだけ腹空かせてんだと思った)

雲雀恭弥side

 

彼女のほうから来てくれたことは飛び上がるほど嬉しかった、なのに。

なのに、これって何?

 

「………ナニコレ……」

 

視界を埋め尽くすほどのおにぎりの山。しかも海苔がないシンプルなもの。

 

「いや、おにぎりでしょ。どうみても」

「ただのおにぎりじゃないよ。おにぎりの『山』だよ」

「そうだよ。だっていっぱい作ったもん」

 

そんなに作るほど彼女はおにぎりが好きだったのかな。知らなかった…

 

「なんで、…こんな?」

「……そんな事、私に言わせるの?」

 

彼女の表情が段々強張っていく。

まるで言ってはいけない禁断の言葉を言ってしまったかのように。

 

「……恭弥にとっては、『こんな』で済ます程度に見えたんだ」

「……天姫…?」

「もう、いい」

 

鋭利に研ぎ澄まされた瞳で僕を簡単に貫く。吐き捨てるみたいに、彼女は席を立つ。

その瞳に僕はもう映っていない?絶望が体中を駆け巡る。自分の心臓を鷲づかみにされたように、鈍い激痛が襲う。

それは幻痛なのかもしれない、でも僕にとってそれは、死を宣告されたも同然。

無我夢中で伸ばした手は彼女の繊細な指をかすめただけ。

 

「えっ、あっ!?」

 

流れゆく天姫の髪がスローモーションみたいにゆっくりに感じた。

それからの僕は正直何をどうしたか記憶に残っていない。廃人同然に街中を彷徨ったと思う。ただ彼女を追いかけんばかりの行動をしたこと。

暗い夜道、何処を探しても見つからなかった天姫を家の付近でひたすら待った。

 

「もうあんな事言わないからっ!だから、だからっ……」

 

君が僕の為にあんなにたくさん作ってくれたなんて気がつかなかった僕。

なんて愚かなんだ。その僕のせいで君を傷つけてしまった。どれだけ償えば、君に許してもらえる?

あの、おにぎりは大半持っていかれてしまったけど、ほんの2個くらいは残されていた。

たぶんあのロボが残していったのだと思う。

僕に彼女が一生懸命に作ったことを伝える為に……。散々見っとも無い姿を彼女に晒した。

そして情けとばかりに許しを請うことができた。

君は二面性があるようでまた優しく僕を迎え入れてくれたよね。

手のひらを返したみたいに荒れ狂った天候が一瞬で

快晴に変わったようにくるくると表情をかえて

万華鏡のようにどちらの君も僕にとっては、『君』だ。

僕という男を魅了してやまない狂った蒼い薔薇みたいにね。

 

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