闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的94狂わしき雪花よ

沢田綱吉side

 

あの日から数日後、天姫は見た目普通に学校に通い、あの騒動が嘘のようだった。

 

「ツナ!外に行こうよ」

「えっ?なんで」

「いいから、いいから!」

 

こんなに寒い日にわざわざ外にでようとするなんてと思ったけど、天姫は本当に笑顔だったから俺もわかった、と苦笑いしながら立ち上がった。

なんだよ、これじゃどっちが年上だかわかんないよ。

となんか年相応な天姫を見れたことが内心嬉しくてしょうがなかった。

ぐいぐいと袖口を引っ張られ、のびちゃうよとたしなめてもいいからいいからと

満面の笑みで返してくる。

玄関で靴に履き替えてたら燐華さんが見送りに出てくれた。

天姫のはしゃぎっぷりに可笑しそうに笑みを浮かべて、でもお姉さんみたいに妹をしかるみたいに。

 

「姫様、はしたのうございますよ?」

 

そういって、天姫の少し乱れた髪を手で撫でて直していた。

 

「燐華も行く?」

「いえ、わたくしは遠慮しておきますわ」

「え?そうなの………怪しい……」

「ふふふ、身辺、気をつけてくださいませ。綱吉様」

「えっ!?俺なの!?」

 

と、本人の目の前で驚いてはみたがこれは演技にすぎない。

天姫に気づかれないように本人は知らないかもしれないけど、できるだけ天姫から目を離さないようにするためだ。学校にいる時もみんなそれをわかってて天姫から目をはなしていない。

俺はその意を含んでわざと言ったのだ。燐華さんもそれを承知で目配せで言ってくる。

 

『姫様をお頼みします』と。

 

俺は天姫に気づかれないよう浅くコクっと頷く。

 

「まぁ、いいや。行ってきまーす!」

「いってらっしゃいませ」

 

ランボとイーピン、そしてフゥ太を連れて散歩でもいくのだろうか。

子供たちは天姫と手をつなぎたいみたいで争奪戦のようになってきていた。

天姫は嬉しそうに順番順番とみんなに言い聞かせている。

でも結局はみんなが親子みたいに仲良く手をつなぎ合う結果になった。

俺はそんなみんなを後ろからゆっくりと歩く。

辺りに怪しい気配は感じない。常に警戒心を張りつめて一歩ず俺は前進する。

でもふとした瞬間、考える。

天姫は絶対将来、子供ができたら天姫は溺愛しそうだなってこと。

もともと母性のような温かさをもった彼女だ。意識してやっていることなんてないんだろう。

そんな飾らない天姫だかこそ俺は惹かれた。

ねぇ、俺があの時、踏み込めなかったのはなんでかな。

 

 

天姫を探してたどり着いたのは学校だった。

でも天姫自身の能力によって阻まれたのは俺だけじゃなくて、燐華さんや獄寺君や山本、それにヒバリさんや、あの骸だって、天姫がいる場所にはこれたのに、直接君に会える人は誰もいなかった。みんな重い沈黙状態だった。

だって、手が届くところにいるのに結局は届かないなんて。

ディーノさんの姿だけは見つからなくて、数十分後。

横抱きした天姫を連れてディーノさんは姿を見せた。

みんな無我夢中で天姫に駆け寄った。

当の本人はこっちの気も知らないですやすや眠ってって。

燐華さんはその姿にうれし涙をこらえきれずに山本に支えられていた。

みんな、心の底から嬉しそうにしてた。

でも、俺は顔では笑っていたけど、心の中では複雑な思いでからまわってた。

 

だって、なんで俺じゃなくて、ディーノさんなんだって!

どうして、天姫を迎えにいったのが俺じゃないんだって!

 

叫びたかった。訴えたかった。

でもできなかった、だってみっともないじゃないか。

ディーノさんは大人だよ。

だって、家について部屋のベッドに寝かせた天姫が起きる前、俺の部屋でディーノさんがこう言ったんだ。

 

『天姫は子供なんだよ、ツナ』

『え?…どういうことですか…』

『大人になろうとして無理に背伸びした小さな女の子だったんだよ。深くは説明できないが、あの子の傷は一生かけても消せないものだ』

『……………』

『ツナ。お前には悪いんだが天姫のことは今後、俺に任せてくれないか?お前の気持ちを踏みにじる結果になって申し訳ない。こんなやり方は俺も卑怯だと思ってる。だがこれしか方法がないんだ』

 

そういって俺に頭を下げたディーノさん。

 

なに、を?

任せるも何も、俺は。…俺は、天姫の保護者っていう気持ちでいただけで、ディーノさんにかなうわけじゃないし、天姫と仲良くなりたいなって勝手に思ってただけで。

いかにもディーノさんの口振りからだと俺が天姫に好意を抱いているみたいな言い方する。

そんなのディーノさんの間違いだ。

天姫をどうこうしようなんて、考え、ていないはずだ。

そうだ、俺が好きなのは京子ちゃんで、天姫じゃない。

でも、俺の口から洩れるように出たのは、疑問だった。

 

『………どうして…そんな言い方するんですか…?』

 

頭を上げたディーノさんは俺の疑問にこう説明した。

 

『どうして?そうだな、確かにお前は天姫と契約を結んだ。それは天姫の為だったと俺は勝手に思っている。だがそれはあの子の保身の為だろう?リボーンから聞いているぞ。ツナが好きな子は本当は同じクラスの笹川京子だと。ならそれでいいじゃないか。今はその契約のままでいいが、いずれ天姫の気持ちが落ち着いたら俺は天姫をイタリアに連れ帰る。十代目にもその件は以前から相談はしていてな、天姫の身を案じて日本からイタリアに戻してもいいという許可はもらっているんだ。今回の件がなけりゃあ急ごうとは思わなかった。ツナと天姫が結んでいる契約も九代目に譲渡することはできる。天姫の身の安全を考えたらイタリアに移した方が俺も九代目も安心するしな。

……天姫を幸せにしてやるのは並大抵のことじゃない。お前はマフィアのボスになる男だ。お前にその気があろうがなかろうが、少なからずお前はそれだけ大きな影響力がある。

ツナの背中には将来、とてつもないほどの権力とその数多のマフィアを束ねるという重い重圧が待っているんだ。天姫も無関係のままじゃいられない。だから影響が少ないうちにその鎖から離してやれる。ツナだって天姫がこれ以上傷つくのは見たくないだろ?あの子には平穏に過ごす時と場所が必要なんだ』

『…そんなもの、全部どうにかなるんじゃないですか…?ここだって安全だし母さんだっているしちびっ子たちだって天姫を慕ってるんだし急に離れ離れになったらアイツら悲しむじゃないですか。それに突然環境が変わればストレスだってたまりますよ?俺たちだって天姫が少しでも馴染めればって色々考えてるしディーノさんの勝手な判断で決めるなんておかしいですよ……学校にも通いだして日も浅いし』

 

俺は理由を並べたディーノさんの言い分に対抗した。

 

『だがそれも天姫の為だ。学校だって天姫が望めば向こうの安全なスクールに通わせる』

『………天姫が、そう、言ったんですか』

『言ってない』

『だったら!』

 

そんな先(未来)の話をしなくてもいいじゃないかって喉元で出かかった。

 

『だがな』

 

でもディーノさんの射抜くような瞳に気圧された。

 

『それだけ強大な力を持つという反対は敵も多いという意味だ。天姫は確実に敵に狙われる。それだけの価値がある存在なんだ。お前は必ず傍にいて守ってやれるか?どんな時にも、天姫が悲しい時も苦しい時もたえずお前はすべての事から守れると今ここで断言できるのか!?俺はあの子を守ると決めた。俺の手で守ると。……もし、仮に、だ。

仮にこのまま契約が解かれることなく進めば天姫はお前の伴侶と望まれる。否応がなしにな、周りから囲まれて最後には嫌だと言わざる負えない状況が作られてしまう。それではお前が笹川京子と結ばれぬ結果となる。それじゃあお前は一生悔むだろ?天姫を恨むことはないにしろ、疎ましいと思うかもしれない。それは天姫の幸せじゃない。あの子は本当の意味で幸せにならなきゃならない子だ。それに、おそらく天姫は誰とも婚姻はしないはずだ。ツナ。お前だけじゃない。他の男でも変わりはしない。いや、そもそも強制されそうになったのなら自らの命を絶つかもしれない。あの子はそれすら厭わないはずだ。逃げる為ならなんでもする』

『っ!そんな先の話まだ分からないじゃないですかっ!なんでそんなことっ』

 

未来はまだ決まってないはずだ。

そんな決まってもない話を今から心配してどうするんだよ。

京子ちゃんだってこの話には一切関係ない。いや、ボンゴレとか関係ないはずだろ!

まるで俺から引き離すために言ってるみたいで納得いかなかった。

それを引き合いに出すこと自体がおかしい。

 

『天姫の心にいるのはたった一人だけだ』

 

そんなの言われなくてもわかりきっている。

ここまで彼女を狂わせるほどに執着している要因。死してなお、天姫の心を捕え続ける彼の人。どんな顔をしているのか、どんな人物なのか想像もできないが、妙に腹立った。

 

俺は吐き捨てるように反論した。

 

『……彼は死んでます。死者とは婚姻できない。誰だってわかり切った答えだ』

『ああ、そうだ。わかっているはずだ。だが天姫はそれでも彼を欲している。現に天姫は彼に逢いたがっていた。だから屋上にいたんだ』

『………』

『これがどういうことかお前なら理解できるだろう?ツナ』

 

つまり、はそういうことか。

死。

愛しい者を求めての愚かな死を、彼女は求めた。

それゆえに、彼女は屋上に向かった。まるで恋に盲目の哀れな少女のように。

……似合わない、全然似合わない。

そんなの天姫の柄じゃないはずだ。

 

『だからツナ、あの子の為に契約を九代目に譲渡してほしい。それだけでいいんだ。後はお前の好きに』

『好きに?俺が、俺がどんな気持ちで契約を結んだと思ってんですか!?俺は天姫を理解しようと必死で必死で闘って天姫の為に契約を結んだ。天姫が馬鹿な真似してこの世界から逃げようとした時だってぶつかってわからせて、それでも駄目元で願って願ってようやくこっちに留めた。それでようやく俺にもチャンスが来たって思った!天姫のこと理解できる時間が出来たって喜べた。溝は深かったけどこれからって時にこれだ!その時間さえディーノさんは横から奪おうとする。ダメなんですか!?俺が天姫と仲良くしちゃいけないんですかっ!?俺が天姫に好意を抱いていないから?俺が京子ちゃんを好きなはずだから?そんなの俺わかんないですよ、好きなはずなんだ、俺は京子ちゃんを好きなはずなんだよ、でも天姫がいっつも頭の中にチラついてて消えないんだ。京子ちゃんと話してたって片隅には天姫と比べてる自分がいる。比べたって明らかに違いはあるのは歴然なのにどうしてもそうなっちゃうんだ。なんでこんなこと考えてんだって俺が好きなのは京子ちゃんのはずだって何度も何度も自分に言い聞かせた。馬鹿みたいに何度も何度も。それでも、それでも!天姫のことばっかり考えてる。もうわけわかんないですよ!だからなんだっていうんですかっ!?とにかく天姫は生きてるんだ!!彼女は今俺たちの世界で生きてる。『過去形』になった人間なんかに盗られてたまるかっ!いくらディーノさんだって嫌だ!契約だって譲渡なんかしてやらない、九代目の命令があったって絶対してやらない!俺が、俺が!天姫を…幸せにするんだっ!』

 

あの時はわからなかった。でも、後からようやく気がついた。

本当の気持ちに。気になって仕方ない理由。

天姫を手放したくない気持ち。

あのディーノさんに怒鳴ってまで拒んだこの想い。

 

やっと、自覚できたこの気持ちに蓋をしろって。そんなのアリかよ。

捨てろっていうのか。

 

『ツナっ!』

 

俺はそういって呼び止めるディーノさんを振り切って走った。今、考えて思う。俺は子供だ。天姫はずっと昔から彼だけを見ていたのに。一途に彼だけを。

心の隙間んてかけらほどありはしなかった。

ううん、最初からそんなものなかったのかもしれない。でも

 

「ツナ?どうしたの」

 

いつの間にか歩くのをやめていた俺を不思議そうに振り返っている彼女。

俺は君の隣を歩けないのかな?

喉元まで出かかったその言葉。

けど踏みとどまる。いったら完全に俺たちは終わる。

そんな予感がしたんだ。だから笑顔を張り付けて、君に笑いかける。

 

「今、行くよ」

 

俺の返答を訝しみながらも、チビたちにせかされまた天姫は歩きだす。

そして俺は数歩離れて君の後ろを歩いた。

 

(この数歩が俺と君との境界線)

 

 

獄寺隼人side

 

俺の手の中にあるのは天姫にとっては絶望の種ともいうべきもの。

リボーンさんに雪合戦するぞ、と呼び出されたのはとある日曜日。

十代目と一緒に来た天姫はどこか前より痩せた印象がある。

毎日一緒に登校はしていないが教室は一緒だから当然、顔は合わせるし昼もヒバリが呼び出さないかぎりは共に食ったりもした。

だが俺の前に立つこいつは……あまりにも頼りなさ気に立っている。

やっぱ、用意しておいて正解だったぜ…。

俺は天姫と視線を合わせないよう注意しながら

 

「…やる…」

 

と差し出した。

 

俺が天姫にやったのは大量のカイロ。

簡単に体を壊してたやつがこの寒空の下、それも雪合戦なんて状況、堪え切れるわけねぇ。

 

「ホッカイロ……」

 

天姫はそれを両手で受け取りじっと眺めた。体が基本だろうが。

足りない言葉を心のなかで付け足す。それに茶々いれる存在がいるが無視だ。

でないとやってられない。俺が壊れそうだ。

 

「……寒いだろーが、…今日は…」

「………うん、ありがと…」

 

何回でも俺はお前にやる。なんだってやってやる。

お前の笑顔を見るたびに俺は間違わなかったんだと一安心する。

けど、俺は迷う。

これが果たして曹揚羽の言っていたことが必要なんだろうかって。

 

※※※

 

今思い出しても胸糞悪い気分にさせられる。アイツとの会話の中…差し出されたそれは

鈍い光を放っていた。

 

『天姫にとってコレは絶対必要不可欠なモノだ。獄寺君。君だけが天姫を救うことが出来る』

『……なんだよ、これ…』

 

奴が俺に見せたのは赤く錆びついた簪だった。昔は真っ白だったはずであろう花は今はどす黒く汚れ、無残に変わり果てていた。だがまるで、これは…そう、まるでこれは

 

『血だよ』

 

仮面は俺の意図を理解しあえて言葉にした。

 

『なんでそんなもん……』

『彼の血だ』

『まさか、天姫、の……』

 

それ以上は言えなかった。口にすることに躊躇いがあったからだ。だが目の前の男はすらりと俺の言葉を繋げる。

 

『ああ、俺の師匠の血だ。それが天姫にとって必要になるからな』

『おまえ、気がおかしいんじゃねえか!?なんでお前がそんなもの手にしてんだよっ!?』

『おかしい?どこがさ。コレは「鍵」さ。唯の道具だ。それのどこがおかしいんだい?道具というのは使うものだ』

 

おかしい、おかしい、と目の前の男は首をひねる。

まるで自分は正常だというかのように。俺は本能的に接触してはいけないと感じた。

これ以上こいつといては巻き込まれると。

でも俺は逃げられなかった。なぜなら聞いたことがある声が突然耳に入ったのだ。

 

【ああ!やっと日の目を浴びられるわ。天姫ったらワタシをいきなり刺すだなんて酷い話よね?けど突然の事だったもの。彼女もビックリして混乱してしまったのね。きっとそうだわ!そうに違いないのよ。アラ?誰このコイツ】

『……な、んだとっ……!!?』

 

この身の毛もよだつ悪寒。体が思うよう動かなくなる。

それはさっきまで普通だったものが出来なくなる異常な感覚だ。曹揚羽は俺ではなく俺の背後に視線を投げかける。めんどくさそうにまるで物を見るような目つきで。

 

【揚羽、まさかコイツじゃないでしょうね?ワタシを無理やりこんな所に押し込めた挙句にこの使えなさそうな奴に頼むの?不安だらけで気が狂いそうよ、ねぇあの彼じゃ駄目なの?ザンザスの方がワタシは好みだわ】

『残念だがお前の好みは興味ない。彼で我慢してくれ』

 

仮面の男はそう言い返し女は深くため息をついた。

 

【……ハァ~。やってらんないわ。誰だっけ、まぁいいかしら?そこのボケッとした奴、これから先は永いわ。でも諦めて頂戴。だって全部天姫のためだもの。精々ワタシを困らせないで欲しいわ】

 

俺はありえないものを見てしまった。女はにっこりと赤い唇で笑みを浮かべた。

天姫と同じ研ぎ澄まされた美貌黒く艶やかな腰よりも伸びている髪。

色香あふるる体つき。でも違うのは瞳が真っ赤なことだけ。

夕闇の女王、彼女が棲まう場所、宿り先は愛しい彼がくれた簪。

その簪を渡したのは天姫が大切にする家族。

彼女を手にしてしまったのは銀の天使に恋焦がす少年。

夕闇の女王は死なない。

だって銀の天使が生きているかぎり、ね。

 

(嵐は囚われそして揺れ動く。見えない未来に向かって)

雲雀恭弥side

 

ねぇ、天姫。僕は頼りない?

君の不安を抱えられないほど子供だと思ってるの?

学校に通う君はまったくあの事件がある前となんら変わりばえしなかった。でも違うのはすぐにわかった。だって君の瞳が生き生きしていないんだよ。

いつも凍えるような冷たい瞳で人間をみてた。

人と一線を超えた場所で眺めるみたいに。

感情を抑制して機械みたいに日常をこなしてる。

そんな君を見るに堪えなかった。

いつも不安で不安で仕方がなかった。

だから寝る時も片時も携帯を手放さなかったし、いつでも君からの電話がかかってもいいようにしてた。

でも君からの着信はいつもない。僕ばかり。

正直淋しかった。僕だけが淋しい。

君は僕に何にも言わないよね。

いつも僕ばかりわがまま言って、それを君が苦笑いしながら聞いてくれる。

そんなことばっかり。

たまには君のわがままを聞いてみたい。

君の本音を聞いてみたいんだ。

だから君の口から世界なんて言葉聞いたときびっくりしたと同時に嬉しかった。

だって、天姫が欲しいっていうことは初めてだったんだ。

 

「天姫は世界をみたいの?」

「……、確かにいろんな世界はみたいね」

 

だって、彼女の憂いを帯びた視線の先にあるのは世界。

言葉通りならそれは相当のものだ。スケールが大きいものだと直観したから。

天姫が世界をみたいと言ったその言葉の裏側は

それは彼女が自由を欲しているという証なのかもしれない。

何者にも縛られることのない生活。なら僕がかなえてあげるよ。

 

「僕が世界を見せるよ、だからそんな顔しないで?」

 

彼女の綺麗でそれでいて多くのものを背負っている繊細な手をそっと手にとった。

彼女と僕の視線が合わさる。

 

「ん?」

「僕が君の手を取って一緒に歩くから」

 

君にそんな願望があったなんて

今更遅い僕かもしれない。

君に比べたら微々たる僕の力かもしれないけど

それでも役に立ちたい。

君、一人で行かせはしないよ、絶対。

君が世界=自由をほしいというならそれは僕の夢でもある。

天姫はまるで僕を試すかのように言う。

 

「……恭弥も一緒でいいの?」

 

僕にできるのか、と彼女は言っているように聞こえる。僕は試されている。

その緊張感からつばが大量に口のなかにあふれた。

一呼吸、僕は再度天姫に伝える。僕の決意を。

 

「僕は君と一緒がいいんだよ」

「そっか、わかった」

 

合格、と彼女は満面の笑みで僕に微笑んだ。

互いに繋がったからは彼女のぬくもりとぎゅっと若干緩めながらも決して弱くはない彼女からの込められた気持ち。

僕はそれが彼女の気まぐれであろうとかまわないと思った。

置いて行かれるよりはずっとましだから。

だから天姫。僕を置いていかないで。

君がボンゴレを疎ましく思うのなら僕がその鎖を引きちぎってみせるから。

 

(その証拠に僕の首にかかっている君からもらったペンダントがちりちりと 僕の鼓動に呼応するみたいに反応した)

 

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