闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的84七夕の来客者『前編』

リボーンside

 

俺はよく神男のところへ足を運ぶことが多くなった。無論、天姫をこの世界にとどまらせるためだ。その方法をあいつなら知っている可能性が高い。

だが、神男のやつ、のらりくらりと俺の問いをかわしやがる。

それも同じ俺の問いになるとだ。

微妙に頭に来るやつだ。だが、俺が相手にするのは人間ではない。

銃弾さえも効かない相手だ。

こちらの心など見透かされているはず。心してかからなければ。

 

「これは、これはリボーン様。よくお越しくださいました」 

「いつものアレを頼む」

 

当然、俺が飲むのはエスプレッソ。ひつじは完璧に俺が好む味を出してくるから相当な腕をもっていることだろう。やはり神の世話係というのは言葉ばかりじゃないと痛感させられた。いつものアレで通じてしまうのだからひつじはみかけによらず有能な奴だ。すでにこの言葉も定着してしまった。最初は変だと思っていたひつじの蝶ネクタイしている姿も、違和感が消え去ってしまった。俺は日常からかけ離れてしまったのかとふと考えることもあったりする。

 

「かしこまりました」

 

ひつじは横目で神男を盗みつつ視界から消えた。俺を迎える立場にあるこの世界の主人は、のんきに釣竿の手入れをしていた。こいつの趣味はどうやら釣りらしいとの情報を前に聞き出している。

 

「ちゃおッス、赤ん坊。ちなみに、ここ喫茶店じゃねーんだけど」

 

ふきふきと作業をする手は止めることなく俺に言う。

 

「細かいこときにするな」

「細かいとこそういう問題じゃないって根本理解してる?」

 

まだふきふきしている。

 

「その赤ん坊と呼ぶのはやめやがれ」

 

まだまだふきふきしていやがる。

 

「…じゃ、アルコバレーノ。今日は何の用だ。俺は多忙な身の上。暇じゃないのさ」

 

ここでようやくガチャン!額に怒り筋を浮かべたひつじが荒々しく運んできたおぼんを豪快に置いた。ジトッとしたねちっこい視線を主に奴に送る。

その視線を送られている相手は絶賛視線を宙にさまよっている。

 

「ちなみに神さまにはこうしてお茶を飲んでいる暇さえないのですが、揚羽様に伝えて参りましょうか。サボっておられると」

「ふっ!さぁアルコバレーノ。胸の内にため込んでいる悩みこの神である俺が解決してやろう!遠慮はいらねぇぜ?なんたって俺は超迷える人間に優しい神様だからな!」

 

ひつじの言葉に即様反応し、ころりと態度を変えた。

さっきまでの釣竿はシュンっとマジックのように消え去った。

たぶん、神男にとっての『揚羽』の一言が飛び出した時点ですぐに逃げられる道に逃げ込んだのだ。あきれて一瞬呆けてしまった。

これが神たる者なのか……しかし、あの仮面の男、揚羽はどこに行っているのか。

神に仕える者なら、普通は神からは離れることなどないのではないかと考えた。

しかし、この神にしてこの部下あり、ともいう。

論外、あの男も自由奔放にやっているのかもしれねぇ。

しばらくこの場所に通っているはいるが、毎度毎度同じセリフを聞いている気がするぜ。

 

「……この先の話だ。天姫がこの世界にいられる確証がほしい」

「確証?そんなもんあるわけねぇだろ。あいつは根無し草みたいなもんさ。一か所にとどまることはない。……いや、できないと言った方が正しいか」

「それがアイツが背負う運命だからか?」

「そうだ。逃れようがない宿命みたいなもんさ。アイツが生まれた時から背負わされたものだ」

「……それは、どういうことだ?天姫はお前に無理やり契約を迫られたといっているぞ」

 

辻褄が合わなくなってきやがった。正直、これではどちらかが嘘のことを言っていることになる。神男は鼻であざ笑う。

 

「俺が契約を迫った、…ねぇ?」

「おまえ、何を考えている」

「いいや?アルコバレーノ。なんでもないさ。それより、お前らって七夕はしたか?」

「今の季節を考えればわかるだろーが」

 

唐突に何を言うんだ?こいつの話はいつも脈絡がない。

 

「前にしたようだが、どうだ?またやりたいと思わないか?天姫と一緒にな」

「天姫とか。俺はかまわねぇが、本人の許可は取ったのか?」

「そんなのいらねぇだろ。だってアイツ俺の部下みたいなもんだし」

「正式な部下ではないだろう。どうせお前がそう勝手に決めつけただけじゃねーか」

「俺は神様だぜ、傲慢で何が悪い。…お、御姫様のお帰りだわ。ずいぶんと楽しいことやってきたみたいだな」

「……なんだど?」

 

にやりと笑う神男を訝しんだ途端、ズンッ、体全体をとてつもない重圧のようなものが襲う。

 

「……クっ」

 

とてつもない殺気が俺、そして神男あたり中心に襲い掛かる。

 

「お、やば。お前にはきつかったか。…『ソレ』………少しはましになったろ」

 

神男が気を利かせて、その殺気による息苦しさを取り除く。

展開のはやさについていけなくなるぜ。

 

「………ああ、いったいなんなんだ……?」

 

姿を現したのは天姫の妹、狗楽だった。首元には斬られた跡らしい傷跡が残っている。一言でいうのならば不機嫌。俺へのあいさつもおざなりな状態だ。

 

「ただいま神男。リボーンさん来てたんですか、じゃあこんにちは、さようなら、悪いけど。神男借ります」

「お帰り狗楽。来て早々なんなわけ?お前」「黙れ」

 

シュッと神男の首筋に刃が突きつけられる。

その動きの速さは俺でも捉えることができなかったくらいだった。

やはり、天姫の妹は戦闘においても高い戦闘スキルを身に着けている。

神男は狗楽のようすに驚くこともなくあわてることもなく、まるで子供のいたずらをいさめるかのように。

 

「……、おいおい、瞳孔開いてるぜ。物騒なソレしまえ。客人のまえだ」

「輝瑠姫が現れた。わたしにお久しぶりって微笑み&攻撃仕掛けてきてね。どーゆーこと?」

 

両者譲るそぶりは一切ない。

 

「……天姫そっくり…だな…」

「ええ、まことに」

 

いつの間にかひつじが俺の隣に立っていた。

 

「今のうちにお帰りになられた方がよいかと思われます。こういう時は大抵やっかいな展開ですので」

 

ひつじはぼそっと俺にそう打ち明けた。

面倒事に自ら首を突っ込む趣味はないので俺は早々にその場を去った。

 

 

そして、これは彼リボーンが帰った後の会話。

 

「わたしたち以外に『契約者』がいるようだね。洗いざらい全部吐いてもらうか。神男」

「……なんで俺が神男だなんてダサいあだ名があると思う?」

「ごまかすつもり?」

「そんなわけねーだろ。いいから答えろよ」

「……ねーちゃんがつけたからでしょうが。忘れたの?」

「………そう思うような。ククッ、俺も天姫と出会ったとき驚いちまったせ。まさか」

「アイツと同じあだ名つけられちまうとはな」

「アイツ?……まさか」

「ああ、お前が嗅ぎつけたとおり」

「神崎緋奈さ。アイツが俺に最初にダサいネーミングつけやがったんだよ」

 

ガーッン!?あまりのショツクに視界が霞んだ。

ゆらりと倒れ込む寸前でひつじがクッションがわりになったので怪我をすることはなかった。神男が面白そうに狗楽をみやる。

 

「そんなにショツクだったか?」

「……………」

 

今狗楽は返答を述べることが出来ない。

なぜなら、今彼女の頭の中は受け入れがたい事実をどう処理すればいいか超高速回転で計算をしているからだ。その時の狗楽にとってもっとも衝撃だったのは、やはり自分たちの他に契約者がいたという事実よりもあの姉の他にこの神のあだ名に妙なネーミングセンスをつける人間が存在していたという現実の方がショックだった。

 

「なあなあ、そんなにショックだったのかよ?」

「………………」

「なあなあってばよ」

「やかましい」

「あ?なんだって……ゲッ!?」

 

ズゴゴゴゴゴゴゴ!

 

「やかましいって言ってんだろぉぉがぁぁぁああ―――――――!」

「グハッ!?」

「ノはぁぁあ!」

 

しつこいくらいに聞いてくる神男に後半、狗楽はキレかかり襲いそうになったことは、事実である。神男は吹っ飛ばされ

ひつじも巻き込まれました。が、嬉しそうでした。

 

(結局、神男は『彼女』の詳細をそれ以上語ることはなかった。なぜならしばらくの間、失神していたのだから)

 

 

リボーンside

 

家に帰った俺は、さっそく本人に誘いかけた。

 

「神男から聞いてないのか?」

「何を?アイツからは事後報告はあっても事前報告は一切しない究極のめんどくさがり男だからね」

 

さすが、天姫はアイツの性格を熟知していやがる。

それなりにともに時間を過ごしているからか?

いや、それ以上に何か関係してるのかもしれん。

やはり、神男からはもっと情報を得なくてはならない。その事を自分に再認識させ話を進める。天姫の考えを少しでも前向きにさせるために。

 

「お前が七夕やる機会逃したから季節を一日だけ夏にしてやると言っていたぞ」

 

仲間と過ごす時間が多くなれば、天姫もこの場所にとどまりたいと思うに違いない。

やはり本人の意思もそれなりには必要と俺は判断した。

だが俺の思いとは裏腹に天姫の反応は予想外なものだった。

 

「またかよっ!?」

 

これである。またか、とはなんだ。またかとは。前にもあったか?

 

「なんだ、嫌なのか?」

 

やはり、人との接触はなるべく避けるつもりか。

 

「嫌とかそういうことの前にもっと大切なことあるでしょ。だから神バワー職権乱用するなっての!?季節遡ってどうするよ!?」

「いいじゃねぇか。せっかくのイベントなんだ。みんなも喜ぶだろう」

「いや、秋に七夕しますって、言ったところで人が集まると思う?秋だよ、秋」

「お前が参加するなら、全員喜んで参加すると思うぜ。お前にその気がなかろうと、強制参加させるけどな」

「リボーン、そんなに七夕をしたかったら私を巻き込まないで。私に願い事なんか必要ないわ」

 

まるで子供のような付き合いなど下らないというように、天姫は頑なに拒絶する。

こいつは普段から一人になろうとしているのか?

いずれ、いなくなる身ならば、馴れ合いなど必要ないと感じているのかもしれない。

孤独を愛する女。影を背負い、人との関係を恐れるその姿。まるで小さな子供のような気がした。

少々強引な手でもいくしかねぇか。

俺は心の中でため息をつき、だがぜってぇ表には出さない。

普段の声音より低くしゃべる。

 

「天姫。ゴーラ解体するぞ」

「喜んで参加させていただきますぅー!」

 

横目で天姫を盗み見た。少々、強引ではあったか?ゴーラを解体すると言うのは嘘に過ぎない。本人にも協力してもらい、あのような行動にとったのだ。自分から殻に閉じこもるな。俺は天姫にそう言いたかった。

なぜか、ゴーラに抱きかかえられている彼女を盗み見ながらそう強く思った。

 

(願いは願いのままには終わらないかもしれないからな)

 

 

獄寺隼人side

 

「やぁ、獄寺隼人君」

「んなっ!?てめーは……」

 

まさか道のど真ん中で、あの仮面男に会うとは思いもしなかった。

やはり気配など一切感じさせないまるで背後霊のような奴だ。

にこやかに手を軽く上げいかにも旧友にあいさつするかのような気軽さだった。

こっちは旧友どころか、2、3回ぐらいしか顔合わせはない。しかも、この白昼どうどう、仮面をつけたまま。人通りがあったなら真っ先に警察に通報される類にはいる。…人がいるならの話だ。午前中だというのに、人通りの多いこの場所には人っ子一人影さえもいない。どうなってやがる……

仮面の動向を探りながら周囲のかすかに見る。やはり人はいない。

前にもにた経験はある。あの天姫と知り合いだという神なんちゃらと話していた場所。

あの空間のことをいろいろと落ち着いた天姫に聞いてみたら、

真面目な表情で

 

「神男空間だ」と言われた。

「………あ、そう、か……」

 

はっきりと断言されたのだ。

一瞬何をどう返事すればいいのかわからなかったが。だが!なぜか、それ以上天姫に聞けなかった。くわっとした彼女の目力は半端なかったからだ。

それ以上私に尋ねるな。そう感じとれたのだ。俺はとてつもなく聞いてみたかった。

なぜ、その名前でなければならなかったのか。

なぜ、そんな名前が付けられていたのかと。

あの時のことを思い出していたら、目の前にいつの間にか仮面が立っていた。

 

「曹揚羽。揚羽と呼んでもいいのだが君と仲良くするつもりはないので曹と呼んでくれたらいいな。獄寺君」

 

気安く呼びやがるな、と喉元ぎりぎりまで出かかった。だが、天姫の家族となればそう邪見にするわけにもいかず、適当にあしらえばいいかと思った。

 

「誰がてめーとなれ合うか!俺はお前らを信用したわけじゃねーからな」

 

完全に信用したわけじゃない。

 

「かまわないさ。俺も君たちとなれ合いたいとは思ってはいないし」

 

ケロリといいのけ、しかも肩をすくめ、そんなあるわけないじゃん?みたいに鼻で俺を笑う。

 

「だったら、……何のようなんだよ」

 

舌打ちしながら相手の出方を待つ。

 

「………君に、話しておきたいことがあってね」

「あ?」

 

奴はそっと己が仮面に手をかけた。

そしてそれをわずかに手前にずらす。

 

「君にしか話せないと言った方が正しいかな?」

 

やはり、男としては整い過ぎた顔だとは思っていたが少しずつずらされていく仮面の下。

自然とつばをのみ、その動きを視線で追う。

だが、それはあともう少しで両目がみられると思った瞬間ギリギリ手前の所でその動きは止まる。

形の良い口が上向きになり

まるで獲物を捕らえた肉食動物のように目の前の男は上機嫌となった。

 

「これは俺と君だけの秘密の話だよ」

 

その意味は共犯者。

俺と仮面男とのある約束がその日交わされたのは真実が明らかになった時にわかること。

 

(似ていないようで似ている二人の共通点)

 

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