闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

88 / 160
標的89マジバトル

この狗楽にとっては『初対面』となるじーじとの再会。

しかし、その本人は寝台に横になり、包帯がいたるところに巻かれ、まるでミイラ状態だった。はて、いつからこのじーじはミイラになってしまったのだ?

じーじの一喝でも来るものかと半分期待していたのだが、それは少々残念である。

そういえばさっきから、この三国の世に到着するないなや、それはもう熱烈な歓迎をされた。

いきなり出現するのもアレかななんて気を遣って町の門をくぐってわざわざ来たのだが、そこから民たちが狗楽を発見するないなや

 

「紅竜姫様っ!」

「狗楽様ではないかっ!?」

「ご無事であったのですか?蒼龍姫様はいずこへっ!?」

「天姫様はご無事なのですか?」

 

むらむら群がってくる人々にゲッと嫌そうに顔を顰めるもそれはすぐに引っ込んだ。

暑苦しいんじゃー!と怒鳴りたい気持ちを抑えて抑えて、狗楽は笑顔で応対したものだ。

 

「あー、どうもっス。わたしもねーちゃんも元気ですから!」

 

明るくそう言いながらも行動は素早く逃げる。

これだ。一応民のみなさんに迷惑をかけているのでこれくらいはしてあげよう。

けど、笑顔振りまくだけでこんなに疲れるとは……

仮面かぶるって大変だなぁとしみじみ感じつつ、向かう先は城。

 

「じーじ、なんで怪我してんの?」

 

狗楽は後ろに控えている女官に問うたつもりだった。

しかし、返ってきた声は違う人物のものだった。

 

「狗楽様、お久しゅうございます」

 

それは、オリジナルの狗楽の主治医であった、いつもキーキーとやかましいイメージの璃怜であった。

 

「璃怜、久しぶりじゃん。あ、そっか。じーじの怪我みてんの璃怜だったの」

「ええ、この連合軍にて軍医をしています」

「連合軍…蜀と呉、それに魏から逃れてきた将軍によって作られたもの…だっけ?」

 

だっけ?と疑問形なのは仕方ない。

狗楽の中では、体験していないが知識として備わっているからだ。

一応、それらしく振る舞っているものの、もしや記憶違いなんてこともありうるかもしれない。狗楽は慎重に情報に誤差がないか探りもいれているのだ。

 

「はい。ここは今、混乱の最中にあります。軍を率いる天姫様がおられないのですから仕方ないと言えば仕方ありませんが…」

「うーん、人まかせってのもダメか」

「はい、今は何とか劉備様や、諸葛亮様、それに呉の方々が皆の不安をなんとか沈めている状況ですが、それもあとどのくらい持つか…」

「やっぱり、カリスマ性を持ったねーちゃんでなければ…」

「天姫様には即刻戻ってきて頂きたいです。正直に申し上げれば」

「だよね~。でも今は無理そうだわ。呼び戻しに行きたいとこだけどわたしにも優先しなきゃいけない件があるからね~。そっち片してからだ」

「燐華がそちらに渡ったようですが、ご存じで?」

「おお!ついに来ましたか。いんにゃ、全然それどころじゃなかったからさ。わたしは」

「なんですか、その嫌そうなお顔は」

「嫌な顔にもなるよ、だって輝瑠姫に会っちゃったんだもん」

「………御怪我は…?」

 

強面で近づく璃怜に狗楽はびびりながらも両手で制した。

 

「ちょびっと、でも紅竜が治してくれたから平気。だからそんな怖い顔して近づいてこないでください」

「また狗楽様は、人の忠告を素直に聞かないから…!」

「はいはい、すいませんでした。それより」

「凍翆様の容体は、ですか?」

「そうそう、それそれ」

 

このミイラ状態では怪我の具合もわからずじまい。

ってか、ほんとに生きてんのかと狗楽はちょっと失礼なこと考えたり。

璃怜の前で吐露するわけにはいかない。言った日にゃ、何を言われたもんかわかったもんじゃないからだ。

 

「左目を損傷、切り傷は数か所におよび、一部は急所を避けておられたようで一命は取り留めております。」

「ふーん、命は無事っと。僥倖僥倖だね」

「狗楽様、聞かれないのですか?」

「何を?」

「凍翆様をこんな御姿にされた人物です」

「……それを知って何になるって。今の問題が解決するとでも?」

「…それはそうですが」

 

あまりにそれは無責任では…そう進言しよう思った口が開くことはなかった。

なぜなら、開けなかったのだ。

狗楽が放つ異様な雰囲気に。

それは恐怖とも何ともいいがたいもので。

それでも彼女は普通の我らとは違う俗世にいる御方なのだと璃怜は改めて再認識できた。

あの頃の頼りなさそうな狗楽様はもうどこにもいおられないのだ、と。

 

「それより、ここにいるはずでしょ。神崎緋奈」

 

目当ての人物の名前を言う。

今の狗楽にとっての目標はあくまで彼女だ。

 

「ヒナ様、ですか?」

 

案の定ヒットした。すぐさま

 

「どこにいんの」

 

と問う。

 

「確か、さきほど連合会議が行われてそれに出席されているはずですが」

「ふーん、あんがと。じーじ。養生してね」

 

返ってくる言葉は一切なかったが、狗楽にはそれだけで良かった。

老体に鞭打って今まで働いてきたんだから少しは休んでてほしい。

それがパパに負わされた傷だとしても急所は避けられていたのだ。

あの戯月王が手を下した状態でわざわざ急所を避けるということはすくなからず殺す気はなかったということ。

それは彼にためらいがあったからに他ならないと狗楽は判断した。

 

そして狗楽は無理やりその場所に乱入した。

無論、注目を受けるのはわかってたけど。

 

「狗楽!?」

 

どうやら狗楽を知っている人物とかが名前を呼んでくる。

 

「紅竜姫様っ!」

「狗楽様のお帰りだ!」

 

やんややんやと大声を上げたりする人とか、抱擁してくる女の人とかいるけどそれはむしむしむしの続行。

 

「どーも、お久しぶりっす」

「狗楽!?」

 

どうやら異彩を放つ女を発見した。あんたか、最初の龍姫は……その女の閉じられた瞳が狗楽をゆっくりと見る。

 

「神崎緋奈。やっと探した」

「………うるさいぞ、小娘…」

「ヒナ殿、これはいったい…」

「……知り合いだ」

 

気だるげに億劫そうに言うその仕草。狗楽としちゃイラっとしかこないものだが、別の者からしてみれば、まるで姉のような優雅さを醸し出している。

 

「ただの知り合いじゃないでしょうが、ババア」

 

いろいろと聞かせてもらおうか、と狗楽は迫った。

 

「…………品がない…天姫はどういう風にお前を育てたんんだ…」

 

反対にヒナは嘆かわしいとわざとらしく目頭を押さえるたりする。くわっと目を鬼のように吊り上げて狗楽はヒナの発言に食いついた。

 

「あいにく、ねーちゃんはしっかりとわたしを健康体に育ててくださいましたわ!うちの教育方針は自由にのびのびと!!ですから」

「じゃじゃ馬の間違いじゃないか?」

「この、クソババア。…言わせておけば……」

「……やる気か?小娘」

 

ニヤリと微笑む美女と額に青筋を受けべながら感情をもろ現している可憐な少女。

二人のタイマンバトルが勃発しようとしていた。しかし、狗楽は重要なことに気が付いた。

 

(………武器、ないじゃん!?)

 

確かに、まったくその通りであった。

狗楽が使っていた武器は神崎緋奈を探す対価として彼に渡してしまったのだった。

 

がびーん!

どうすっかな、拳ってタイプでもないしなぁと悩みに悩む。

燐華みたいに素手で地面に亀裂を入れるような力量はないので少し不安なのだ。

 

「こないのか」

 

狗楽の様子を眺めていた緋奈はにやっとしている。その態度に狗楽はまたイラッとしてきた。

 

「うるさいな…あ、あった」

 

武器ぶきブキとその辺にないかなと探していたらなんともちょうどよさそうなものを持っている人物発見!狗楽はその人物に声をかけ

 

「それ、貸して」

 

ばっと本人に手を差し出す。無論、いきなり言われたその人物はすんなりと武器を貸すかと思えば、……貸す様だ。

 

「かまいませんよ、貸しましょう。しかし貴女に扱えますか?」

「大丈夫、大丈夫!今のわたしならどっかの『馬鹿めがっ!』って叫ぶ人みたいにビーム出せそうな気がするんだ」

 

なぜそう断言できるのかとその本人は狗楽に問いたかったがめんどくさいのでやめておいた。ここは余興の一部として観覧していようと。

 

「……そうですか」

「うん」

 

きっぱり頷く彼女に少し呆れながらも武器を貸してくれた。羽扇を手に取り

 

「…じゃ、借りるね。諸葛亮さん」

「壊さないでくださいね?」

「ハハハ、ダイジョウブダイジョウブ!」

 

あえて片言でしゃべった本人に諸葛亮の眉がピクンと反応したが、狗楽は即行緋奈と対峙する。にやりと微笑み緋奈を見る。

 

「お待たせ、じゃ。殺ろうか?」

「…………」

 

緋奈は大人としてのクールさを醸し出していた。こうして二人のタイマンバトルが始まろうとしていた。ここで突っ込みたいのだが

なぜ誰も二人を止めようとしないのか。それは二人の巻き添えを食いたくないか

止められるだけの力量をもっていないのが事実だった。そこへ、

 

「何をしているのですかっ!」

 

勇敢なる青年が二人に一喝し乱入した。その人物は…

 

「ゲッ、……火災大好きな人が来た」

「…それは、危険人物すぎるだろう……」

 

そして二人同時におもったことは

((厄介な奴きたな)ちゃった)

と考えたことだった。

 

「今、何か失礼なことを考えませんでしたか?」

「「いいえ、まったく」」

 

二人は事前に打ち合わせしたわけでもないのに、その時のセリフは息ぴったりでした。

 

「……信じられませんね………」

 

二人の返答に納得がいかない表情をする青年。

彼は陸伯言。そう、小さな朱雀はいまや大きく翼をはためかせ、立派に成長をしていたのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。