クローム髑髏side
夢に憧れていたのは、私を想ってくれる家族。本音で語って自分を偽る事無く、全部をさらけ出せる相手。それが私の理想だった。今その現状を与えてくれた人がいる。
全てをその温かい慈愛に満ちた眼差しで柔らかく包んでくれる彼女。
神崎天姫。助けられた、のかな。
天姫が帰ってきて、みんなが一緒にいる日常。でも最初に言っていたみんなで暮らせるって言葉。まだ実現できていない。だから、ずっと言い出せなかったことを夢の中で言おうって決めてた。
天姫がいると凄く気持ちがいい。青々としている空にどこまでも続く草原。
一番言いたかった台詞をパイナポーに先を越された。うぅ~。ずるい……、後で骸さまの頭刈ってやる…。確実にスキンヘッドにしてやる。
「天姫、一緒に黒耀にいきませんか?」
「どんな誘いというか学校が違うこと前提でそれ言ってるの?」
「だって、最近全然出番がないんですもん」
子供っぽすぎ。私の方が天姫を守れるのに…
「男が語尾にもんってつけるんじゃないの」
変態なクセしてやっぱり強い。簡単に避けられてしまうだもの。
「そんな冷たい天姫も素敵です」
尚更、負けてる気がして槍を握る手に力が篭った。刺さってほしいのに、全然当たらないのがむかつく。だから天姫の方へ近づき慰めてもらうことにした。
天姫はちゃんと受け止めてくれる。お母さんみたいに、優しく。
「私も淋しい」
「凪が言うなら!いつでもこの胸に飛び込んでおいで!」
やっぱり、天姫は優しい。
私をちゃんとみてくれている。『凪』って女の子を真っ直ぐみてくれる。
「この差はなんですかっ!?」
「可愛いの差」
「ぐっ!?」
「フッ」
やっぱり、天姫の一番は私。骸さまはの台詞は負け惜しみだ。
でもさすが変態、やっぱり気に入らないみたいでブチ切れた。
「クハハハハ!どうやら決着をつけねばいけないようですね!」
「受けてたつ」
夢の中だから現実時間は関係なくて、でもやっぱり骸さまは強い。
変態パワーに満ち溢れているからかも。
「ああ!もう、喧嘩しないの!」
天姫の制止で、喧嘩は中断された。また天姫の側に駆け寄った。
もう、骸さまのせいで天姫の機嫌が悪くなったらどうしてくれるの。
でも、やっぱり天姫は心の広い人。全然そんなそぶりは見せないし、感じさせない。
「骸。ちゃんと昨日、私お手製手作りおにぎりプレゼントしてあげたでしょ?」
ビックリしたな、あの時は。だって、いきなり天姫からの手作りおにぎりなんだもん。どうしてこんなに大量に作ったのか不明だけど。
「確かに、ちゃんと受け取りましたよ。あんな大量なおにぎり食べきれるか自信はありませんが、天姫がせっかく作ってくれたものです。愛情が篭っているものを捨てるわけにはいきませんからね」
当たり前だよ。仮に捨ててたら、私が骸さま粗大ゴミに出してきてた。
「……おなか壊さないようにね」
無理して食べるなって言ってるのかな?
そんな事気にしなくていいのに。だって、天姫が一生懸命作ってくれたものだもの。私も嬉しい。
「天姫、おにぎり作るのうまいね?」
普段から家事とかしてたのかな。そんな疑問を口にしてみて、後から後悔した。今の私にとってすごく聞きたくない言葉。それは…
「まぁ、狗楽のご飯とか作るのが忙しいときとか、お金に困ったとき時はおにぎりだけですませた頃もあったしね。本人文句言わないで、もぐもぐ食べてくれたからありがたかったかな」
それは、『狗楽』あの子の名前。だって、天姫があの子の話をするときは必ず、私を見ない。ここにいない、その子を想って話すの。すごく大切に想ってるって一目でわかる。血が通った本当の『家族』だから悔しい。私じゃない、一番をあの子は持っている。
私が望んでいるものをあの子は横から盗っていってしまう。
知らぬ間に声に出していた。顔は歪んで、唇を噛み、震える怒りを押さえ込みながら。
「………あの子、嫌だ……」
「…?何か言った?」
「ううん」
辛うじて、天姫には聞こえていなかったのがよかった。
こんな醜い心、天姫はきっと気に入らない。嫌われたくない。
「ねぇ、天姫?あのね、お願いがあるんだけど……」
「何?骸なら断ってるけど、凪のお願いは極力聞いてあげるから」
ずっと、側にいてほしいというのは無理だと思ってるから。だから…
「天姫、僕の事ホントは嫌いですか?」
骸さま、いいところだから邪魔しないで。
「それで、どんなお願い?」
「私とおそろい着てくれる?」
「はい?」
クエスチョンマークを頭に浮かべている天姫を最後にわたしは夢から覚めた。
でも、天姫はきっとわかってくれる。そう強く意気込んで、天姫専用の制服を用意した。翌朝、天姫を拉致してきた骸さまは久し振りにエライと思った。ホントに久し振りに。
「天姫ー!良く似合っていますよ。その改造制服」
でも、天姫の腰に抱きつくのもいい加減にしてほしい。
天姫は全然嫌がるそぶりを見せないから骸さまは付け上がるんだよ?
「……本当は、長めのスカートも似合うかなって思ったけど、転んだら嫌だから止めたの」
「……ありがとう、凪」
「天姫が嬉しいと、私も嬉しい」
「…天姫…」
「…凪…」
「天姫ぃいいいい―――――!?」
「ちょっと!?」
「僕と言う者がありながらなぜ!クロームとラブラブしているんですかっ!?」
ぱいなぽーめ。いい加減にしろよ。あ…こんな汚い言葉使ったら、悪い子になっちゃう。
「骸さま…ウザイ…」
「凪、なんだか、黒いモノが押し出されようとしているけど、なんとか鎮めてくれない?ね?ね!?」
天姫がぎゅってしてくれたから気が治まった。うん、一応骸さま偉いもんね?
「ところで、来たはいいけど私学校に休むとかまったく連絡いれてないよ?ってか恭弥待ってる間に拉致るって酷くない?」
「クハハハ、僕は悪ですよ?わざわざあの男に断りを入れる必要などありませんってかムカツキます!」
「悪どうのこうの言う前に人間としてどうさ?明らかに私情が混ざりまくりじゃん」
天姫の言う通りだ。でも、そんな骸さまでも今日は良いことをしたから許してあげて?
「私は天姫と一緒にいたかった」
「うん、凪いいよ。骸が主に『首謀犯』だから凪は全然無関係ね」
「だから、どうしてそんなに僕を蔑むんですか!?」
だって、本当に興味のない人には天姫はすごく怖いくらい違う天姫になってしまうもの。
骸さまは愛されている。
こんなにけちょんけちょんにされてるけど、反対に言えば関心を持たれてるからそれが叶うのであって、もし、天姫に関心をもたれず興味すら湧かない対象だったら、と思うと薄ら寒いものだ。興味を持たれない。
好きな人にほどこのような仕打ちを受けたら絶望ものだわ。
私にとって天姫は、もう離れて生きていけない呼吸のような人。
息をするのも、吐くのにも天姫がいるから私はここにいる。これを『依存』っていうのかな?
犬と千種がお買い物から帰ってきた。食料を頼んでいたんだけど、天姫が料理してくれることになってすごく嬉しい。だって、お母さんと一緒に料理をすることがわたしの夢の一つでもあったんだから。
テーブルにのっているのは様々な色とりどりの料理の数々。そしてエプロンつけた天姫。
「犬、ちゃんと噛んで食べなさい」
「わかってるら!」
子供みたいに落ち着きの無い犬。天姫は犬の将来を心配して言ってるんだ。
そうだ、明日から犬のご飯はガムを用意してあげよう。顎を鍛えてあげなきゃ。
「千種、ちゃんと栄養とってる?野菜とか食べなきゃ駄目だからね?ホラ、コレも食べて」
「うん」
千種はひょろっとしてるから、天姫に心配されやすいんだ。そうだ、明日からプロテインとか飲ませよう。ムキムキになれば天姫の心配は軽減される。
「天姫、僕は三食しっかり食べていますからね」
「それはよろしい。でも食べながら喋らない。行儀が悪い」
骸さまは偏食気味なクセして、天姫に嘘ついてる。生意気だ。そうだ、明日から青汁飲ませよう、大量に。色々ミックスさせて野菜ジュースもどきを造って飲ませれば骸さまの偏食も治るかも。
「なんだか久し振り、こういうの」
「…凪?」
天姫が心配そうに私をみた。なんかね、心がほっとしたんだ。
「これが、『家族』…」
「……凪……」
こんなに真剣に他人の事を考えたの初めてなんだもん。
他人から『家族』へと変わった私たちの関係。
貴女にずっといえなかったことを言いたい。
「ありがとう、天姫」
私を見つけてくれて、私をここへ連れてきてくれて。
夜になって、あの鳥の人とか、ボスとか乱入してきたけど、天姫が追い返した。
そして、夜はみんなで一緒に横になって寝た。
夢をみることはなく、ホントにぐっすりと眠れた夜でした。
(生きていて良かったと初めて思えた)